付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「ガンパレード・オーケストラ ドラマCD 青の章」

2007-09-28 | 異世界結合・ゲート・ゾーン
 ゲーム『ガンパレード・オーケストラ 青の章』のドラマCDです。
 
 これは「二十四の瞳」さながらの島の分校の生徒たちが、建造半ばで放棄された天体望遠鏡<たんぽぽ>での観測を成功させるまでの話です。
 前半は年長組を中心に、島に左遷されたカタブツ・永野英太郎と同じくカタブツの委員長・田上由加里、それに夜行性引きこもり少女・蔵野みずほの三角関係を中心に話は進みます。恥ずかしくなるくらいラブコメしてます。それから、未完成の<たんぽぽ>への想いが、さまざまな人たちの口を通して語られます。

 夢の墓標ですよ、夢の墓標。単に、宙を見たくて人々が頑張り、そして挫折した記録。観測班として訓練を続け、観測開始に備えながらも放置され続けた観測隊の無念。そんなものの塊です。
 後半のVol.2は少し時間が戻って、男先生が島の放棄を告げるあたりから観測成功までを、超人田島とチエゾーと辻野の三角関係を中心に文化の相違から来る誤解を……って三角関係ばっかりだな……んでもって、Vol.1での一介の学兵として赴任しつつ実は天才ウォードレス・デザイナーだった嶋丈晴と、Vol.2での食いしん坊の二重人格として登場する鈴木俊郎のゲームが絡んで話が進むことになります。
 彼らの繰り広げるゲームとは何か? 嶋先生はなぜ島に棲息する小動物シマシマを01ネコリスと呼ぶのか? 超人田島はなぜ超人と呼ばれるのか?……って、こっちはゲーム情報としてオープンになってますね。七つの世界を通じて最強の戦士の一人で、火星人イルル・アイシン(マイケル・コンコード)と太陽系総軍中佐ハリー・オコーネルの子孫。実家は植木屋。三段跳びの記録4000m以上(正確な記録不可能)、棒高跳び記録1万mという記録の保持者。
 それでも田島は言います。自分は超人なんかじゃない。本当の超人は、もっと優しく、もっと強いものだと。

 言い寄る佐久間浩司を軽くあしらう飛子室アズサも良い味です。

【ガンパレード・オーケストラ】【ドラマCD】【青の章】【ラブコメ】【ネコリス】【絢爛舞踏祭】【介入限界】【黒い月】
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「[冲方式]ストーリー創作術」 冲方丁

2007-09-28 | エッセー・人文・科学
「何でもいいので、何かを過剰にしてみましょう」

 『[冲方式]ストーリー創作術』を読了。
 『マルドゥック・スクランブル』『蒼穹のファフナー』の冲方丁が、自作をサンプルにストーリーの創作について伝授するというもの。デビューが96年ですから、そんなにベテランの作家ではありません。でもそれはつまり、ピチピチの現役最先端の作家ということであり、その作家の創作手法とか編集者とのやりとりというのは勉強になりそうです。
 これから小説やゲームのシナリオなどに取り組もうという人には格好の入門参考書かな。

「[冲方式]ストーリー創作術」★★★

【小説の書き方】
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「銀河英雄伝説」 田中芳樹

2007-09-28 | 宇宙・スペースオペラ
「体制に対する民衆の信頼を得るには、ふたつのものがあればよい。公平な裁判と、同じく公平な税制度。ただそれだけだ」
 ラインハルト・フォン・ローエングラムの言葉。

 とはいえ、これほど難しいものはありません。税制だって、公平にしようと思うから補則や例外事項が付きまくって複雑怪奇になってしまうのです。「公平」の定義だってさまざま。わかりやすく例をあげるなら、「年収300万円の人も月収300万円の人も一律10%の税金を納める」ことが公平なのでしょうか。あるいは「年収が300万円の人は税金を納めなくても良いけれど、月収が300万円の人は半分を税金に納める」ことが公平なのでしょうか。才能とか努力とか境遇とか、人それぞれ千差万別であるはずのものを、1つの型に収めようとするところに無理が生じます。
 つまりは程度問題なんで、この場合は「ほどほど」の意味だと理解しましょう。

