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第2図以下の指し手。▲9三歩成△5四銀▲5三桂成△同玉▲6五桂△同歩▲4四角△同歩▲4一角△4三銀左▲5四飛△同玉▲5六香△5五歩▲同香△同玉▲6三角成△3六角(投了図)
まで、70手で植山七段の勝ち。
私は▲9三歩成と香を取った。香取りに歩を打ったのだから当然ともいえるが、これが疑問手だった。
植山悦行七段は△5四銀。分かっていたけど厳しい手で、次に△4五銀左▲同歩△同銀▲6六飛△4六桂の狙いがあり、しかも受けにくい。
おかしい…。さっきまで優勢だったのに、いつの間にか形勢が入れ替わっている。私は焦って▲5三桂成としたが、これは玉砕の攻めだった。
▲4一角に△4三銀左の味がいい。私は飛車を切って▲6三角成だが、これではダメだ。以下△4五歩ぐらいでも私の負けだろうが、植山七段はさらに鮮やかに、△3六角で決めた。これにて投了。
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感想戦。さっきまで私が優勢だったのにおかしい、何か決め手があるはずと、▲9三歩成で▲6五桂(参考図)を示してみた。
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結論はすぐに出た。「(上手が)ダメじゃないですか」と植山七段。すなわち、この手に△8八角成なら▲5三桂左成△4一玉▲8八銀。また△6二金は、▲4四角△同歩▲5三桂左成。いずれも中央突破が約束され、これで下手が勝勢だった(註・第3の手、△4五銀▲同歩△4六桂で上手もまだ戦えたようだ)。
歩頭に▲6五桂と跳ねる手は時々生じる手で、私が▲5六飛と回った時は、▲6五桂を絡めて中央突破の構想があった。
しかしその前の△6四歩で▲6五桂を跳ねにくくされてから、微妙にこの筋が見えなくなっていた。
実際は△9三香の局面でも▲6五桂が成立していたわけだが、お互いの香車が見合いではちょっと指しにくい。むしろ植山七段が△6三銀と上がったほうがアタリがきつくなり、余計破壊力が増していた。
「やっぱり△1四飛の位置はおかしかったですかねえ」
「はあ、私としては中央で威張られているより、ここにいてくれたほうが…」
「(△6三銀で)△3三桂は跳ねられないもんねえ」
「それは▲同桂成△同金▲2六桂△1二飛▲3四桂△同金▲2三銀で」
感想戦では私に景気のいい話がポンポン出るのだが、勝負で負けては意味がない。私はまたもいい将棋を落とし、意気消沈。
「こういう将棋は指導対局向けではないね」
と植山七段がつぶやいて、感想戦は終了となった。
5局目はIi君とリーグ戦。ここまで私は6勝5敗で、完全な消化試合である。Ii君も勝ち星は稼いでいるが、やや対局数が少ない。
「オレの先手でいいでしょ?」
私はIi君に問うたが、Ii君は黙って振り駒をする。と金が5枚出て、文句なく私の先手となった。そのやりとりを向こうで植山七段が見て、ニコニコしていた。
▲7六歩△3四歩▲2六歩△8八角成。いまはプロ間で下火になった1手損角換わりだが、Ii君は現在もこれを得意戦法にしている。
私は1手得を活かして棒銀に出る。以前Kaz氏との将棋では▲4九金型にして苦戦したので、▲5八金と上がった。
頃はよしと仕掛ける。▲1五歩△同歩▲同銀△同香▲同香△1六歩(第1図)。ここで▲1八歩なら無難だが、歩切れになるのが気に食わない。思い切って▲1一香成とした。
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第1図以下の指し手。▲1一香成△1七歩成▲同桂△1九角▲2九飛△3七角成▲2一成香△1六歩▲4五桂△4四銀▲3三歩△4二金▲2四歩△1七歩成▲2三歩成△2八と▲7九飛(第2図)
▲4五桂では▲2四歩を利かしたい。もし△2四同歩なら▲4五桂△4二銀▲2四飛でうまいが、△2四同銀と取られて不可。それで▲4五桂を先に利かしたが、それから▲2四歩は遅い。
その後△1七歩成から飛車をいじめられ、不利になった。
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W氏とFuj氏が向こうでボソボソしゃべっている。当ブログの「似ているシリーズ」についてらしい。
「私は、久津女流初段とこじはるが似ている、には怒りましたよ」
「オレはやっぱり、北尾女流二段と若村麻由美は似ている、かなあ…。おれ、こじはるはそれほど好きじゃないから」
私は対局中なので、割って入るわけにはいかない。
さらに対局が佳境に入ったころ、Fuj氏が私にアイコンタクトをした(気がした)。Koh君のお母さんが見えたらしい。今は対局中だが、どうしようか。見に行こうか。
(つづく)