5月19日(土)は、東京・将棋会館で「将棋ペンクラブ関東交流会」があった。
いつもヒマな私だが、週末の外出は精神的にラクだ。何となく10時前に家を出て、適当な時間に、千駄ヶ谷駅に着いた。現在駅構内の工事中で、改札口が西寄りに移動していた。
将棋会館への街並みは、微妙に変わっていた。私は慢性的な引きこもりなので、街の変化には疎い。
鳩森八幡神社にお参りする。週末ではあるが、いつにない混雑だ。まさか「藤井効果」の余波でもあるまいが。
敷地内に「泣き虫しょったんの奇跡」の広告看板が設置されていた。瀬川晶司五段が主人公の、この秋公開の映画だ。私はほとんど興味はないが、映画のラストは気になる。すなわち「棋士になってハッピーエンド」だったら、ちょっと甘いと思う。棋士になってからがスタートなのだから。
ちなみに私が映画監督だったら、熊坂学五段か中尾敏之五段の映画を作る。
10時36分、将棋会館に入る。「関係者以外立入禁止」の、3階に上る感覚がいい。
4階の大広間に入り、In氏にお金を払う。いつもの幹事連中はいるが、A氏の姿はなかった。
今年の指導棋士は上野裕和五段と、中井広恵女流六段である。中井女流六段に空きがあり、In氏が対局を付けてくれた。
中井女流六段に挨拶する。中井女流六段にお会いするのは、何ヶ月か前に蕨将棋教室で指導対局を教わって以来。さらにその前となると、何年か前、教室の帰りに中華料理屋に入り、そこに中井女流六段が顔を見せた時となる(この中華料理屋「大味」は、6月1日の日本テレビNews every.「女房あっての美味繁盛店」で紹介された)。
私「お久しぶりです。手合いはどうしましょうか」
中井女流六段「なんで私が決めるんですか」
というわけで、平手にしてもらう。ただし平手の戦績は、私の1勝(2勝?)20数敗である。
初手からの指し手。▲7六歩△8四歩▲2六歩△8五歩▲7七角△3四歩▲6八銀△3二金▲7八金△7二銀▲2五歩△7四歩▲4八銀△7三銀(第1図)
中井女流六段はいつも通り、圧倒的な熟女ぶり。3面指しで、右の先客は飛車落ちだった。
▲7六歩△8四歩に、早くも作戦の岐路である。気分的には飛車を振りたいのだが、中井女流六段の左美濃or穴熊は、難攻不落だ。結局▲2六歩として、相居飛車となった。
数手後の▲6八銀に△3二金が今風で、素直に角は換えないのだ。
私は雁木に組むのか、自ら角を換えるのか。中井女流六段は方針を決めているようで、△7三銀と早くも出動してきた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/bb/9d2af55a358bbb3095915674cc3484eb.png)
第1図以下の指し手。▲2四歩△同歩▲同飛△4一玉▲2八飛△2三歩▲4六歩△6四銀▲4七銀△7五歩▲同歩△同銀(第2図)
私の左に対局者が入った。棋力は三段とのことだが、「せっかくの記念なので…」と平手を所望した。
第1図で私は飛車先の歩を切ったが、どうなのだろう。将棋ソフトはこの手を有効と見ないらしいが、でもやはり換えたくなる。
△4一玉に私は▲2八飛と引いたが、▲3四飛はどうか。以下△2八歩▲2四飛△2九歩成▲同飛△7七角成▲同銀△2二銀は、上手が歩切れではあるが、桂得で指せるのだろう。
△2三歩に▲4六歩。近い将来角交換になるから、4筋の歩を突いた。中井女流六段は予定通り△6四銀と繰り出し、△7五歩▲同歩△同銀。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/c2/221b177e362db8ca6125b1e31d0e80d0.png)
第2図以下の指し手。▲2二角成△同銀▲7七銀△7六歩▲6六銀△6四銀▲6八玉△5二金▲9六歩△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8二飛(第3図)
左の人は三間飛車。中井女流六段は左美濃に組み、万全の態勢だ。
