いよいよ第36期竜王戦七番勝負が開幕した(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)。竜王は藤井聡太七冠。現在八冠目の第71期王座戦五番勝負を展開中で、当人とすれば3局で終わらせて竜王戦に専念したかっただろうが、王座4連覇の永瀬拓矢王座が相手では長期戦が予想され、「ダブルタイトル戦」は想定済みだったことだろう。
対するは、伊藤一族の出世頭、伊藤匠七段である。竜王戦サイトでは「文豪の雰囲気」の文字も躍ったが、あまりにも才がありすぎる科学者にも見え、まあ早い話が、伊藤七段こそが藤井竜王を倒すラスボスにも思えてきたのである。
第1局はおなじみ、東京・渋谷区の「セルリアンタワー能楽堂」である。私などは大舞台で対局したことなどもちろんないが、能楽堂は通常の対局室と違い空間が大きすぎ、しかも今年は観客も入るらしいからなお思考が妨げられる気もするのだが、あぁでも仮に対局者がそう思ったとしても、口に出せるものではないのだった。
将棋は伊藤七段が先番を引き、相掛かりとなった。角換わりとの二択だったので、まずは予想通りのスタートである。
お互い角道を開けると、伊藤七段がひとつ角を上がった。藤井竜王は角を換える。これには伊藤七段も金で取るよりないが、通常は銀で取る位置だ。そこを金で甘受したということは、それでも指せるという、相当な研究の裏打ちが予想された。
その後も、藤井竜王の桂跳ねに、伊藤七段が二段跳びを防ぎ6筋の歩を突くなど、どうも先手が面白くない。ただ繰り返しになるが、この局面は想定しやすく、それでも自分が指せる、と伊藤七段は見ているのだ。
だが、藤井竜王は8筋の継ぎ歩攻め。これが利いて、伊藤陣の8筋は凹まされた。こういう動きを見ると、トッププロも、私(たち)が知る平易な手筋を駆使しているにすぎない。ただ私(たち)は、そのタイミングを逸しているだけだ。
伊藤七段、飛車取りに角を打つ。これが、攻めては▲7四歩、将来の▲1二歩を見、守っては▲8九桂にヒモをつけた名角だ。
藤井竜王は、敵陣に角を打つ。双方、角の働きがよくなったほうが、そのまま形勢に直結する。
藤井竜王は、伊藤七段の左金を4段目まで引っ張りだす。これは金の働きを弱くして、ポイントを挙げたように思える。
形勢は微差で藤井竜王が良いようだが、このくらいの差は終盤でどうにでもなる。運命の2日目はいかに。
(つづく)
対するは、伊藤一族の出世頭、伊藤匠七段である。竜王戦サイトでは「文豪の雰囲気」の文字も躍ったが、あまりにも才がありすぎる科学者にも見え、まあ早い話が、伊藤七段こそが藤井竜王を倒すラスボスにも思えてきたのである。
第1局はおなじみ、東京・渋谷区の「セルリアンタワー能楽堂」である。私などは大舞台で対局したことなどもちろんないが、能楽堂は通常の対局室と違い空間が大きすぎ、しかも今年は観客も入るらしいからなお思考が妨げられる気もするのだが、あぁでも仮に対局者がそう思ったとしても、口に出せるものではないのだった。
将棋は伊藤七段が先番を引き、相掛かりとなった。角換わりとの二択だったので、まずは予想通りのスタートである。
お互い角道を開けると、伊藤七段がひとつ角を上がった。藤井竜王は角を換える。これには伊藤七段も金で取るよりないが、通常は銀で取る位置だ。そこを金で甘受したということは、それでも指せるという、相当な研究の裏打ちが予想された。
その後も、藤井竜王の桂跳ねに、伊藤七段が二段跳びを防ぎ6筋の歩を突くなど、どうも先手が面白くない。ただ繰り返しになるが、この局面は想定しやすく、それでも自分が指せる、と伊藤七段は見ているのだ。
だが、藤井竜王は8筋の継ぎ歩攻め。これが利いて、伊藤陣の8筋は凹まされた。こういう動きを見ると、トッププロも、私(たち)が知る平易な手筋を駆使しているにすぎない。ただ私(たち)は、そのタイミングを逸しているだけだ。
伊藤七段、飛車取りに角を打つ。これが、攻めては▲7四歩、将来の▲1二歩を見、守っては▲8九桂にヒモをつけた名角だ。
藤井竜王は、敵陣に角を打つ。双方、角の働きがよくなったほうが、そのまま形勢に直結する。
藤井竜王は、伊藤七段の左金を4段目まで引っ張りだす。これは金の働きを弱くして、ポイントを挙げたように思える。
形勢は微差で藤井竜王が良いようだが、このくらいの差は終盤でどうにでもなる。運命の2日目はいかに。
(つづく)