一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

27日の社団戦は、休みます

2019-10-26 02:33:08 | 社団戦
27日は第30回社団戦の最終日だが、私は休ませていただきます。
我が将棋ペンクラブは7部リーグ白に在籍し、現在5勝7敗。先月の団体個人戦も得点は得られず、残り1戦を残して負け越しが決まっている。
本来なら最終日につき、成績に拘わらず全員集合すべきなのだろうが、私は人づきあいが悪いのである。私はそういう人間なのである。

ところで昨日は所用で、東京都立産業貿易センター台東館に行ってきた。あの土砂降りの雨の中を、である。
何か、社団戦以外でお邪魔するのはヘンな気分である。用事が済み、千石ラーメンに行くことにした。7月の時は迷って着けなかったから、今回は見つからなくてもよし、と軽い気持ちで行った。すると、無駄道なしで着いた。アーケード街をクロスした先にあり、こんな近くだとは思わなかった。
千石ラーメンでは、もちろんワンタンメンを注文した。1年振りに食べるそれは、美味かった。
やっぱりラーメンは、肉系の醤油味が一番だと思う。
それにしても、雨の浅草、は多い気がする。私が雨男だからだろうか。

将棋ペンクラブの皆様、27日は頑張ってください。
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半年ぶりの愛(3)

2019-10-25 00:08:47 | 女流棋士の指導対局会

第8図以下の指し手。△――
まで、95手で一公の勝ち。

ここで飯野愛女流初段が投了した。以下△5七歩成としても▲3八玉で詰みはないし、上手玉も受けなしに見える。それでも△5七歩成くらいは指すと思った。
すぐ感想戦に入る。
「あぁー、我慢比べの将棋でしたよね」
と飯野女流初段。確かに、お互い金銀がほとんど駒台に乗らず、私の駒台に唯一乗った銀は、▲3二~▲4三と動いただけだった。「9筋の歩は私が取ってしまって……。
序盤の私の対応がおかしかったかな? どこか間違いました?」
飯野女流初段は晩学ということもあるが、将棋に対して謙虚で、アマに対しても分からない時は分からないと教えを請う。これを私は支持する。
「いえいえ、さすがに完璧でした。こっちは角銀交換している時点でもうダメですよね」
「でも銀を取る手を楽しみにしていたのに逃げられてしまって……」
私たちは急所の局面を作る。手すきの大野八一雄七段が、感想戦に加わってくれた。
第3図からの▲3四歩には△5五歩とする一手だったという。以下▲3三歩成△5三飛▲4四銀(参考A図)。これは私の予定だ。

「角を打ったら?」
「△2六角ですか?」
「うん。△2六角▲5三銀成△3五角▲6三成銀。△同銀▲8三桂に△6二玉で」
「でもそこで▲4三と(参考C図)とやったら……」

「……あれ? そうかこれはダメだね。……じゃ▲4四銀には△5四飛としましょう」
「▲5五銀」
「△同飛」
「エッ!? まあ指導対局だからいいスか。▲同歩」
「△8五歩(参考D図)」

「あ、そうか……」
「▲8五同歩なら△8六歩▲同玉△8八角ですね」
と、これは飯野女流初段。
「うん、これは上手勝ちでしょう。3三のと金もボケてるしね。だから△5五同飛は指導対局じゃなくても指すよ」
やはり私の角切りは無理筋だったのだ。
これで感想戦は終わり。私は夕方の食事会には出席するが、それまで和光市に行かねばならない。
部屋を出ると、飯野女流初段が6月のパーティーの御礼を言いに来てくれた。
「会場でお話ししようと思ったんですけど、見つからなくて……」
と飯野女流初段。
「いえいえ、私は別にいいんです。飯野先生こそ人気者だし、どこ行っても人が集まって大変だったでしょう」
私は飯野女流初段の気遣いに恐縮した。我ながら、ファンランキングの1位に挙げるだけのことはある。

川口から南浦和に行き、武蔵野線に乗り換える。車中ではRadikoでミスDJを聴こうと思ったが、ついついさっきの将棋を考えてしまう。
あれ? 投了の局面で、△8一玉なら詰みがない? 私は桂や香の受けばかり考え、玉を逃げる手をうっかりしていた。下手は次に明快な詰めろがなく、私は考え込んでしまう。
しかも、投了のその前に△5七歩成とくれば、私は▲3八玉と逃げる予定だった。すなわち、「△5七歩成▲3八玉△8一玉(参考E図)」なら、むしろ上手持ちに思える。

参考E図からA▲8二と左△同角▲同と△同玉は上手陣がサッパリして、これは下手が戦意喪失だ。
B▲8二歩△7一玉▲9二と左は詰めろでも何でもないので、△5八とで上手勝勢だ。いや△8三銀とと金を取られても負けだ。
C▲7二と△同玉▲8四歩△8二歩も、下手にもう一押しがない。
あれ? あれれれ?
飯野女流初段には以前も、上手に受けがある局面で投げられたことがあるが、今回も上手が生き延びていたんじゃないか?

