付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「暗い森」 アーロン・エルキンズ

2007-09-10 | ミステリー・推理小説
 太古が再現された(残された)世界というシチュエーションは魅力的です。コナン・ドイルの『失われた世界』やバロウズの『時に忘れられた島』も、太古そのままに恐竜の生きている世界に現代の人間が飛び込む話ですが、バロウズやドイルの時代ならともかく、現在ではそのような島がまったく調査されないまま10年以上放置されることなど考えられません。ただ岩が頭を出すだけの島でも、領土・領海争いで人が乗り込むんです。もし、この設定を使うならアニメ『巨神ゴーグ』のように世界規模の組織が意図的に秘匿していたとか、既に群島のある小国の海に隆起したが、内戦中で近づけなかったし、その価値も見いだせなかったというくらいにするしかありませんね。

 絶海の孤島ではないけれど、マイケル・クライトンの『コンゴ』やジョン・ダートンの『ネアンデルタール』のように、大陸の奥地に人跡未踏の世界を見いだすという手もあります。エベレストから南極までインターネットや携帯電話で結ばれているような現代だって、ギニアや中国の奥地には知られざる生物が棲息している地域があるんだという話。人工衛星などを駆使して調査・探査しても実態は人間が現地まで行ってみないと判らないということです。
 ま、どちらも映画化され、トンデモと評されちゃいましたが、こういうネタはミステリーにもあります。人類学教授ギデオン・オリヴァーが登場する現代ミステリー『暗い森』。

 ワシントン大学で自然人類学を教えるギデオン・オリヴァー教授は、骨の鑑定によって対象の体格や性別はもちろん死因その他まで推測してしまう通称スケルトン探偵。そんな博士が遭遇した事件の1つが、ワシントン州立公園で発見された他殺体。被害者が殺されたのは6年前と推測されるのに、凶器と目される道具を使う種族は1万年前に滅びていたのだ……。

(2023/11/20改稿

【暗い森】【アーロン・エルキンズ】【ミステリアス・プレス文庫】【スケルトン探偵シリーズ】【コンゴ】【先住民】
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「クジラの彼」 有川浩

2007-09-10 | その他フィクション
「舌は予定に入ってないッ!!」

 6本の激甘なラブストーリーを収録した短編集。紆余曲折はあっても悲恋はありません。ただ、これが普通の恋愛小説とは違うのは、すべて物語が自衛官を中心に進んでいるということと、そのうち3本は同じ著者が過去に書いている怪獣小説(だと僕は思っている)『空の中』と『海の底』という2作品の後日談になっているということ。
 でも、『空の中』と『海の底』の番外編かどうかなんてことは、まったく気にならず、ただ見覚えのある登場人物の姿に読んでいてにやりと微笑むくらいなので、2作が未読な人も気にする必要はありません。
 遠距離恋愛にヤキモキする潜水艦乗りと恋人たちの物語『クジラの彼』と『有能な彼女』は正当派の恋愛もの。次世代軍用機と男子トイレをめぐる『ロールアウト』は、現実でもちゃんと配慮してもらえると良いですねという話。『国防レンアイ』は怖いけど可愛くて、身も蓋もないけれどそこが良い!という話。『脱柵エレジー』はその名の通り、逃亡したところでその先には何も待っていないよという哀歌でちょっと切なく、求めているものは柵の向こうにはないんだよ……というちょっと良い話。『ファイターパイロットの君』は女性パイロットとその家族の物語。なんか意地っ張りなやりとりに笑えます。
 精一杯がんばっている、男の子と女の子の物語です。自衛隊のことは詳しくないとか興味がないという人でも、普通に「特定の職場に関わる人たちの恋物語」ということで、商社とか病院とかの話と同じように読めばいいと思います。

【クジラの彼】【有川浩】【自衛官】【恋愛】
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「怪獣王子」 ピープロ

2007-09-10 | その他SF(スコシフシギとかも)
 今となっては大昔。テレビがやっとカラー放送になった頃の作品に『怪獣王子』というのがありました。TV特撮では円谷プロと張り合っていたピープロの作品です。

