仕方ない。このままでは埒が明かない。私はテレビを『映画』『アダルト』の画面に戻すと、フロントを呼んだ。
何年か前、やはり九州を旅行したとき、ホテルで借りたパソコンの調子が悪く、スタッフを呼んだことがあるが、今回は有料ビデオ操作のクレームである。はなはだバツが悪い。
一応「自室」に呼ぶわけだから、散らかってるものを片し、身仕度も整える。まったく、めんどうなことになったものだ。
男性スタッフが来たので、私は事情を話す。いかがわしいビデオを観るのに必死になって、どこか壊してしまった、と言ってるわけだから、情けない。
スタッフ氏はリモコンをカチャカチャやるが、やっぱり音は出ない。まあそうであろう。
ところが、「(大もとの)コンセントの部分は…」とテレビを少し動かしたとき、テレビに音量マークが映った。音もしっかり出る。これは…!!
テレビを見ると、右側面に音量などのボタンがあった。こっちにあったのか!! そこに外付けハードディスクが傾き、ボタン部分を圧迫していた。これで、音量部分が不調になっていたのだ。
スタッフ氏より先に故障の事情が分かったが、スタッフ氏は確認のため、『アダルト』画面のボタンを押そうとするから、それはいいです、と慌てて断った。
まったく、分かってみれば他愛無いことだった。たんに私が恥をかいただけだった。
私はビデオを観る合間にブログも書く。本当はビデオ鑑賞に専念したいところだが、そうもいかない。午前2時少し前にアップをして、フトンにもぐった。
明けて6日(月・振替休日)・ゴールデンウィークの最終日は、7時半ごろに起きた。前述したとおり、きょうは高千穂を行く。
前日にホテルで入手したバスの時刻表を見ると、高千穂バスセンター行きは08時45分というのがあった。
懸念したバス料金だが、延岡は大分県でなく、宮崎県だった。6日前に宮崎入りしてから、一周して戻ってきたのである。ということは、あの「宮崎交通バス1日乗り放題バス乗車券」(1,800円)が使えるのであった!!
ホテルをチェックアウトし、延岡駅前に行くと、バスターミナルがあった。
窓口が開くのを待つが、この間に、昨夜買った菓子パンを頬張る。何とも安い朝食になってしまった。
窓口で「1日乗車券」を買い、まずは一安心。まだ時間があったので付近を散歩していると、宝くじ売り場があったので、ミニロトとロト6を買う。ピックアップする数字は、中井広恵女流六段や、「角館の美女」の誕生日を絡めた。
宮崎交通バスは、数人の乗客を乗せ、定刻を1分遅れて発車した。
言うまでもないが、延岡-高千穂間は、かつて鉄路が通じていた。その距離50キロちょうど。そしてこの鉄道は、2度「廃線」になった、哀しい歴史を持つ。
かつては国鉄(JR)高千穂線だったが、1989年4月に第3セクター化し、高千穂鉄道に生まれ変わった。その後は細々と営業を続けていたが、2005年の台風14号で沿線が壊滅的打撃を受け、休止を余儀なくされた。しかし宮崎県や自治体は復興費用を捻出せず、高千穂鉄道は2008年、そのまま全線廃止となった。
現在も復活の道を諦めていない団体もあるらしいが、一度廃止になった鉄道が復活したためしはない(あるのかもしれないが、私は知らない)。これは夢物語で終わるだろう。
ただしそんなわけだから、沿線はバスからでも、廃線跡が分かると思った。
バスは旧道を走る。これはやがて槇峰や日之影を通るから、廃線跡をトレースするはずだ。
果たしてバスからは、チラチラ廃線跡が見えた。ちょっと、感激を抑えきれない。09時50分ごろ、日之影駅前を通る。高千穂鉄道の車両がいくつか見えたが、ちょっと様子がおかしい。
ここには帰りに下車するから、そのとき確かめよう。
10時16分、高千穂着。このひとつ先がバスセンターで、高千穂峡の入口でもあるのだが、私の目的は高千穂「駅」なので、ここで降りる。
近くの階段を下っていくと、高千穂鉄道の旧高千穂駅が見えてきた。懐かしい! 復活を考えているから当然とはいえ、現役時代の駅舎が保存されているのは喜ばしい。
駅舎に入るとスタッフがおり、駅構内入場料として100円かかると言われた。そのくらいなら、いくらでも払う。
トロッコ風のミニミニ列車が走っていたのでこの乗車も所望すると、800円とのことだった。ただしそれなら入場料はかからない。もちろん乗ることにする。