私のほうは、後手(上手)に先攻され、私が受けに回っているという情けない展開。このままでは8筋が危ないので、バカバカしいが私から角を交換した。
△2二同銀に、▲7七銀と上がらなければならないのがつらい。
しかしこれでは▲6八銀と上がった意味がない。ということは私の▲4六歩~▲4七銀が不急で、▲6六歩~▲6七銀と雁木を急ぐべきだった。
中井女流六段は△7六歩。これに▲8八銀では元気が出ないので、▲6六銀とぶつける。中井女流六段は△6四銀と引き、ここまでは互角の流れだと思った。
というところで、私の▲9六歩が緩手。将来的な△9五角の王手を気にしたのだが、何をビビッているのか。▲5八金と上がるべきだった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/ad/f6040c0c2d0f15b129d32da75fdebdd9.png)
第3図以下の指し手。▲7二歩△同飛▲8三角△7三飛▲5六角成△8三角▲同馬△同飛(第4図)
▲7二角△8四飛▲6一角成△8三角▲同馬△同飛(第4図)
ここで▲7二歩と垂らしたのが狙いの一手。数手後▲5六角成でしてやったりと思ったのだが、よく見ると△8三角がある。4七銀が浮いているので、▲3四馬と逃げられないのだ。
実戦も△8三角と打たれ、私は▲8三同馬としたのだが、ここでは▲7四歩と頑張る手があったか。本譜は歩損だけが残ってしまった。
私は▲7二角から再度馬を作るが、中井女流六段は「ウン、(しょうがない)」という感じで、やはり△8三角。▲同馬△同飛で、さっきの局面に戻ってしまった。
だから▲9六歩では▲5八金だったのである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/6c/f82efdf8f7edbec6771aee9086105772.png)
第4図以下の指し手。▲5八金△8二飛▲5六銀△3三銀▲3六歩△3一玉▲4五歩△9四歩▲3七角△9五歩▲同歩(第5図)
私は1歩損しているから、千日手は歓迎である。しかし指導対局で下手がそれを望むのもどうかと思う。
もう一度▲7二角と打って様子を見る手もあったが、私は▲5八金と上がる。もちろん、これでも指せるという読みである。
中井女流六段は△9四歩と、悠長に端歩を突く。私は▲3七角と据え、敵飛のコビンを狙った。とはいえ、狙いが見え見えだ。
△9五歩には▲6五銀右と指し掛けたが、穏やかに▲9五同歩と取った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/b0/1c7e8129a41a74758abb0856e14fa48f.png)
第5図以下の指し手。△9八歩▲同歩△9七歩▲同桂△9五香▲6五銀右△9六歩(投了図)
まで、72手で中井女流六段の勝ち。
中井女流六段は△9八歩と打った。私は△9七歩と控える手を予想していたので、慌てた。△9四歩は悠長どころではない。最も早い攻めだったのだ。
左の将棋が終わり、中井女流六段の勝ち。三段氏、やはり平手では厳しかった。
私は△9八歩を取るしかないが、以下△9五香まで。ここで私は▲6五銀右とぶつけたが、△9六歩が厳しく、考えているうち、戦意を喪失してきた。
もはやこれまでと投了。エッ!? と中井女流六段は驚いたが、本人も自身の勝ちを確信していたはずだ。
「いやー、▲9五同歩で▲6五銀右でしたか」
私はすぐさまボヤく。
「でも△6四銀形だからね」
中井女流六段、単に銀交換しても上手がいいでしょう、という口ぶりである。
私は▲7二歩の垂らしがすべて。苦労して作った馬を消されてからは、もう下手が勝てない将棋だと思う。
ああ、貴重な指導対局だったのに、残念だった。当然ながら、中井女流六段は強かった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/78/e9e94ed9ec7f95275e25e3aa54eb4559.png)
