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一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

衝撃の結末(中編)

2014-09-25 20:50:47 | 大野・植山教室
Fuj氏との対戦成績は私の14勝15敗。私はプロ棋士との指導対局は勝敗を記録していたが、棋友との勝敗はその限りではない。それでいてこのカードの勝敗数が分かるのは、Fuj氏が記録を取っているからだ。
たしか最初の16局は私の5勝11敗で、全然歯が立たなかった。…というのはジョークで、何でこんなに負けが込んだのかとんと分からぬ。
その後は私も追い上げ、本局に勝てば勝率5割である。私は並々ならぬ決意で臨んだ。
持ち時間は15分、秒読みは30秒。私の先手で▲7六歩△3四歩▲2六歩△4二飛。Fuj氏は居飛車党だが、最近は角交換四間飛車を得意にしている。私との前局もそうだった。
5手目私は▲6六歩。ここ▲2五歩は数手後の逆棒銀があるから躊躇するが、▲4八銀も後の△8八角成があり面白くない。▲6六歩は消極的だが、相手の得意も指させない、という私の主張であった。
私は▲9五歩から天守閣美濃に組む。しかし端を伸ばしたため、米長玉に変化できないのは誤算だった。
Fuj氏は△6五歩から1歩を交換する。私は右銀を7七に移動し、まずまずの形勢。さらに▲7九角と引いた。

以下の指し手。△6五歩▲同歩△同桂▲6六銀△4六歩▲同歩△6六角▲同金△5七銀▲6五金△4八銀不成▲5四金△同金▲5五歩△6五金▲7七桂△6四金▲5六桂△6三金引▲6四歩
△7三金寄▲6五桂△4七飛▲7七銀打△5七銀成▲3六角△5六成銀▲7三桂成△同玉▲6三金△8二玉▲7二金△同銀▲6三歩成△6五桂▲7二と△同飛▲4七角△同成銀▲6三飛
△7七桂成▲同銀△7三金▲6一飛成△7五桂▲同歩△4三角▲6五桂△6一角▲7三桂成△同飛▲6四金△4三角▲6五歩△7五歩▲7三金△同玉▲6四金△6二玉▲3一飛
△8九飛(第2図)

Fuj氏は△6五歩と合わせてきた。当然の▲同歩に△同銀は一手パスだから、Fuj氏は果敢に△同桂。
「おお桂馬か!」
私は叫ぶ。実はこの瞬間、この将棋はもらったと思った。
Fuj氏は角を切って△5七銀。ここで私の▲6五金が用意の手で、△4八銀不成の瞬間が甘いので、私は攻めに転じる。
▲5五歩~▲7七桂~▲5六桂~▲6四歩と敵金を躍らせ、△7三金寄に▲6五桂が気持ちいい跳躍。これでハッキリ勝ったと思った。もっともその前に金桂交換の駒損をしているから、それほど楽観できる形勢ではなかったようだ。
△4七飛に▲7七銀打と1枚使わされたのは痛かったが、先手は次に指したい手がいくらでもある。Fuj氏の指し手を注目していると、△5七銀成。指されてみればなるほどいう手で、▲5八金の飛車殺しを回避しつつ、遊び駒を活用したものだ。本局、私が最も感心した一手であった。
私は味を持たせて▲3六角だが、△5六成銀と桂を取られ、この桂損は存外大きいと思った。
△7二同飛に▲同角成とやっても、後手玉は詰まない。よって▲4七角と飛車を取るが、ここでは流れがおかしいと感じていた。
そして▲6三飛が悪手。これで形勢を損ねた。この飛車は将来の△6五桂を警戒したものだが、ビビリすぎ。▲6三銀と飛車を取りに行くのが明快だった。
このあたりは双方秒読みである。私の▲6一飛成に、Fuj氏△7五桂の跳び蹴り。Fuj氏の将棋には時々ハッとさせる手があるが、本局もそれが出た。やむない▲同歩に△4三角で王手竜がかかった。しかし私も被害を最小限に留め、2度目の▲6四金と打ったところは、私にも勝ち筋があるように思われた。
△6二玉に▲3一飛。しかしこれは薄い詰めろだった。予定は▲8二飛の王手だったのだが、強く△7一玉と当てられる手を気にした。しかし△7一玉なら、▲7四桂で先手が勝ち。この逸機は大きかった。
Fuj氏、ハッシと△8九飛。思いもしなかったところから王手が飛んできて、私は混乱した。
(つづく)
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衝撃の結末(前編)

