居酒屋は、ランチ営業をしているところがある。これが手ごろな値段で、しかも美味いのだ。新津駅前にあった「日本海庄屋」もそうで、ランチ営業をやっていた。
私は店に入り、700円のホリデー・ランチなるものを頼む。
気になる中身は、焼肉、まぐろとサーモンの刺身、玉こんにゃく、白ご飯(もしくは玄米)とみそ汁だった。これは外れのない味である。もちろんどれも美味かったが、いちばんは白米だった。さすが米どころ新潟である。銀シャリ、とはよくいったもので、一粒一粒が輝いており、甘みがあって、本当に美味かった。
大いに満足して、信越本線に乗る。新津発12時27分。と、しばらく走ったところの踏切で信号機の故障があった。遮断機は下りているのに、列車の信号は赤だ。踏切の両側にクルマの列ができている。
車両故障といえば、昭和63年の東北旅行の最終日は、私の乗った東北本線が車両故障でストップしてしまい、後続の電車に押してもらった。何とか宇都宮に到着したが、そのまま私(たち)は新幹線に乗り換えとなり、一風変わったルートで帰京したものだった。
今回の電車は結局、10分ほどの遅れが出た。でも弥彦線への乗り継ぎは14分だから、大丈夫だろう。
東三条へは7分遅れの13時03分に到着。そのまま弥彦線に乗り換えた。
弥彦線の車内では、向かいに座ったセーラー服の女子高生が可憐だった。さすが新潟、美女がふんだんにいる。私が日本全国を旅して、美人が多い県は一に秋田、二に新潟だと思う。ただしピンポイントとなると、長崎県の佐世保市を挙げたい。ウソと思うなら、佐世保駅から少し行ったところにある、四ヶ町商店街に行ってみるとよい。脚がスラッとしたスタイルのいい女子高生が、これでもかというくらい歩いている。
弥彦駅13時56分着。ここ弥彦駅は、いまはどうか知らぬが、かつては女性が駅長をやっており、観光客をうやうやしく迎えてくれた。
きょうは初老の駅員さんが、事務的に切符を回収するだけである。味気ないが、これが本来の姿である。
弥彦駅舎は弥彦神社を模したような入母屋造りになっている。神社の玄関口(駅)には、こうした造りが多い。私は駅舎を撮るのが好きだが、私でなくても、思わず撮影したくなる駅舎である。
定跡として、駅で観光案内のパンフレットをもらう。温泉も湧いているので、「初詣」のあとは一風呂浴びたい。まったく、最近はすっかり温泉ハンターになってしまった。だけど温泉にでも入らないと、寒くてかなわない。
弥彦神社までは徒歩で10分ほど。ぶらぶら歩いて行くと、妙な行列があった。和菓子店の看板を見ると、「パンダ焼き」とある。昨年12月14日放送のテレビ東京系「いい旅夢気分」で、里見浩太朗と林家三平が新潟を旅行したのだが、そのときこの店を訪れている。この「パンダ焼き」なるものが何かのグランプリを受賞したとかで、一躍有名になったらしいのだ。
それを黄門様が食したのだから、さらにハクが付いたわけだ。名物に群がるのは日本人の習性であるが、私は並んでまでパンダ焼きを食べたくないので、観光客を横目に先へ急ぐ。
蛇足だが、宏美が食べたい、と言えば、もちろん並ぶ。
今度は温泉まんじゅうを売っている店がある。たしかこの店だったか、以前訪れたとき、まんじゅうを1個だけ所望したら、うちは箱売りしかしていません、と断られたことがある。
ところがそのやりとりを見ていた地元のお母さんが、私にまんじゅうを1個くれたのだ。旅先での親切に、涙が出るほどうれしかった。
弥彦神社に着いた。神社内に入り、本殿に向かう。木々は雪をかぶっているが、それが風にあおられてハラハラと落ちる。メガネを掛けている者には、水滴は敵だ。
本殿に着くと、何ということか、賽銭箱のあるところまで、数メートルの行列ができていた。お、お詣りするのも順番待ちをしなくてはならないのか!
