付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「杜の都のボールパーク」 大泉浩一

2007-09-23 | スポーツ・武道
 塩釜の綾瀬さんからエキスパック500が到着。はて? 何か届く予定はないけれど……と開封してさらに困惑。仙台の漬け物と本が1冊。

 本の方は、ローカル出版物で『杜の都のボールパーク』。四半世紀前、仙台に数年だけ拠点を置いていたプロ野球チーム、ロッテオリオンズをモデルにした架空のプロ野球チーム「仙台ツインズ」をめぐる……というより、仙台を舞台にした野球短編集。
 野球小説というと、『フィールド・オブ・ドリームス』や『消えた巨人軍』を勘定に入れなければ、『プレーボール!2002年』くらいしか読んでなかったのだけれど(ああ、もう2002年を過ぎている!)、けっこう面白かったです。『あぶさん』も好きだしね。考えてないようで考えていて、でも結局考えないで行動する監督の金田某とかまさかりみたいに剛球を放つ投手の村田某とか、かろうじて覚えているからかな。『アストロ球団』はこの作品の前になるのか後になるのか……。
 そして、やっぱりここでも「名古屋ドラゴンズ」はパ球団に勝てませんでしたとさ。

 読み終わっても謎は解けず、悩みつつ連絡してみたら「いやあ、この前、お茶をもらった御礼に、ローカルなもので見繕ってみましたぁ」とのこと。いや、ありがとうございます。

【杜の都のボールパーク】【大泉浩一】【野球小説】【プライド】
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「アンダカの怪造学~ネームレス・フェニックス」 日日日

2007-09-23 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 表紙に惹かれて日日日の『アンダカの怪造学~ネームレス・フェニックス』を手に取り、ぱらぱらと内容を確認し、面白そうかなと購入。久々の角川スニーカー文庫ですね。

 現代日本に近い世界。でもその世界が我々の世界と違うのは、怪造学、つまりアンダカという異世界に棲息する生物を召還する技が一般的となっていること……。

 初っぱなでいきなりつまづいた。作品そのものの面白さとは関係ないとこ。怪造生物と共存できる世界を夢見る少女、空井伊依の名前。
 「空井」と書いて「すかいい」と読む(まるで子供がつけたゲームのキャラ名みたい)。つまり「空」を「sky」と読ませる。ということは、この名字はいつ頃成立したものなのだろうか。名字なんてものは誰かに勝手に割り振られたものではなく、その血筋なり住んでいた環境なり主義主張なり職業なりを表すもの。由来を追いかけるだけで短編の1つくらい書けるネタになるわけで、疎かにしてはもったいないものだからだ。
 もちろん本来の読み方以外で読ませる名前は多い。名字にしても戸籍が導入され、庶民も名字をつけるよう定められとき、誤字誤読がまかり通って今に至るものも多いし、それが名前ならなおさら。西欧の名前に漢字をあてはめたり、カタカナで表記するものもざら。でもあえて名字を「英語」であてるとは……確実に明治以後。江戸以前からの名字なら、外国語をあてるとしてもまずオランダ語ではなかろうか。新しもの好きのカブキ心が母国語への親しみとか世間体に優ったとしても……少なくとも古い家柄じゃなさそうだ……などと考えてしまい、なかなか先に進みません。年寄りはどうでも良さそうな枝葉にこだわる。

 私より先に嫁さんが読了。感想は「テンポがよくて面白かったけど、やっぱネーミングセンスがどれもね」とのこと。やはり……。
 話としてはそれなりに面白いけれど、無条件に「作家買い」を薦められるレベルじゃない。ポケモンレベルのネーミングセンスがちょっと心情的に辛いかな。とにかくフォローは必要な作家です。

【アンダカの怪造学】【ネームレス・フェニックス】【日日日】【エナミカツミ】【角川スニーカー文庫】【ミラクル・モンスター・レジェンド】【召還】【仲間】【寮】
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「運命の星フェンリル」 クリストファー・ローリイ

2007-09-23 | 宇宙・スペースオペラ
「人間というのは感覚だけで生きている子供のようなものだ。力は強いが、自制心に欠けている」
 ファンダン族の戦闘指揮官ラヴィン・ファンディンの言葉。惑星フェンリルの利権を守るべくゲリラ戦を指揮した。

 その星にしか棲まない虫から長寿薬を生産する惑星フェンリルでは、長い間植民者間での争いが続いていた。だが、その戦いに介入してきた太陽系世界政府は、全権益を世界政府が掌握すると宣言し、その強大な武力ですべての植民者、そして原住種族フェインに対して即刻従うよう通告してきたのだった……。

 戦争SFではあるけれど、地味なゲリラ戦を植民者と現住種族が仕掛けては航宙尖兵隊に蹴散らされ、その間に政治工作が……という、ミリタリーというよりポリティカルな話かな。

「運命の星フェンリル」★★★

【長寿】【ゲリラ戦】【同盟】
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「蒼いくちづけ」 神林長平

2007-09-23 | その他SF(スコシフシギとかも)
「人間の心は現実を創造力で変容させる」
 読心術にもとづく証拠の不正確さについて語った、無限心理警察機構刑事OZの言葉。確かに本人がそうと信じていることが客観的な真実とは限らないのは常のこと。

