第36期竜王戦第3局(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)が25日から、北九州市で始まった。北九州市は小倉城や八坂神社、松本清張記念館や北九州モノレール、旦過市場など見どころが多いのだが、それはまた別の話。
七番勝負はここまで藤井聡太竜王の2勝。ちなみに過去35回の七番勝負で、最初の2局を片方が連勝したのは23回。そのうち18回は、連勝者がそのままシリーズを制している。それでなくても藤井竜王は通算勝率8割越えの怪物である。よって伊藤匠七段は、想像以上に危機的状況である。第3局に勝ったとしても……というところなのだが、とにかく勝たねば話にならない。
第3局は伊藤七段の先手で、双方飛車先の歩を突いて始まった。いわゆる相掛かりである。しかしいつものそれとは微妙に形が違い、伊藤七段は角道を開けないまま、玉を左上に上がった。角道を開けていないだけなのに、この形が奇異に映るのは、類例がほとんどないからだろう。
そして、伊藤七段の狙いが後に判明する。藤井竜王の7筋の歩を狙い、伊藤七段がそれを飛車で取ったのだが、銀で追われたとき、スーッと2マス引けたのだ。角道を開けなかった効果がここで出た。
そして次の手で、伊藤七段は浮き飛車の定位置に戻った。ふつうはこの位置にスムーズに戻れない。それが実現できたということは伊藤七段、気分的に一本取ったのではなかろうか。
そこから伊藤七段は右銀をスルスル出てゆく。藤井竜王は7筋の1歩を犠牲にして銀の出足を早めたわけだが、現実は伊藤七段の銀の出足が先になった。
さらにその銀が四段目まで進出し、これが初心者講座なら先手必勝、否、アマ同士でも先手の勝率が相当に高いだろう。そしてこの局面で、藤井竜王の封じ手となった。
伊藤七段、第2局までは有利の局面すら築けなかったが、ここまでは想定以上の進行の気がする。消費時間も藤井竜王より約1時間多く残しており、あぁこの残り時間もどうせ最後は藤井竜王に逆転されるのだろうが、来たる終盤に備え、時間があるに越したことはない。
封じ手は分からないが、立会人の森内俊之九段の予想は「△7七歩」だった。私には数時間かかっても浮かばないが、7筋の歩がないことを継承して、味な手だと思う。これに乗った。
(つづく)
七番勝負はここまで藤井聡太竜王の2勝。ちなみに過去35回の七番勝負で、最初の2局を片方が連勝したのは23回。そのうち18回は、連勝者がそのままシリーズを制している。それでなくても藤井竜王は通算勝率8割越えの怪物である。よって伊藤匠七段は、想像以上に危機的状況である。第3局に勝ったとしても……というところなのだが、とにかく勝たねば話にならない。
第3局は伊藤七段の先手で、双方飛車先の歩を突いて始まった。いわゆる相掛かりである。しかしいつものそれとは微妙に形が違い、伊藤七段は角道を開けないまま、玉を左上に上がった。角道を開けていないだけなのに、この形が奇異に映るのは、類例がほとんどないからだろう。
そして、伊藤七段の狙いが後に判明する。藤井竜王の7筋の歩を狙い、伊藤七段がそれを飛車で取ったのだが、銀で追われたとき、スーッと2マス引けたのだ。角道を開けなかった効果がここで出た。
そして次の手で、伊藤七段は浮き飛車の定位置に戻った。ふつうはこの位置にスムーズに戻れない。それが実現できたということは伊藤七段、気分的に一本取ったのではなかろうか。
そこから伊藤七段は右銀をスルスル出てゆく。藤井竜王は7筋の1歩を犠牲にして銀の出足を早めたわけだが、現実は伊藤七段の銀の出足が先になった。
さらにその銀が四段目まで進出し、これが初心者講座なら先手必勝、否、アマ同士でも先手の勝率が相当に高いだろう。そしてこの局面で、藤井竜王の封じ手となった。
伊藤七段、第2局までは有利の局面すら築けなかったが、ここまでは想定以上の進行の気がする。消費時間も藤井竜王より約1時間多く残しており、あぁこの残り時間もどうせ最後は藤井竜王に逆転されるのだろうが、来たる終盤に備え、時間があるに越したことはない。
封じ手は分からないが、立会人の森内俊之九段の予想は「△7七歩」だった。私には数時間かかっても浮かばないが、7筋の歩がないことを継承して、味な手だと思う。これに乗った。
(つづく)