一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

長い1日Ⅱ(中編)・チャイルドブランドに圧倒される

2010-10-03 00:38:05 | 将棋会館道場
上田初美女流二段との指導対局を終えたあとは、引き続き将棋会館道場で対局である。スーパーサロンは支部会員料金で1,500円。これで会館道場も無料で指せるのはありがたい。しかし安いからといって料金が値上げされれば、客足は遠のく。この日から値上げされたタバコと同じ理屈である。
下半期の初日である1日は「都民の日」で、東京都の公立小・中学校が休みだ。少年の来場も予想されたが、案の定、道場は少年がワンサカいた。平日でも休みならば会館道場に訪れるとは、よほどの将棋好きに違いない。
初戦は二段君との香落ち戦。☖3四歩☗7六歩☖4四歩☗7五歩。下手の作戦は石田流だ。香落ち戦では、相振り飛車がいちばん困る。いまの若手アマは研究熱心だ。
私は居飛車で臨んだが、☖4五歩~☖3五歩が欲張りすぎの構想で、下手にいいように捌かれ完敗した。
2局目は三段君と対ひねり飛車の将棋になって、途中むずかしいところがあったものの、快勝。
受付近くにいたら、窪田義行六段が見える。また対局だろうか。先月行われた将棋ペンクラブ大賞贈呈式では、窪田六段から頂戴した書状を読み上げさせていただいたことを報告した。窪田六段は魅力的な棋士で、直接お話をさせていただくのは畏れ多いが、誰かとのおしゃべりを聞いてみたい。
さて3局目は…と一局一局書いていくとキリがないので、少し端折って4局目の、中学生の四段君と指した将棋を紹介したい。以前も書いたが、同じ四段(あまり書きたくないが、私は四段で指している。実力は三段だと思う)なら、若いほうが強い。戦う前から勝敗は見えているが、最善は尽くす。
中学生君が先手。これも石田流(早石田)できた。やはり久保利明棋王・王将らの影響が大きいのだろう。
先手は角を換わって☗5五角~☗7四飛。☗4八玉と上がっているので、☖3三角は☗7三角成☖同桂☗同飛成に☖9五角の王手竜がない。そこで私は☖6四角。☗同角☖同銀で、一応落ち着いた。
さらに局面は進んで、盤上に☗8四角があり、私が☖9四歩と何気なく突いた手に、先手が☗1六歩とつきあった手が疑問だった。私は☖7五歩と打って先手角の退路を塞ぎ、つぎに☖8二飛(打)の角捕獲を見る。以下☗7六歩☖8二飛☗7五角☖同銀と駒得し、有利になったと思った。
このあとは私も意外とうまく指し、迎えた終盤が以下のごとくである。

先手・中学生君:1六歩、1八玉、1九香、2二飛、2七歩、2八銀、2九桂、3七歩、6三銀、7四成銀、7五歩、8八竜、9七歩、9九香 持駒:銀、歩
後手・一公:1一香、1三歩、2一桂、2三歩、3二角、3四歩、3八と、4二玉、4四歩、4九馬、5一金、5四金、5七成桂、7一金、8五歩、9一香、9四歩 持駒:金、桂、歩5

☗5四歩☖同金☗6三銀まで。2日前にエントリした「駒数優劣判別法」を当てはめると、この局面は先手16枚対後手24枚で、後手が圧倒的優勢。いや勝勢である。
ところがここから、驚愕の展開となる。
上の局面からの指し手。
☖5三金☗5四歩☖6三金☗同成銀☖3三玉☗3二飛成☖同玉☗5三歩成☖2八と☗同竜☖2六桂☗1七玉 まで、中学生君の勝ち。
☗6三銀の局面は一手スキでないので、☖6八歩でも☖5八歩でも後手勝ち。局後中学生君が指摘した☖2八と☗同竜☖3九銀でも私が勝っていただろう。
それを本譜は☖5三金とやった。はじめは☗5四歩に☖4三金が予定だったが、☗5二銀打がめんどうと見て、私は☖6三金と銀を取る。これが転落の始まりだった。そして☖3三玉が大悪手。☗3二飛成☖同玉☗5三歩成で、後手玉に詰めろがかかってアオくなった。飛車を手にすれば勝ちと考えていたのだからアマすぎる。ただし先手の☗3二飛成は疑問手で、某所某氏の指摘によると、ここは☗2一飛成が正着。☖2一同角に☗2五桂で、後手玉は詰んでいた。したがって同じ玉の移動なら、☖3一玉だったという。
どちらにしても、☖5八歩ぐらいで明快な勝ちだったのに、相手をしすぎて詰めろを掛けられ、ここでクサッた。私の☖2六桂に中学生君の☗1七玉で投了。何てことだ。
「以下☖2二玉は☗4三とで負け」の私の言に、再び某氏が「☖3一金☗5三角☖4一金右…で粘れるんじゃないか」と言ったが、あの勝勢の将棋から受けに回るなんて、バカバカしくて指す気になれない。気持ちが切れての投了だった。
ところでこの日はLPSAが引っ越し作業で、営業は休み。会館道場にて、夜まで心おきなく将棋が指せるのだ。私は午後4時半から始まる「20分切れ負け・金曜トーナメント」にも参加申し込みをしておいた。さらに4局指して、通常対局は4勝4敗。この時点で午後3時40分。相手は中学生が多く、早指しでポンポンくるから、すぐ決着がついてしまう。
このあとは、もし長考派の人と当たってしまったらトーナメント戦に支障をきたすので、私から小休憩を申し出た。
トーナメント戦は少し時間を早めて、4時08分ごろに開始。私の名前が呼ばれないのは妙だったが、シードされていたようだ。これも四段の恩恵か。そんな実力はないのだが。
4時40分ごろ、私の初戦。6局目に当たった二段氏に平手(実際は香落ちだが、先方が平手を所望した)で勝ち、次の3回戦では、3局目に当たった四段氏に勝ち、ベスト4に駒を進めた。
次の相手は、4局目に当たった例の中学生君である。中学生君も前局は私に勝ったものの、キツネにつままれたところもあったろうし、今度は明快に勝ちたいところであろう。
私の先手で対局開始。この将棋は短手数で終わったので、全棋譜を記す。