和光市の長照寺に着いて、仏家シャベルや木村家べんご志の落語を聞いていても、私はこの局面が脳裏から離れない。噺は面白いのに私は真剣な顔をして、寄席にいるのに寄せを考えている。
(30日につづく)
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半年ぶりの愛(2)

2019-10-24 00:06:22 | 女流棋士の指導対局会

第3図以下の指し手。▲3四歩△3二歩▲3三歩成△同歩▲3二銀△5三飛▲4四銀△5一飛▲3三飛成△6五歩(第4図)

私は飯野愛女流初段を鑑賞しながら指し手を進めたいのだが、とてもその余裕はない。
第3図では黙ってA▲6六銀、強攻でB▲4四銀△同飛▲3三飛成、さらにC▲3四歩がある。
たぶん▲6六銀が正着なのだろうが、ここで一段落しては、下手の駒損がクローズアップされてしまう。
といって▲4四銀は駒損が拡大してしまう。そこで▲3四歩とした。対して△5五歩なら▲3三歩成△5三飛▲4四銀(参考A図)でどうか。この順もパッとしないが、ほかにやりようがない。

飯野女流初段は△3二歩だった。これは▲3三歩成で一応二枚換えである。ただ△3三同歩にA▲6六銀は、上手も△4六歩と捌いてくる。
そこで甚だダサイが、B▲3二銀と打った。以下△5三飛に▲4四銀で、銀を脱出しつつ飛車取り。
さらに▲3三飛成と1歩を取りつつ侵入し、悪いながらも希望が持てる展開になった。

第4図以下の指し手。▲3七桂△8五歩▲4五桂△8六歩▲8八玉△6四角▲8四歩△6二金上▲8三桂△8二玉▲9一桂成△同玉▲8五香(第5図)

第4図の△6五歩は味わい深い。いま強烈な狙いはないが、後に△6四角と据え、△8五歩の攻めを見ている。いかにもプロの手だと感心した。
私は▲5三桂と打ちたいが、これはダサすぎてダメであろう。そこで▲3七桂と跳んだ。これは遊び駒を活用して、落ち着いた手だったと思う。
飯野女流初段は△8六歩と取り込んだ。右銀のない天守閣美濃はこれに弱い。これに▲8六同玉は△8八角がある。私は▲8八玉と引いたが、上手の持駒は頭の丸い角だけなので、まだ大きな脅威ではない。
△6四角に▲8四歩。上手の玉頭攻めを逆用して、これは上手も気味が悪かろう。
次に▲8三歩成△同銀▲6三竜があるから、飯野女流初段は△6二金上。私は▲8三桂と打つ。これは△8二玉で意外に大したことはないが、上手も気持ち悪いところであろう。
私は▲9一桂成から▲8五香。これで決まったようだが……。

第5図以下の指し手。△8七歩成▲同銀△8二歩▲9五歩△7三桂打▲7七桂(第6図)

某B氏の将棋が終わった。さすがに早指しで飛ばしたようだ。
当然感想戦に入るが、ここで5分前後取られる。全体の指導対局は1時間半だから、実は上手も下手もかなりの早指しでないと、全局結着がつかないのだ。
△8七歩成は玉頭の拠点を捨ててもったいないが、▲同銀に△8二歩で受かっている。簡易穴熊で、これはこれで固い。私は▲9五歩と突いたが、持駒が歩だけでは、どのくらいの威力なのか。
そこで飯野女流初段の△7三桂打がさすがで、やはりこの香を取りにきた。
私の▲7七桂は端が薄くなるので指したくないが、黙って△8五桂と跳ばれたら負けだ。
とはいえここでは下手が若干切れ気味。このまま負かされそうな気がした。

第6図以下の指し手。△3一歩▲4三銀成△9五歩▲9三歩△同桂▲9四歩△8五桂▲9三歩成△7七桂成▲同玉△8五桂▲6八玉△7七角▲5七玉(第7図)

