7日(土)は午前9時半ごろに起きた。きょうの宿は会津若松なので、鈍行列車の利用といえども、時間的にはだいぶ余裕がある。
日本テレビ系の「ぶらり途中下車の旅」を観始めたら、家を出るタイミングを逸してしまった。「ぶらり」は、偶然を装う演出がハナにつくときがあるが、遠くに行くばかりが旅ではない、を実感させてくれる番組である。もっともきょうは、「富士急行」の旅だったが。
10時10分ごろ、家を出た。山手線を利用し、まずは上野に行く。「山手線を利用する――」。これは一種のステータスなのかもしれないが、こんなもの、何の自慢にもならない。
東北本線(宇都宮線)の10時35分発があったので、これに乗る。きょうは雲ひとつない快晴で、旅行日和だ。赤羽に着いた。赤羽の次は、東北本線だと浦和だが、京浜東北線だと川口だ。この数時間後に、川口では「大野教室」が開かれるが、私は休む。別に予約制ではないので、休んだって、なんの後ろめたさもない。
11時41分、古河(こが)着。そしてこの電車が古河止まりだった。
古河は本田小百合女流二段の出身地ではなかったか(と旅行時は思っていたのだが、実際は熊倉紫野女流初段。本田女流二段は水戸市出身だった)。下車して街をぶらぶら歩けば、本田女流二段に会えそうな気もするが(訂正好きの方のために重ねて書けば、旅行時はそう錯覚していた)、さすがに先を急ぎたいので、後続の電車に乗る。
古河発11時48分。この電車は上野の始発だったのだろうか。まあどっちでもよい。
小山(おやま)12時02分着。ここから常磐線友部に至る水戸線が分岐していて、この線は未乗だから乗ってみたいのだが、北へ向かわねばならないから、やはり先へ急ぐ。
石橋、という駅がある。ここも下車したいが、飯田線の中井侍で下車しなかったのに、ここで下りるわけにはいかない。物事には順序というものがある(なお「中井」という駅なら、東京都新宿区にある。この一文を書いておかないと、指摘好きの人からいらん指摘が来るので、あえて記しておく)。
12時29分、宇都宮着。浜松でも餃子を食したことだし、昼どきだから下車して、宇都宮餃子も食したいが、前日の夕食は餃子だったから、パスとする。それに宇都宮は将棋イベントでも訪れたことがあり、まだ旅情を感じない。
8分の接続で次の電車にリレーする。これは黒磯行き。黒磯は、駅構内で直流から交流へと変換されるので、普通電車は乗り換えを余儀なくされる。今回はそれを逆手に取り、黒磯で下車して那須高原までバスで行き、立ち寄り湯を楽しもうというハラだ。
黒磯13時27分着。ここまでが「愛称・宇都宮線」である。
駅の観光案内所で観光パンフレットをもらい、適当な観光ルートを聞く。
次のバスは14時10分なので、駅前の食堂「ふよう」で昼食を摂る。900円の「ふよう定食」なるものを注文した。小もりそば、芋をベースにした野菜コロッケ、サラダ、漬物に玄米という、ヘルシーなメニューである。時間もあるのでゆっくりと咀嚼すると、なかなか上品な味だった。
惜しむらくは、私ひとりでの食事だったこと。相手がいれば、「この味なかなかいいね」とか会話が弾むのだが。宏美。
定刻を4分すぎ、東野バスで那須湯本のバス停まで向かう。ところでこの「東野」は「ひがしの」でもなく「とうの」でもなく、「とうや」と読む。日本語はまことに難しい。
バスは山道をひたすら登る。この感じ、北海道の美瑛から白金温泉に向かったときの感じとよく似ていた。
道の両側には、シャレたレストランがいくつも林立している。博物館などの観光施設もいくつかある。それで思ったのだが、ここら一帯はマイカーなどで、あっちこっち見学しながら登っていくのがいいようだ。バスは本数が限られているから、融通が利かない。
さらに加えれば、ここ一帯は避暑地の趣があり、訪れるのは夏がベストだと思う。冬の真っ只中に温泉に入りに来る旅行者は珍しいと思う。
14時46分、那須湯本着。駅でもらったパンフレットの中に、「温泉500円券」があり、これを提示すると、500円以上の温泉も、500円になるのだ。
ここ一帯は山の中腹にあり、ひょうびょうとした那須高原が一望できる。ほのかに雪化粧をしていて、厳粛な気持ちになる。