 突然海底火山が爆発、隆起した。その火山弾を受けた旅客機が洋上に不時着。脱出の際に、双子の赤ん坊の片割れが行方不明となる。
 それから10余年。やっと接近できるようになった火山島に上陸した調査団が見たものは、ジュラ紀さながらの大密林とそこを闊歩する恐竜たち。そしてその恐竜の1頭に育てられた野生児の姿だった。困惑する調査団。しかし、彼らの前に真の脅威が姿を表す。頭上から襲いかかる金色の鳥人の群。この島は宇宙からの侵略者の前線基地となっていたのだ。
 宇宙鳥人は、高度な科学力とそれによって生み出した怪獣軍団を使って地球侵略を開始しようとしていた。だが、全滅しそうな調査団を救ったのは、あの野生児、ブロントザウルスを手足のように操る謎の少年だった。
 救助の潜水艦部隊の全滅、怪獣の日本上陸などの中、少年……タケルは家族と再会し、徐々に言葉を覚え、共に戦うレインジャー部隊の精鋭たちとも心を通わすようになる…。

 日本の特撮TVというとウルトラマンのような変身巨大ヒーローが怪獣と戦うか、等身大のヒーローが悪の怪人と戦うというのが2大パターンですが、探せば例外はいろいろあるもの。昔、通販でビデオが出ましたが、未完で終わった上に収録されたものもフィルムの状態が悪く、話によっては半分以上がホワイトノイズという代物でした。数年前にはLDが出ましたが、とても高くて買えません。それが先年、やっとこさDVDが発売され、嬉々として購入した次第。

 ××に育てられた少年や少女が…というのは、古今の冒険小説や児童文学の定番設定。狼に育てられると『ジャングルブック』のモーグリ。それで超能力があると『狼少女ラン』。ゴリラに育てられるとバロウズの代表作『ターザン』。河童みたいな宇宙人に育てられると『宇宙パトロール・ホッパ』。実際にも、動物に育てられた子供…という話は世界各国で聞くことができます。
 しかし、今になって見直すとなかなか強烈。基本的に矢面に立って宇宙人や怪獣と戦うのは、現有兵器装備の自衛隊。この物語に登場するレインジャー部隊は、カービン銃と手榴弾だけで乱れ飛ぶ光線兵器や巨大怪獣に立ち向かったりしますし、訓練シーンだけで1話の前半が終わってしまったりとなかなか剛毅。そんなところが子供ながらに気に入っていたのかも。
 主役ヒーローが強くてあたりまえ。普通の人間が努力して工夫して、とんでもない敵と戦うから面白いのです。

【怪獣王子】【土屋啓之助】【フジテレビ系】【恐竜】【宇宙人】【自衛隊】【双子】【地蔵】
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「エリア88」 新谷かおる

2007-09-10 | 架空戦記・仮想戦史
 ランドシップの醍醐味は、「ありえない場所に存在する」という点にあります。「海を往くもの」と誰もが認知している艦船が、陸を進むギャップが面白いのです。
 なら、宇宙空間や空中はどうかというと、なまじ小知恵が発達してくると「下から攻撃を受けたらどうなるんや!?」とツッコミたくなって興ざめしがちになるのです。かといって、本来の喫水線より下に武装とかあったら、ただの宇宙船ですしね。
 しかし、考えないようにしていても、陸上戦艦というのは運用できるエリアが限定されるという事実は無視しきれません。間違っても日本の国土じゃ運用できません。ひたすら荒野だけが続くような世界でないと、たちまち座礁してしまいます。今の地球では無用の長物。
 それでも地上を艦船が走ったケースが他になかったわけではありません。新谷かおるの『エリア88』の中盤のように、砂漠世界なら地上空母くらい!…………って、それはいくらなんでも無茶です。いくら部品は世界各地に小分けして発注したとしても、砂漠を走る原子力空母なんてどこで秘密裏に建造できるというのです!?
 でも、まあ、大好きでしたよ。砂漠空母篇。そりゃ前半の傭兵パイロットを主役にした現代の戦場ロマンシリーズみたいな雰囲気が好きな人には嫌われたかもしれませんけどね。砂漠空母を撃沈するため、一癖も二癖もある傭兵たちが正規空軍ではありそうにない、てんでばらばらの装備で乗り込んでくるあたりは燃えますね。それが迎撃されて次々に戦死者を出しつつも、二波、三波と少しずつ鉄壁の守りを剥ぎ取っていくシーンはシリーズ最大の山場です。そこからあとは……どうでもいいや。

