続いて森内俊之竜王の謝辞。しかし言葉が詰まって、出てこない。天野貴元氏の波乱万丈の人生を思い、こみ上げるものがあったのだろう。
次は森信雄七段の謝辞。
「最近は弟子の活躍で呼ばれることが多いんですが、今回は私が主役ですね。『逃れ将棋』の題名は、100ぐらい考えました。家で問題を考えるのが楽しかった。これからは将棋のいろいろなジャンルを見直したい」
森七段はかつて将棋ペンクラブの大賞を2度受賞しているが、過去は代読で、今回は初めての来京となった。それほど今回の受賞は誇らしいものだったのだろう。
最後に杉本昌隆七段の謝辞。
「大賞優秀賞は、将棋でいえば準優勝ですか。でも上が森先生なら仕方ないです」
いかにも勝負師らしい謝辞である。杉本七段は若いころ森七段によく晩ご飯をごちそうになったそうで、連盟で森七段を見つけると、その周りをふらふらして、お声が掛かるのを待っていたという。
今回は相振り飛車の本で受賞だが、このテーマで過去7冊刊行しているそうで、10冊を目標にする、とのことだった。
ここで受賞者全員の記念撮影。壇上中央に天野氏。その横に森内竜王だ。先ほど杉本七段が大賞を優勝に例えたが、それでいうなら、今回の天野氏は、森内竜王を抑えて堂々の優勝を飾ったことになる。自身も似たようなことを述べていたが、勝負は将棋だけではないのだ。天野氏は、実にいい顔をしていた。
さて、これでようやく乾杯となる。各自にビールが注がれる。まだグラスが回ってない人もいたので、私がグラスを調達すると、渡部愛女流初段も手ぶらだった。
で、私は急遽渡部女流初段に注ぐ。その横には室谷由紀女流初段がいる。手を伸ばせば届く、けっこうな至近距離である。しかし彼女の手にはすでにビールが注がれている。
私は無言で、その場を離れるしかなかった…。
乾杯の音頭は、天野氏の師匠の、石田和雄九段。昨年に続いての来場である。
「黙って乾杯をしようと思ったんですけど、一言だけ!」
に場内爆笑である。「……天野君。(私は彼の)名人の就位式に呼ばれることを夢見てたんですけど…。でも違うジャンルでこうやって表彰される、それもいいでしょう。いま彼は闘病中だけれども、持将棋、千日手に持ち込んでもらいたい。本日はおめでとう!」
ちょっとホロッときて、乾杯。私はふだん酒は飲まないが、1杯目のビールはうまいと思う。
ここからしばし歓談である。場内後方には、安食総子女流初段、室谷女流初段、渡部女流初段の3人が仲良く談笑している。あそこに何とか食い込みたいが、さすがに見えない壁がある。安食女流初段か渡部女流初段が私に気付いて手招きする…などということはあり得ないから、私は指を咥えて見つめるのみである。
しょうがないから、中央にある料理を持ってくる。今年は昨年に比べ、少しグレードが下がった気もするが、将棋ペンクラブはおカネがないので、これでいいのである。
後ろに滝誠一郎八段がいる。滝八段は早投げの棋士として有名である。投げる時の心境などを聞いてみたかったのだが、わずかなタイミングのズレで、あっちに行かれてしまった。
3女流棋士の周りにはファンがチョロチョロと群がり、記念撮影なんかをしている。6月のパーティーだったら有料だが、ここでは、もちろん無料である。いまはバトルロイヤル風間さんの撮影だ。バトルさんも実にいい笑顔である。
私もスマホを持っているのでお願いしたいところだが、私は自分が写真に写るのが大嫌いなので、結局言いそびれてしまう。
湯川恵子さんがいらしたので、挨拶する。
「私、この前『なんでも鑑定団』のビデオを観直したんですよ。あの小笠原のテーブル、350万円ですもんね、すごいなあ」
恵子さんの受賞を全然お祝いしていないところが、我ながらスゴイ。まあ、私の気持ちは伝わっているだろう。
先にも書いたが、きょうは報道関係者が多い。棋士も多く、お馴染みの窪田義行六段ほか、幾人かの男性棋士が確認できる。
そこに三浦弘行九段が見えた。三浦九段は将棋ペンクラブを応援してくれているが、今回は観戦記大賞受賞局に三浦九段が登場していた縁もある。
さて、指導対局の時間になった。安食女流初段と渡部女流初段の3面指しである。
予定では安食女流初段に教えていただき、舟囲いの▲5八金に、△5七歩とアジのたたきを入れてもらいたいのだが、渡部女流初段を無視するわけにはいかない。
