よく「××を見ずして/読まずして○○を語ることなかれ」という言い方をします。教養主義とかアカデミズムにとらわれすぎるのは愚かなことだけれど、先駆者や前例や代表的なものを知らずにエラぶるのもくだらない。
ま、僕よりも石井くんの文章を引いた方が意図は伝わるでしょう。彼の方が言葉使いが巧みだからだ。何もへたくそが言葉を紡ぐのに苦労する必要はない(……ということで以下に2002年1月5日の「這いうねる日記」より勝手に引用する。文句があれば本人が直接言いに来るように)。
しかしながら多くの独創は単なる独りよがりだという現実を思い出す必要がある。私は妄想を愛するが、しっかりと訓練されない独創は単なる妄想に留まるものだ。そしてやっと到達した地点は、前人がはるか昔に通り過ぎた場所であったりする。
数学を独学で続けた少年の、残酷な物語がある。
彼は貧しかったために上の学校に進むことができなかったが、励ましてくれた教師の恩に報いるべく、農作業の傍ら数学を勉強しつづけた。そして老年になり、少年だった男は教師のもとを訪れる。発見を報告するためだ。
彼の発見とは、連立方程式の解法であった。
独力で連立方程式の解法を発見する。それは天才的なことだ。しかし、そんなものは中学校であっさりと習うのだ。半生を費やして、やっと到達した地点とは、つまりこんなものだ。
というわけで、ファンタジーRPGについて語ったりそれを仕事にしようとする人は、一度は『指輪物語』を読むべきでしょうね。好き嫌いは別。一読して、二度と読みたくない、嫌いと宣言しても結構。そうでなければ、その人の作品は独学で解法する連立方程式と同じことになります。どうせなら、スタートは高い位置から始めた方が楽じゃないですか。
単に「ファンタジーについて語る」というなら、他に逃げ道はいくらでもあるわけです。「自分は『ゲド戦記』は読んでいるけど」とか「ミヒャエル・エンデを目標にしているので」とか「日本の作家を読み込んでいます」とか幾らでも「原点」「古典」「中心軸」とみなせるものはありますからね。でも、それがさらにゲームとの関わり合いまでいってしまうと、『指輪物語』を無視していては「インスタントラーメンしか知らずに中華料理を語るようなもの」になってしまいます。
わたしも指輪物語は高校時代に友だちから文庫を借りて苦労して読んだけれど、愛読といえるほど好きにはなれませんでした。映画はDVDで何度も見直すくらい好きですし、結婚のお祝いに評論社の愛蔵3巻本をもらうくらいには好きですが。
ちなみに2007年のワールドコン「日本2007」のディーラーズルームに、古書店が1つだけ顔を出していました。古書店と言っても本が10数冊並べてあるだけ。しかし「すべて初版」と英語で書かれた張り紙付。
ラブクラフト初の単行本あたりは2冊セットで60万円とか聞きましたが、「ホビットの冒険」には幾らの値段が付いていたのでしょうか……。
【指輪物語】【J・R・R・トールキン】【アラン・リー】【評論社】【指輪】【光と闇】【エルフ】【ホビット】
ま、僕よりも石井くんの文章を引いた方が意図は伝わるでしょう。彼の方が言葉使いが巧みだからだ。何もへたくそが言葉を紡ぐのに苦労する必要はない(……ということで以下に2002年1月5日の「這いうねる日記」より勝手に引用する。文句があれば本人が直接言いに来るように)。
しかしながら多くの独創は単なる独りよがりだという現実を思い出す必要がある。私は妄想を愛するが、しっかりと訓練されない独創は単なる妄想に留まるものだ。そしてやっと到達した地点は、前人がはるか昔に通り過ぎた場所であったりする。
数学を独学で続けた少年の、残酷な物語がある。
彼は貧しかったために上の学校に進むことができなかったが、励ましてくれた教師の恩に報いるべく、農作業の傍ら数学を勉強しつづけた。そして老年になり、少年だった男は教師のもとを訪れる。発見を報告するためだ。
彼の発見とは、連立方程式の解法であった。
独力で連立方程式の解法を発見する。それは天才的なことだ。しかし、そんなものは中学校であっさりと習うのだ。半生を費やして、やっと到達した地点とは、つまりこんなものだ。
というわけで、ファンタジーRPGについて語ったりそれを仕事にしようとする人は、一度は『指輪物語』を読むべきでしょうね。好き嫌いは別。一読して、二度と読みたくない、嫌いと宣言しても結構。そうでなければ、その人の作品は独学で解法する連立方程式と同じことになります。どうせなら、スタートは高い位置から始めた方が楽じゃないですか。
単に「ファンタジーについて語る」というなら、他に逃げ道はいくらでもあるわけです。「自分は『ゲド戦記』は読んでいるけど」とか「ミヒャエル・エンデを目標にしているので」とか「日本の作家を読み込んでいます」とか幾らでも「原点」「古典」「中心軸」とみなせるものはありますからね。でも、それがさらにゲームとの関わり合いまでいってしまうと、『指輪物語』を無視していては「インスタントラーメンしか知らずに中華料理を語るようなもの」になってしまいます。
わたしも指輪物語は高校時代に友だちから文庫を借りて苦労して読んだけれど、愛読といえるほど好きにはなれませんでした。映画はDVDで何度も見直すくらい好きですし、結婚のお祝いに評論社の愛蔵3巻本をもらうくらいには好きですが。
ちなみに2007年のワールドコン「日本2007」のディーラーズルームに、古書店が1つだけ顔を出していました。古書店と言っても本が10数冊並べてあるだけ。しかし「すべて初版」と英語で書かれた張り紙付。
ラブクラフト初の単行本あたりは2冊セットで60万円とか聞きましたが、「ホビットの冒険」には幾らの値段が付いていたのでしょうか……。
【指輪物語】【J・R・R・トールキン】【アラン・リー】【評論社】【指輪】【光と闇】【エルフ】【ホビット】