 話は変わりますが、<鋼鉄の撃墜王>フーバー・キッペンベルグは、なんか死んでからの方が出番が多くて印象的ですね。後付けで設定が大きくなっていくとこなんざ、<黄昏の魔弾>ミゲル・アイマンみたいですな。

【エリア88】【新谷かおる】【傭兵】【陸上戦艦】【空戦】
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「神撃つ赤い荒野に」 荒巻義雄

2007-09-10 | ミリタリーSF・未来戦記
 以前、架空戦記の同人PBMをやることになったので、そっち方面の資料を調べていたら、戦車は当初「ランドシップ」と呼ばれていて、やがてその秘匿名「タンク」で呼ばれるようになったとか。第一次大戦後期に登場したイギリスのマークIとかIIとかメールとかフィメールなんかの話です。
 ランドシップ……陸上戦艦……なんか、その名前だけでワクワクしちゃいます。
 陸上戦艦が好きです。
 砲塔だらけの巨大な鋼鉄の塊が、轟音轟かせ地上をばく進する姿にはわくわくさせられます。すごくバカっぽいじゃないですか。
 とはいえ、戦車ですら移動させるのに大わらわな日本。いや、少しでも起伏があったらそこで頓挫してしまうシロモノですから、普通は空想の中でも動かせないですね。でも、探せば砂漠空母とかいろいろあるものです。
 そもそも、最初にぼくが触れたランドシップは<青葉>、火星の荒野で彷徨を轟かした巨艦です。大学時代、転がり込んだ先輩の下宿で見つけた荒巻義雄のビッグウォーズ・シリーズの1冊、『神撃つ赤い荒野に』に登場する地上大型巡洋艦でした。

 数百年先の未来。世界連邦を樹立し、太陽系に進出した人類に、外宇宙から神のメッセージが届く。
「われら主なり、汝ら、挙りてわれらが後臨を迎えよ」
 本当に神なのか、それとも単なる宇宙の異文明なのか? いずれにせよ、人類に従う意志はなく、宇宙の深淵より出現した神々の艦隊との戦端が開かれてしまう。
 しかし人類は、緒戦で外惑星系を失い、次に水星と金星という内惑星を失い、地球と火星植民地は挟撃され、敗戦は時間の問題と思われたが、依然として神々の正体は知れなかった……。


 敗色濃厚な荒涼たる火星の平原を疾駆する大型巡洋艦<青葉>!
 加藤直之のイラストがかなり大きなウェイトを占めてはいるのだけれど、とにかく格好良かったのです。

 大学時代には、やはりまた別のランドシップ(陸上艦)に遭遇しています。アニメ『戦闘メカ ザブングル』です。明朗快活な惑星西部劇といいつつ、後半は話が大きくなってあまり西部劇らしからぬ展開になって来て好き嫌いが分かれるところなんだけど、次第にウェイトが大きくなってくる艦隊戦が好きでした。
 荒涼たる大地に戦列を組むランドシップたち。
 最新鋭の大型艦、アイアンギア級とかデラバスギャラン級ともなると完全にSFメカなんだけれど、輸送や哨戒が主任務のガバン級あたりの小型艦は、第二次大戦中のUボートとか駆逐艦の味わいさえあって魅力的です。
 で、ちよっとガバン級<ウルフ>の武装データを調べてみたら、76mm砲1門、40mm連装機関砲1門、12.7mm連装機関銃1機……って、とてもロボットアニメの母艦の武装とは思えませんね☆

