一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

冬の青春18きっぷの旅11・これからも楽しいことばかり

2012-01-18 00:20:40 | 旅行記・その他の地域
大相撲初場所10日目、横綱白鵬と関脇鶴竜(かくりゅう)の結びの一番は、鶴竜の快勝。それまでふたりの対戦成績は鶴竜の0勝20敗で、前日にその成績を見た私は、「これじゃあ賭けにもならん」とつぶやいた。しかし結果はかくのごとしだった。これだから勝負事は分からない。

(きのうのつづき)
飯山線は、雪で不通になることがしばしばある。だからこそ貴重な住民の足でもあるのだが、よりによってそれが、旅行日に当たってしまうとは…。
森宮之原からの足がないのはショックだったが、ここで引き返しては、本当に何をしに来たのか分からない。この先どういう展開になるか分からないが、私はとにかく森宮之原行きの列車に乗った。
今度は車内も空いているので、右側のクロスシートに座り、並行して流れる大河を愛でる。きのうもこのあたりは吹雪いたはずで、あたりは足跡ひとつない一面の雪景色である。空は雲ひとつなく真っ青だ。列車は大きくカーブする。白と青、山と川のコントラストが絶妙で、私は思わず息を飲んだ。
この雪景色と列車の写真を撮ろうと、沿線の小高い丘に立つカメラマンが、こちらを狙っている。これはいい写真が撮れるであろう。
ちなみに私は、毎年の年賀状に、その前年の会心ショットをポストカードにしているが、ここ一帯の景色は、その有力候補となるものだった。
定刻を2分遅れて、14時19分、森宮之原着。森宮之原は、戦争末期の昭和20年2月、7m85cmの積雪があった。駅構内にはそれと同じ7m85cmの標柱が立っており、鉄道マニアとしては訪れておきたい駅である。私も下車するのは初めてで、これはいい機会であった。
運転を終えた運転士が、右手をご覧ください、と言った。
「あの除雪車で、現在森宮之原から先の除雪をしております」
私は下車して駅員さんに聞くと、やはり越後川口行きの代替バスはないという。ただ、運休は午前1本、午後1本のみで、この次の列車から正常運転に戻るという。
これは助かった。次の列車は2時間半後の16時54分で、飯山線を愛でるには黄昏時だが、贅沢は言えない。十日町での温泉も不可になったが、やはり文句は言えない。
といっても、標柱を鑑賞すると、ほかにもうやることもない。どこかに食事処はないかと探すが、唯一あった寿司屋は休みである。温泉の類もなさそうだ。
私は諦めて駅前に戻ると、路線バスと思しき大型バスが、駅前に横づけしていた。正面で確認すると、越後湯沢行きだった。
越後湯沢…上越線の駅だったか? そうか…。飯山線をトレースする路線バス(代替バス)はないが、ルートを外れたバスは走っていたのだ。
どうしようか…と迷う。飯山線には乗りたいが、2時間の列車待ちはつらい。私は駅構内に戻り、越後湯沢が上越線であることを再確認すると、いましも発車しようとするバスに飛び乗った。
大型バスはどこかの山を登る。これまた素晴らしい景色だ。雪は深く、道の両側に雪の壁ができた。立山黒部アルペンルートを走っているようだ。
飯山線が運休していなければ、この道は通らなかった。バス代の出費は痛いが、これもひとつの出会いである。
と、前方の席で時刻表を繰っていた青年が、降車ボタンを押した。車内の行き先掲示板は、「石打郵便局」を指している。近くに石打駅があるのだろうか。もし彼が私と同じ青春18きっぷのユーザーなら、少しでもバス代を安くするために、途中で降りる可能性はある。
石打郵便局に着いた。彼と私、それに初老の夫婦も降りた。バス代は780円だった。
石打駅まで行く途中で、ある商店に入り、温泉の有無を聞く。すると、越後湯沢に行けばいっぱいあるが、このあたりはちょっと…という話だった。これは、そのまま終点まで乗ったほうがよかったか。
石打駅に着く。待つこと数分で、上越線の上り列車が来た。これが次の越後湯沢止まり。ちょうどいい、越後湯沢で一風呂浴びることにする。
越後湯沢は上越新幹線の途中駅で、構内には多くの商店が並んでいた。スキーヤーを始め、多くの旅行者がたむろしている。先ほどまで閑散としたローカル線を走っていたから、その落差に困惑する。
定跡どおり、駅西口前の案内所で温泉のありかを聞く。ホテル直営がいいか、共同浴場がいいか聞き返された。この類の質問をかなりされているのか、係の人は、かなり手なれた感じだった。
温泉の前に、腹に何か入れておきたい。へぎそばを食べさせる店があった。うん? この店…。いまから21年前、新卒で入った会社の社員有志でスキーをしに来た際、帰りがけに入った店ではないか? そうだ…間違いない。ということは、越後湯沢で下車したのも21年振りということか。
あのときは、「埼玉の超ウルトラ美女」もいっしょだったのに、私はちっともモーションを起こさなかった。何をやっていたんだと思う。