 神林長平の作品は、人間とは何か、機械とはどう違うのか、自己とは何か、個の心とは何か、言語と思考の関係は……などともっぱら自己と世界との関わり方について問いかけているわけですが、この話もそう。刑事と犯人の追跡劇ながら、その向こうには人と精神のどろどろしたものがたっぷり詰まっているのです。

「蒼いくちづけ」★★★

【テレパス】【月】【心】
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「シャンペン・シャワー」 かわみなみ

2007-09-23 | スポーツ・武道
「そう、僕は何も考えていない! でも、思うとおりに生きている」
 高僧をして無の境地に達していると言わしめたサッカー選手、ジョゼ・オスカル・ベルナルドの言葉(後にヴィトーリオ市長に就任)。

 まだサッカー人気がこれほどでなく、Jリーグのかけらもなかった頃、南米の小国エスぺランサのサッカーチーム「ヴィトーリオ」を舞台にしたサッカー漫画がありました。密林からやってきた少年アドリアン・アレクシスを中心に、無表情・無慈悲・無理・無茶・無謀の天才ジョゼ・オスカル・ベルナルドや、勝つためには手段を選ばないライバルチームのロートル選手マルロらが繰り広げる試合の数々。ギャグとシリアスの微妙なブレンドが好きでしたね。
 1986年にはワーナーパイオニアから音楽:田中公平、歌:佐久間レイ、笠原弘子、戸田恵子でイメージアルバムが出てますが、これまた傑作でこれ以後の『究極超人あ~る』などのイメージアルバムにBGMとして使用されることが多く(予算不足の使い回しかも知れないけれど)なかなか良いのですよ。たださすがに原作読んでないと分かんないネタが多いよね、「愛しのジョゼ」とか。

【シャンペン・シャワー】【かわみなみ】【サッカー】【秘技】【踏みっ!】【国内リーグ】【ワールドカップ予選】【特訓】【移籍】【遺跡】【秘境】
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「首都消失」 小松左京

2007-09-23 | 破滅SF・侵略・新世界
「生きている事は体に良くない。グラマン"トラッカー"や"コルセア"なんか、一番体に良くない」
 日米非公式会談後の雑談における自衛隊航空集団司令、末富海将の言葉。

 突如東京が巨大な雲に包まれ連絡が途絶した。人の行き来はもちろん、通信やレーダー波すら通さない雲に、日本は首都機能を完全に喪失してしまう。雲はいつ消えるのか、消えることがあるのか、それすら判らないまま雲の外に取り残された人々は、東京の存在しない日本を緊急に構築しなければならなかった。

 こんな導入部から始まったのが、中日新聞の連載小説『首都消失』。
 元ネタは短編『物体O』。突然、東京を巨大なリングが取り囲み、交通が遮断されたことによるドタバタを描いた物語。それを膨らませ、東京という存在がいきなり消えてしまったとき、政策決定のシステムは、外交関係はどうなるのか、各地に配備されている自衛隊と在日米軍の関係は、物流・出版は……と、政治・経済・軍事面をしっかり描き込んだのが『首都消失』ということになります。(結末を見れば判るように)SFというより、ポリティカル・シミュレーション小説。
 取り残された普通の人たちが「このままでは日本という国が無くなってしまう!」と、学者から新聞記者まで、それぞれが出来る限りのことを死にものぐるいで頑張る話です。そこが面白い。

 だから、同じ『首都消失』でも映画版はつまらない。特撮がちゃちとかいうのではなく、肝心の普通の人々が限界まで知恵をめぐらせ、身体をはって頑張る姿が描けてないから。鮎食って、野外ライブで大騒ぎして、竹竿を軽トラに積んで特攻かい!?(それはあさりよしとおだってば)(2007-09-23)

 小松左京の作品は、アイデアとひねりの利いた短編より、長編の、それもパニック小説っぽいものが好きです。
 細菌兵器で南極以外の人類が滅んでしまった『復活の日』、地殻変動で日本列島が崩壊していく『日本沈没』、謎の障壁によって東京が孤立してしまう『首都消失』、ブラックホールが太陽系に飛び込んでくる『さよならジュピター』……。
 舞台背景とか発端こそSF的なアイデアで構成されていますが、そこから先は常に人間ドラマです。今までの常識も組織もあてにならない状況に陥った主人公たちが、どうやって体制を整え、困難な状況に立ち向かっていくかという……まあ、プロジェクト×的な世界。
 たとえぱ『首都消失』なら、突然出現した障壁が東京を包み込み、いっさいの連絡が取れなくなってしまうというところから話は始まりますが、物語は「謎の障壁の正体は何か、誰かが作ったものか、どうやったら突破できるのか」という話が中心にはならないんですよね。首都機能を突然奪われた日本という国が、いかに東京抜きで政治行政を再建し、各国との外交関係を維持し、経済活動を持ちこたえさせるかという課題がテーマであり、そのために在野に埋もれていた人材や技術を引っ張り出してくる過程が面白いのですね。
 けれども映画版はそういう点の描写が疎かにされていて、半端な出来です。鮎食ったりロックを演奏したりオンボロトラックで突入する以前にやることがあるだろうが!……というのが感想(監督はどういう映画にしたかったんでしょうね)。(2007-08-25)

【首都消失】【小松左京】【災厄】【IT】【危機管理】
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