【神撃つ赤い荒野に】【荒巻義雄】【陸上戦艦】【神】
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「ダディフェイス~メデューサ」 伊達将範

2007-09-10 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 トレジャー・ハンター系の話って好きなんですよ。ハリソン・フォードの『インディ・ジョーンズ』とか岡崎武士の『EXPRORER WOMAN RAY』とか菊池秀行の『エイリアン』とか。『ダディフェイス』のシリーズもそうですね。

 貧乏大学生・草刈鷲士のもとへ現れた美少女は、自分が鷲士の実の娘だと宣言した。13年前、離ればなれになった幼なじみとの一夜の結果生まれた子供だというのだ。そんなこと信じられるかと思う暇もなく矢継ぎ早に襲いかかる謎の刺客。どうやら彼が偶然手にした、竹取の翁と鬼の謎に言及した稗田阿礼の私本を狙っているらしいのだが、襲撃者は誰もが口をそろえて、お前こそがダーティ・フェイスだと主張するのだ。
 本人にはまったく身に覚えがないことなのだが、草刈鷲士こそはコードネームを<ダーティ・フェイス>という凄腕のトレジャーハンターであり、12の国家を滅ぼし、4つの歴史的遺跡を壊滅させた男、ナイフから戦闘機まですべての兵器を使いこなす古武道の達人だと誰もが主張するのだ。そんなことないのに…。
 かくして彼と娘…と主張するところの結城美沙、それに学園のアイドル麻当美貴は、隠された秘宝をめぐる争奪戦に巻き込まれ、どこまでもどこまでも転がっていくのだった…。


 宝探しが主題であったり主人公である小説は多いです。スティーブンソンの『宝島』みたいな海賊物であるとか、ハガードの『洞窟の女王』のような秘境探検物。インディー・ジョーンズの映画などのノヴェライズもそうですか。
 けれど、そうした冒険小説の流れとは近くて異なる場所、主にライトノベルというジャンルを中心に、最近になって散見されるようになった<トレジャー・ハンター物>は少々毛色が異なっているような気がします。
 このジャンルの代表は、やはり菊地秀行のエイリアン・シリーズですね。あるいは『アルテミス・ファウル』といった海外作品も含めて良いかも知れません。こうした作品では、まだ子供であるはずの少年少女が最先端のハイテク機器から最新兵器までを駆使して、普通の人々が伝説だおとぎ話だと相手にしない中から手がかりをつかみ、莫大な財宝を手に入れるため未曾有の危険に立ち向かうというストーリー。
 そしてこの作品もまた、そのセオリーに従って展開します。
 超兵器を無造作に使いこなし、腕利きの兵士を簡単に倒してしまい、大人の権力者すらひれ伏す主人公たち。そこで終わってしまったら、ただの子供の願望充足小説だけれど、ハイテクも札束もやがて役に立たなくなるときが来ます。そして頼れるものが自分だけになったときに現れる敵こそ、最大の危機であり、それをいかに身一つで乗り切るかで主人公の格が決まるのです。やはり最後に物をいうのは、おのれの肉体と知恵と勇気なのです。
 ただメデューサ編は大風呂敷を広げたかなあという気がします。一度にあれこれやり過ぎだ。畳むのがタイヘンだと思うな。

【ダディフェイス】【メデューサ】【伊達将範】【西E田】【トレジャーハンター】【古代帝国】【恐竜】【遺産】【ゲート】
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「魔(神人)伝」 来留間慎一

2007-09-10 | その他SF(スコシフシギとかも)
「神だとお? いつまでも"そんなもの"が最上の存在だと思うなよ!」
 魔導師ビョウドの言葉。驕り高ぶりもここに極まれり★

 魔法+格闘技の学園アクションコミックで、話を重ねるごとに宇宙刑事とか菊地秀行とかバンバン混じってきてしまって収拾がつきそうにないものをバックドロップの一撃でノックアウト!!……といった感じの作品。

「魔(神人)伝」★★★★

【格闘技】【同一存在】【宇宙刑事】【魔王】
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