2014-09-24 19:41:20 | 大野・植山教室
20 日(土)は埼玉県川口市にある「大野・植山教室」に行った。これは旧「大野教室」で、このたび改称したもの。教室は講師の大野八一雄七段のほかに、特別講師として植山悦行七段が名を連ねているが、これからは植山七段もさらに活躍の場を拡げる、ということであろう。

教室に入ると、「ちょうどよかった!」というFuj氏の声が聞こえた。中に入ると、大野七段が5面指しの真っ最中だった。その中のひとり、小学生君の対局が終わったら、彼と私がリーグ戦を指すらしい。
それはいいが、奥の部屋に植山七段の姿がない。W氏は相変わらずの重役出勤、Og氏も不在で、これは仮免スタッフのFuj氏、たしかに将棋を指している場合ではなかった。
小学生・Kur君とのリーグ戦となる。半年の長きにわたる第2回リーグ戦も、きょうとあすで終了する。ここまで私のリーグ戦成績は9勝2敗。もちろん優勝争いをしており、きょうの成績次第では私の優勝が決まる。
将棋は私の二枚落ち。序盤、私が大人しく指せばよかったのだが、ちょっとちょっかいを出したら、3筋方面で戦いになってしまった。しかしKur君の攻めがやや性急で、私が十分の形勢になった。

以下の指し手。△2四歩▲3三銀△2五歩▲3二銀成△2六歩▲2二角成△4六桂▲3一馬△7四歩▲4一馬△7三玉▲5一馬△6二桂▲6一銀△7一金▲5二銀不成△3九飛▲6八玉△5八桂成▲同金
△6九金▲7七玉△7九金▲6三金△8二玉▲6一銀成△8九金▲7一成銀△7九飛成▲7八桂△8八竜▲6八玉△7九竜▲7七玉△9四歩▲6二馬△9五銀▲8五玉△8四銀▲7四玉
まで、Kur君の勝ち。

私は△2四歩と突いたが、ここで▲3三銀はある。ただこれは、△2五歩▲4六飛△3三銀で上手必勝と読んでいた。
ところが読み返すと、▲4六飛に代えて、強く▲3二銀成があることに気付いた。果たしてKur君も▲3三銀~▲3二銀成。一遍に上手が敗勢になってしまった。
だいぶ戦意が喪失したが、ここで投げるわけにはいかない。私も△4六桂~△3九飛と反撃し、▲6一銀成の局面はむしろ上手が残したと思った。
ところが△8九金が大悪手。下手に黙って▲7一成銀と取られ、これで上手に受けがないのに呆れた。
△8九金では△6九飛成と張り付いておくのだった。対局中は気付かなかったが、これが△7八竜~△8五銀~△8七竜以下の詰めろになっていた。下手は歩がないので合駒が悪く、詰んでしまうのだ。そんな難しい詰み筋ではないのだから、私もこのくらいは読まねばいけなかった。
本譜も見苦しく指し続けたが、どうやっても勝ちがない。▲7四玉に無念の投了となった。
ここは勝ちを計算していただけに、この敗戦は痛かった。
2局目はHas氏と。大野・植山教室の生徒はおしなべて棋力を向上させているが、中でも顕著なのがHas氏だ。得意の四間飛車に磨きをかけ、中・終盤が一層強くなった。きょうもSat氏に勝利しており、難敵である。
先手を引いた私は、Has氏の四間飛車に▲5七銀左。以下飛車角を捌きあう。△2九飛成▲3四角(と銀を取った)の局面で、Has氏は△8六桂。これを▲同歩は△8七角▲同玉△6九竜で先手負けなので、私は▲6八玉。
ここでHas氏が△7九角と打ったのが大失着。▲同金なら△同竜で先手敗勢だが、私は当然▲同玉と取り、すべて終わった。
私は1局目で疲労困憊だったので、この勝利は助かった。
ここで3時休み。W氏、Hon氏らも訪れ、いつものメンバーがそろった。表の空気を吸いに出ると、涼しい。室内は人いきれで温度が上がり、とても初秋の気温ではなかった。
再開後は、E氏とリーグ戦である。植山七段がいないのは残念だが、そのぶんリーグ戦がスムーズに進んでいるのは皮肉だ。
E氏は右四間飛車から▲4五歩△同歩▲同銀△同桂▲2二角成△同金▲4五桂。ここで私が△4二銀と打ったのが、下手を混乱させたようだ。E氏は3手後▲3三桂成としたが、これは△同金で純粋な桂損。これで上手が十分になった。以下、私の勝ち。
私は3局を消化し、ここまでで11勝3敗である。最上位は某君の11勝5敗なので、あとひとつ勝てば、私の優勝がほぼ決まる。
しかしその前に立ちはだかるのがFuj氏であった。Fuj氏は私とのリーグ戦を楽しみにしており、対局は終盤まで残していたのだ。もっともFuj氏の優勝の目はすでにないが、本局はストッパーとして私に挑む構図だ。…フッ、こっちも望むところである。
ところがこの将棋、衝撃の結末となるのである。
(つづく)
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開設2,000日特別企画・ジョナ研辞典

