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「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた (141) 長尾家 54

2024年07月16日 09時02分16秒 | 甲越軍記
 原三郎が不義密通で、新発田掃部介によって成敗されたことは、たちまち越後の大将、長尾弾正左衛門晴景の耳に入った。
晴景は「不義密通は奥を守る衛士の油断から起こることである、その是非はともあれ、我寵臣を害したことは許されぬ、早々に掃部介を呼び寄せて刑に処すべき」と軍議の名目で府中に呼び出すことを企てた。
しかし心ある家士が密かに、このことを新発田城の掃部介に伝えた
掃部介は、これを聞いて大いに憤り、「たわけたことを申す、あのような暗愚の大将に誰がみすみす討たれようか」と散々に悪口を言い、その後、掃部介を誘い出すためにやって来た使の耳と鼻を削いで、晴景の元に追い返した。
そして、そのまま栃尾の景虎に属した
これを聞いた、新発田城主、新発田尾張守も新山砦に晴景の命で出向いていたが、これまた一族郎党を率いて栃尾城に入城した。

晴景はますます怒り、「景虎、我に背いた新発田兄弟を匿うとは我をないがしろにする行為で言語道断である、この上は早々に兄弟の首を刎ねて、府中に引き渡せ」と使者を走らせたが、景虎は一切これに取りあわなかった。
怒り絶頂に達した晴景は、元より景虎を快く思っていなかったために「景虎め、こうなれば黒田、金津成敗より先に景虎を討つべし」と怒った。
府中の老臣たちは驚いてこれを諌めたが、晴景は治まらず何の予告も無く、老臣、萬貫寺修理を手討ちにした。

これを見て諸将はみな眉を潜め、「天下乱れて、周囲には敵が満ち、足元には黒田、金津の逆臣あって隙を狙っている、それなのに晴景は暗愚の大将であり、佞臣を重用して重き職につけ、忠臣をさげすむと恨みに思い
それに対して栃尾の景虎は僅か十五歳で黒田の大敵を破り、長尾俊景を討ち取った、晴景が得た利は景虎の功によるものである、国の為、家のためを思えば晴景を廃して、景虎を招いて家督を継いでもらうことがお家の長久であると密かに語り合った。
管領上杉定実もまた、晴景の好色、不公平に眉を潜めて老臣らと密談を重ねることを、徳山左衛門尉が聞いて晴景に知らせると、晴景は怒り「景虎めは我を潰して越後を横領せんとする心づもりである、すみやかにこれを退治して後の患いを断たねばならぬ」と、まず一族の長尾越前守政景、長尾武蔵守景春に使者を送り、合力頼めば、この両人もまた晴景の政道に疑問を持ちながらも一族であればしぶしぶ与力をうけたまわった、これを聞いて晴景は大いに喜び、国内各地に派遣していた諸軍に帰城を申し付けた。

これによって、晴景に味方するもの、景虎に味方するもの、日和見に徹するものと越後の諸将は三つに分かれた。
農商の民は府内に一戦ありと騒ぎ、老少を助け資材を運んで府内より脱出するもの多く、大騒ぎとなった。
金津、黒田は攻め寄せていた長尾勢が突如引き始めたことをいぶかしがり、探らせてみると晴景と景虎が相争うことを知り大いに喜び「これは面白いことになった、兄弟あい戦えば、いずれかが滅び、勝者も力が落ちる、我らは静かに成り行きを見て漁夫の利をいただこうではないか」とほくそ笑むのであった。



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