異世界を構築する究極の方法は"ことばをつくる"ことです。ベルディンは「人は言葉で思考する。言葉がなければ思考はない」といいました。実際、単語や文法を分析すれば、その言葉を使う人たちの思考法から生きている世界まで推測することは可能です。
(異説もあるようですが)順序からいえば環境と生活があって言葉が生まれ、言葉が生まれて人は意識して思考するようになるといえるわけです。
エスキモーには雪の白さを表す単語が何十とありますしモンゴルの遊牧民には馬の毛並みの状態を表す単語が同じくらいあります。逆に南米のある部族はヨーグルトの一種以外に食べるものが周りにないので、食事に関して美味いとか不味いといった単語はなく、ただ満腹か空腹かの区別しかないそうです。
これらの単語の有無からでも、そこで生きる人々の生活環境や何を重視しているかを知ることができます。つまり"ことばをつくる"ということは、単に単語や文法をつくるだけではなく、その世界とそこで生きる人たちの生き方まで創造することになるのです。
しかし、逆もまた真なりで、言葉によって思考を制御することも可能かもしれません。
その独特の世界設定で知られるディレイニの『バベル17』は星間戦争の舞台裏の諜報戦を扱った作品ですが、その核となるのが敵国が生み出した暗号バベル17です。これは単なる暗号ではなく、れっきとした人工言語であり、その特徴は主語が存在しないこと。言葉としては洗練されており、単純に思考するだけなら最高の言語なのですが、"自分"という存在を認識しないため、この言葉を使い続けるに従い、無意識に言語そのものに組み込まれたプログラムに従って行動してしまうという、洗脳プログラムと一体化したような優れものです。
まあ、トールキンのように神話や言語を丸ごと構築するのは無理としても、異世界と架空言語をつくるなら、これくらいの芸は見せて欲しいというお手本です。
「わたしは現代の一部ですわ。現代を超越したいと思ってはいるんですけど、現代そのものが、わたくしという人物を作り上げるのに、大きな役割をしていますから」
言語学者リドラ・ウォンの言葉。誰しも生まれながらの立ち位置を変えるのは困難なものです。
【バベル-17】【サミュエル・R・ディレーニイ】【言語】【防諜】【癒着ペット】
(異説もあるようですが)順序からいえば環境と生活があって言葉が生まれ、言葉が生まれて人は意識して思考するようになるといえるわけです。
エスキモーには雪の白さを表す単語が何十とありますしモンゴルの遊牧民には馬の毛並みの状態を表す単語が同じくらいあります。逆に南米のある部族はヨーグルトの一種以外に食べるものが周りにないので、食事に関して美味いとか不味いといった単語はなく、ただ満腹か空腹かの区別しかないそうです。
これらの単語の有無からでも、そこで生きる人々の生活環境や何を重視しているかを知ることができます。つまり"ことばをつくる"ということは、単に単語や文法をつくるだけではなく、その世界とそこで生きる人たちの生き方まで創造することになるのです。
しかし、逆もまた真なりで、言葉によって思考を制御することも可能かもしれません。
その独特の世界設定で知られるディレイニの『バベル17』は星間戦争の舞台裏の諜報戦を扱った作品ですが、その核となるのが敵国が生み出した暗号バベル17です。これは単なる暗号ではなく、れっきとした人工言語であり、その特徴は主語が存在しないこと。言葉としては洗練されており、単純に思考するだけなら最高の言語なのですが、"自分"という存在を認識しないため、この言葉を使い続けるに従い、無意識に言語そのものに組み込まれたプログラムに従って行動してしまうという、洗脳プログラムと一体化したような優れものです。
まあ、トールキンのように神話や言語を丸ごと構築するのは無理としても、異世界と架空言語をつくるなら、これくらいの芸は見せて欲しいというお手本です。
「わたしは現代の一部ですわ。現代を超越したいと思ってはいるんですけど、現代そのものが、わたくしという人物を作り上げるのに、大きな役割をしていますから」
言語学者リドラ・ウォンの言葉。誰しも生まれながらの立ち位置を変えるのは困難なものです。
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