6月27日(日)から始まった第21回社会人団体リーグ戦(社団戦)は、10月24日(日)に最終日を迎えた。5ヶ月に亘る激闘も、この日が最後。私は寝不足の頭で産業貿易センターに向かった。
会場に入ると、各チームの選手が大勢いる。否が応にも緊張感と興奮が高まる瞬間だ。奥に向かうと、Y監督とKaz氏が見えた。対局開始の10時まで数分だが、我がLPSA星組の選手はまだ3人だけしか来ていない。ほかの選手はやる気があるのかと思いきや、定刻には1回戦(通算13回戦)参戦予定の選手が全員集まり、まずはほっとする。
今回LPSA星組は、新設された5部から出場し、ここまで10勝2敗の2位。昇級枠は「4」で、LPSA星組を含めた昇級候補を挙げると、
1位 富士通SSL 10.5勝2敗(団体個人戦0.5勝を含む)
2位 LPSA星組 10勝2敗
3位 専大グリーン 9勝4敗(団体個人戦1勝を含む)
4位 日建設計 9勝3敗
5位 富士ゼロックス 8勝4敗
6位 い~すと海賊 7.1勝5敗(団体個人戦0.1勝を含む)
7位 でこぼこフレ 7勝5敗
となっていた。
LPSA星組はマジック2。13回戦と14回戦は下位チームとの対戦なので、ここでスッキリと決めてしまいたい。また、13回戦で富士通SSLと専大グリーンが対戦するので、ここでLPSA星組と富士通SSLが勝つと、両チームの昇級が決まる。
私たちは杉並区役所との対戦。スターティングメンバーは、大将・Wパパ、副将・私。以下、Kaz、Is、Iz、Wはな、Harの各氏だった。相手は5人だったので、不戦勝2。申し訳ないが、指す気マンマンのはなちゃんとHar氏には休んでいただいた。
ところで杉並区役所とは前回も当たっている。私の対局相手も奇しくも同じで、前局は対振り飛車穴熊の将棋から私が楽勝の将棋になったが、楽観から終盤逆転されてしまった。しかし最後の最後で相手が王の逃げ方を間違え、私が辛勝したのだった。
勝負事は不思議なもので、初対局の相手に勝っても負けても、「次にこの人と当たれば勝てるな」と思うときがある。今回はまさにそうで、私は戦う前から勝ったつもりでいた。
対局開始。Wパパの振り駒の結果、私は後手。先手氏は☗7六銀型四間飛車穴熊できた。☗7六銀(☖3四銀)型の振り飛車は、木村義雄十四世名人が香落ちの上手で得意にしていたが、植山悦行七段は「戦いになったとき☗7六銀が取り残されることが多い」と主張し、オススメはしていなかった。
私は銀冠に組み、☖1五歩、☖2五歩と伸ばし、悠々としたものだ。将棋盤の手前には、島井咲緒里女流初段の直筆扇子を置いている。いつかのように、勝ちを確信したら、拡げるつもりである。
☖2四角☗4八飛☗6八角の局面で、先手氏が☗4六飛と飛び出す。これを☖同角は☗同角で、次の☗8二角成が受けにくい。
私は☖4五歩と謝り、☗4八飛に☖6八角成と、ここで大駒を交換した。私は敵陣に角を打ちこみ、馬にして、飛車をいじめる。
しかし☗6五歩☗6六歩☗7六銀☗8五歩☗8七飛☗9九香、☖7八馬☖9一香☖9六歩の局面で、☖9七歩成が疑問手だった。☗9七同香☖8七馬☗同銀☖9七香成が銀取りの先手になって調子いい、と読んだのが独善で、☗4七飛とサッと逃げられ、急にむずかしくなり、ガク然とした。局後先手氏に指摘されたのだが、☖9七歩成では平凡に☖8七馬と飛車を取り、☗同銀に☖8九飛と打って後手十分だった。
本譜は私の緩手に先手氏の巧妙な反撃が相まって、形勢は逆転、私が非勢になった。しかし持ち時間が少なくなっていた先手氏の指し手が終盤で乱れ、最後の最後で私に勝ちが傾いた。