まず、安食女流初段にひとり目が入った。次に渡部女流初段にひとり入った。やがて安食女流初段にふたり目が入った。もうこのあたりで10分くらい経過していたので、私が入っても問題ない。しかし私が安食女流初段に入ったら、対局者が安食3:渡部1になり、バランスを欠く。そのうち安食女流初段に3人目の挑戦者が入り、私は渡部女流初段に指導をお願いすることにした。何か、安食女流初段にウソをついてしまった…。
渡部女流初段と駒を並べながら世間話。
「大野教室にはまだ行ってるんですか」
と渡部女流初段。
「行ってますよ。あ、明日も行くつもりです」
あっ、勢いで言ってしまった。明日は大野教室に行かねば…。「渡部先生もまた、来てくださいよ」
私がそう言うと、渡部女流初段はうなずいた。
その渡部女流初段は、「LPSA麹町サロンin DIS」で活躍中である。渡部女流初段の回はすぐに予約が埋まり、年末(12月25日)までほぼ満席である。クリスマスに渡部女流初段としっぽりできる将棋ファンが、現在7名決まっている。
対局開始。私の▲2六歩に渡部女流初段は△8四歩。以下私のひねり飛車になった。
壇上では、きょう参加の棋士の挨拶が行われる。
まずは神谷広志八段。私も注目して拝聴したいところだが、こっちはそれどころではない。私は左銀を▲5七銀と上がり、▲4六銀。ここら辺はどれも一局なのだろうが、微妙に疑問手を指しているような気がする。壇上には三浦九段が上がっているようだ。
しばらくして、背後に森七段の声が聞こえた。談笑しているようだが、目はこの盤面に注がれているような気がする。
私はかつて、「将棋マガジン」の懸賞詰将棋で、森七段の色紙が当たったことがある。それを森七段のブログのコメント欄に書いたら、丁寧に返信してくれた。
そのときの御礼を述べたいと思うのだが、いまはそのタイミングではない。
私は▲3七桂から▲5五歩△同歩▲同銀。しかしそこで△3五歩と桂頭を突かれて弱った。
壇上には窪田六段が上がっているようだ。
「現在はとりたてて述べることはないんですが…」
と、このコメントだけで爆笑を取っている。
さらに、室谷女流初段が壇上に上がったようだった。
(つづく)
次は森信雄七段の謝辞。
「最近は弟子の活躍で呼ばれることが多いんですが、今回は私が主役ですね。『逃れ将棋』の題名は、100ぐらい考えました。家で問題を考えるのが楽しかった。これからは将棋のいろいろなジャンルを見直したい」
森七段はかつて将棋ペンクラブの大賞を2度受賞しているが、過去は代読で、今回は初めての来京となった。それほど今回の受賞は誇らしいものだったのだろう。
最後に杉本昌隆七段の謝辞。
「大賞優秀賞は、将棋でいえば準優勝ですか。でも上が森先生なら仕方ないです」
いかにも勝負師らしい謝辞である。杉本七段は若いころ森七段によく晩ご飯をごちそうになったそうで、連盟で森七段を見つけると、その周りをふらふらして、お声が掛かるのを待っていたという。
今回は相振り飛車の本で受賞だが、このテーマで過去7冊刊行しているそうで、10冊を目標にする、とのことだった。
ここで受賞者全員の記念撮影。壇上中央に天野氏。その横に森内竜王だ。先ほど杉本七段が大賞を優勝に例えたが、それでいうなら、今回の天野氏は、森内竜王を抑えて堂々の優勝を飾ったことになる。自身も似たようなことを述べていたが、勝負は将棋だけではないのだ。天野氏は、実にいい顔をしていた。
さて、これでようやく乾杯となる。各自にビールが注がれる。まだグラスが回ってない人もいたので、私がグラスを調達すると、渡部愛女流初段も手ぶらだった。
で、私は急遽渡部女流初段に注ぐ。その横には室谷由紀女流初段がいる。手を伸ばせば届く、けっこうな至近距離である。しかし彼女の手にはすでにビールが注がれている。
私は無言で、その場を離れるしかなかった…。
乾杯の音頭は、天野氏の師匠の、石田和雄九段。昨年に続いての来場である。
「黙って乾杯をしようと思ったんですけど、一言だけ!」
に場内爆笑である。「……天野君。(私は彼の)名人の就位式に呼ばれることを夢見てたんですけど…。でも違うジャンルでこうやって表彰される、それもいいでしょう。いま彼は闘病中だけれども、持将棋、千日手に持ち込んでもらいたい。本日はおめでとう!」
