ここ1週間、話題になっている「高額医療費引き上げ」の問題。
この問題で、高額医療費を圧迫する(?)として、具体的に上がった名前の薬剤が、2種類ある。
一つは、免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」。
もう一つは、白血病の治療薬として期待されている「キムリア」だ。
この2つの薬剤は、これまでと違う発想でつくられた薬剤であるということを、薬剤認可をした厚労省の担当者は別にして、厚労省の官僚はどれだけ理解しているのだろう?と、疑問に思っている。
このような話題にならない限り、一般的には聞きなれない薬剤名だと思う。
だが、この2つの薬剤は上述したように、これまでとは違う発想でつくられた薬剤だ。
「オプジーボ」は、ノーベル医学生理学の部門で本庄佑博士が受賞した時、新聞をはじめとする様々なメディアが紹介したので、覚えているからもいらっしゃるかと思う。
なぜ「オプジーボ」が画期的であったのか?というと、それは「免疫チェックポイント阻害剤」という、がん治療においてはこれまでのような、がん細胞をやっつける、という発想から、特定のたんぱく質にがん細胞が結びつき増殖することを阻害する、という発想の転換によって開発された薬剤だったからだ。
もう一つの「キムリア」は、細胞の一つT細胞が暴走し引き起こすとされているのだが、患者自身のT細胞の遺伝子を組み替えることで、暴走したT細胞を止める、という考えでつくられている。
どちらも「がん」や「白血病」といった、難治性の高い病気の薬剤ということになるのだが、上述した通り「オプジーボ」は、がん細胞の増殖を阻害し、「キムリア」は患者自身の遺伝子を組み替えることで、がん化した細胞を止める、という特徴を持っている。
そしてこれらの新薬の考えは、これからの主流になっていく可能性が高いとも言われている。
それは「患者自身に合わせた治療」という、考えが治療の中心となり、その背景には「患者の遺伝子」の分析により、より高い治療効果を期待する、という考えがあるからだ。
15年前、私が乳がんに罹患した時、最新の話題となっていたのが「分子標的薬」と呼ばれる薬剤だった。
有名なところでは、乳がんの中でも「HER2」タンパクを受容体として、結びつき増殖するタイプに対する「ハーセプチン」、非小細胞肺がんを対象とした「イレッサ」等がある。
いずれも、遺伝子研究の中で誕生した薬であり、これらの薬の研究・開発があったからこそ、現在の「患者の遺伝子にあった薬剤の投与」ということが可能となってきている。
海外では「がん」は「がん種で患者を診るのではなく、遺伝子異常の傾向によって診る」という考えも出始めている、という。
そのような中で、厚労省が打ち出した「高額医療費引き上げ」という改悪は、世界のがん治療だけではなく「遺伝子治療」に大きく遅れをもたらすものだと考えられる。
それだけではなく、日本人の多くが接種し、備蓄をしたものの大量廃棄をした「コロナワクチン」もまた、「遺伝子研究」によって誕生したワクチンだった。
このような世界的な「病気治療の動き」を、厚労省が知らないのであれば、日本発の新薬研究等無理になってしまうだろうし、それは国益にも反するのではないだろうか?
ちなみに、高額な医薬品として名前の挙がった「オプジーボ」だが、自民党の大物議員さんが肺がんの治療で使われ、お元気になられている(がん患者界隈では有名な話だ)。
今よりも、薬価が高かった頃の話だ。
当時は「オプジーボ」の肺がん治療の効果は、2~3割程度と言われていた事を考えると、事前に「効果の有無を検討する遺伝子検査」を事前にされていた可能性があるのでは?と、想像している。
その「遺伝子検査」もまた、保険適用となり「高額医療」の範囲となった時期と重なっているような記憶がある。
とすれば、自民党の大物議員は、高額医療で治療を受けることができ、薬価が下がった現在の一般がん患者は高額医療を受けるチャンスが無くなる、ということになるのではないだろうか?
厚労省は、これまでの経緯を含め日本の製薬の未来と患者の未来を考えた施策を、打ち出してほしい。
単なる数字合わせの社会保障費の削減策では、誰も幸せにはなれないのだから。