☖6九竜がいて、☖3八銀の詰めろに☗2八金と引いた局面。ここは☖2六香と打てば先手玉は受けなしだが、すぐに☖2九銀成☗同金☖2七桂から竜を切って詰みがある。練習将棋ならすぐ詰ましてしまうところだが、社団戦ではわずかのミスも許されない。
島井女流初段の扇子はすでに開いている。持ち時間は15分近く残っていたが、私は脳裏で詰み筋を何度も何度も確認し、ゆったりと☖2九銀成と指す。先手氏は、最後の一手詰みまで指して投了した。これが社団戦なのだ。私も勝ちはしたものの、油断の恐ろしさを痛感した一局だった。
両隣のWパパ氏とKaz氏も勝ち。これでチームの勝ちが決まり、私は安心して昼食に出た。
センタービル向かいにある「ゆで太郎」でお決まりのもりそばを食したあと、浜松町の駅ビルまで足を伸ばし、本屋で時間をつぶした。
会場に戻りLPSA星組の成績を見ると、6勝1敗だった。富士通SSLはまさかの1勝6敗。この時点で順位が入れ替わり、LPSA星組に自力優勝(1位昇級)の権利が移った。
会場およびLPSAの販売ブースには、石橋幸緒女流四段、多田佳子女流四段、藤森奈津子女流四段、大庭美夏女流1級、大庭美樹女流初段、船戸陽子女流二段、松尾香織女流初段が訪れた。いつもお世話になっている先生方の前で、5部優勝の晴れ姿を見せたい。カッコつけたい。とにかく残りの2戦を、全力で戦うのみである。
12時30分開始の14回戦は大田区役所と。このチームも2人不参加で、こちらは不戦勝2。
Y監督は、Kaz氏と私を最終局に専念させるため、7将と6将に回し、不戦とした。私は喫茶店に行ってケーキセットを味わおうかと思ったが、まあ盤駒も空いているので、みなの対局に合わせて、Kaz氏と練習将棋を指すことにした。こんなところで根を詰めて考えて、最終局に影響が出ては元も子もないが、緊張感を途切らせないためには、やはり実戦が必要である。
LPSA星組の「奇数先手」だったので、Kaz氏の先手。☗3四飛の横歩取りに、私は☖3三桂戦法。「おーっと」とKaz氏。ちょっと意表を衝かれたようだが、私も横歩取り☖3三桂は生まれて初めて指したから、私自身が驚いた。
将棋は中盤までこちらが悪く、終盤は何とか追い上げて先手玉に詰めろを掛けたが、そこで☗3四角から即詰みに討ち取られた。悔しい敗戦だったが、最終局に影響はなかったようである。
LPSA星組は、不戦勝2を含めて5勝2敗。アッサリと昇級が確定した。欲を言えばもうひとつぐらい勝ち星を上乗せしたいところだったが、それは贅沢というものだろう。ところで参加選手があまり喜びを見せなかったのは、優勝での昇級に照準を変更していたからである。昨年のボロ負けから1年、各選手は本当に成長した。
本部席に行き、富士通SSLの星を見ると、なんと「0(勝)-7(敗)」と書かれてあった。これは予想もしない結果である。どこのチームと当たったかは知らないが、Y監督と顔を見合わせて、「勝敗が逆じゃないか?」と、最後まで半信半疑だった。
とにかくこれで首位は堅持した。しかし問題は最終局の相手チームである。これは戦前からY氏も私も警戒していた。そのチームが、上に記した日建設計である。同チームもこの日2勝し、11勝3敗となっていた。
私たちは12勝2敗。最終局を勝てば独走優勝だが、もし負けると同じ12勝3敗となり、あとは勝数勝負になってくる。
