時代の流れと共にいちばん変わった気がするパソコンゲームは、アドベンチャー・ゲームかもしれません。今となってはどこまでがアドベンチャー・ゲームといっていいのか難しいくらい、RPGやシミュレーションと融合したりしています。単に絵がきれいになり、動きがつき、声が出る……といった以上の変化です。なにをアドベンチャー・ゲームと呼ぶのかも難しい話。ま、ここではパソコンで観ることができ、選択肢が選べるストーリー作品とでも定義しましょうか。
確かに、昔ながらの「パソコン紙芝居」みたいなもの(途中に選択肢とかある場合もありますが、基本的に画面に表示される絵と文字を順番に読んでいくだけのもの)も多いかも知れません。でも昔のアドベンチャーって、本当に不条理で不親切なものばかりでした。確実に正解を選び続けない限り、いきなり死亡(バッドエンド)か、選択肢がなくなって前にも後ろにも進めなくなるもの(フリーズ)ばかり。ろくなヒントもなしに壁を叩き破って臼を手に入れないとゲームオーバーってなんですか? しかもストーリーと呼べるほどの中身もありません。どれもこれも「フィールドをうろつきまわりアイテムを全部回収できたらクリア」程度のモノ。今はどれも最低限、短編小説程度のストーリーはありますからね。
『スターアーサー伝説』とか『デゼニーランド』とか、あれ、なんだったのさ。
黎明期のクソゲーにまみれたおかげで、ジャンルとしてのアドベンチャー・ゲームへの評価は甘くなり、またその反動でシナリオの好みは五月蠅くなりました。人が絶賛する作品でも「悪くはないよね」程度の評価となってしまいます。
今はマルチ・シナリオと呼ばれるタイプばかりですが、ぼくの好みは途中でストーリーが分岐しても、それが1つの物語の別々の側面に過ぎないというもの。ロングヒットな『To Heart』やノスタルジックなロケットSF『ロケットの夏』も評判は良いし、ストーリーも悪くないしシステムも上々でしたが、個人的な好みとして満点はあげられない(エラそうに……)。
結局、自分の好みは「ネットゲーム」であり、
「途中でストーリーが分岐しても、それが1つの物語の別々の側面に過ぎず、全部シナリオをクリアして初めてストーリーの全体像が把握できる」という作品なんですよ。

そんな数少ない好みの作品の1つが、
『果てしなく青い、この空の下で…』というノベル形式のアドベンチャーゲーム。来年の廃校が決まった高校を舞台にした1年間の物語です。
春夏秋冬の4パートに分かれ、春先は牧歌的な田舎の学校ストーリーなのですが、やがて村に伝わる伝承がクローズアップされ始めて夏には伝奇風になり、その過程で学校の用地買収や村の秘密をめぐる組織的な暴力の横行や猟奇画家の存在が重要性を帯びて秋にはバイオレンス性が強くなり、そして冬はそれまでの選択肢の選び方(まあ、もっぱら5人のヒロインの誰に関わってきたか)で、ホラーになったり、猟奇になったり、バイオレンス伝奇ロマンになったりするというものです。
で、無事にヒロイン5人全員をハッピーエンドでクリアすると、民話風なエピローグが追加され、さらに追加シナリオへ突入するのですが……シナリオの構成がうまいんですよね。1つ1つのストーリーにも起承転結はついているのだけれど、どこか釈然としない部分が残り、それが全部のストーリーを知ることにより、合点がいくという展開(それでもかすかに残る疑問はクリア後に到達できるオフィシャルサイトの隠しページの小説にて確認)。
こういう物語の場合、シナリオ相互の関係は「舞台と登場人物が共通しているだけの別の話」「物語の中身は変わらずメインの登場人物だけが違う」ことになりがちですが、これは「1つの物語の角度を変えて見ているだけ」なのです。しかも追加シナリオの様子だと、どうやら主人公は実はすべてのシナリオを同時に体験している模様。ハーマイオニーもびっくりです。すべてハッピーエンドを迎えてしまっている5人のヒロインをいかにさばくか、主人公の超人的な奮闘ぶりが泣かせます。
地味な作品ですが、今でも評価は高い……というか(2000年6月の作品にもかかわらず)取引価格があまり下がっておらず、2002年2月にはプレイステーション用ソフト『どこまでも青く…』としてリメイクされています。
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