第6図で飯野女流初段は△3一歩。咄嗟には意味が分からなかった。
ここで右のTag戦が終了。Tag氏が会心の攻めで、飯野女流初段を投了に追い込んだ。
さらにその右の某A氏の将棋も終わった。意外に私の将棋が長引いている。
局面、私はありがたく▲4三銀成とした。
さて問題は9筋で、この歩はどちらも取りたくない。しかし飯野女流初段は△9五歩。堂々と取られてみると私のほうに手がない。
▲9三歩は手順に△同桂と取られるのでバカバカしいが、次の▲9四歩に期待した。
そして△8五桂に▲9三歩成としたが、その前に▲4二成銀を利かすことも考えた。△6一飛なら明らかに下手の得だが、この成銀は5三に利かしておきたい意味もある。
そこで黙って▲9三歩成とした。いかにも大きなと金だが、私の駒台にはもう何もない。
飯野女流初段は△8五桂から殺到する。しかし私は▲5七玉と逃げて一安心。戻って△7七桂成では、じっと△9六歩(参考B図)がイヤだった。

対してA▲9六同香は△9七桂成▲7八玉△9六成桂▲同銀△9七角成。またB▲9六同銀は△9二歩だ。
ただ△9六歩に黙って▲5三桂成も相当で、上手も自玉頭にと金がいる状態だから、そんな無理もできないのだ。

第7図以下の指し手。△5五歩▲8三桂△同歩▲同歩成△5六歩▲4八玉(第8図)

「ロスタイムに入ります」
とW氏の非情な声。お昼休みもあるから打ち切りはないだろうが、時間が経つのは本当に早い。
ここで上手の指し手がまったく分からなかった。飯野女流初段は△5五歩と突いたが、ありがたい気がした。じゃあ最善手は何かと問われても分からないが。
奥の常連氏も終わったようだ。飯野女流初段の勝ち。
「愛ちゃんにメチャクチャにやられた」
と常連氏がボヤく。しかしその顔は笑っている。私たち将棋ファンは、女流棋士に将棋を教えていただくことが、何よりのよろこびなのだ。
それはいいが、Kur氏も2局目を終えたようなので、私が最後になってしまった。
私は▲8三桂。△8一玉なら▲5五銀がピッタリだ。ただその前に▲4二成銀△6一飛を利かしていたら、下手はいつでも▲6三竜があるから、より明快だった。
あ、そうか! 先の△3一歩▲4三銀成の交換は、この質駒をなくすためだったのだ。
本譜に戻り、飯野女流初段は△8三同歩としたが、私は▲同歩成と2枚目のと金を作り、これはこれで勝てるんじゃないかと思った。
△5六歩に▲4八玉。次に△5七歩成なら▲同金で詰みはないと思うが、かなり王手が続く。それより▲3八玉で、上手に手がないと思った。

(つづく)
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半年ぶりの愛(1)

2019-10-23 12:26:17 | 女流棋士の指導対局会
22日は「即位礼正殿の儀」があり、私は1日家で拝見するつもりだった。しかし大野教室で飯野愛女流初段の指導対局会もあり、迷った末、11時の回に申し込んだ。
また午後からは和光市で「第3回大いちょう寄席」もあり、こちらにも顔を出したい。結局、いつもと変わらぬ休日になりそうだった。
朝、京浜東北線に乗る。昼間に乗ると山手線から京浜東北線に乗り換えねばならないが、朝はそれがないからラクだ。
大野教室に入る。前回お邪魔したのは8月10日の加藤桃子女流三段の回で、その間、誰とも指していない。これでは、趣味が将棋とは言い難い。
飯野女流初段は所定の席につき、記念写真を撮ったりしていた。いまは棋士と写真を撮るのもお金が要る時代だが、大野教室にはこのサービスがあり、うれしい。もっとも私は、それを利用したことは一度もない。女流棋士とツーショットで撮るほど、私は自分に自信がないからだ。
私は参加費を払い、飯野女流初段の色紙を受け取る(2,000円)。「愛」としたためてあり、この文字は私が事前にリクエストしたもの。細身の筆で書かれたそれは流麗で、字の美しい女性は、それだけで評価が3割アップする。
私は空いている席に座ったが、知り合いの常連氏が怪訝な顔をする。どうも彼の席に座ってしまったようだ。
奥の席が空いており、そこに移動する。まだツーショット撮影は続いている。飯野女流初段はいつもの美形で、小顔だ。先日のNHK杯では髪型を変えたぽかったが、実際はどうなのだろう。
撮影が一段落したが、大野七段が私にもツーショットを促した。固辞すると、飯野女流初段がじきじきに私の隣に来てくれた。大野七段がスマホで撮ったが、それは大野七段のものなので、私はあまり関係なかった。ともあれ、飯野女流初段のお気遣いに感謝した。
さて、対局である。飯野女流初段に対局をお願いするのは4月27日以来。6月16日の女流棋士発足45年記念パーティーでもお話はしなかったので、丸々半年ぶりだ。一将棋ファンが特定の女流棋士と接することは、それだけ難しいということだ。
今回も6面指しで対局開始となった。

