私が長崎県川棚のあんでるせんでマスターのマジックを愉しんでいたころ、東京では第12期女流王座戦第5局、里見香奈女流王座VS加藤桃子女流三段の一戦が行われていた。
ここまで里見、加藤、里見、加藤の勝利で2勝2敗。加藤女流三段には失礼ながら、大豪里見女流五冠に対し、4局を終えてタイ、とは予想しなかった。しかも負けては追い付き、負けては追い付きの繰り返し。里見女流王座に先行されたら萎えるところを、よくすがりついた。
女流王座戦の優勝賞金は500万円。もちろん大金だが、それよりも(女流)棋士は、おのが肩書をタイトル名で呼ばれることに無上の喜びを感じるのではなかろうか。それにはこの最終局が千載一遇のチャンスである。私はどちらが勝っても構わないが、ここまで来ては、加藤女流三段に肩入れしたくなった。
しかし結果は……。
将棋は里見女流王座の先手で、中飛車に振った。加藤女流三段は急戦を狙っていたわけではないが、里見女流王座が角交換辞さずだったので加藤女流三段もそれに応じ、その流れでチャンバラになった。
里見女流王座は▲5五歩△同歩▲同銀(第1図)。
ここで素人目には△5八歩が浮かぶ。棋書なら▲5八同飛△6九角▲6八飛△7八角成▲同飛△5五銀で後手優勢となる。
しかしもちろんそうはならず、本譜は△6九角に里見女流王座が▲4四銀とし、△5八角成▲同金となった。
そこで加藤女流三段の△8六歩が玄妙な手。私たちレヴェルなら△4四歩と銀を取り返しているが、対局者は深く読んでいるのだ。
しかもこの手が正着だったらしく、私は女流棋士の実力に改めて舌を巻いた。
将棋は以下も激戦になったが、加藤女流三段が形勢を損ねているとは思えない。しかし里見女流王座の攻めが森安秀光九段を思わせる粘着的で、加藤女流三段も持て余している感じを受けた。
そして最終盤、第2図で加藤女流三段が△2五桂と跳ねたのがマズかったらしい。私たちの大好きな「王手」だが、この場合は▲1八玉と引いた先手玉が深い。いわゆる「追う手」になってしまった。
正着は「端玉には端歩」の△1五歩がよかったようだ。このあたり、格言を多く知ることの重要性を再認識することができる。
以下199手まで、里見女流王座の勝ちとなった。
この長手数が激戦の証明である。里見女流王座は苦しみながらの防衛。これはこれで第一人者の勝ち方だろう。
いっぽうの加藤女流三段は、あと一歩まで里見女流王座を追い詰めながら、残念だった。しかし加藤女流三段はこの前までタイトルを保持していた。ほかの女流棋士とは実力が紙0.1枚違う感じだ。近い将来、加藤女流三段のタイトル戦再登場があるだろう。
両対局者とも、お疲れ様でした。
ここまで里見、加藤、里見、加藤の勝利で2勝2敗。加藤女流三段には失礼ながら、大豪里見女流五冠に対し、4局を終えてタイ、とは予想しなかった。しかも負けては追い付き、負けては追い付きの繰り返し。里見女流王座に先行されたら萎えるところを、よくすがりついた。
女流王座戦の優勝賞金は500万円。もちろん大金だが、それよりも(女流)棋士は、おのが肩書をタイトル名で呼ばれることに無上の喜びを感じるのではなかろうか。それにはこの最終局が千載一遇のチャンスである。私はどちらが勝っても構わないが、ここまで来ては、加藤女流三段に肩入れしたくなった。
しかし結果は……。
将棋は里見女流王座の先手で、中飛車に振った。加藤女流三段は急戦を狙っていたわけではないが、里見女流王座が角交換辞さずだったので加藤女流三段もそれに応じ、その流れでチャンバラになった。
里見女流王座は▲5五歩△同歩▲同銀(第1図)。
ここで素人目には△5八歩が浮かぶ。棋書なら▲5八同飛△6九角▲6八飛△7八角成▲同飛△5五銀で後手優勢となる。
しかしもちろんそうはならず、本譜は△6九角に里見女流王座が▲4四銀とし、△5八角成▲同金となった。
そこで加藤女流三段の△8六歩が玄妙な手。私たちレヴェルなら△4四歩と銀を取り返しているが、対局者は深く読んでいるのだ。
しかもこの手が正着だったらしく、私は女流棋士の実力に改めて舌を巻いた。
将棋は以下も激戦になったが、加藤女流三段が形勢を損ねているとは思えない。しかし里見女流王座の攻めが森安秀光九段を思わせる粘着的で、加藤女流三段も持て余している感じを受けた。
そして最終盤、第2図で加藤女流三段が△2五桂と跳ねたのがマズかったらしい。私たちの大好きな「王手」だが、この場合は▲1八玉と引いた先手玉が深い。いわゆる「追う手」になってしまった。
正着は「端玉には端歩」の△1五歩がよかったようだ。このあたり、格言を多く知ることの重要性を再認識することができる。
以下199手まで、里見女流王座の勝ちとなった。
この長手数が激戦の証明である。里見女流王座は苦しみながらの防衛。これはこれで第一人者の勝ち方だろう。
いっぽうの加藤女流三段は、あと一歩まで里見女流王座を追い詰めながら、残念だった。しかし加藤女流三段はこの前までタイトルを保持していた。ほかの女流棋士とは実力が紙0.1枚違う感じだ。近い将来、加藤女流三段のタイトル戦再登場があるだろう。
両対局者とも、お疲れ様でした。