一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

豊島名人先勝

2019-10-14 01:15:05 | 男性棋戦
第32期竜王戦七番勝負が11日に開幕した。今回は広瀬章人竜王と豊島将之名人の戦いで、竜王戦における竜名決戦は今期で5回目。ただし竜王一冠対名人一冠は初めてのケースである。
竜王か名人を獲得するだけでも大変な名誉と収入になるが、豊島名人は「竜王名人」になる可能性があるわけで、この2タイトルの保持でも、数千万円の収入になる。まさに大二冠である。
第1局の対局場は東京都渋谷区の「セルリアンタワー能楽堂」で、もはや東京ではお馴染みである。今回は台風19号が直撃していたが、対局場が都内だったのは幸いだった。
なお新橋の無料解説会は、第1局ということもあり、なし。もっともあったとしても、中止になっていた。
さて、対局である。先番は豊島名人になり、角換わり腰掛銀。大方の予想通りとなった。お互い右金を立って飛車をひとつ引くのもいつもの形だ。
40手目△4二玉に、豊島名人なら単騎の桂跳ねをやるかと思ったが、▲8八玉。さればと広瀬竜王が一足先に△6五歩と仕掛け、戦いが始まった。
数手後、豊島名人が左桂の交換に出た。その桂をどこに使うのかと思いきや、▲2四桂!(第1図)

まだ1日目の14時を過ぎたばかりというのに、ずいぶん早い勝負手である。しかしこの桂は後手玉が2二の時に指されるイメージがあるが、大丈夫だろうか。
果たして広瀬竜王は△2二金と寄った。▲2四桂を空振りにしようの意で、これも地味ながら勝負手のお返しである。
その後広瀬竜王は自陣を整備する。しかし豊島名人は角桂を手放したし、持駒もなしでは適当な攻め筋もない。封じ手の局面ではひとり手詰まり状態で、もし私が対局者で体調最悪だったら、バカバカしくて投げているところである。
2日目も数手進み、頃合いはよしとみた広瀬竜王は、△2四歩と桂を取る。▲同歩に△2八歩(第2図)が厳しい叩きで、▲同飛は△3九角があるため、この歩は取れない。豊島名人は▲4九飛と我慢したが、これでは豊島名人失敗であろう。

以後も広瀬竜王が少しのリードを保ち進めたと思うのだが、豊島名人が△2八歩の裏を衝いて▲2七香を据えたのもかなりの攻めで、金を取って▲2三同香成、さらに▲7五桂が▲8三桂成となってみると、いつの間にか左右挟撃になっている。どうも先手が有利になったようで、恐るべき豊島名人の指し回しだった。
劣勢に陥った広瀬竜王だが、140手目△3五歩(第3図)が鋭い突き出し。これは数手前に△3三香と打たされた手を活かしたもので、このあたりの広瀬竜王の指し回しは、前期七番勝負の第3局や第4局を思わせる。

もし私が先手だったら混乱して悪手連発というところだが、先手は百戦錬磨の名人である。
▲3五同角が冷静な応手だったようで、最後は豊島名人が広瀬竜王の王手ラッシュを躱し、173手までで先勝した。
不動駒2枚、双方1分将棋の大熱戦。かつて塚田正夫名誉十段が「勝つことはえらいことだ」と言ったが、こういう将棋を拝見すると、まさにそうだと思う。「偉い」と「エライ(大変)」の両方である。
豊島名人は先勝して、大二冠に向けて視界よし。いっぽうの広瀬竜王も、立ち上がりの不利は前期で経験済みである。第2局以降は巻き返してくるだろう。
第2局は23、24日である。
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