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8月と慰霊

2021-08-02 13:33:15 | 徒然

昨日だったか?IOCのバッハ会長とJOC、組織委員会は「広島原爆投下による犠牲者に対する黙とう」を拒否した、というニュースがあった。
Yahoo!ニュース(共同通信):広島原爆の日、黙とう呼び掛けせず  IOC、閉会式で共有

広島の被爆者団体等から、IOCのバッハ会長の訪問に対して反対があったのを強行するカタチで、先日広島訪問を果たしている。
その時は神妙な表情で花輪を記念碑にささげたはずだが、原爆が投下された日の黙とうは拒否するらしい。
噂レベルではあるが、バッハ会長が、広島を訪問したのは「オリンピックが平和の祭典である」というアピールだけではなく、「ノーベル平和賞」を狙ってのパフォーマンスだったのでは?という指摘は、既に各所からされているようだ。

IOC側は「閉会式で共有」と言っているが、これまでの「閉会式」は開会式以上のお祭り騒ぎが、自然発生的に起きている。閉会式で選手が入場する時点で、競技や国という壁を越え、アスリートとしてともに讃え合い、競技が無事終了したことに安堵したかのように、選手たちが思い思いに入場するのが恒例となっている。
そのような雰囲気の中で、「広島・長崎の原爆に対する思いを共有する」ということが、できるのだろうか?
おそらく、出場した選手たちと「広島・長崎の原爆被災」に対する思いを共有すること自体、無理だろう。

日本にとって(というか、日本人にとって)、8月は「慰霊の月」でもある。
元々8月は旧暦のお盆があり、そのために「お盆休み」が多くの企業で設けられている。
元々「お盆」は、遊びに出かける事が目的ではなく、ご先祖供養のための期間だったのだ。
興味深いことに、神道の中心である皇室においても、かつては「お盆行事」が行われていたと、三笠宮彬子女王殿下がエッセイに書かれている。
和楽Web:宮中でのお盆行事を通じて感じた、お盆に伝えたい思い

日本文化に造詣の深い彬子女王殿下らしい、流麗でありながら分かりやすいエッセイだな~と思いながら、拝読させていただいたのだが、庶民のお盆行事を皇室でも取り入れていた、という点はとても興味深いだけではなく「先祖を敬い、故人に思いをはせる」ということは、宮中であっても同じなのだな~という発見と意味は、大きかった。
そして彬子女王殿下は、「伝統は伝燈」であり「その伝統は文化の灯である」と書かれている事に、ハッとさせられたのだ。

上述したように、日本人にとって8月は「慰霊」の月であり、それが一つの文化なのだ。
しかし、海外の人たちにとっては、8月は12ヶ月の内の一月でしかない。
だから、IOCは「原爆の日に黙とう」という、慰霊の気持ちが理解できないのだ。
ただただ残念なのは、JOCやオリンピックの組織委会がそれを理解してもらうような努力をしていない、という点だ。

広島の原爆によって失われた命は、日本人だけではなく捕虜として広島にいた連合軍の関係者たちもいた。
決して「日本」だけのことではなく、世界唯一の被爆国として、原爆によって失われた命への「慰霊」というアプローチがあれば、また違ったカタチとなったかもしれない、と考えるのだ。