バス停の近くにある、とある温泉ホテルを目指す。ホテルに着いて、ロビーで「どん!」と「500円券」を見せると、これは当ホテルでは実施しておりません、の返事。
すっかり気まずくなって、私はすごすごとホテルを後にする。その先の「那須ビューパレスホテル」を目指した。何度か道を間違えたが、なんとか到着した。
ロビーにて、今度は恐る恐る、500円券を見せる。今度はOKで、これでいよいよ那須温泉に入れることになった。
最近の旅行では温泉づいているが、冬の外は寒いから、観光をする気分にはなれない。雪まつりでもあれば別だが、それは2月だ。
ここの温泉も、もちろん露天風呂付きである。どうも最近では、露天風呂がないと温泉にあらず、と思うようになってしまった。
さっそく露天風呂に浸かる。長崎県伊王島や静岡県三島のそれに比べて、ちょっと熱めのような気がした。もっともこのくらいが、適度な温度なのだろう。
温泉といえば、西の岩根忍、東の中倉宏美だろう。中井広恵という手もなくはないが、決め手に欠ける。ここは中倉宏美が本手である。
いったん出て体を洗い、再び露天風呂に浸かると、2人組の男性が入ってきた。塀の向こうにそれぞれ相方がいるらしく、何やら話をしている。これを微笑ましいと思うか面白くないと思うか。私は後者である。
相方との談笑も終わり、その2人が今度は、温泉の温度はどのくらいが適当かを話し始めた。
「露天風呂の温度調整は難しいですね。あまり熱いとすぐ出たくなるから、少しぬるめで、いつまでも浸かっていられるのがいいですナ。この温泉はちょうどいい」
たしかにごもっともだが、前述したように、この露天風呂は少し熱いと思う。まあ、どっちでもいいのだが。
帰り道では小雪が舞っていたが、芯から温まったので、湯ざめはしなかった。
大いに満足して、16時25分の黒磯駅行きバスに乗る。
しばらく走ると、車窓からコンビニのセブンイレブンが見えた。しかしその看板が、白地に焦げ茶の配色である。これはセブンイレブン、何か新ブランドのコンビニでも始めたのだろうか。
しかしこの配色には、ちゃんとした意味があることが分かった。
(つづく)
日本テレビ系の「ぶらり途中下車の旅」を観始めたら、家を出るタイミングを逸してしまった。「ぶらり」は、偶然を装う演出がハナにつくときがあるが、遠くに行くばかりが旅ではない、を実感させてくれる番組である。もっともきょうは、「富士急行」の旅だったが。
10時10分ごろ、家を出た。山手線を利用し、まずは上野に行く。「山手線を利用する――」。これは一種のステータスなのかもしれないが、こんなもの、何の自慢にもならない。
東北本線(宇都宮線)の10時35分発があったので、これに乗る。きょうは雲ひとつない快晴で、旅行日和だ。赤羽に着いた。赤羽の次は、東北本線だと浦和だが、京浜東北線だと川口だ。この数時間後に、川口では「大野教室」が開かれるが、私は休む。別に予約制ではないので、休んだって、なんの後ろめたさもない。
11時41分、古河(こが)着。そしてこの電車が古河止まりだった。
古河は本田小百合女流二段の出身地ではなかったか(と旅行時は思っていたのだが、実際は熊倉紫野女流初段。本田女流二段は水戸市出身だった)。下車して街をぶらぶら歩けば、本田女流二段に会えそうな気もするが(訂正好きの方のために重ねて書けば、旅行時はそう錯覚していた)、さすがに先を急ぎたいので、後続の電車に乗る。
古河発11時48分。この電車は上野の始発だったのだろうか。まあどっちでもよい。
小山(おやま)12時02分着。ここから常磐線友部に至る水戸線が分岐していて、この線は未乗だから乗ってみたいのだが、北へ向かわねばならないから、やはり先へ急ぐ。
石橋、という駅がある。ここも下車したいが、飯田線の中井侍で下車しなかったのに、ここで下りるわけにはいかない。物事には順序というものがある(なお「中井」という駅なら、東京都新宿区にある。この一文を書いておかないと、指摘好きの人からいらん指摘が来るので、あえて記しておく)。
12時29分、宇都宮着。浜松でも餃子を食したことだし、昼どきだから下車して、宇都宮餃子も食したいが、前日の夕食は餃子だったから、パスとする。それに宇都宮は将棋イベントでも訪れたことがあり、まだ旅情を感じない。