(つづく)
いつもヒマな私だが、週末の外出は精神的にラクだ。何となく10時前に家を出て、適当な時間に、千駄ヶ谷駅に着いた。現在駅構内の工事中で、改札口が西寄りに移動していた。
将棋会館への街並みは、微妙に変わっていた。私は慢性的な引きこもりなので、街の変化には疎い。
鳩森八幡神社にお参りする。週末ではあるが、いつにない混雑だ。まさか「藤井効果」の余波でもあるまいが。
敷地内に「泣き虫しょったんの奇跡」の広告看板が設置されていた。瀬川晶司五段が主人公の、この秋公開の映画だ。私はほとんど興味はないが、映画のラストは気になる。すなわち「棋士になってハッピーエンド」だったら、ちょっと甘いと思う。棋士になってからがスタートなのだから。
ちなみに私が映画監督だったら、熊坂学五段か中尾敏之五段の映画を作る。
10時36分、将棋会館に入る。「関係者以外立入禁止」の、3階に上る感覚がいい。
4階の大広間に入り、In氏にお金を払う。いつもの幹事連中はいるが、A氏の姿はなかった。
今年の指導棋士は上野裕和五段と、中井広恵女流六段である。中井女流六段に空きがあり、In氏が対局を付けてくれた。
中井女流六段に挨拶する。中井女流六段にお会いするのは、何ヶ月か前に蕨将棋教室で指導対局を教わって以来。さらにその前となると、何年か前、教室の帰りに中華料理屋に入り、そこに中井女流六段が顔を見せた時となる(この中華料理屋「大味」は、6月1日の日本テレビNews every.「女房あっての美味繁盛店」で紹介された)。
私「お久しぶりです。手合いはどうしましょうか」
中井女流六段「なんで私が決めるんですか」
というわけで、平手にしてもらう。ただし平手の戦績は、私の1勝(2勝?)20数敗である。
初手からの指し手。▲7六歩△8四歩▲2六歩△8五歩▲7七角△3四歩▲6八銀△3二金▲7八金△7二銀▲2五歩△7四歩▲4八銀△7三銀(第1図)
中井女流六段はいつも通り、圧倒的な熟女ぶり。3面指しで、右の先客は飛車落ちだった。
▲7六歩△8四歩に、早くも作戦の岐路である。気分的には飛車を振りたいのだが、中井女流六段の左美濃or穴熊は、難攻不落だ。結局▲2六歩として、相居飛車となった。
数手後の▲6八銀に△3二金が今風で、素直に角は換えないのだ。
私は雁木に組むのか、自ら角を換えるのか。中井女流六段は方針を決めているようで、△7三銀と早くも出動してきた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/bb/9d2af55a358bbb3095915674cc3484eb.png)
第1図以下の指し手。▲2四歩△同歩▲同飛△4一玉▲2八飛△2三歩▲4六歩△6四銀▲4七銀△7五歩▲同歩△同銀(第2図)
私の左に対局者が入った。棋力は三段とのことだが、「せっかくの記念なので…」と平手を所望した。
第1図で私は飛車先の歩を切ったが、どうなのだろう。将棋ソフトはこの手を有効と見ないらしいが、でもやはり換えたくなる。
△4一玉に私は▲2八飛と引いたが、▲3四飛はどうか。以下△2八歩▲2四飛△2九歩成▲同飛△7七角成▲同銀△2二銀は、上手が歩切れではあるが、桂得で指せるのだろう。
△2三歩に▲4六歩。近い将来角交換になるから、4筋の歩を突いた。中井女流六段は予定通り△6四銀と繰り出し、△7五歩▲同歩△同銀。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/c2/221b177e362db8ca6125b1e31d0e80d0.png)
第2図以下の指し手。▲2二角成△同銀▲7七銀△7六歩▲6六銀△6四銀▲6八玉△5二金▲9六歩△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8二飛(第3図)
左の人は三間飛車。中井女流六段は左美濃に組み、万全の態勢だ。