バカバカしい。並んでまでお賽銭を放りたかねぇや、と私は踵を返す。
その代わり、というわけではないが、おみくじを引いた。「中吉」だった。
吹く風に 沖辺の波の 高けれど
心静けき 我港かな
大吉ならなおよいが、中吉でもまあよい。問題は「恋愛」の項だ。
「思うだけでは駄目」
……。分かってんだよ! 分かってんだよそんなことは! だけど告白してうまくいってりゃ、こんな苦労はしねぇんだよ!
と、神様に八つ当たりしてもしょうがない。しかし今回のご宣託、前もどこかのおみくじでこんなことが書かれていた記憶がある。
弥彦神社のご朱印をもらう。300円。
このあとは、ロープウェイで弥彦山に登ってみたいと思う。ロープウェイの入口までは無料シャトルバスが走っていたが、なかなか来ないので、歩いて向かう。私はかなり短気である。
窓口で切符を買うと、「弥彦温泉 さくら湯」の割引券をくれた。「さくら湯」は、これも里見浩太朗と林家三平が入った温泉で、解放感のある露天風呂が印象的だった。私も浸かってみたいが、さくら湯は駅の反対側で、しかも距離がありそうだ。
どうしたものか、と思案しながら、ロープウェイに乗った。
5分で山頂駅に着く。弥彦山は634メートル。東京スカイツリーと同じ高さで、弥彦山もそれをアピールしている。ちなみにウチの家の2階からは、東京スカイツリーが見える。
山頂駅のすぐ前は展望場になっていて、すぐ前に冬の日本海が見えた。素晴らしい!! 波は穏やかだか、何人も寄せ付けない荘厳さも秘めていて、神秘の表情が見て取れた。
山頂駅、といっても本当の山頂はまだ数十メートル上だが、頂上まで行く気はないので、展望レストランが入っている3階建ての建物の、屋上に行く。
これがまた素晴らしい眺めだった。前述のように、前を見れば冬の日本海、振り返れば越後平野が見渡せる。海と陸、これほどコントラストがはっきりした景色を観るのは初めてだ。広島・厳島神社の山頂から見る瀬戸内海も素晴らしかったが、明確な対比、という意味では、弥彦山に軍配が上がる。
体感温度は氷点下だったと思う。しかし私は、長い歳月が造った対比の妙に感激し、いつまでもそこに佇んでいた。
(つづく)
私は店に入り、700円のホリデー・ランチなるものを頼む。
気になる中身は、焼肉、まぐろとサーモンの刺身、玉こんにゃく、白ご飯(もしくは玄米)とみそ汁だった。これは外れのない味である。もちろんどれも美味かったが、いちばんは白米だった。さすが米どころ新潟である。銀シャリ、とはよくいったもので、一粒一粒が輝いており、甘みがあって、本当に美味かった。
大いに満足して、信越本線に乗る。新津発12時27分。と、しばらく走ったところの踏切で信号機の故障があった。遮断機は下りているのに、列車の信号は赤だ。踏切の両側にクルマの列ができている。
車両故障といえば、昭和63年の東北旅行の最終日は、私の乗った東北本線が車両故障でストップしてしまい、後続の電車に押してもらった。何とか宇都宮に到着したが、そのまま私(たち)は新幹線に乗り換えとなり、一風変わったルートで帰京したものだった。
今回の電車は結局、10分ほどの遅れが出た。でも弥彦線への乗り継ぎは14分だから、大丈夫だろう。
東三条へは7分遅れの13時03分に到着。そのまま弥彦線に乗り換えた。
弥彦線の車内では、向かいに座ったセーラー服の女子高生が可憐だった。さすが新潟、美女がふんだんにいる。私が日本全国を旅して、美人が多い県は一に秋田、二に新潟だと思う。ただしピンポイントとなると、長崎県の佐世保市を挙げたい。ウソと思うなら、佐世保駅から少し行ったところにある、四ヶ町商店街に行ってみるとよい。脚がスラッとしたスタイルのいい女子高生が、これでもかというくらい歩いている。
弥彦駅13時56分着。ここ弥彦駅は、いまはどうか知らぬが、かつては女性が駅長をやっており、観光客をうやうやしく迎えてくれた。
きょうは初老の駅員さんが、事務的に切符を回収するだけである。味気ないが、これが本来の姿である。