初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲9六歩△9四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△4二飛▲5六歩△6二玉▲6八玉△7二銀▲7八玉△7一玉▲5八金右△3二銀▲5七銀△3二銀(第1図)

▲7六歩△3四歩に、▲9六歩。1%くらい△8四歩を期待したが、それなら私は飛車を振るつもりだった。本譜は△9四歩だったので、居飛車を明示した。
各自の手合いは私から右にTag氏・角、某A氏・飛香、Kur氏・金桂、某B氏・不明、常連氏・香だった。Kur氏は相変わらず変則的な手合いで、以前は「銀桂」もあった。「でも銀桂の手合い期間は短かったよねえ」とW氏がまぜっ返し、マニアックな会話に私はついていけない。
某B氏はこれから出張で、12時10分にはここを出なければならないという。それでも寸暇を割いて女流棋士に会いにくる。将棋ファンはありがたきかな。
さて私の将棋は、1手指すごとに飯野女流初段は隣に移ってしまうので、何となく進行が遅くなっている。まあ、やがてほかのみんなに追い付くだろう。
▲5七銀が趣向の一手。いつもは急戦を狙うのだが、今日は別の作戦を考えていた。

第1図以下の指し手。▲8六歩△4三銀▲8七玉△6四歩▲7八銀△7四歩▲2五歩△3三角▲3六歩△8四歩▲4六銀△3二飛▲3八飛(第2図)

私は▲8六歩。天守閣美濃の狙いで、温故知新で指してみたくなった。
と、Kur氏の将棋で異変が起こった。この手合いに指し慣れない飯野女流初段がポカをやったらしく、しばらく唸っていた飯野女流初段が、投了してしまったのだ。
時に11時14分。「もう1回お願いします!」と、2局目の開始となった。
和やかな雰囲気なので、おしゃべりが入る。坂東香菜子女流初段の話題が出る。坂東女流初段は飯野健二八段門下だったそう。飯野門下は美形揃いではないか。
ただし飯野女流初段がプロになった時は、板東女流初段はもう休場していたので、交流はなかったようだ。坂東女流初段が現役を続けていればイベントに引っ張りだこだったのに、引退は惜しいことだった。
大野七段が
「○○はああして、××はこうして、△5三銀と上がるのがいいと思います」
と、飯野女流初段にアドバイスする。大野七段はこの時間指導対局がなく、手スキだったのだ。プロがプロに肩入れしたんじゃアマの立場がないが、確かに金桂落ちは指し方が分からない。
私は▲3六歩と突く。四枚美濃にはせず、右銀は攻めに繰り出す予定だ。
飯野女流初段は△3二飛。△7一玉形での待機もそうだが、飯野女流初段の術中に陥っている気がした。

第2図以下の指し手。△4五歩▲3三角成△同桂▲5五銀△6三金▲2四歩△同歩▲3五歩△同歩▲2一角△4二飛▲4三角成△同飛▲3五飛△5四歩(第3図)

飯野女流初段は△4五歩と反発した。私が逆を持ったら指せない手で、これが振り飛車党の手といえる。
私は▲3三角成△同桂に▲5五銀。こう出られるのがミソで、この銀が生きているうちに一仕事したい。
とはいえここで下手の攻め方が分からなかった。▲2八飛と寄り、△5四歩なら▲6四銀△同金▲5三角を考えたが、これは独善であろう。ああ、時間があればいくらでも考えたい。
飯野女流初段がこちらを向いたので▲2四歩と突いた。が、これは微妙。上手に1歩を渡すし、△2五桂も生じたからだ。
そしてこうなった以上、私は攻めるしかない。若干無理と思ったが、駒損の攻めを敢行した。
△5四歩にはどうするか。

(つづく)
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2年5ヶ月前の上野五段との指導対局(後編)

2019-10-22 00:10:40 | 将棋ペンクラブ

第4図以下の指し手。▲7五飛△4四馬▲2三歩△7三香▲8五飛△2三銀▲8一飛成△6六桂▲8八金△8六歩▲同竜△6七銀(第5図)

