一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

中倉宏美に将棋愛はあった

2012-01-25 00:23:49 | 女流棋士
22日(日)に「大野教室」に行った折、部屋に備え付けてあるパソコンの棋譜データベースで、18日(水)に行われた女流名人位戦・中倉宏美女流二段対相川春香女流3級の将棋を、ほかの生徒といっしょに鑑賞した。
相川女流3級の三間飛車に、宏美女流二段の作戦が注目されたが、宏美女流二段は▲5八金右から▲9六歩。超穴熊党の宏美女流二段には珍しい手で、ギャラリーがちょっとどよめいた。
これは左美濃で手厚く行くのかと思いきや、さらに▲6八銀。ええっ!? と周りがさらに驚く。そして次の手を見た瞬間、私たちの驚きは最高潮に達した。

▲5七銀左!!

「オオオオーーーーッッッ!!」
「やったぜ宏美!!」
このときの歓声を、何と表現したらいいのだろう。まるで野球のピッチャーが、最後の打者を三振に討ち取りパーフェクトゲームを達成したかのような、「やってくれたぜ感」が、その中に渦巻いていた。
いうまでもないが、対振り飛車の居飛車の作戦は、とくに女流棋士において、穴熊が顕著だ。別に穴熊が悪いと言うわけではないが、振り飛車側が速攻を目論んでいるのに、何がなんでも穴熊を目指し、作戦負けに陥るなどは、女流将棋では日常茶飯事だ。ほかに囲いを知らないのかと言いたくなる。
LPSAも穴熊党は多いが、中井広恵女流六段や石橋幸緒女流四段ですら、対振り飛車策は左美濃が多い。
それゆえ、女流棋界で居飛車の急戦派は少数だ。私の知る限りでは、貞升南女流1級と、退会した藤田麻衣子さんぐらいしか知らない。それも仕方ないことで、玉が薄くて苦労が絶えない急戦など、敬遠されて当然なのだ。
しかし告白すれば、穴熊などの持久戦調の将棋に、私たちが食傷気味であったこともたしかなのだ。
それだけに、本局の「▲5七銀左」に私たちは、新鮮な驚きを覚えた。宏美女流二段の、並々ならぬ決意が窺えた。
先日私は、今年の宏美女流二段は違う、と書いた。それは天河戦の鎌村ちひろ女子アマ王位戦で、鎌村アマが居飛車を明示しているのに、相居飛車を望んだところなどがそうで、ここに私は、いままでにない宏美女流二段―いや以前は、矢内理絵子女流四段相手に角換わりの将棋も指していたので、正確には「昔の中倉宏美に戻った」と書くべきだが―を見たのだった。彼女の中で、何かが変わったとしか思えない。
自分の将棋を創造しよう、自分の将棋を見ていただこう、という宏美女流二段の決心である。私が昨年の10月20日に、「中倉宏美に将棋愛はあるか」と問うたが、答えは「ある」。「ない」と疑った私は己の不明を恥じ、ここにお詫びするものである。
相川女流3級との将棋に戻れば、宏美女流二段は、玉の薄い将棋の宿命である難しい展開になりながらよく戦い、最後は快勝した。脳ミソに汗をかいただろうが、その見返りは十分にある、実にすばらしい将棋だった。
今年の宏美女流二段の将棋は期待できる。これは大野教室および、ジョナ研メンバーの統一見解である。
コメント (6)
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