時刻は午後6時半を回っていた。きょうはもうアガってもいいのだが、唯ひとり残っている未成年のIi君が暇そうである。何となく、「将棋指したいオーラ」を放っている。そこで対局を申し込んだ。大野教室はこのあたり、自由に手合いを付けられるのである。
Ii君は高校竜王戦などいくつもの大会に出場している猛者だ。私とは何局も指し、初期は勝ったり負けたりだったが、最近はこちらの負けが込んでいる。ここらで一番入れて、巻き返したいところだ。
私が「玉将」を取ったら「王将」にされた。どうもやりにくい。Ii君も時間がないので、「5分・30秒」とする。振ってもらって、私の先手。▲7六歩△3四歩。ここで▲2六歩だと、△8四歩▲2五歩に、△8八角成とくるだろう。一手損角換わりは不得手なので、3手目に▲6八飛と振ってみた。これ、初めて指した気がする。
数手進んで、▲2二角成。自ら角を換えたが、これも初めて。私が最先端定跡の将棋を指すのは珍しい。
指導対局を終えた大野八一雄七段がときどき様子を見にくるので、ちょっと指しにくい。女流棋士のタイトル戦に男性棋士が立会人を務める。女流棋士はどんな気分なのだろう。
角を換えたので、私は木村美濃+金で、中央を厚くする。Ii君が△5四銀と立ったので、▲6四歩。△6五桂▲6三歩成△7七桂成▲同桂△4九銀。この局面が下である。
先手・一公:1六歩、1九香、2六歩、2八玉、3六歩、3七桂、3八金、4五歩、4七銀、5七歩、5八金、6三と、6八飛、7六歩、7七桂、8七歩、9六歩、9九香 持駒:角、桂、歩
後手・Ii:1一香、1四歩、2一桂、2二玉、2三歩、3二金、3三銀、3四歩、4三金、4四歩、4九銀、5四銀、5五歩、7四歩、8二飛、8五歩、9一香、9四歩 持駒:角
以下の指し手。▲6四と△4五銀▲同桂△同歩▲5四と△同金▲6三飛成△4六桂▲同銀△3八銀成▲同玉△4六歩▲5四竜△4七銀▲同金△2九角 まで、Ii君の勝ち。
▲6四とに△4五銀。これに▲同桂ではあまり得にならないので▲4六歩を考えたが、△5八銀成▲同飛△3六銀▲同銀△6九角が気になり、やめた。
しかしいま考えると、以下▲4七銀打△5八角成▲同銀は先手も戦える。このあたり、読みが浅かった。もっともここでは、すでに30秒の秒読みだったからやむを得ないのだが。
本譜はIi君にいいように攻められ、△2九角まで、私の投了。
戻ってきた大野七段が、「▲6三歩成のところでは大沢さんのほうがいいと思ったけど…」といい、3人での感想戦が始まった。アマの実戦にもアドバイスをくれる。これも大野教室の特長である。
私は変則的な囲いを用いたので自信はなかったが、大野七段は悪くない、という。
しかし本譜の進行でも、先手にこれといった悪手はないのに完敗になったから、大野七段が怪訝な顔をした。
どこが悪かったんだ…? と大野七段が解明した疑問手が、当然に思えた▲6四とで、ここは▲4四歩△同銀▲4五歩△3三銀の交換を入れてから▲6四とがよかったという。
これは後手も反撃するしかない。△4六歩▲同銀△5八銀成▲同飛△6九角。
これには▲4八飛△3六角成に▲2七銀と入れ、先手悪くない。これなら互角の形勢だったという。
大野七段の簡にして要を得た解説に感嘆した。
ここできょうの大野教室は終了。4局指して0勝4敗はひどい。内容は3勝1敗だったのに…というのは負け惜しみで、将棋は勝たなければダメなのだ。
食事会に出る。参加者は大野七段、植山悦行七段、W氏、Fuj氏、私。場所は駅前にある「ガスト」で、前回と同じだ。
5人中4人がキャンペーンメニューを頼む。さんざん考えての末、これだ。長考の末、平凡な手を指すのと似ている。
食事が終わると、Fuj氏が「一公ブログ」のプリントを出す。大野教室ではもうお馴染みだが、植山七段が見るのは初めてだ。奇怪な物を見るように、まじまじと眺めている。