私と同時に始めたほかの2局は、いずれも下手が苦戦に見える。ここで上手がよくなると、こちらに集中されてしまうからまずい。指導対局は、隠れた団体戦でもあるのだ。
第4図で私は▲7五飛と打ったが、カッコのつけすぎで、よくなかった。上野裕和五段(当時)に黙って△4四馬と引かれ、△7三香から△6六桂と反撃されては、雲行きが怪しい。
▲7五飛では▲5六香くらいだったか。以下△5五歩に▲4六金だが、これも変調か。
もっとも本譜△6六桂では、たんに△9九馬がイヤだった。次に△6六桂や△8九馬を狙い、これは逆転の雰囲気である。
△6六桂には▲8八金が地味な好手だったと思う。ここ▲6八金は△8八歩▲同銀△5八桂成~△8八馬がある。
とはいえ△8六歩で竜を戻され、△6七銀と打たれては、下手も気味が悪いが……。

第5図以下の指し手。▲7七金打△5五馬▲6七金△7六香▲同竜△9一馬▲6六金△3二玉▲4六香△3四銀▲3六香△2八飛▲3九金△2五飛成(第6図)

将棋は攻めてばかりでは勝てない。どこかで受けに回る手も必要で、そこを乗り切れば勝利が見えてくる。
第5図で下手陣に明快な寄りはないが、憂いを解消しておくに越したことはない。
私は▲7七金打と入れた。ここ▲7七金と節約する手もあるが、一枚でも自陣に駒があったほうが心強いと思った。
上野五段は△5五馬と出たが、これは間接的に9一の竜を狙っている。しかし私はその狙いに乗り、▲6七金以下▲6六金まで、上手の攻め駒を一掃した。
なお▲6六金では▲6六竜が形だが、上手の7二金を質駒にしておきたかった。
私は▲4六香と据え、いよいよ本丸に攻めかかる。

第6図以下の指し手。▲2六歩△同竜▲5五桂△4四歩▲同香△4二歩▲3四香△同歩▲2七歩△3五竜▲4二香成△同玉▲7二竜△同歩▲4三金△5一玉▲6三桂成(投了図)
まで、100手で一公の勝ち。

第6図で▲2六歩△同竜と竜筋を逸らし、▲5五桂。
上野五段の△4二歩はつらい辛抱だ。本局は下手に余裕があるが、切羽詰まった状況でこの類の手を指されると、混乱する。
本譜△3四同歩に▲4二香成△同玉▲7二竜とやると、△同歩▲4三金△5一玉▲6三桂成の時、△6六竜(参考図)があって逆転する。

よってその前に▲2七歩△3五竜と再び竜筋を逸らし、前記の順を決行した。このあたりは歩の使い方や質駒の利用など、我ながらうまく指せたと思う。
以下、▲6三桂成まで上野五段が投了した。最後は飛車角三枚が上手、金銀八枚が下手に渡る珍形となった。

「うまく指されました。(序盤で)グズグズしていると▲6六角~▲7七桂~▲8五飛と来られちゃうんだね。△5五歩と止めたんだけど、▲6五歩と来られて……」
と上野五段。「(第3図からの)△2八角では△2七角だったか?」

以下▲5九金に△5四角成と引き付ければ、確かに上手が手厚い。振り飛車の将棋でこの手順があるが、攻めの棋風(と思われる)の上野五段は、この順を軽視してしまったようだ。
「(△2八角のあとの)▲8五飛に△8四歩は飛車をブンブン回されて、面白くないもんね」
やはり上野五段も同じ順を考えていたのだ。それで△1九角成としたわけだが、下手は飛車が成れて指しやすくなった。
「いや、完敗でした」
過分な褒め言葉に、恐縮した。

続く午後3時半からの懇親会で、上野五段から記譜をいただいた。70手目▲7七金打と96手目▲7二竜が丸で囲ってあり、これが好手との意味だった。76手目▲6六竜としたいところを▲6六金とした手が生きたのだ。
私は上野五段に深く感謝した。

このころの私は、工場で最後の注文の仕事をしていて、現在とは別の意味で苦痛の日々だった。
この将棋をうまく指せたのは、根底に現実逃避があったからだと思う。それで集中して指せたに違いなく、皮肉なことであった。
なお上野現六段は、今年の将棋ペンクラブ大賞贈呈式で爆笑のスピーチをするなど、すっかり将棋ペンクラブのスターとなった。今後の活躍も期待しております。
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