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「音楽フェス」という、ビジネスモデル

2021-08-23 18:24:44 | ビジネス

昨日まで新潟県で開催されていた、「フジロックフェスティバル」。
一昨年までであれば、海外からの参加ミュージシャンもいて、日本最大級の「夏の野外フェスティバル」として、音楽関係者がこぞって出かけていたはずだ。

昨年は「新型コロナ」の感染拡大により、中止。
海外からのミュージシャン参加は叶わなかったが、2年ぶりの開催となった。
今回の開催については「新型コロナが収束をしていないのに、開催は無謀だ」という意見もある中での開催で、ライブ配信等もされたようだ。
そのような状況下での開催だったこともあり(?)、普段は「野外音楽フェス」等に興味が無さそうな、一般紙などでも盛んに取り上げられていた。
取り上げられた内容は、「県外ナンバーのクルマが大挙している」とか、「密状態で盛り上がる観客」等の内容が多かったように感じている。
朝日新聞:フジロックッフェスの人出、6割は東京から 地元は5%
ディリー新潮:「フジロック」で記者は見た 東京ナンバーの車が大挙、”酒ナシ”でも”密”に踊る若者たち

その実態を報じることは大事なことなのだが、そもそも「野外音楽フェス」の会場となるのは、首都圏近郊では難しいという点がある。
何故なら、観客動員数に似合うだけの野外会場が、東京周辺にはほとんどないからだ。
例えば、中止になった「ロッキンオン」は、国営ひたち海浜公園(茨城県)で開催される予定だった。
そして「夏の野外音楽フェス」の中でも一番開催回数が多い「フジロックフェスティバル」は、第1回目こそ山梨県の「富士天神スキー場」で開催されたが、2回目以降は会場を現在の新潟県湯沢町に移して開催している。
理由は、開催自治体からの「中止」の申し入れがあったからだと言われている。

その一方で、音楽を聴く若者たちは圧倒的に東京を中心に都市部に集中している。
何も若者だけではない。日本の都市別の人口構成を見れば、日本の音楽市場の中心は東京を中心とした都市部である、ということがわかるはずだ。
そのことを考えれば、東京ナンバーの車が「フジロック」の会場となった湯沢町に、大挙して押し寄せることぐらいわかるはずだ。
むしろ、このようなコトが記事となるのは、上述した通り「コロナ禍」で数々の「野外音楽フェス」が中止される中、「フジロック」が半ば強行されたからだろう。

ただ、このような取り上げられ方を見ると、日本のメディア関係者やビジネス関係者は「日本の音楽ビジネス」の成功モデルとなっている「野外音楽フェス」というビジネスモデルを知らない、あるいは興味を持ってこなかったのでは?という気がする。
今や「野外音楽フェス」は、一つの「ショーケース」となっている。
ロックミュージシャンの後に、アイドルグループが登場する等、「野外音楽フェス」に行くことで様々な音楽と出会うことができる、というメリットが観客側にはある。
通し券を買っても1万数千~2万円程度で、いくつものミュージシャンのライブがみられるという「お得感」があるのだ。

観客側にとっての「お得感」は、出演するミュージシャン側にとっては「自分を売り込む絶好の機会」ということになる。
もちろん、会場で販売される「グッズ」等は、レーベルや所属事務所に大きな利益となる。
と同時に、会場となる自治体にとっても大きなお金が落ちる、絶好の機会でもあるのだ。
「野外音楽フェス」は、通常週末2日間行われることが多く、会場も2~3会場に分かれている場合がある。
当然、やってくる観客は会場となる地域で宿泊することになる。
宿泊すれば、飲食も発生するし、会場までの交通機関も利用されることになる。
何より、「野外音楽フェス」はリピーターが多い、という特徴もある。
自治体にとっても、それなりのメリットがあるのが「野外音楽フェス」でもあるのだ。

このような自治体を巻き込んで、ミュージシャン主体となって行われる「野外音楽フェス」の一つが、西川貴教さんが、故郷・滋賀県で行う「イナズマロック」や、秋田出身の高橋優さんの「秋田キャラバン・ミュージックフェス」だろう。
いずれも「コロナ禍」での中止・延期となってしまったようだが、最近ではこのようにミュージシャンが自分の出身地でフェスを行う、という傾向もみられるようになってきている。
出身地でフェスを開催するミュージシャン側としては「故郷への恩返し」のような気持ちもあるだろうし、受け入れる自治体側にとっても経済的メリットだけではなく、地域のネームバリューがアップする、という期待もあるからだ。
場合によっては「聖地巡礼」と称して、フェスとは関係なく旅行に来るファンもいるかもしれない、という期待があるはずだ。

とすれば、今は「野外音楽フェス」は、開催地域にとっても様々なメリットのある「ビジネスモデル」となっている、ということなのだ。