「将棋世界」11月号を読んだ感想を書く。
今号の楽しみは、青野照市九段の「将棋時評」。先月行われた、将棋ペンクラブ大賞贈呈式の席で、青野九段が「次号はオリンピックの件で過激なことを書いた」と述べていたので、期待していた。
その内容は、金メダルを獲れなかった選手が、「金メダル以外はいらない」と後味の悪いコメントを残したことと、女子サッカーの引き分け狙いを非難するものであった。
前者は、青野九段がカリカリくる理由がよく分からなかったが、後者の「引き分け狙い」は、かつて私も当ブログで言及したことがあるので、興味深かった。それはまさに一刀両断、胸のすく思いだった。
青野九段はさらに、「負けた方がいいかもしれない例」として「竜王戦2組決勝」も挙げており、我が意を得た思いだった。
青野九段のマクラは、真部一男九段の「将棋論考」を彷彿とさせるものがある。いよいよその域に近づいてきたか。
鈴木宏彦氏の「新・イメージと読みの将棋観」、テーマ4は、大山康晴十五世名人対飯野健二四段の、第17期十段戦予選決勝の終盤の場面から。
これ、大山十五世名人が指した鬼手があまりにも有名で、いまさら6棋士に聞くのもどうかと思うが、渡辺明竜王が「これは知っています。創作次の一手ですね」と述べたのにはひっくり返った。創作だと思っていた、はないだろう。ま、それほど完成された局面だったということだ。
テーマ1は、今期の女流王座戦で、ポーランド人のカロリーナ・ステチェンスカさんが▲7六歩△3四歩に▲7五歩と突いた局面をどう見るか。鈴木氏はその手を「ポーランド流」と記していた。棋士が得意にしている戦法(手)を○○流と述べるのは構わないが、3手目の指し手に○○流と付けるのはいかがなものか。
テーマ2は、相居飛車から後手の右四間飛車の是非を問う。この戦法、前期竜王戦6組の5位決定戦・加藤一二三九段と大野八一雄七段の一戦で現われた。
149頁のC図とよく似た変化も、私は大野七段から解説を受けたことがあり、それは以下△6六角成▲同金△同飛▲6七銀△6五飛で、次に△6六歩と△2五飛回りを見て後手よし、とのことだった。
ただし将棋世界では、C図の局面で先手十分のニュアンスだった。具体的には、△6六同飛の局面で▲7七角がある。これを大野七段はどう見るのだろう。
△6九飛成▲1一角成△2二銀で後手十分、という感じだろうか。
いずれにしても、私も右四間飛車は、優秀な戦法と思う。
グラビアページは、大川慎太郎記者による王座戦第2局観戦記。冒頭に記者が抱いた疑問を、末尾で氷解させるという手法にややまだるっこさも覚えたが、全体的に面白く読めた。やはりこれだけ文字スペースが割かれていると、充実した読み物になる。
ただその反動か、第1局は棋譜の掲載のみだった。
1か月前の将棋では新鮮味がない、との判断だろうが、せっかくのタイトル戦なのだから、もう少し掘り下げてもらえないだろうか。
ほかのグラビアは、「女流王座戦・挑戦者は本田小百合!」の記事。とにかく、本田女流三段がかわいらしかった。とても34歳には見えない。今月はこのショットで、750円の価値アリというところ。
さらに「第19回大山康晴賞受賞式」のレポート。団体分野で受賞した学校法人藤枝学園は、将棋部を創った故・加藤康次氏が、加藤桃子女流王座のご尊父とのこと。なるほど、加藤女流王座が強くなる環境は整えられていたわけだ。
講座は、飯島栄治七段による「横歩取り裏定跡の研究」がおもしろい。現在△4五角戦法のマイナーな変化をやっているのだが、かねてから私は、同戦法は後手番として有力と考えていたので、とても参考になっている。
ただ残念ながら、この講座が始まった昨年秋、私は将棋世界を購読していなかった。連載終了後に単行本になるのを待ち、図書館で借りてまとめて読みたい。
高橋呉郎氏による「感想戦後の感想」は、「福崎文吾九段」。相変わらずの福崎節がおもしろかった。ただ結果的に、羽生・谷川賛歌になってしまったのが残念である。昭和61年の十段戦七番勝負で、米長邦雄十段を破ったときの福崎将棋を憶えているファンは多い。まだまだ老けこむのは早い。もう一花咲かせてほしいところである。
別冊付録は、「プロ棋士に学ぶ終盤の手筋」。ヒントだけで解答が分かってしまう設問もあったが、いざ実戦で出てくれば分からないものばかり。プロ将棋の奥深さを感じた。