そこで勝ち星を見ると、両チームとも「62勝」で、まったくの五分だった。つまり最終局で1位と2位がガチンコ勝負で優勝を争うという、えらいことになったのである。
(つづく)
会場に入ると、各チームの選手が大勢いる。否が応にも緊張感と興奮が高まる瞬間だ。奥に向かうと、Y監督とKaz氏が見えた。対局開始の10時まで数分だが、我がLPSA星組の選手はまだ3人だけしか来ていない。ほかの選手はやる気があるのかと思いきや、定刻には1回戦(通算13回戦)参戦予定の選手が全員集まり、まずはほっとする。
今回LPSA星組は、新設された5部から出場し、ここまで10勝2敗の2位。昇級枠は「4」で、LPSA星組を含めた昇級候補を挙げると、
1位 富士通SSL 10.5勝2敗(団体個人戦0.5勝を含む)
2位 LPSA星組 10勝2敗
3位 専大グリーン 9勝4敗(団体個人戦1勝を含む)
4位 日建設計 9勝3敗
5位 富士ゼロックス 8勝4敗
6位 い~すと海賊 7.1勝5敗(団体個人戦0.1勝を含む)
7位 でこぼこフレ 7勝5敗
となっていた。
LPSA星組はマジック2。13回戦と14回戦は下位チームとの対戦なので、ここでスッキリと決めてしまいたい。また、13回戦で富士通SSLと専大グリーンが対戦するので、ここでLPSA星組と富士通SSLが勝つと、両チームの昇級が決まる。
私たちは杉並区役所との対戦。スターティングメンバーは、大将・Wパパ、副将・私。以下、Kaz、Is、Iz、Wはな、Harの各氏だった。相手は5人だったので、不戦勝2。申し訳ないが、指す気マンマンのはなちゃんとHar氏には休んでいただいた。
ところで杉並区役所とは前回も当たっている。私の対局相手も奇しくも同じで、前局は対振り飛車穴熊の将棋から私が楽勝の将棋になったが、楽観から終盤逆転されてしまった。しかし最後の最後で相手が王の逃げ方を間違え、私が辛勝したのだった。
勝負事は不思議なもので、初対局の相手に勝っても負けても、「次にこの人と当たれば勝てるな」と思うときがある。今回はまさにそうで、私は戦う前から勝ったつもりでいた。
対局開始。Wパパの振り駒の結果、私は後手。先手氏は☗7六銀型四間飛車穴熊できた。☗7六銀(☖3四銀)型の振り飛車は、木村義雄十四世名人が香落ちの上手で得意にしていたが、植山悦行七段は「戦いになったとき☗7六銀が取り残されることが多い」と主張し、オススメはしていなかった。
私は銀冠に組み、☖1五歩、☖2五歩と伸ばし、悠々としたものだ。将棋盤の手前には、島井咲緒里女流初段の直筆扇子を置いている。いつかのように、勝ちを確信したら、拡げるつもりである。
☖2四角☗4八飛☗6八角の局面で、先手氏が☗4六飛と飛び出す。これを☖同角は☗同角で、次の☗8二角成が受けにくい。
私は☖4五歩と謝り、☗4八飛に☖6八角成と、ここで大駒を交換した。私は敵陣に角を打ちこみ、馬にして、飛車をいじめる。
しかし☗6五歩☗6六歩☗7六銀☗8五歩☗8七飛☗9九香、☖7八馬☖9一香☖9六歩の局面で、☖9七歩成が疑問手だった。☗9七同香☖8七馬☗同銀☖9七香成が銀取りの先手になって調子いい、と読んだのが独善で、☗4七飛とサッと逃げられ、急にむずかしくなり、ガク然とした。局後先手氏に指摘されたのだが、☖9七歩成では平凡に☖8七馬と飛車を取り、☗同銀に☖8九飛と打って後手十分だった。
本譜は私の緩手に先手氏の巧妙な反撃が相まって、形勢は逆転、私が非勢になった。しかし持ち時間が少なくなっていた先手氏の指し手が終盤で乱れ、最後の最後で私に勝ちが傾いた。