8分の接続で次の電車にリレーする。これは黒磯行き。黒磯は、駅構内で直流から交流へと変換されるので、普通電車は乗り換えを余儀なくされる。今回はそれを逆手に取り、黒磯で下車して那須高原までバスで行き、立ち寄り湯を楽しもうというハラだ。
黒磯13時27分着。ここまでが「愛称・宇都宮線」である。
駅の観光案内所で観光パンフレットをもらい、適当な観光ルートを聞く。
次のバスは14時10分なので、駅前の食堂「ふよう」で昼食を摂る。900円の「ふよう定食」なるものを注文した。小もりそば、芋をベースにした野菜コロッケ、サラダ、漬物に玄米という、ヘルシーなメニューである。時間もあるのでゆっくりと咀嚼すると、なかなか上品な味だった。
惜しむらくは、私ひとりでの食事だったこと。相手がいれば、「この味なかなかいいね」とか会話が弾むのだが。宏美。
定刻を4分すぎ、東野バスで那須湯本のバス停まで向かう。ところでこの「東野」は「ひがしの」でもなく「とうの」でもなく、「とうや」と読む。日本語はまことに難しい。
バスは山道をひたすら登る。この感じ、北海道の美瑛から白金温泉に向かったときの感じとよく似ていた。
道の両側には、シャレたレストランがいくつも林立している。博物館などの観光施設もいくつかある。それで思ったのだが、ここら一帯はマイカーなどで、あっちこっち見学しながら登っていくのがいいようだ。バスは本数が限られているから、融通が利かない。
さらに加えれば、ここ一帯は避暑地の趣があり、訪れるのは夏がベストだと思う。冬の真っ只中に温泉に入りに来る旅行者は珍しいと思う。
14時46分、那須湯本着。駅でもらったパンフレットの中に、「温泉500円券」があり、これを提示すると、500円以上の温泉も、500円になるのだ。
ここ一帯は山の中腹にあり、ひょうびょうとした那須高原が一望できる。ほのかに雪化粧をしていて、厳粛な気持ちになる。
バス停の近くにある、とある温泉ホテルを目指す。ホテルに着いて、ロビーで「どん!」と「500円券」を見せると、これは当ホテルでは実施しておりません、の返事。
すっかり気まずくなって、私はすごすごとホテルを後にする。その先の「那須ビューパレスホテル」を目指した。何度か道を間違えたが、なんとか到着した。
ロビーにて、今度は恐る恐る、500円券を見せる。今度はOKで、これでいよいよ那須温泉に入れることになった。
最近の旅行では温泉づいているが、冬の外は寒いから、観光をする気分にはなれない。雪まつりでもあれば別だが、それは2月だ。
ここの温泉も、もちろん露天風呂付きである。どうも最近では、露天風呂がないと温泉にあらず、と思うようになってしまった。
さっそく露天風呂に浸かる。長崎県伊王島や静岡県三島のそれに比べて、ちょっと熱めのような気がした。もっともこのくらいが、適度な温度なのだろう。
温泉といえば、西の岩根忍、東の中倉宏美だろう。中井広恵という手もなくはないが、決め手に欠ける。ここは中倉宏美が本手である。
いったん出て体を洗い、再び露天風呂に浸かると、2人組の男性が入ってきた。塀の向こうにそれぞれ相方がいるらしく、何やら話をしている。これを微笑ましいと思うか面白くないと思うか。私は後者である。
相方との談笑も終わり、その2人が今度は、温泉の温度はどのくらいが適当かを話し始めた。
「露天風呂の温度調整は難しいですね。あまり熱いとすぐ出たくなるから、少しぬるめで、いつまでも浸かっていられるのがいいですナ。この温泉はちょうどいい」
たしかにごもっともだが、前述したように、この露天風呂は少し熱いと思う。まあ、どっちでもいいのだが。
帰り道では小雪が舞っていたが、芯から温まったので、湯ざめはしなかった。
大いに満足して、16時25分の黒磯駅行きバスに乗る。
しばらく走ると、車窓からコンビニのセブンイレブンが見えた。しかしその看板が、白地に焦げ茶の配色である。これはセブンイレブン、何か新ブランドのコンビニでも始めたのだろうか。
しかしこの配色には、ちゃんとした意味があることが分かった。
(つづく)