今号の楽しみは、青野照市九段の「将棋時評」。先月行われた、将棋ペンクラブ大賞贈呈式の席で、青野九段が「次号はオリンピックの件で過激なことを書いた」と述べていたので、期待していた。
その内容は、金メダルを獲れなかった選手が、「金メダル以外はいらない」と後味の悪いコメントを残したことと、女子サッカーの引き分け狙いを非難するものであった。
前者は、青野九段がカリカリくる理由がよく分からなかったが、後者の「引き分け狙い」は、かつて私も当ブログで言及したことがあるので、興味深かった。それはまさに一刀両断、胸のすく思いだった。
青野九段はさらに、「負けた方がいいかもしれない例」として「竜王戦2組決勝」も挙げており、我が意を得た思いだった。
青野九段のマクラは、真部一男九段の「将棋論考」を彷彿とさせるものがある。いよいよその域に近づいてきたか。
鈴木宏彦氏の「新・イメージと読みの将棋観」、テーマ4は、大山康晴十五世名人対飯野健二四段の、第17期十段戦予選決勝の終盤の場面から。
これ、大山十五世名人が指した鬼手があまりにも有名で、いまさら6棋士に聞くのもどうかと思うが、渡辺明竜王が「これは知っています。創作次の一手ですね」と述べたのにはひっくり返った。創作だと思っていた、はないだろう。ま、それほど完成された局面だったということだ。
テーマ1は、今期の女流王座戦で、ポーランド人のカロリーナ・ステチェンスカさんが▲7六歩△3四歩に▲7五歩と突いた局面をどう見るか。鈴木氏はその手を「ポーランド流」と記していた。棋士が得意にしている戦法(手)を○○流と述べるのは構わないが、3手目の指し手に○○流と付けるのはいかがなものか。
テーマ2は、相居飛車から後手の右四間飛車の是非を問う。この戦法、前期竜王戦6組の5位決定戦・加藤一二三九段と大野八一雄七段の一戦で現われた。
149頁のC図とよく似た変化も、私は大野七段から解説を受けたことがあり、それは以下△6六角成▲同金△同飛▲6七銀△6五飛で、次に△6六歩と△2五飛回りを見て後手よし、とのことだった。
ただし将棋世界では、C図の局面で先手十分のニュアンスだった。具体的には、△6六同飛の局面で▲7七角がある。これを大野七段はどう見るのだろう。
△6九飛成▲1一角成△2二銀で後手十分、という感じだろうか。
いずれにしても、私も右四間飛車は、優秀な戦法と思う。
グラビアページは、大川慎太郎記者による王座戦第2局観戦記。冒頭に記者が抱いた疑問を、末尾で氷解させるという手法にややまだるっこさも覚えたが、全体的に面白く読めた。やはりこれだけ文字スペースが割かれていると、充実した読み物になる。
ただその反動か、第1局は棋譜の掲載のみだった。
1か月前の将棋では新鮮味がない、との判断だろうが、せっかくのタイトル戦なのだから、もう少し掘り下げてもらえないだろうか。
ほかのグラビアは、「女流王座戦・挑戦者は本田小百合!」の記事。とにかく、本田女流三段がかわいらしかった。とても34歳には見えない。今月はこのショットで、750円の価値アリというところ。
さらに「第19回大山康晴賞受賞式」のレポート。団体分野で受賞した学校法人藤枝学園は、将棋部を創った故・加藤康次氏が、加藤桃子女流王座のご尊父とのこと。なるほど、加藤女流王座が強くなる環境は整えられていたわけだ。
講座は、飯島栄治七段による「横歩取り裏定跡の研究」がおもしろい。現在△4五角戦法のマイナーな変化をやっているのだが、かねてから私は、同戦法は後手番として有力と考えていたので、とても参考になっている。
ただ残念ながら、この講座が始まった昨年秋、私は将棋世界を購読していなかった。連載終了後に単行本になるのを待ち、図書館で借りてまとめて読みたい。
高橋呉郎氏による「感想戦後の感想」は、「福崎文吾九段」。相変わらずの福崎節がおもしろかった。ただ結果的に、羽生・谷川賛歌になってしまったのが残念である。昭和61年の十段戦七番勝負で、米長邦雄十段を破ったときの福崎将棋を憶えているファンは多い。まだまだ老けこむのは早い。もう一花咲かせてほしいところである。
別冊付録は、「プロ棋士に学ぶ終盤の手筋」。ヒントだけで解答が分かってしまう設問もあったが、いざ実戦で出てくれば分からないものばかり。プロ将棋の奥深さを感じた。