☖6九竜がいて、☖3八銀の詰めろに☗2八金と引いた局面。ここは☖2六香と打てば先手玉は受けなしだが、すぐに☖2九銀成☗同金☖2七桂から竜を切って詰みがある。練習将棋ならすぐ詰ましてしまうところだが、社団戦ではわずかのミスも許されない。
島井女流初段の扇子はすでに開いている。持ち時間は15分近く残っていたが、私は脳裏で詰み筋を何度も何度も確認し、ゆったりと☖2九銀成と指す。先手氏は、最後の一手詰みまで指して投了した。これが社団戦なのだ。私も勝ちはしたものの、油断の恐ろしさを痛感した一局だった。
両隣のWパパ氏とKaz氏も勝ち。これでチームの勝ちが決まり、私は安心して昼食に出た。
センタービル向かいにある「ゆで太郎」でお決まりのもりそばを食したあと、浜松町の駅ビルまで足を伸ばし、本屋で時間をつぶした。
会場に戻りLPSA星組の成績を見ると、6勝1敗だった。富士通SSLはまさかの1勝6敗。この時点で順位が入れ替わり、LPSA星組に自力優勝(1位昇級)の権利が移った。
会場およびLPSAの販売ブースには、石橋幸緒女流四段、多田佳子女流四段、藤森奈津子女流四段、大庭美夏女流1級、大庭美樹女流初段、船戸陽子女流二段、松尾香織女流初段が訪れた。いつもお世話になっている先生方の前で、5部優勝の晴れ姿を見せたい。カッコつけたい。とにかく残りの2戦を、全力で戦うのみである。
12時30分開始の14回戦は大田区役所と。このチームも2人不参加で、こちらは不戦勝2。
Y監督は、Kaz氏と私を最終局に専念させるため、7将と6将に回し、不戦とした。私は喫茶店に行ってケーキセットを味わおうかと思ったが、まあ盤駒も空いているので、みなの対局に合わせて、Kaz氏と練習将棋を指すことにした。こんなところで根を詰めて考えて、最終局に影響が出ては元も子もないが、緊張感を途切らせないためには、やはり実戦が必要である。
LPSA星組の「奇数先手」だったので、Kaz氏の先手。☗3四飛の横歩取りに、私は☖3三桂戦法。「おーっと」とKaz氏。ちょっと意表を衝かれたようだが、私も横歩取り☖3三桂は生まれて初めて指したから、私自身が驚いた。
将棋は中盤までこちらが悪く、終盤は何とか追い上げて先手玉に詰めろを掛けたが、そこで☗3四角から即詰みに討ち取られた。悔しい敗戦だったが、最終局に影響はなかったようである。
LPSA星組は、不戦勝2を含めて5勝2敗。アッサリと昇級が確定した。欲を言えばもうひとつぐらい勝ち星を上乗せしたいところだったが、それは贅沢というものだろう。ところで参加選手があまり喜びを見せなかったのは、優勝での昇級に照準を変更していたからである。昨年のボロ負けから1年、各選手は本当に成長した。
本部席に行き、富士通SSLの星を見ると、なんと「0(勝)-7(敗)」と書かれてあった。これは予想もしない結果である。どこのチームと当たったかは知らないが、Y監督と顔を見合わせて、「勝敗が逆じゃないか?」と、最後まで半信半疑だった。
とにかくこれで首位は堅持した。しかし問題は最終局の相手チームである。これは戦前からY氏も私も警戒していた。そのチームが、上に記した日建設計である。同チームもこの日2勝し、11勝3敗となっていた。
私たちは12勝2敗。最終局を勝てば独走優勝だが、もし負けると同じ12勝3敗となり、あとは勝数勝負になってくる。
そこで勝ち星を見ると、両チームとも「62勝」で、まったくの五分だった。つまり最終局で1位と2位がガチンコ勝負で優勝を争うという、えらいことになったのである。
(つづく)