一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

愛の△6六金

2018-06-06 01:14:02 | 女流棋士

図は5月30日(水)に福岡県飯塚市で行われた、第29期女流王位戦第3局・▲里見香奈女流王位VS△渡部愛女流二段戦で現れた局面である。
この△6六金が好手だったのだが、この金は何か駒を取ったのではない。7五にいたのをグイッと出たのである。こんな空捨て?の金、初めて見た。
もっとも控室ではこの手が予想されていて、中田功七段は「さすが渡部さんだ」と感嘆したという。
ただし若手棋士になると若干ニュアンスが違って、西田拓也四段は「この局面になれば一目」だった。
これがプロのスゴイところで、私はこの局面になっても、△6六金は絶対に浮かばない。仮に浮かんだとしても、▲6六同歩で何でもない、と読みを打ち切る。
ところが▲6六同歩は△4五歩▲同銀△5五桂▲5七金△6七桂成▲同金△4六角(王手飛車)で後手必勝になるのだ。
それで里見女流王位は▲6六同歩△4五歩に▲5五金と打ったが、渡部女流二段は△4六歩▲同金としたあと△1五歩と端歩を突く。これがまた好手で、以下渡部女流二段が押し切ったわけだった。
だがこのあたりもよく分からないところで、仮に私が△4六角までの変化を読んで△6六金を指したとする。しかし▲5五金と打った形は先手陣が抜群に厚く、少なくともアマチュア同士なら、先手が勝ちそうである。
でも実際は後手がよく、渡部女流二段ももちろん指せると読んでいたのだ。その感覚が素晴らしい。
少し戻るが、里見女流王位も△6六金では△6五金を予想していたというから、このあたりは渡部女流二段が読み勝っていたことになる。私は渡部女流二段の強さに改めて感嘆したのである。

また本局、渡部女流二段の歩使いも興味深かった。まず79手目、▲5五角の王手にいったん打った△4四歩。もし▲同角なら、のちの△6五歩が飛車の横利きで角取りになる仕掛けだ。
そして112手目、飛車にお伺いを聞く△5一歩。本譜は▲同飛成としたが、▲4一にと金がいるので、飛車(竜)の働きが減殺された。
さらに131手目、▲1九香の王手に、△1七歩の中合い。▲同香ならそこで△1三歩と受け、玉が1七から逃げられなくなる理屈だ。
私は以前から渡部女流二段の歩使いに感心しているが、本局はそれがいかんなく発揮された形だ。

ともあれこうして渡部女流二段が女流王位をカド番に追い込んだわけだが、3局を終わってこの数字になるとは思わなかった。
もうここまで来れば、どんな形でもいい。何とかあと1勝を女流王位からもぎ取って、タイトルを戴冠してもらいたいと願う。

ちなみに△6六金が指されたのは66手目。そして今日は6月6日なのだった。
コメント (2)
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