2014-09-23 01:40:17 | ジョナ研
当ブログは2009年4月1日の開設から、おとといの9月21日で2,000日となった。途中半年のブランクはあったが、ここまで続けてこられたのは、ひとえに読者のおかげである。感謝します。
それと何の関係もないが、きょうはジョナ研および大野・植山教室(大野教室を改称)などで使われている用語をまとめてみた。


Ayakoさん……かつて駒込ジョナサンに勤務していたウエイトレスさん。私たちによくしてくれたが、ある日突然お店を辞め、故郷の沖縄に帰ってしまった。

Ohsawa流……植山悦行七段が口にするもので、私が対局中に大手を広げ、「攻めていらっしゃい」と相手の攻めを喜んで呼び込むことをいう。

北区名人……Fuj氏が2012年11月に獲得したタイトル。ちなみに昨年は敗退したので、現在は「前北区名人」と呼ばれている。もし今年も負けると、「元北区名人」と呼ばれるようになるだろう。

黒ゴマ白玉ソフト……私がジョナサンで食事のあとに必ず頼むデザート。

ゴリッ……植山七段とFuj氏が使う。金や銀を敵陣に打ち込むときの擬音を表現している。

冴えませんねえ……もとは森信雄七段の口癖だが、植山七段もよく使う。自分や他者の将棋がひどかったときにつぶやくもの。

信濃合宿……毎年11月に、長野県南佐久郡川上村で行われる将棋合宿。ちなみに今年の開催は未定。

芝浦定跡……R氏が、LPSA芝浦サロンで指導を受けたあと、ジョナ研に参加することをいう。

○○金……ある(女流)棋士の、独特の金の使い方をいう。ただしアマチュアには指しこなせないので、あまり真似しないほうがいい、という意味で使われている。現在はそれが拡大解釈され、全部の駒を指す。○○には、その人の名字が入り、単に「○○」で使われることもある。

ジョナ研……ジョナサン研究会の略。ファミリーレストラン・ジョナサンで食事をしながら将棋を指す行事のこと。LPSA駒込サロンのころから始まり、ジョナサン駒込店が閉店してからは王子神谷店に場所を移し、現在も続いている。

千駄ヶ谷定跡……R氏が、女流棋士スーパーサロン→LPSA芝浦サロンとハシゴし、ジョナ研に参加することをいう。

Tod銀……中盤の忙しいときに銀を打ち、隅の香車を取って「駒得した」と喜ぶさまをいう。Tod氏が好んで指したことから命名された。

とん喜……「大野・植山教室」終了後の夕食で、メインにしている定食屋。店オススメのとんかつ定食(900円)は絶品。

なるほどー、なかなかー……W氏が中倉彰子女流初段との指導対局で言われた言葉。W氏は確信の持てない手だったが、彰子女流初段の見解は違って、けっこういい手ですよ、という意味でつぶやいた。それが転じて、思いもしない手を指されたときに、教室のみんながつぶやくようになった。

