一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

九州旅行17・ディンプルアート

2013-07-05 00:10:15 | 旅行記・G.W.編
私は引き返し、「ディンプルアート」の店に入った。店内はそれほど広くなく、これ一本で勝負しているようだ。中倉宏美女流二段そっくりの店員さんが歓迎してくれた。
「ディンプルアート」とは、特殊な顔料が入っているチューブ状の管を筆代わりに、ガラスの板に描くものである。その出来上がりはステンドグラスにウリ二つだ。完成品(1,500円)も売られているが、ここでは体験で作ることができる。私はもちろん、そちらを選ぶ(体験料込2,000円)。
作業時間は約1時間とのこと。これはバスの待ち時間にちょうどいい。
土台となる写真立て大のガラスにはいくつかデザインがなされていて、好みのものをチョイスする。私は高千穂峡のそれを選んだ。
ほかに客はいないので、マンツーマンでの指導となる。ちょっと緊張する。
作業開始。こうした作業は配色が大事である。顔料は乾くと色が変わるから、それも勘案して選色しなければならない。
といっても私には分からないので、けっきょくお姉さんの選色をそのまま受け入れ、カリカリ色を塗っていく。色が混じってしまうのを防ぐため、左、右、左、右、と交互に塗るのがコツらしい。「9五」を塗ったら次は「1五」、「9七」を塗ったら次は「1三」という按配である。
しかし色塗りの話だけでは間が持たないので、世間話などをする。お姉さんはここに勤め始めて日が浅いらしい。さらに聞くと、この店は、社長の意向としては、大勢の旅行客がくる「道の駅」に出したかったという。
しかし予算の関係で断念。それでここに出店したのだが、高千穂駅に訪れる客は鉄道好きが多いので、この店はなかなか認知されないという。まあ、そうであろう。
そんなおしゃべりがなかなか楽しいが、確かに鉄道好きの自分がここにいるのが不思議だ。LPSA芝浦サロンで宏美女流二段に指導対局を受けているような錯覚にも陥った。
小一時間かかって、自分でも納得のいく力作が出来上がった。
会計は2,000円だが、私は手持ちのお札が五千円札以上しかなく、店側はお釣りがない、とのことだったので、ほかに1,500円の既製品を2つ購入した。旅の最後に、いい記念になった。
最後にお姉さんを写真に撮らせていただき、12時27分のバスに乗った。
12時53分、日之影駅前のひとつ前、日之影で降りる。すぐ前を流れる川の両岸から数本の糸が結ばれ、そこに大量の鯉のぼりが泳いでいたからである。
もちろん地元の人が泳がせたもので、けっこうな名物らしい。なかなかの壮観であった。
日之影駅前に向かう。もちろん、旧高千穂鉄道の駅である。ここは物産館が併設されており、その2階が温泉施設になっている。これは鉄道の現役時代からそうで、全国的にも珍しかった。
鉄道は廃止になったが温泉施設は残った。私は現役時代に利用したことがあるが、数年ぶりに利用するつもりだ。
空に高千穂鉄道の鉄路が見えてきた。左手中空の岩場(トンネル)から抜け出てきた鉄路が半円を描き、徐々に平地へ降りてくる。それはまるで現役のようで、このあたりをトロッコ電車が復活すれば、さぞ楽しいと思う。
路盤の上を歩き、旧日之影温泉駅に着く。と、ホームの端に、高千穂鉄道の車両が保存されていた。と思いきや、それが前後2つに切断されている。宿泊施設であった。
だいぶ昔、釧路駅構内に留め置かれている車両で宿泊したことがあるが(もちろん施設で、400円だった)、そのときは大人数での雑魚寝だった。
しかしこちらはベッドも設置されており、それなりの料金を取る感じだ。しかし私は利用できない。今日中に東京へ帰らなければならない。
早速日之影温泉に入るが、いい湯だ。猫の額のような露店風呂があり、そこから表を眺める。現役時代はここから列車が見え、鉄道マニアには堪らないシチュエーションだった。
入浴後は1階に降り、やや遅い昼食となる。チキン南蛮定食(800円)が美味だった。
食後はお約束の白牛乳。今回は何本、牛乳を飲んだだろうか。
物産館は駅の待合室でもあったので、鉄道時代の時刻表が残っていた。数えると、延岡行きは13本あった。しかし現在の駅前発延岡行きバスは、6本しかない。
鉄道がなくなると、街は確実にさびれる。旧高千穂鉄道沿線の奮闘を祈る。
14時43分のバスに乗る。これが九州最後のバスだ。バスは岩場のスレスレのところを行く。列車にはない味で、これがバス旅の醍醐味である。
約1時間ほど揺られ、15時45分、延岡バスセンターに戻ってきた。しかしどうせなので、南延岡まで行こうと思う。1日乗車券の利用だからおカネはかからないし、すこしでも距離を稼いで、のちのJR料金を節約したかった。
終点、南営業所前のひとつ前、南延岡駅前で降りる。
次の下り日豊本線は16時37分である。ちょっと時間があるので、どこか喫茶店でケーキセットでも食べたいが、あいにくそういった施設はない。
私は南延岡駅に入り、待合室のベンチに座って待つ。
長かった九州旅行も、次の普通列車が九州内の最終ランナーとなる。ここにいても仕方ないので、ホームで待つことにした。
と腰を浮かしかけたとき、芸能人と見紛うヒラヒラのミニスカートをまとった超美少女が入ってきた。カモシカ(の脚)のような綺麗な脚だった。
私は改札を抜け、ホーム端のベンチに座り待つ。楽あれば苦ありだ。帰京したあとのことを考えると、問題山積で、憂鬱になってくる。
宮崎空港行きの普通列車が来た。ちょっと列車が行きすぎたので、私は戻る形になる。と、左のベンチに、先ほどの超美少女がいた。友人とふたりだ。彼女もこの列車に乗るのだ。
「あ…」
私は一瞬戸惑う。彼女に…声を掛けるべきではないか?
しかし列車の発車時刻である。私は戸惑ったまま、彼女らと同じドアから、747M列車に乗り込んだ。
(つづく)
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