私のほうは、後手(上手)に先攻され、私が受けに回っているという情けない展開。このままでは8筋が危ないので、バカバカしいが私から角を交換した。
△2二同銀に、▲7七銀と上がらなければならないのがつらい。
しかしこれでは▲6八銀と上がった意味がない。ということは私の▲4六歩~▲4七銀が不急で、▲6六歩~▲6七銀と雁木を急ぐべきだった。
中井女流六段は△7六歩。これに▲8八銀では元気が出ないので、▲6六銀とぶつける。中井女流六段は△6四銀と引き、ここまでは互角の流れだと思った。
というところで、私の▲9六歩が緩手。将来的な△9五角の王手を気にしたのだが、何をビビッているのか。▲5八金と上がるべきだった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/ad/f6040c0c2d0f15b129d32da75fdebdd9.png)
第3図以下の指し手。▲7二歩△同飛▲8三角△7三飛▲5六角成△8三角▲同馬△同飛(第4図)
▲7二角△8四飛▲6一角成△8三角▲同馬△同飛(第4図)
ここで▲7二歩と垂らしたのが狙いの一手。数手後▲5六角成でしてやったりと思ったのだが、よく見ると△8三角がある。4七銀が浮いているので、▲3四馬と逃げられないのだ。
実戦も△8三角と打たれ、私は▲8三同馬としたのだが、ここでは▲7四歩と頑張る手があったか。本譜は歩損だけが残ってしまった。
私は▲7二角から再度馬を作るが、中井女流六段は「ウン、(しょうがない)」という感じで、やはり△8三角。▲同馬△同飛で、さっきの局面に戻ってしまった。
だから▲9六歩では▲5八金だったのである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/6c/f82efdf8f7edbec6771aee9086105772.png)
第4図以下の指し手。▲5八金△8二飛▲5六銀△3三銀▲3六歩△3一玉▲4五歩△9四歩▲3七角△9五歩▲同歩(第5図)
私は1歩損しているから、千日手は歓迎である。しかし指導対局で下手がそれを望むのもどうかと思う。
もう一度▲7二角と打って様子を見る手もあったが、私は▲5八金と上がる。もちろん、これでも指せるという読みである。
中井女流六段は△9四歩と、悠長に端歩を突く。私は▲3七角と据え、敵飛のコビンを狙った。とはいえ、狙いが見え見えだ。
△9五歩には▲6五銀右と指し掛けたが、穏やかに▲9五同歩と取った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/b0/1c7e8129a41a74758abb0856e14fa48f.png)
第5図以下の指し手。△9八歩▲同歩△9七歩▲同桂△9五香▲6五銀右△9六歩(投了図)
まで、72手で中井女流六段の勝ち。
中井女流六段は△9八歩と打った。私は△9七歩と控える手を予想していたので、慌てた。△9四歩は悠長どころではない。最も早い攻めだったのだ。
左の将棋が終わり、中井女流六段の勝ち。三段氏、やはり平手では厳しかった。
私は△9八歩を取るしかないが、以下△9五香まで。ここで私は▲6五銀右とぶつけたが、△9六歩が厳しく、考えているうち、戦意を喪失してきた。
もはやこれまでと投了。エッ!? と中井女流六段は驚いたが、本人も自身の勝ちを確信していたはずだ。
「いやー、▲9五同歩で▲6五銀右でしたか」
私はすぐさまボヤく。
「でも△6四銀形だからね」
中井女流六段、単に銀交換しても上手がいいでしょう、という口ぶりである。
私は▲7二歩の垂らしがすべて。苦労して作った馬を消されてからは、もう下手が勝てない将棋だと思う。
ああ、貴重な指導対局だったのに、残念だった。当然ながら、中井女流六段は強かった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/78/e9e94ed9ec7f95275e25e3aa54eb4559.png)
(つづく)