Hana攻め……最年少女流アマ名人・Hanaちゃんの強引な攻めをいう。いくぶん否定的なニュアンスが含まれている。

150回……たくさん、の意味。私とFuj氏は同じ話をよくするのだが、そんなときはW氏などが、「その話はもう150回ぐらい聞いた」と呆れる感じで使う。

百叩き……同じ個所に何度も歩を打って攻めつぶすこと。植山七段が使うので、棋士用語かもしれない。

Fuj……勝ち目もないのに、自陣に駒を打って延命を図ることをいう。または、最終盤の無駄な王手のこともいう。Fuj氏がよく指すので、そのものズバリ、彼の名字で呼ばれている。ただし当人は、逆転へ一縷の望みを託して指しているという。

変態三間飛車穴熊……Hon氏が得意にしている戦法。三間飛車穴熊だが、金銀の配置は、▲3八金▲3九銀▲5七銀▲6七金である。2八の地点は、後に攻められたときに埋めればいいという考え。場合によっては、▲5七銀を▲4八銀と引いて使う。

やるたなし……Fuj氏がよく使うが、やる手がない→指す手がない、の意味だと思う。

簡単だったが、以上である。また新語が出てきたら、増補版を載せてみたい。
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第26回将棋ペンクラブ大賞贈呈式(後編)

2014-09-22 00:25:32 | 将棋ペンクラブ
「私がここに呼ばれるとは思ってなくて…」
とかいう室谷由紀女流初段の声が聞こえる。しかし私に振り向く余裕はない。
私の将棋はいよいよ劣勢だ。△4四銀と角交換を挑まれた。こんなもの当然▲4二角成としたいが、△同飛のあと先手陣には△7八角や△8七角のキズがあり、とてももたない。
私は泣きの涙で▲7五歩と打ったが、自ら飛車角の利き道を止めるようではダメである。この将棋は失敗した。
直後に渡部女流初段が△3六歩と突きだしたのが下の局面。

「負けました」
「エーーッ!!」
私が戦意喪失して投了すると、渡部女流初段が頓狂な声を上げた。投了は早い、の意だろうが、▲3六同銀は△3五銀とぶつけられる。以下▲同銀△同金は次の△3六歩が受からず、下手ジリ貧。とても指してられない。昨年の鈴木環那女流二段に続き、2年連続で吹っ飛ばされた。
私が「▲3七桂がヒドかった」とボヤき、渡部女流初段が
「大沢さん、相掛かりも指されたんですね」
と返して、感想戦が始まった。渡部女流初段の感想戦は独特で、下手の疑問手を、大上段から指摘しない。下手の作戦に対しても、「私は前、こんな手を指されたことがありました…」と、さりげなく教えてくれる感じである。本局も勉強になった。
渡部女流初段はいまや押しも押されもせぬ、LPSAの顔。これからも頑張ってください。

会場ではプレゼントの抽選会が始まった。棋士が提供してくれた色紙や著書が、参加者に贈られる。といっても抽選はなく、まずは女性参加者が優先的に選ぶ。次はどうなるかと思いきや、「1月~3月生まれの参加者」だった。私はこれに該当する。渡辺弥生女流初段の「刻苦勉励」色紙をいただいた。よく分からぬが、東大に2回も入学した渡辺女流初段らしい揮毫ではないか。
Tag氏が来て、「あいうえお順でも誕生日順でも、いつも私は損しますよ」とぼやく。しかしTag氏は渡辺明二冠と井山裕太囲碁六冠のコラボ扇子をゲットし、ご満悦の様子だった。
ミス荒川放水路のMisakoさんも来た。こちらは中原誠十六世名人の色紙をもらっていた。自分の好きな賞品を選べるので、みな満足度は高いようだ。
振り向くと、室谷女流初段がひとり佇んでいる。チャンスだ…! しかし、どう声を掛ければいいのだろう。いきなり声を掛けて、「ミスインターナショナルに応募したらどうですか」などと言っては、変質者と思われる。
グズグズしていたら、森信雄七段、片上大輔六段ら一門と合流してしまった。今回も、私が室谷女流初段にお近づきになるのは難しいようである。
で、指導対局を覗いていたら、安食総子女流初段と目が合った。
「すみません、安食先生に教えていただこうと思ったんですが、すでに3人入ってしまったんで…。また連盟に行きますよ」
私は焦って弁解し、また適当なことをいってしまった。
私は神谷八段に声を掛ける。神谷八段は先日、フジテレビの「アウト×デラックススペシャル」に登場し、加藤一二三九段と丁々発止の爆笑トークを演じた。ちなみにそのときの元ネタは、以前「将棋寄席」で神谷八段から語られたものだ。
「アウト×デラックス」では入念なリハーサルでもあったと思いきや、その類はなかったという。なるほど、ぶっつけ本番の生々しさが、あの面白トークを創っていたわけか。
上野裕和五段にも挨拶する。上野五段は現在、「NHK将棋講座」の別冊付録に連載を持っているという。
「順位戦も復帰できるよう頑張ります!」
と力強く誓ってくれた。
O平氏が来た。安食女流初段に勝てた、と大喜びである。手合いを聞いたら、平手だった。それはスゴイ! O平氏のこんなエビス顔を見るのは初めてで、(女流)棋士に勝った喜びは、そのくらいのものである。
お開きの時間が迫ってきた。指導対局もここで切り上げ、安食女流初段と渡部女流初段も、壇上でスピーチをした。将棋ペンクラブはみなに平等なのである。
午後8時半を過ぎ、そろそろお開きである。毎年思うのは式の時間の短さで、今年もそうだったが、まあこのくらいの長さが味がいいのかもしれない。
締めは天野貴元氏の音頭で三本締め。今年も楽しい式だった。