さらにFuj氏は、「一公ブログクイズ」も作成してきていた。
これは前回の話に出てきたもので、Fuj氏がそんなに当ブログが好きなら、カルトクイズを作ってくれ、という私の依頼に応えてくれたものである。
その数何と66問。21日に行われる将棋文化検定になぞらえて、2級・4級・6級・9級とクラス別にし、「カルト級」のおまけまである。
中をナナメ読みしたが、書いた私でさえ悩むクイズもあった。いったい誰が挑むのか分からぬが、これは後日アップしたいと思う。
珍しく植山七段が、W氏に盤駒を出すよう促す。W氏が出すと、きょうの指導対局を並べ始めた。相手はHanaちゃんだ。しかし飛車落ちである。Hanaちゃん、私には完全に水をあけているのに、なぜ植山七段に飛車落ちなのか分からぬ。
Hanaちゃん、思い切りよく指しているが、上手の牙城は堅かった。Hanaちゃん、まだまだ発展途上ということだろう。
続いて別の少年との指導対局も並べられる。これも植山七段の勝ち。
今度は大野七段が、きょうの指導対局を並べ始める。失礼ながら、ふたりはこんなに将棋が好きだったろうか。まあそれはともかく、これも飛車落ちで、大野七段の勝ち。意表の端攻めから、完勝だった。
いやこれはおかしい、話がウマすぎる、と植山七段が加勢して下手の最善手を探すのだが、やはり上手が勝ってしまう。下手が反撃しようにも、上手の玉が異常に「遠い」のだ。何だか、キツネにつままれたようだ。
植山七段が、「だから私は角落ちより飛車落ちが好きなんですよ」という。
角より飛車のほうが威力があるわけで、その飛車がない駒落ちは角のそれより指しづらいと思うのだが、植山七段の見解は違う。角落ちの上手は、どう工夫しても玉が固くならず、指していて楽しくないらしい。その点飛車落ちは、上手の攻めを受けるだけだからラクだという。
じゃあ私は今度、飛車落ちで教わるべきなのだろうか。
きょうも楽しくおしゃべりして、11時20分、散会。次に大野教室に訪れるのは、いつになるだろう。
Ii君は高校竜王戦などいくつもの大会に出場している猛者だ。私とは何局も指し、初期は勝ったり負けたりだったが、最近はこちらの負けが込んでいる。ここらで一番入れて、巻き返したいところだ。
私が「玉将」を取ったら「王将」にされた。どうもやりにくい。Ii君も時間がないので、「5分・30秒」とする。振ってもらって、私の先手。▲7六歩△3四歩。ここで▲2六歩だと、△8四歩▲2五歩に、△8八角成とくるだろう。一手損角換わりは不得手なので、3手目に▲6八飛と振ってみた。これ、初めて指した気がする。
数手進んで、▲2二角成。自ら角を換えたが、これも初めて。私が最先端定跡の将棋を指すのは珍しい。
指導対局を終えた大野八一雄七段がときどき様子を見にくるので、ちょっと指しにくい。女流棋士のタイトル戦に男性棋士が立会人を務める。女流棋士はどんな気分なのだろう。
角を換えたので、私は木村美濃+金で、中央を厚くする。Ii君が△5四銀と立ったので、▲6四歩。△6五桂▲6三歩成△7七桂成▲同桂△4九銀。この局面が下である。
先手・一公:1六歩、1九香、2六歩、2八玉、3六歩、3七桂、3八金、4五歩、4七銀、5七歩、5八金、6三と、6八飛、7六歩、7七桂、8七歩、9六歩、9九香 持駒:角、桂、歩
後手・Ii:1一香、1四歩、2一桂、2二玉、2三歩、3二金、3三銀、3四歩、4三金、4四歩、4九銀、5四銀、5五歩、7四歩、8二飛、8五歩、9一香、9四歩 持駒:角
以下の指し手。▲6四と△4五銀▲同桂△同歩▲5四と△同金▲6三飛成△4六桂▲同銀△3八銀成▲同玉△4六歩▲5四竜△4七銀▲同金△2九角 まで、Ii君の勝ち。
▲6四とに△4五銀。これに▲同桂ではあまり得にならないので▲4六歩を考えたが、△5八銀成▲同飛△3六銀▲同銀△6九角が気になり、やめた。