構内に入るが、現役のようで、うれしい。ローカル鉄道は冬の時代で、これからもあっちこっちで鉄道の廃止はあるだろう。そのとき、駅舎とその施設をどう活かすかが、これからは重要視されると思う。
「切符」には、「高千穂あまてらす鉄道(株)発行」とあった。この会社が、高千穂鉄道の復活を目指しているのだ。
しばらくすると、その列車?が戻ってきた。これは「スーパーカート」と呼ばれ、数人乗りの簡易的な荷台に、エンジンが搭載されていた。定員は6~7名だが、私の乗るべき10時30分のスーパーカートは、満員だった。
定刻を8分遅れて出発。運転士は初老の男性だ。カートは旧高千穂鉄道の線路を、意外に早く走る。日射しがきついが、涼風が気持ちいい。一部が高架になっているので、景色もよい。
数分後カートは、約2キロ先の天岩戸駅に着いた。こちらも、ホームやレールはかなりくたびれていたが、駅名板はしっかり残っていた。
カートはここで引き返すが、本音を言えば、もうひとつ先の駅に行きたいのだ。天岩戸-深角(ふかすみ)間には高千穂橋梁があり、その高さ105mは、かつては日本一だった。私はこの橋梁を味わうため、高千穂-深角間を往復したこともある。
天岩戸駅付近をしばし散策したあと、高千穂駅に戻った。駅構内には現役時代の車両が展示されている。これはイベント時に動かすらしい。すなわち、まだ現役ということだ。
備え付けのヘルメットをかぶり、見学する。同じ社会科見学なら、やはりこの類のほうが楽しい。
私は大いに満足して高千穂駅を辞し、バス停へ向かう。下りは階段を使ったから、上りは坂道を歩く。と、何かの店があった。「ディンプルアート」の看板が出されている。
何か、体験型の代物らしい。店のお姉さんが、いかがですか、と言う。私はそういうのはダメなので…と手を振り、そのまま坂道を登った。
まだ高千穂駅を楽しんだだけだが、もう引き返さなければならない。福岡行きの高速バスならもう少し時間が取れたのだが、これも仕方ない。
ちなみに高千穂峡も興味はなくはないが、あそこは彼女とボートで楽しみたい。そんなわけで高千穂は何度か訪れたが、高千穂峡はいまだに訪れたことがないのであった。
さてバス停に立つが、次の延岡行きは、まだ1時間以上ある。
さっきのお姉さん、ちょっと中倉宏美に似ていたな…。
私はしばし思案すると、踵を返した。
(つづく)
何年か前、やはり九州を旅行したとき、ホテルで借りたパソコンの調子が悪く、スタッフを呼んだことがあるが、今回は有料ビデオ操作のクレームである。はなはだバツが悪い。
一応「自室」に呼ぶわけだから、散らかってるものを片し、身仕度も整える。まったく、めんどうなことになったものだ。
男性スタッフが来たので、私は事情を話す。いかがわしいビデオを観るのに必死になって、どこか壊してしまった、と言ってるわけだから、情けない。
スタッフ氏はリモコンをカチャカチャやるが、やっぱり音は出ない。まあそうであろう。
ところが、「(大もとの)コンセントの部分は…」とテレビを少し動かしたとき、テレビに音量マークが映った。音もしっかり出る。これは…!!
テレビを見ると、右側面に音量などのボタンがあった。こっちにあったのか!! そこに外付けハードディスクが傾き、ボタン部分を圧迫していた。これで、音量部分が不調になっていたのだ。
スタッフ氏より先に故障の事情が分かったが、スタッフ氏は確認のため、『アダルト』画面のボタンを押そうとするから、それはいいです、と慌てて断った。
まったく、分かってみれば他愛無いことだった。たんに私が恥をかいただけだった。
私はビデオを観る合間にブログも書く。本当はビデオ鑑賞に専念したいところだが、そうもいかない。午前2時少し前にアップをして、フトンにもぐった。
明けて6日(月・振替休日)・ゴールデンウィークの最終日は、7時半ごろに起きた。前述したとおり、きょうは高千穂を行く。
前日にホテルで入手したバスの時刻表を見ると、高千穂バスセンター行きは08時45分というのがあった。
懸念したバス料金だが、延岡は大分県でなく、宮崎県だった。6日前に宮崎入りしてから、一周して戻ってきたのである。ということは、あの「宮崎交通バス1日乗り放題バス乗車券」(1,800円)が使えるのであった!!