というわけで、将棋関係者の皆様、この1年、素晴らしい文章をありがとうございました。これからも面白い文章を期待しております。
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第26回将棋ペンクラブ大賞贈呈式(中編)

2014-09-21 19:24:10 | 将棋ペンクラブ
続いて森内俊之竜王の謝辞。しかし言葉が詰まって、出てこない。天野貴元氏の波乱万丈の人生を思い、こみ上げるものがあったのだろう。
次は森信雄七段の謝辞。
「最近は弟子の活躍で呼ばれることが多いんですが、今回は私が主役ですね。『逃れ将棋』の題名は、100ぐらい考えました。家で問題を考えるのが楽しかった。これからは将棋のいろいろなジャンルを見直したい」
森七段はかつて将棋ペンクラブの大賞を2度受賞しているが、過去は代読で、今回は初めての来京となった。それほど今回の受賞は誇らしいものだったのだろう。
最後に杉本昌隆七段の謝辞。
「大賞優秀賞は、将棋でいえば準優勝ですか。でも上が森先生なら仕方ないです」
いかにも勝負師らしい謝辞である。杉本七段は若いころ森七段によく晩ご飯をごちそうになったそうで、連盟で森七段を見つけると、その周りをふらふらして、お声が掛かるのを待っていたという。
今回は相振り飛車の本で受賞だが、このテーマで過去7冊刊行しているそうで、10冊を目標にする、とのことだった。
ここで受賞者全員の記念撮影。壇上中央に天野氏。その横に森内竜王だ。先ほど杉本七段が大賞を優勝に例えたが、それでいうなら、今回の天野氏は、森内竜王を抑えて堂々の優勝を飾ったことになる。自身も似たようなことを述べていたが、勝負は将棋だけではないのだ。天野氏は、実にいい顔をしていた。
さて、これでようやく乾杯となる。各自にビールが注がれる。まだグラスが回ってない人もいたので、私がグラスを調達すると、渡部愛女流初段も手ぶらだった。
で、私は急遽渡部女流初段に注ぐ。その横には室谷由紀女流初段がいる。手を伸ばせば届く、けっこうな至近距離である。しかし彼女の手にはすでにビールが注がれている。
私は無言で、その場を離れるしかなかった…。
乾杯の音頭は、天野氏の師匠の、石田和雄九段。昨年に続いての来場である。
「黙って乾杯をしようと思ったんですけど、一言だけ!」
に場内爆笑である。「……天野君。(私は彼の)名人の就位式に呼ばれることを夢見てたんですけど…。でも違うジャンルでこうやって表彰される、それもいいでしょう。いま彼は闘病中だけれども、持将棋、千日手に持ち込んでもらいたい。本日はおめでとう!」
ちょっとホロッときて、乾杯。私はふだん酒は飲まないが、1杯目のビールはうまいと思う。
ここからしばし歓談である。場内後方には、安食総子女流初段、室谷女流初段、渡部女流初段の3人が仲良く談笑している。あそこに何とか食い込みたいが、さすがに見えない壁がある。安食女流初段か渡部女流初段が私に気付いて手招きする…などということはあり得ないから、私は指を咥えて見つめるのみである。
しょうがないから、中央にある料理を持ってくる。今年は昨年に比べ、少しグレードが下がった気もするが、将棋ペンクラブはおカネがないので、これでいいのである。
後ろに滝誠一郎八段がいる。滝八段は早投げの棋士として有名である。投げる時の心境などを聞いてみたかったのだが、わずかなタイミングのズレで、あっちに行かれてしまった。