先手・一公 後手・中学生氏
☗7六歩☖3四歩☗2六歩☖8四歩☗2五歩☖8五歩☗7八金☖3二金☗2四歩☖同歩☗同飛☖8六歩☗同歩☖同飛☗3四飛☖8八角成☗同銀☖2八歩☗同銀☖4五角☗2四飛☖2三歩☗7七角☖8八飛成☗同角☖2四歩☗1一角成☖3三桂☗3六香☖6六銀☗6九飛☖4二銀☗2二歩☖2五飛 まで、34手で中学生氏の勝ち。

☗3四飛と横歩を取った手に対し、後手から角を換えてきたから次は☖3八歩と思いきや、☖2八歩から☖4五角ときた。これは谷川浩司九段が若手のころ流行った戦法で、愛棋家・澤田多喜男氏の名著「横歩取りは生きている」に詳しい。
もちろん☖4五角戦法が流行ったころに中学生君は生まれておらず、いまや絶滅となった戦法までよく勉強しているものだと感心した。
もっとも私はこの定跡はうろ覚えである。30手目☖6六銀に、定跡では☗3三香成を説いているのだろうが、私は☖6七銀成や☖6七角成の殺到を恐れ、☗6九飛という、初心者のようなココセを指してしまう。バカじゃねえの。
後手は冷静に☖4二銀。これは次に☖4一飛で馬を殺す手を見ている。そこで☗2二歩と垂らしたが、その直後に後手の好手が見え、それで受けがないことに気がついた。
果たして中学生君は☖2五飛。☗3八金なら☖5七銀成で、次の☖2八飛成~☖5八銀(☖4八銀)の詰みが受けにくい。ここで私の投了となった。中学生君もポカーンとしていたが、私も全力を出しての結果であり、仕方ない。
もう道場を出たいのだが、また次の通常対局がつく。客が多いので、どんどんつく。しかし対局が始まると、四段(仮)氏が長考派で参った。しかも将棋は角桂交換でこちらが駒損の上に、相手玉は穴熊である。相手が決め手をさせば投了も考えていた。ところがこの四段(仮)氏が緩手を連発し、ねじりあいの末、最後は私が勝ってしまった。
ふう、これでやっと帰れる、と思いきや、まだトーナメント戦の3位決定戦があるという。棄権してもいいのだが、相手は少年であろう。一局でも多く有段者と指したいはずで、もう一局だけ指すことにする。
相手の三段君も例によって石田流。ほかに指す戦法はないのか。将棋は激しい駒の取り合いになった。終盤で三段君が(盤上に☗5五銀があり)☗4四歩と☖4三馬の頭に打った手に対し、私は2二の角とで精算をせず☖9八馬と香を取る。以下☗4三金には☖3一王と耐えた。
三段君は7三成銀を☗6三成銀と寄る。ここで私は☖4一香と打ったが、もったいなかった。ここは相手に駒を渡さないよう、☖4二歩でよかった。以下は物量攻撃に遭い、無残な投了図となった。いやはやしかし、若者は強い。もっとも私も弱いのだが。こんな将棋を指して四段とは呆れる。
結局この日は、午前中の指導対局と合わせて、14局も指した。せっかくだから、星の内訳も書いておこう。勝敗は私から見たものである。

上田女流二段・平手●
通常対局・N二段(香落ち)●、I三段○、K四段●、Y四段●、K二段(香落ち)●、I二段(香落ち→平手)○、S初段(角落ち)○、N三段○
金曜トーナメント戦・I二段○(香落ち→平手)、K四段○、Y四段●
通常対局・A四段(仮)○
金曜トーナメント戦・W三段●

7勝7敗。私の記憶が確かならば、将棋道場で14局も指したのは新記録。どっぷり将棋に浸かった1日だった。…いや、このあと私は、まだ行くところがあったのである。それはどこか。
(つづく)
コメント (3)
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