一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

九州旅行18・最後の最後まで

2013-07-06 01:47:57 | 旅行記・G.W.編
列車は4両編成だったか。座って座れないこともなかったが、私は最後尾車両の運転席後方部分に立った。ここからなら車窓のあらゆる景色が見える。
超美少女の2人組は、後ろから2番目の、進行方向右側のシートに座っていた。外はやや陽が傾いたが、相変わらずいい天気だ。
16時57分、列車は日向市に着いた。ここであの2人組が降りた。そうか。ここで下車するのか…。
ちょっぴり残念に思っていると、超美少女が血相を変えて戻ってきた。いま自分が座っていたシートの辺りを確認する。しかしすぐ、再び列車を降りた。
やっぱり!
「あの、君、忘れ物してたよね、茶色の紙袋の! あれ、南延岡のホームのベンチに忘れてたよ! ああー、やっぱり忘れ物かどうか聞くべきだった、ごめん! 紙袋は南延岡の駅で保管してあると思うから、ここの駅から問い合わせてもらうといいよ!」
まだ辛うじて開いているドアから、私は彼女に叫んだ。
――あのとき、彼女が立ったあと、ベンチに大判の紙袋が残っていた。もちろん、中に何か入っていた。
周りに乗客はいなかったから、あれは明らかに彼女の忘れ物だった。しかし、彼女のあまりの美しさが、私を妙に敬遠させた。私のような人間のクズが、あんな超美少女に話し掛けてはいけないと思ったのだ。
しかしやっぱり、考え過ぎだった。たとえ変質者に間違われようとも、聞くだけ聞いてみるべきだったのだ。
日本人は原則的に、人様のものは盗まない。あの紙袋は、南延岡駅に保管されたと信じる。無事、彼女の元に戻ることを祈るのみである。
私は打ちひしがれたまま、列車は田園の中を走る。左手に時折見える海は日向灘か。東京に帰りたくない。
17時51分、因縁の佐土原に着いた。これで九州を一周した。旧妻線の廃線跡を求めて右往左往したのは5日前のことなのに、もう2か月ぐらい経ったような気がする。
宮崎神宮、18時07分着。私が乗るべき飛行機は19時50分宮崎空港発のANA618便だ。この次の列車に乗っても間に合うが、その間が20分では、途中下車する意味もない。宮崎神宮へのお参りは、次回の楽しみとしよう。
宮崎着18時10分。今回の旅行は、ここ宮崎駅から始まったといってもいい。温泉、イベント、廃線跡探訪…。この1週間は、本当に濃密だった。こんなに長い休暇はもう取れないだろうから、よけいその感を強くする。
列車は1分待って、18時11分に発車した。
田吉着、18時22分。ここで線路は二手に別れ、ひとつは宮崎空港駅に向かうのである。
しかし私は、ここで下車した。南延岡(延岡も同じ)から田吉までは1,600円だが、宮崎空港までだと、1,720円に料金が上がるのである。
田吉から宮崎空港までは、鉄道距離にして1.4km。このくらいは徒歩圏内である。そしてこの道は、もう何度も歩いたことがある。ここで120円を浮かせることが、後の旅行に利いてくると信じた。
私は車掌さんに1600円区間の切符を渡すと、宮崎空港に歩を進めた。
(おわり)
コメント
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