3女流棋士の周りにはファンがチョロチョロと群がり、記念撮影なんかをしている。6月のパーティーだったら有料だが、ここでは、もちろん無料である。いまはバトルロイヤル風間さんの撮影だ。バトルさんも実にいい笑顔である。
私もスマホを持っているのでお願いしたいところだが、私は自分が写真に写るのが大嫌いなので、結局言いそびれてしまう。
湯川恵子さんがいらしたので、挨拶する。
「私、この前『なんでも鑑定団』のビデオを観直したんですよ。あの小笠原のテーブル、350万円ですもんね、すごいなあ」
恵子さんの受賞を全然お祝いしていないところが、我ながらスゴイ。まあ、私の気持ちは伝わっているだろう。
先にも書いたが、きょうは報道関係者が多い。棋士も多く、お馴染みの窪田義行六段ほか、幾人かの男性棋士が確認できる。
そこに三浦弘行九段が見えた。三浦九段は将棋ペンクラブを応援してくれているが、今回は観戦記大賞受賞局に三浦九段が登場していた縁もある。
さて、指導対局の時間になった。安食女流初段と渡部女流初段の3面指しである。
予定では安食女流初段に教えていただき、舟囲いの▲5八金に、△5七歩とアジのたたきを入れてもらいたいのだが、渡部女流初段を無視するわけにはいかない。
まず、安食女流初段にひとり目が入った。次に渡部女流初段にひとり入った。やがて安食女流初段にふたり目が入った。もうこのあたりで10分くらい経過していたので、私が入っても問題ない。しかし私が安食女流初段に入ったら、対局者が安食3:渡部1になり、バランスを欠く。そのうち安食女流初段に3人目の挑戦者が入り、私は渡部女流初段に指導をお願いすることにした。何か、安食女流初段にウソをついてしまった…。
渡部女流初段と駒を並べながら世間話。
「大野教室にはまだ行ってるんですか」
と渡部女流初段。
「行ってますよ。あ、明日も行くつもりです」
あっ、勢いで言ってしまった。明日は大野教室に行かねば…。「渡部先生もまた、来てくださいよ」
私がそう言うと、渡部女流初段はうなずいた。
その渡部女流初段は、「LPSA麹町サロンin DIS」で活躍中である。渡部女流初段の回はすぐに予約が埋まり、年末(12月25日)までほぼ満席である。クリスマスに渡部女流初段としっぽりできる将棋ファンが、現在7名決まっている。
対局開始。私の▲2六歩に渡部女流初段は△8四歩。以下私のひねり飛車になった。
壇上では、きょう参加の棋士の挨拶が行われる。
まずは神谷広志八段。私も注目して拝聴したいところだが、こっちはそれどころではない。私は左銀を▲5七銀と上がり、▲4六銀。ここら辺はどれも一局なのだろうが、微妙に疑問手を指しているような気がする。壇上には三浦九段が上がっているようだ。
しばらくして、背後に森七段の声が聞こえた。談笑しているようだが、目はこの盤面に注がれているような気がする。
私はかつて、「将棋マガジン」の懸賞詰将棋で、森七段の色紙が当たったことがある。それを森七段のブログのコメント欄に書いたら、丁寧に返信してくれた。
そのときの御礼を述べたいと思うのだが、いまはそのタイミングではない。
私は▲3七桂から▲5五歩△同歩▲同銀。しかしそこで△3五歩と桂頭を突かれて弱った。
壇上には窪田六段が上がっているようだ。
「現在はとりたてて述べることはないんですが…」
と、このコメントだけで爆笑を取っている。
さらに、室谷女流初段が壇上に上がったようだった。
(つづく)
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