ちょうど10年ばかり前の夏の終わり。1ヶ月ほどの短期間、インターネット上で1つのゲームが動きました。主催は日本のネットワークを意識したRPGの草分けである遊演体。
当時は大規模オンライン専用ゲームがやっと出始めた時期でしたが、まだインターネットもない時代に『ネットゲーム'88』を発表した遊演体です。少数参加者による参加費無料の実験作ではありましたが、郵便を利用したアクションやリアクションのやりとりをeメールに置き換えただけのようなPBeMが主流となりつつあった時代に、インターネットの可能性をとことん模索した作品を送り出してきました。
他のプレイヤーとのやりとりがすべてメールやチャットや掲示板の書き込みだけでできる時代。(女性と思ってメールをやりとりしていた相手が実は男性であったというケースもあるように)果たしてモニターの向こうから話しかけてくる相手は現実の存在なのでしょうか。あるいは逆に、インターネットでつながっている相手は、(どんなに信じがたい相手であろうと)本当に存在するのだと仮定して良いのかもしれません。つまり、インターネット空間に限定したバーチャル・リアリティを追求したゲーム。
それが『影岡探偵事務所』であり『team root-T』でした。
この作品は、今、その一部分をネット上で閲覧することができます。
http://touch-your-dream.org/
http://www7b.biglobe.ne.jp/~manase/history/trt/trt.html
しかし、これはあくまでも一部分。割合でいえば半分に満たないかも知れません。なぜなら、その醍醐味はeメールや掲示板における他のプレイヤーやNPCとのやりとりにあったのですから。
ゲームの基本はサイトに掲示されるニュースや情報をもとに的確な行動を考え、NPCたちに調査や作戦を指示することです。つまりプレイヤーはあくまでプレイヤー自身であり、第三者にインターネットを経由して調査依頼や協力依頼をしていきます。それがNPCであろうと他のプレイヤーであろうとやることは変わりません。
そしてストーリーの内容とプレイヤーの役割をひとことでいうと、巨大人型兵器や使徒の代わりに超能力者が出てくるエヴァンゲリオンで、プレイヤーは葛城ミサトみたいな役を演じて年少の少女たちを叱咤しおだて戦場へとかりだすけれど、敵は強大で正体不明。そのくせ味方は情報を出し惜しみするし裏切り者もいるみたいだし……で、最後は戦略自衛隊はネルフ突入してくるし、補完計画は発動しそうだし……という話。真面目にやればやるほど精神的に負荷がかかるゲームですよ。
つまり単なるゲームなら、1対200とかとんでもない負け戦に放り込まれたら、ゲームを投げ出したり、気軽に一か八かの特攻とかやれるんですよね。でもこのゲームでは、コマンド1つで突撃!なんてことはできません。それをやるのは自分とか自分の分身ではなく、それまで半ば照れながら文通していたNPC少女たちなんだもの。
それまで、ちゃんと能力を発揮できるよう、心を開いて指示に従ってくれるよう、メールで応援したり叱咤し続けていた少女たちに、ちゃんとeメールで手紙を書くのですよ。「君は1人で敵が待ちかまえている中に突入して下さい。囮だから、せめて500人くらいは引きつけて。できたら相手を全滅させて、基地の爆破もしておくように」ってさ。最低!
で、最後の最後に返事が届きます。各プレイヤーがそれぞれもっとも親しくしていた少女や女性たちが出撃前に書いた最後の手紙。これでトドメ。
今までのめり込んだゲームはいろいろあったし、苦しかったゲームも多かった。メインNPCと親しくさせてもらったことも少なくありません。でもこれは別格。まあ、なんだ。自分が死地に送り込んだ相手から届く御礼の手紙って辛い。ありがとう。愉しかった。でも死にたくないよ……って……。
「team root-T」★★★★★
【超能力者】【横浜】【日本軍の遺産】【文通】
当時は大規模オンライン専用ゲームがやっと出始めた時期でしたが、まだインターネットもない時代に『ネットゲーム'88』を発表した遊演体です。少数参加者による参加費無料の実験作ではありましたが、郵便を利用したアクションやリアクションのやりとりをeメールに置き換えただけのようなPBeMが主流となりつつあった時代に、インターネットの可能性をとことん模索した作品を送り出してきました。
他のプレイヤーとのやりとりがすべてメールやチャットや掲示板の書き込みだけでできる時代。(女性と思ってメールをやりとりしていた相手が実は男性であったというケースもあるように)果たしてモニターの向こうから話しかけてくる相手は現実の存在なのでしょうか。あるいは逆に、インターネットでつながっている相手は、(どんなに信じがたい相手であろうと)本当に存在するのだと仮定して良いのかもしれません。つまり、インターネット空間に限定したバーチャル・リアリティを追求したゲーム。
それが『影岡探偵事務所』であり『team root-T』でした。
この作品は、今、その一部分をネット上で閲覧することができます。
http://touch-your-dream.org/
http://www7b.biglobe.ne.jp/~manase/history/trt/trt.html
しかし、これはあくまでも一部分。割合でいえば半分に満たないかも知れません。なぜなら、その醍醐味はeメールや掲示板における他のプレイヤーやNPCとのやりとりにあったのですから。
ゲームの基本はサイトに掲示されるニュースや情報をもとに的確な行動を考え、NPCたちに調査や作戦を指示することです。つまりプレイヤーはあくまでプレイヤー自身であり、第三者にインターネットを経由して調査依頼や協力依頼をしていきます。それがNPCであろうと他のプレイヤーであろうとやることは変わりません。
そしてストーリーの内容とプレイヤーの役割をひとことでいうと、巨大人型兵器や使徒の代わりに超能力者が出てくるエヴァンゲリオンで、プレイヤーは葛城ミサトみたいな役を演じて年少の少女たちを叱咤しおだて戦場へとかりだすけれど、敵は強大で正体不明。そのくせ味方は情報を出し惜しみするし裏切り者もいるみたいだし……で、最後は戦略自衛隊はネルフ突入してくるし、補完計画は発動しそうだし……という話。真面目にやればやるほど精神的に負荷がかかるゲームですよ。
つまり単なるゲームなら、1対200とかとんでもない負け戦に放り込まれたら、ゲームを投げ出したり、気軽に一か八かの特攻とかやれるんですよね。でもこのゲームでは、コマンド1つで突撃!なんてことはできません。それをやるのは自分とか自分の分身ではなく、それまで半ば照れながら文通していたNPC少女たちなんだもの。
それまで、ちゃんと能力を発揮できるよう、心を開いて指示に従ってくれるよう、メールで応援したり叱咤し続けていた少女たちに、ちゃんとeメールで手紙を書くのですよ。「君は1人で敵が待ちかまえている中に突入して下さい。囮だから、せめて500人くらいは引きつけて。できたら相手を全滅させて、基地の爆破もしておくように」ってさ。最低!
で、最後の最後に返事が届きます。各プレイヤーがそれぞれもっとも親しくしていた少女や女性たちが出撃前に書いた最後の手紙。これでトドメ。
今までのめり込んだゲームはいろいろあったし、苦しかったゲームも多かった。メインNPCと親しくさせてもらったことも少なくありません。でもこれは別格。まあ、なんだ。自分が死地に送り込んだ相手から届く御礼の手紙って辛い。ありがとう。愉しかった。でも死にたくないよ……って……。
「team root-T」★★★★★
【超能力者】【横浜】【日本軍の遺産】【文通】