そのときのスキーは楽しかった。しかし、運動神経のない私がスキーをやるのは、危険だと思った。次にスキーをやったら、確実に私は怪我をすると思った。
その直感に従って、私がスキーをやったのは、それが最初で最後となった。その判断は正しかったと思う。その一方で、「下北半島の美女」を襲ったスキーの悲劇…。いまではすべてが、切ない思い出だ。
店に入ろうかと思うが、へぎそばは2~3人前からだった。
へぎそばは、そばのつなぎに布海苔(ふのり)を使い、一口大にくるくるっと丸めたものを、「へぎ」という板の上に盛りつけたものをいう。1人前のざるそばでも味は同じだろうが、気分としては、くるくるっ、と丸めたものを食したい。中倉宏美女流二段がいっしょなら迷わず入るところだが、ここがひとり旅のつらいところだ。
その隣の店は、けんちんうどんを名物にしているようである。どちらに入るか迷う。やはり温泉を先にするか。今度は東口に出るが、駅構内に立ち食いそば屋があるので、そこでかけそばを食う。290円。
やや高めだが、それゆえに味は期待できると思いきや、いたって普通だった。
共同温泉浴場の江神温泉に入る。400円。この3日間は、すべて温泉に入った。これは初めてのケースである。
洗い場で、自分のたるんだ体を見る。かつて大野八一雄七段は私に、
「ボクは65キロまで減量するから、大沢クンは、75キロまで落とせ」
と言った。秋口には、思わぬ経緯で10キロ近く減量したが、それからリバウンドしてしまった。これでは2、3回続けて失恋をしないと、75キロまで落ちない。
江神温泉を出る。駅に戻る途中にうまいそばを食べさせてくれそうな食堂があったが、準備中だ。
私は再び西口に出る。と、先ほどのへぎそばの店は、大入り満員になっていた。帰りの列車は17時56分が絶対で、これを逃すときょう中に東京に帰れない。
私はその左にある、ラーメン屋に入った。懲りずにラーメンを頼む。きのうから、麺類ばかりだ。
出てきたラーメンは美味かったが、豚の背脂が入っているスープを全部飲みほしたのはどうだったか。後で少し、気持ちわるくなった。
まだ時間があったので、並びにある、シャレた喫茶店に入る。店内は古民家を意識した造りになっていて、安らぎを覚える。魚沼産のお米を売ったりしていて、いろいろ楽しめる構造になっていた。
コーヒーとベイクドチーズケーキのセットを頼む。出されたコーヒーもチーズケーキも美味かったが、コーヒーの器が、タンブラーの形をした焼き物で、まあこれはこれで味があるのだろうが、日本茶を飲んでる感じがして、私はあまり賛同できなかった。コーヒーはやはり、コーヒーカップで飲みたい。
17時56分の上越線に乗る。新幹線は混雑しているのだろうが、こちらはほどよい乗客数だ。
水上、18時34分着。高崎行きに乗り換える。19時39分、高崎着。ここまで来れば、もう大丈夫だ。
17分の待ち合わせで、上野行きの高崎線がある。ホームを移ると、すでに入線していた。しかし車内はガラガラである。それはいいが、ロングシートというのが気に入らない。私はすぐには乗らず、ホームを歩いていると、グリーン車が見えた。
グリーン車、乗っちゃおうか…。私はいったん改札を抜けるとみどりの窓口に入り、上野までのグリーン券を購入した。以前も書いたが、外で買えば750円だが、中で買うと1,000円になってしまう。
5号車に乗車する。と、しばらくしてナナメ後ろに2人組の男性が座った。
彼らはテレビ業界の人なのか、「スズキサワはいいよ」とかしゃべっている。
それはいいが、あまりにも声がでかい。グリーン車を飲み屋と勘違いしているのではなかろうか。周りの乗客に配慮がなさすぎる。オレたちは業界人だから、という驕りのようなものが窺え、私は気分を害した。
私は荷物をまとめ、彼らを一瞥すると、前の車両に移る。グリーン券は座席指定ではないから、融通が利くのだ。
19時54分、高崎線は定刻に出発した。…しかしさっきの普通車両、あまりにもガラガラだったよなと思う。ロングシートにもそれなりの利点はあって、たとえば向かいに美人が座れば、景色と彼女を交互に見ながら時間をつぶせるから、退屈はしない。
まあ世の中そんなにうまくはいかないし、あれから少しは客が乗っただろうが、グリーン車に乗ったうま味をそれほど感じなかったことは確かだ。グリーン券を買ったのは贅沢ではなく、無駄遣いのような気がしてきた。
…という、後ろ向きのことを考えるのは、楽しかった旅行がこれで終わるからであろう。
しかし楽しみが終われば、また作ればいいのだ。13日(金)には今年初めてのジョナ研はあるし、20日(土)・21日(日)には、「大野教室」もある。そして来月には、北海道冬まつりもある。
これからも楽しいことばかりじゃないか。
そう考えて、私はゆっくりと目を閉じた。
コメント
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