ホテルをチェックアウトし、延岡駅前に行くと、バスターミナルがあった。
窓口が開くのを待つが、この間に、昨夜買った菓子パンを頬張る。何とも安い朝食になってしまった。
窓口で「1日乗車券」を買い、まずは一安心。まだ時間があったので付近を散歩していると、宝くじ売り場があったので、ミニロトとロト6を買う。ピックアップする数字は、中井広恵女流六段や、「角館の美女」の誕生日を絡めた。
宮崎交通バスは、数人の乗客を乗せ、定刻を1分遅れて発車した。
言うまでもないが、延岡-高千穂間は、かつて鉄路が通じていた。その距離50キロちょうど。そしてこの鉄道は、2度「廃線」になった、哀しい歴史を持つ。
かつては国鉄(JR)高千穂線だったが、1989年4月に第3セクター化し、高千穂鉄道に生まれ変わった。その後は細々と営業を続けていたが、2005年の台風14号で沿線が壊滅的打撃を受け、休止を余儀なくされた。しかし宮崎県や自治体は復興費用を捻出せず、高千穂鉄道は2008年、そのまま全線廃止となった。
現在も復活の道を諦めていない団体もあるらしいが、一度廃止になった鉄道が復活したためしはない(あるのかもしれないが、私は知らない)。これは夢物語で終わるだろう。
ただしそんなわけだから、沿線はバスからでも、廃線跡が分かると思った。
バスは旧道を走る。これはやがて槇峰や日之影を通るから、廃線跡をトレースするはずだ。
果たしてバスからは、チラチラ廃線跡が見えた。ちょっと、感激を抑えきれない。09時50分ごろ、日之影駅前を通る。高千穂鉄道の車両がいくつか見えたが、ちょっと様子がおかしい。
ここには帰りに下車するから、そのとき確かめよう。
10時16分、高千穂着。このひとつ先がバスセンターで、高千穂峡の入口でもあるのだが、私の目的は高千穂「駅」なので、ここで降りる。
近くの階段を下っていくと、高千穂鉄道の旧高千穂駅が見えてきた。懐かしい! 復活を考えているから当然とはいえ、現役時代の駅舎が保存されているのは喜ばしい。
駅舎に入るとスタッフがおり、駅構内入場料として100円かかると言われた。そのくらいなら、いくらでも払う。
トロッコ風のミニミニ列車が走っていたのでこの乗車も所望すると、800円とのことだった。ただしそれなら入場料はかからない。もちろん乗ることにする。
構内に入るが、現役のようで、うれしい。ローカル鉄道は冬の時代で、これからもあっちこっちで鉄道の廃止はあるだろう。そのとき、駅舎とその施設をどう活かすかが、これからは重要視されると思う。
「切符」には、「高千穂あまてらす鉄道(株)発行」とあった。この会社が、高千穂鉄道の復活を目指しているのだ。
しばらくすると、その列車?が戻ってきた。これは「スーパーカート」と呼ばれ、数人乗りの簡易的な荷台に、エンジンが搭載されていた。定員は6~7名だが、私の乗るべき10時30分のスーパーカートは、満員だった。
定刻を8分遅れて出発。運転士は初老の男性だ。カートは旧高千穂鉄道の線路を、意外に早く走る。日射しがきついが、涼風が気持ちいい。一部が高架になっているので、景色もよい。
数分後カートは、約2キロ先の天岩戸駅に着いた。こちらも、ホームやレールはかなりくたびれていたが、駅名板はしっかり残っていた。
カートはここで引き返すが、本音を言えば、もうひとつ先の駅に行きたいのだ。天岩戸-深角(ふかすみ)間には高千穂橋梁があり、その高さ105mは、かつては日本一だった。私はこの橋梁を味わうため、高千穂-深角間を往復したこともある。
天岩戸駅付近をしばし散策したあと、高千穂駅に戻った。駅構内には現役時代の車両が展示されている。これはイベント時に動かすらしい。すなわち、まだ現役ということだ。
備え付けのヘルメットをかぶり、見学する。同じ社会科見学なら、やはりこの類のほうが楽しい。
私は大いに満足して高千穂駅を辞し、バス停へ向かう。下りは階段を使ったから、上りは坂道を歩く。と、何かの店があった。「ディンプルアート」の看板が出されている。
何か、体験型の代物らしい。店のお姉さんが、いかがですか、と言う。私はそういうのはダメなので…と手を振り、そのまま坂道を登った。
まだ高千穂駅を楽しんだだけだが、もう引き返さなければならない。福岡行きの高速バスならもう少し時間が取れたのだが、これも仕方ない。
ちなみに高千穂峡も興味はなくはないが、あそこは彼女とボートで楽しみたい。そんなわけで高千穂は何度か訪れたが、高千穂峡はいまだに訪れたことがないのであった。
さてバス停に立つが、次の延岡行きは、まだ1時間以上ある。
さっきのお姉さん、ちょっと中倉宏美に似ていたな…。
私はしばし思案すると、踵を返した。
(つづく)