弥彦駅舎は弥彦神社を模したような入母屋造りになっている。神社の玄関口(駅)には、こうした造りが多い。私は駅舎を撮るのが好きだが、私でなくても、思わず撮影したくなる駅舎である。
定跡として、駅で観光案内のパンフレットをもらう。温泉も湧いているので、「初詣」のあとは一風呂浴びたい。まったく、最近はすっかり温泉ハンターになってしまった。だけど温泉にでも入らないと、寒くてかなわない。
弥彦神社までは徒歩で10分ほど。ぶらぶら歩いて行くと、妙な行列があった。和菓子店の看板を見ると、「パンダ焼き」とある。昨年12月14日放送のテレビ東京系「いい旅夢気分」で、里見浩太朗と林家三平が新潟を旅行したのだが、そのときこの店を訪れている。この「パンダ焼き」なるものが何かのグランプリを受賞したとかで、一躍有名になったらしいのだ。
それを黄門様が食したのだから、さらにハクが付いたわけだ。名物に群がるのは日本人の習性であるが、私は並んでまでパンダ焼きを食べたくないので、観光客を横目に先へ急ぐ。
蛇足だが、宏美が食べたい、と言えば、もちろん並ぶ。
今度は温泉まんじゅうを売っている店がある。たしかこの店だったか、以前訪れたとき、まんじゅうを1個だけ所望したら、うちは箱売りしかしていません、と断られたことがある。
ところがそのやりとりを見ていた地元のお母さんが、私にまんじゅうを1個くれたのだ。旅先での親切に、涙が出るほどうれしかった。
弥彦神社に着いた。神社内に入り、本殿に向かう。木々は雪をかぶっているが、それが風にあおられてハラハラと落ちる。メガネを掛けている者には、水滴は敵だ。
本殿に着くと、何ということか、賽銭箱のあるところまで、数メートルの行列ができていた。お、お詣りするのも順番待ちをしなくてはならないのか!
バカバカしい。並んでまでお賽銭を放りたかねぇや、と私は踵を返す。
その代わり、というわけではないが、おみくじを引いた。「中吉」だった。
吹く風に 沖辺の波の 高けれど
心静けき 我港かな
大吉ならなおよいが、中吉でもまあよい。問題は「恋愛」の項だ。
「思うだけでは駄目」
……。分かってんだよ! 分かってんだよそんなことは! だけど告白してうまくいってりゃ、こんな苦労はしねぇんだよ!
と、神様に八つ当たりしてもしょうがない。しかし今回のご宣託、前もどこかのおみくじでこんなことが書かれていた記憶がある。
弥彦神社のご朱印をもらう。300円。
このあとは、ロープウェイで弥彦山に登ってみたいと思う。ロープウェイの入口までは無料シャトルバスが走っていたが、なかなか来ないので、歩いて向かう。私はかなり短気である。
窓口で切符を買うと、「弥彦温泉 さくら湯」の割引券をくれた。「さくら湯」は、これも里見浩太朗と林家三平が入った温泉で、解放感のある露天風呂が印象的だった。私も浸かってみたいが、さくら湯は駅の反対側で、しかも距離がありそうだ。
どうしたものか、と思案しながら、ロープウェイに乗った。
5分で山頂駅に着く。弥彦山は634メートル。東京スカイツリーと同じ高さで、弥彦山もそれをアピールしている。ちなみにウチの家の2階からは、東京スカイツリーが見える。
山頂駅のすぐ前は展望場になっていて、すぐ前に冬の日本海が見えた。素晴らしい!! 波は穏やかだか、何人も寄せ付けない荘厳さも秘めていて、神秘の表情が見て取れた。
山頂駅、といっても本当の山頂はまだ数十メートル上だが、頂上まで行く気はないので、展望レストランが入っている3階建ての建物の、屋上に行く。
これがまた素晴らしい眺めだった。前述のように、前を見れば冬の日本海、振り返れば越後平野が見渡せる。海と陸、これほどコントラストがはっきりした景色を観るのは初めてだ。広島・厳島神社の山頂から見る瀬戸内海も素晴らしかったが、明確な対比、という意味では、弥彦山に軍配が上がる。
体感温度は氷点下だったと思う。しかし私は、長い歳月が造った対比の妙に感激し、いつまでもそこに佇んでいた。
(つづく)