ちょっとホロッときて、乾杯。私はふだん酒は飲まないが、1杯目のビールはうまいと思う。
ここからしばし歓談である。場内後方には、安食総子女流初段、室谷女流初段、渡部女流初段の3人が仲良く談笑している。あそこに何とか食い込みたいが、さすがに見えない壁がある。安食女流初段か渡部女流初段が私に気付いて手招きする…などということはあり得ないから、私は指を咥えて見つめるのみである。
しょうがないから、中央にある料理を持ってくる。今年は昨年に比べ、少しグレードが下がった気もするが、将棋ペンクラブはおカネがないので、これでいいのである。
後ろに滝誠一郎八段がいる。滝八段は早投げの棋士として有名である。投げる時の心境などを聞いてみたかったのだが、わずかなタイミングのズレで、あっちに行かれてしまった。
3女流棋士の周りにはファンがチョロチョロと群がり、記念撮影なんかをしている。6月のパーティーだったら有料だが、ここでは、もちろん無料である。いまはバトルロイヤル風間さんの撮影だ。バトルさんも実にいい笑顔である。
私もスマホを持っているのでお願いしたいところだが、私は自分が写真に写るのが大嫌いなので、結局言いそびれてしまう。
湯川恵子さんがいらしたので、挨拶する。
「私、この前『なんでも鑑定団』のビデオを観直したんですよ。あの小笠原のテーブル、350万円ですもんね、すごいなあ」
恵子さんの受賞を全然お祝いしていないところが、我ながらスゴイ。まあ、私の気持ちは伝わっているだろう。
先にも書いたが、きょうは報道関係者が多い。棋士も多く、お馴染みの窪田義行六段ほか、幾人かの男性棋士が確認できる。
そこに三浦弘行九段が見えた。三浦九段は将棋ペンクラブを応援してくれているが、今回は観戦記大賞受賞局に三浦九段が登場していた縁もある。
さて、指導対局の時間になった。安食女流初段と渡部女流初段の3面指しである。
予定では安食女流初段に教えていただき、舟囲いの▲5八金に、△5七歩とアジのたたきを入れてもらいたいのだが、渡部女流初段を無視するわけにはいかない。
まず、安食女流初段にひとり目が入った。次に渡部女流初段にひとり入った。やがて安食女流初段にふたり目が入った。もうこのあたりで10分くらい経過していたので、私が入っても問題ない。しかし私が安食女流初段に入ったら、対局者が安食3:渡部1になり、バランスを欠く。そのうち安食女流初段に3人目の挑戦者が入り、私は渡部女流初段に指導をお願いすることにした。何か、安食女流初段にウソをついてしまった…。
渡部女流初段と駒を並べながら世間話。
「大野教室にはまだ行ってるんですか」
と渡部女流初段。
「行ってますよ。あ、明日も行くつもりです」
あっ、勢いで言ってしまった。明日は大野教室に行かねば…。「渡部先生もまた、来てくださいよ」
私がそう言うと、渡部女流初段はうなずいた。
その渡部女流初段は、「LPSA麹町サロンin DIS」で活躍中である。渡部女流初段の回はすぐに予約が埋まり、年末(12月25日)までほぼ満席である。クリスマスに渡部女流初段としっぽりできる将棋ファンが、現在7名決まっている。
対局開始。私の▲2六歩に渡部女流初段は△8四歩。以下私のひねり飛車になった。
壇上では、きょう参加の棋士の挨拶が行われる。
まずは神谷広志八段。私も注目して拝聴したいところだが、こっちはそれどころではない。私は左銀を▲5七銀と上がり、▲4六銀。ここら辺はどれも一局なのだろうが、微妙に疑問手を指しているような気がする。壇上には三浦九段が上がっているようだ。
しばらくして、背後に森七段の声が聞こえた。談笑しているようだが、目はこの盤面に注がれているような気がする。
私はかつて、「将棋マガジン」の懸賞詰将棋で、森七段の色紙が当たったことがある。それを森七段のブログのコメント欄に書いたら、丁寧に返信してくれた。
そのときの御礼を述べたいと思うのだが、いまはそのタイミングではない。
私は▲3七桂から▲5五歩△同歩▲同銀。しかしそこで△3五歩と桂頭を突かれて弱った。
壇上には窪田六段が上がっているようだ。
「現在はとりたてて述べることはないんですが…」
と、このコメントだけで爆笑を取っている。
さらに、室谷女流初段が壇上に上がったようだった。
(つづく)