しかしいま考えると、以下▲4七銀打△5八角成▲同銀は先手も戦える。このあたり、読みが浅かった。もっともここでは、すでに30秒の秒読みだったからやむを得ないのだが。
本譜はIi君にいいように攻められ、△2九角まで、私の投了。
戻ってきた大野七段が、「▲6三歩成のところでは大沢さんのほうがいいと思ったけど…」といい、3人での感想戦が始まった。アマの実戦にもアドバイスをくれる。これも大野教室の特長である。
私は変則的な囲いを用いたので自信はなかったが、大野七段は悪くない、という。
しかし本譜の進行でも、先手にこれといった悪手はないのに完敗になったから、大野七段が怪訝な顔をした。
どこが悪かったんだ…? と大野七段が解明した疑問手が、当然に思えた▲6四とで、ここは▲4四歩△同銀▲4五歩△3三銀の交換を入れてから▲6四とがよかったという。
これは後手も反撃するしかない。△4六歩▲同銀△5八銀成▲同飛△6九角。
これには▲4八飛△3六角成に▲2七銀と入れ、先手悪くない。これなら互角の形勢だったという。
大野七段の簡にして要を得た解説に感嘆した。
ここできょうの大野教室は終了。4局指して0勝4敗はひどい。内容は3勝1敗だったのに…というのは負け惜しみで、将棋は勝たなければダメなのだ。
食事会に出る。参加者は大野七段、植山悦行七段、W氏、Fuj氏、私。場所は駅前にある「ガスト」で、前回と同じだ。
5人中4人がキャンペーンメニューを頼む。さんざん考えての末、これだ。長考の末、平凡な手を指すのと似ている。
食事が終わると、Fuj氏が「一公ブログ」のプリントを出す。大野教室ではもうお馴染みだが、植山七段が見るのは初めてだ。奇怪な物を見るように、まじまじと眺めている。
さらにFuj氏は、「一公ブログクイズ」も作成してきていた。
これは前回の話に出てきたもので、Fuj氏がそんなに当ブログが好きなら、カルトクイズを作ってくれ、という私の依頼に応えてくれたものである。
その数何と66問。21日に行われる将棋文化検定になぞらえて、2級・4級・6級・9級とクラス別にし、「カルト級」のおまけまである。
中をナナメ読みしたが、書いた私でさえ悩むクイズもあった。いったい誰が挑むのか分からぬが、これは後日アップしたいと思う。
珍しく植山七段が、W氏に盤駒を出すよう促す。W氏が出すと、きょうの指導対局を並べ始めた。相手はHanaちゃんだ。しかし飛車落ちである。Hanaちゃん、私には完全に水をあけているのに、なぜ植山七段に飛車落ちなのか分からぬ。
Hanaちゃん、思い切りよく指しているが、上手の牙城は堅かった。Hanaちゃん、まだまだ発展途上ということだろう。
続いて別の少年との指導対局も並べられる。これも植山七段の勝ち。
今度は大野七段が、きょうの指導対局を並べ始める。失礼ながら、ふたりはこんなに将棋が好きだったろうか。まあそれはともかく、これも飛車落ちで、大野七段の勝ち。意表の端攻めから、完勝だった。
いやこれはおかしい、話がウマすぎる、と植山七段が加勢して下手の最善手を探すのだが、やはり上手が勝ってしまう。下手が反撃しようにも、上手の玉が異常に「遠い」のだ。何だか、キツネにつままれたようだ。
植山七段が、「だから私は角落ちより飛車落ちが好きなんですよ」という。
角より飛車のほうが威力があるわけで、その飛車がない駒落ちは角のそれより指しづらいと思うのだが、植山七段の見解は違う。角落ちの上手は、どう工夫しても玉が固くならず、指していて楽しくないらしい。その点飛車落ちは、上手の攻めを受けるだけだからラクだという。
じゃあ私は今度、飛車落ちで教わるべきなのだろうか。
きょうも楽しくおしゃべりして、11時20分、散会。次に大野教室に訪れるのは、いつになるだろう。