一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

プロの才能(久保九段の驚愕の一手)

2022-12-01 23:09:58 | 将棋雑記
プロとアマの将棋の違いは何か。端的には読みの量だと思うが、アマには思いもつかないプロの「次の一手」に出会うと、その発想力の差に平伏するのである。
11月13日放送のNHK杯は、豊島将之NHK杯と久保利明九段の一戦だった。豊島NHK杯はいつものイメージだが、久保九段は口ヒゲをたくわえ、真田広之の雰囲気がある。
将棋は先手久保九段の三間飛車に、豊島NHK杯は△4四歩と角道を止め、持久戦模様となった。しかし△7四歩と突いたりして、どうも作戦がハッキリしない。
対して久保九段は▲6五歩から▲6六銀と立ち、▲7五歩からの捌きを狙い、自分の将棋を指している感じだ。
豊島NHK杯は42手目△8六歩と垂らす(第1図)。

これを▲8六同飛なら△6五歩が飛車銀両取りである。解説氏もそう解説し、▲8六同飛の線はないと思われた。
ところがAIは一番手に「▲8六同飛」を推奨しているので驚いた。
なるほど▲8六同飛△6五歩には、堂々と▲同桂と銀取りに取る手がある。これで▲8六の飛には角のヒモがつくので、むしろ△8六角は歓迎だ。
解説氏も「▲8六同飛」を指摘され、絶句。しかしそれを久保九段が指すかどうかは別問題で、次の指し手が注目された。
そして待望の手は「▲8六同飛」!!(第2図)

俗に「対局者はよく読んでいる」というが、これには驚いた。▲8六同飛は、時間があればプロなら誰でも読める。そこを、短時間の将棋で指したところに久保九段の才能を感じるのだ。
そして何より、豊島NHK杯の読みの上をいったところにこの手の価値がある。
豊島NHK杯は△6四銀と逃げたが、△8六角と取らなかったことは誤算を認めたことになる。しかも△6四銀も疑問だったというから、泣きっ面にハチだった。
以下も久保九段の指し手が冴え、第3図は△7六角成まで(第3図)。

ここ、次に△7四歩で角が死ぬから、アマは▲7五角を助けようともがく。しかし久保九段はこの角に目もくれず、ゆうゆうと▲8一飛成。以下△6五桂▲1五歩△2五桂▲2六歩△9九飛成……と、お互いこの角は眼中にないかのごとく進んだ。
が、豊島NHK杯も△7四歩と角を取りにいかざるを得なくなる。その間に久保九段は右辺で有効な手を指し、豊島玉を寄せ切ったのだった。
まさに久保九段会心の一局。私のようなヘボとプロの指し手はまったく違う、と改めて痛感させられた将棋だった。
コメント
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