一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第34回将棋ペンクラブ大賞贈呈式(前編)

2022-12-13 17:39:43 | 将棋ペンクラブ
11月13日、東京・神保町の出版クラブホールで、「第34回将棋ペンクラブ大賞贈呈式」が行われた。昨年はリモート開催だったが、今年は有人での開催となる。定員制で飲食はなく談笑の時間はないが、そのぶん参加費は安く設定されている。かえって無駄な時間はなくなり、考えようによっては好都合だった。私はもちろん申し込み、出席が約束された。
当日、開場は13時30分。その建物らしきところに着くと、三上氏が案内をしてくれていた。
会場に入ると、椅子が整然と並べられていた。6×7で、関係者も含め50名前後の参加らしい。
近くには中倉宏美LPSA代表理事の姿があった。なんとなく目が合ったが、宏美女流二段の視線が私の頭頂部に向けられた気がして、別に話はしなかった。
Kid氏の姿もあった。こうした会では珍しいが、新顔が増えてくれるのはうれしい。
お天気キャスター・森田正光氏の姿もあった。氏は今回、最終選考委員のひとりだった。
部屋はほぼ満席になり、Kan氏の司会で贈呈式が始まった。
まずは最終選考委員・西上心太氏の講評である。
観戦記部門大賞・椎名龍一氏「2年連続の受賞です。指し手の解説、エピソードのバランスがよかった」
同優秀賞・藤井奈々さん「藤井さんは若いが、新聞社もポテンシャルがあると思い、観戦記を依頼したのだろう。構成がよくなれば、さらによくなる。これからの活躍に期待します」
文芸部門大賞・松浦寿輝氏「将棋でいえば、細い攻めを手繰り寄せる構成で、読み応えがあった」
松浦氏はベテラン作家で、数々の受賞歴があるうえ、文学賞の選考委員を務めている。将棋ペンクラブのような小さな団体が表彰するのも勇気が要るが、それでも贈ってしまうのである。
思えば2013年、将棋ペンクラブが米長邦雄永世棋聖と谷川浩司十七世名人を表彰したときも、似たような状況だった。それでも両氏は、快く賞を受けてくれた。私は受賞者の心の広さに感服したものだった。
同優秀賞・芦沢央さん「作者は女性だったんですね。5編とも面白かった」
私も、芦沢さんが女性だったのでビックリした。作品は私も拝読しているが、事前に知っていたら、もう少し違った感慨を持ったと思う。
技術部門大賞・石川泰氏「繰り返し読める技術書です」
同優秀賞・飯島篤也氏「大人のための書です」
特別賞・LPSAおよび蛸島彰子さん「私が子供のころから、蛸島先生は知られた存在でした。修業時代の話が興味深かった」
相変わらずキレのある、西上氏の講評だった。続いては、受賞者の言葉である。
椎名氏「2年連続観戦記大賞をいただきまして、いまでも信じられない気持ちです。ひょっとしたら、自分はいま死んでいるんじゃないだろうか。それで、自分の思い通りに事が運んでいるのではないだろうか。それなら自分の都合のいいように物事を考えて……」
藤井氏さん「観戦記を書かせていただいて3年になります。昨年の第34期竜王戦は、福島での第3局を書かせていただきましたが、地域の人々の、盛り上げようという思いを感じました。
当時もまだ東日本大震災の風評被害が残っていましたが、豊島将之先生が、魚などは、ちゃんと数値を測って問題ないのだから、こんなに安全な食べ物はないと、率先してお魚を召し上がっていたことに感動しました」
藤井さんのスピーチは長かったが、豊島九段のエピソードを聞いて、涙があふれてきて、参った。私もここ数年何の望みもないので、涙腺が弱くなり、難儀している。
松浦氏「駒の本質的な要素で小説を書けないかと考えておりました。書いてみて、将棋は洗練された遊戯だと改めて感じました。人類の知の結晶だと思います。将棋ペンクラブは、神々と私たちを仲介してくれる存在です」
松浦氏は、「いまさら」の受賞をよろこんでくれたうえ、将棋ペンクラブのことも大々的に持ち上げてくれ、会員のひとりとして恐縮至極だった。
芦沢さん「将棋は、祖父と兄がよく指していました。ある棋士の先生から、棋士が大長考したときは、直感で浮かんだ手を指していると聞き、感心しました。
今回、原稿の締切がないのに書き続けて、それが1冊の本になったことに驚いています」
石川氏「私は元奨励会ですが、3年前から将棋に携わるようになりました。でも、自分の伝えたいことと、読者の望みは違うということに困惑しました……」
飯島氏「優秀賞を受賞して、ほかの受賞者のメンバーに私が入って大丈夫か、と思いました。イイジマの凄い八段と間違えられたのかなと思いました。
今回、子供のころ、将棋がうまくなったころを思い出しながら、原稿を書きました。でも、書いては消し、消しては書きを繰り返し、編集部に原稿を送ったあとも読み直し、付箋を300数ヶ所貼りました」
飯島氏も元奨励会員で、石川氏の先輩にあたるらしい。白髪交じりの蓬髪は将棋関係者に見えずとっつきにくいが、コメントは面白かった。とくに、何度も何度も書き直す、という点は、毎日ブログを書いている私には我が意を得たりで、大いに賛同するところであった。
蛸島氏「この本は、大庭美夏さんの発案です。いい本を作りましょう、とみんなで語り合いました」
受賞の皆様が記念写真に収まり、前半は終了。午後は椎名氏と藤井さんのトークショーから始まる。
(つづく)
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