一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

香川女流三段の鮮やかな寄せ

2018-06-05 00:05:31 | 女流棋士

第1図は4月28日(土)、スポーツ報知に掲載された、女流名人リーグ1回戦・▲香川愛生女流三段VS△中村真梨花女流三段戦の指了図である。
次の一手を私も考えてみるが、さっぱり分からない。が、▲3四玉と潜る一手だと思った。
ちなみに香川女流三段はこの3手前に15分考え、第1図から次の手を4分で指した。
では、翌29日の指し手を見てみよう。

第1図以下の指し手。▲4一同飛成△同玉▲3二銀△同玉▲2三角△4二玉▲3一角△5一玉(第2図)

香川女流三段は▲4一同飛成と指した。つまり後手玉を詰ましにいったのだ。しかし周りに手掛かりはほとんどない。果たして詰むのだろうか。
△4一同玉に▲3二銀と捨て、▲2三角。これを△同玉は▲4一角△3三玉▲3四金以下詰み。よって中村女流三段は△4二玉と躱したが、香川女流三段は▲3一角と追撃する。盤上にかなり先手の駒が増えてきた。

第2図以下の指し手。▲6一金△同玉▲6四香△6二銀▲7二金△5一玉▲6二香成△同金▲4二銀△5二玉▲4一角成△4三玉▲5三銀成(投了図)
まで、香川女流三段の勝ち。

▲6一金捨てがまた好手。△同玉に▲6四香。歩切れを衝いての香が厳しく、中村女流三段はカナ駒をアイシャしなければならない。3月のC級2組最終戦・▲増田康宏五段(当時)VS△神谷広志八段の終盤の変化を見ているようである。
中村女流三段は△6二銀と合駒をするが、香川女流三段は数手後にこの銀を取り、最終▲5三銀成が最後の好手。ここで中村女流三段が投了した。

以下は△3三玉▲4二角成△2二玉▲3二馬寄△1二玉▲2三馬まで、ピッタリ詰み。素晴らしい!

むかし私が、植山悦行七段らと将棋の検討をしていた時のことである。
終盤の詰むや詰まざるやの局面になった時、私が「こんなのあらかた詰みじゃないですか」と言った。すると植山七段は「あらかた詰み、じゃなくて、すべての変化を正確に読み切らないとダメ」と諭した。植山七段にはいろいろ教えを乞うたが、この一言が最もためになった。
ちなみに香川女流三段の指し手は、▲3二銀以下全てノータイム。先の15分の熟考で、すべての変化を読み切ったのだ。
余談続きになるが、先日の女流王位戦第1局で、里見香奈女流王位がこの教えを体感していれば、好局を棒に振ることはなかった。
とにかく、あまりにも鮮やかな香川女流三段の寄せに、私は息をのむばかりだった。
女流棋士の実力は、男性棋士のそれと比べて1ランク低く見られがちだ。だが(たぶん)男性棋士もうなる指し手だっていっぱい見られる。本局がまさにそうである。そういった将棋が、将棋ファンの目にあまり触れられないのが、私は残念でならない。

なおこの将棋は、香川女流三段の注文で序盤から大乱戦になり、中村女流三段は居飛車で戦うことになった。
中村女流三段はつねに飛車を振っていたから、あるいはこれが公式戦初の居飛車かもしれない。
参考までに、第1図までの指し手を掲げておこう。

初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲9六歩△9四歩▲7七角△3五歩▲5六歩△4四歩▲6八銀△4二銀▲5七銀△4三銀▲8八飛△5四銀▲5八金左△6五銀▲7五歩△7六銀▲8六角△4五歩
▲6六歩△6二銀▲4八玉△6四歩▲7四歩△6五歩▲7三歩成△同銀▲5三角成△6六歩▲6八飛△6七歩▲同金△同銀成▲同飛△9九角成▲7四歩△6二銀▲6四馬△6三香▲同馬△同銀▲同飛成△5二金右▲5四香△5三歩▲同香不成△4四馬▲5二香成△同金▲2三竜△7六角▲7三歩成△2二香▲同竜△同馬▲8二と△6六金▲5八銀△8八飛
▲5五香△5七金▲同玉△5五馬▲同歩△5六歩▲同玉△6五銀▲4五玉△5八角成▲同金△同飛成▲3一飛△4一香(第1図)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする