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ブランドイメージを守るーDHCとのコラボを中止したムーミンー

2021-08-25 13:00:35 | マーケティング

昨日、通販化粧品の大手の一つDHCとのコラボ中止を発表したムーミンの管理会社。
Huffpost:ムーミン、DHCとのコラボ中止へ 本国の著作権管理会社がコメント「いかなる差別も容認しません」

このニュースを知った時「やはりな~」という気がしたのは、私だけではないと思う。
というのも問題になったDHCの社長の発言により、取扱をしていたコンビニ等に対して「取扱中止」を求める「#差別企業DHCの商品は買いません」と言った、生活者側からの不買運動が起きたりしていたからだ。
このような動きを受け、ムーミンの本国の著作権管理会社がコラボの中止を申し入れた、という印象を受けるのだが、おそらく申し入れ等は、随分前にあったのではないか?と想像している。

ご存じのように、ムーミンの作者・トーベ・ヤンソンは、今でいうLGBTQだった。
ヤンソンが生きていた時代に、LGBTQであるということを告白すること自体、難しかったのでは?と想像することはできる。
そしてヤンソンの出身が、このようなLGBTQを含め人権に対して意識の高い国である、ということも今回のコラボの中止申し入れに大きく影響していると、考えることができる。

それだけではなく、「ムーミン」はカワイイだけのキャラクターではない、という点も大きいのでは?と考えている。
事実日本で初めて「ムーミン」が紹介されたのは、日曜日の夜に放映されていた「カルピスまんが劇場」という、児童文学のアニメ番組だった。
この「まんが劇場」のシリーズには、「フランダースの犬」や「母をたずねて三千里」、「アルプスの少女ハイジ」と言った名作アニメを数多く放映していた。
あくまでも「ムーミン(シリーズ)」は、児童文学の一つであり、登場するムーミン一家やミイは独立したキャラクターではないのだ。

そのようなコトを考えても、化粧品のキャラクター扱いというのは、不満な部分があったのでは?という、気がしているのだが、ビジネスとしての現実的な判断の中ではOKとなったのでは、ないだろうか?
とはいうものの、上述したようにヤンソン自身がLGBTQであったコト。ヤンソンの出身地がフィンランドという「人権問題」に対する取り組みが厳しい(このような傾向は、全世界的な流れとなっているのは、ご存じの通りだ)国である、ということ等から考えれば、DHCの社長の「差別的発言」は、受け入れることができなかった、ということだろう。

作者・トーベ・ヤンソンは、このような発言をする企業トップの企業とのコラボをどう考えるのか?、と考えた時中止という判断をしたのは、ヤンソン自身の考えを守っただけではなく、「ムーミン」という児童文学の価値(=ブランド価値)を守ったということになる。

日本では、ムーミンに限らず、海外の児童文学の主人公をキャラクター化し、物語とは別のような扱い方をする傾向があるが、ブランド管理という点ではキャラクターイメージを守るだけではなく、その物語そのものの世界観を守るという考えが必要である、ということをこの問題は教えてくれている。