「政治家とは、それほどえらいものかね。私たちは社会の生産に何ら寄与しているわけではない。市民が納める税金を、公正かつ効率よく分配するという任務を託されて、給料をもらってそれに従事しているだけの存在だ。私たちはよく言っても社会機構の寄生虫でしかないのさ」
 いや、そこまで卑下しなくても……。こちらは政治家ホワン・ルイの言葉。

「『それがどうした』 この世で一番、強い台詞さ。どんな正論も雄弁も、この一言にはかなわない」
 イゼルローン駐留艦隊分艦隊司令官ダスティ・アッテンボロー少将の言葉より。
 もちろん、それを言い切るだけの面の皮の厚さも必要なのですが……。

 『銀河英雄伝説』は田中芳樹の出世作であり、日本スペオペのターニングポイントともなった作品。
 80年代はみんな『銀河英雄伝説』が好きでした。でも、これ以後、類似のファンタジーやスペースオペラがあちこちから発表されて、嬉しいのを通り過ぎて食傷気味に。でもそれは『銀英伝』が成功したからこそ発表できるようになったようなもの。だから(自負心は大事だけれど)「オレの作品は『銀英伝』なんかとは違う」と豪語するようなのは忘恩の徒だよね。もしくは虚勢。
 さて、中学生の長男に読ませてみたけれど、まだあいつには面白さが伝わってない模様。早すぎたか。2巻読了後の感想を聞いていて「え、キルヒアイスって死んだの?」といわれたときにはぶん殴ろうかと思いました。家庭内暴力だろうと、これだけは許して欲しい。

「恋愛の10や20やらなくて、一人前といえるものか」

 オリビエ・ポプランの言葉。

「女というものは、愛してもいない男の子を宿すことができるのです。そして男はというと、自分の妻が産んだ子は自分の子だと信じることで幸福になれるのです」
 オスカー・フォン・ロイエンタールの言葉。女性不信の度合いではレルグと双璧です。

【銀河英雄伝説】【田中芳樹】【加藤直之】【鴨下幸久】【トクマノベルズ】【道原かつみ】【徳間デュアル文庫】【星野之宣】【創元SF文庫】【篠原烏童】【徳間文庫】【スペオペ】【大河ドラマ】【みんなヤンが好き】
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アリス・ステヴィンス・ウェルズ

2007-09-28 | 雑談・覚え書き
 今さらですが、日本で最初の婦人警官が誕生したのは1946年4月27日。GHQの指示により東京警視庁が62人を採用したのですね。ちなみにこのときの制服はズボン……っていうかスラックス?

 では、世界最初の婦人警官がいつ頃誕生したかというと…………1910年9月12日のロサンジェルス市警。第1号の名はアリス・ステヴィンス・ウェルズ(Alice Stebbins Wells)。
 それも単に任命されたのではなく、女性しかできない仕事もあるんだから警察にも女性が必要なんだと嘆願書に署名を添えて突きつけ、自分で認めさせたらしい。
 青少年の補導とかあれこれやる一方で、アメリカやカナダを講演して回って女性警官の採用を促して回った上に、国際的な連絡組織である国際婦人警察官協会(IAWP)まで作ってしまった女傑です。
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「アンドロメダ病原体」 マイクル・クライトン

2007-09-26 | 破滅SF・侵略・新世界
「死ぬときに血を流すということが、われわれを人間らしくしているのだ」
 医師チャールズ・バートンの言葉。

 まだ子供の頃、この作品を原作にした映画の広告が下段ぶち抜きで新聞に掲載されていました。それはいかにも恐ろしげで、子供心に怯えてしまったものです。映画は観ることなく終わってしまい、それから何年かして原作を手に取ることになります。
 文庫を出している早川書房は、作品が映画化されるとジャケットをすぐに映画スチールに差し替え、ほとぼりが冷めるとまた(元の表紙に戻さずに)別のイラストにすると仲間内では不評でした。だって、そうすると3種類揃えないといけないじゃないか……。
 それはともかく、購入したときの表紙は映画の1シーンを切り出したもので、真っ青な青空の下、真っ白な気密服に身を包んだ医師が赤ん坊を抱き上げているという、作品を象徴するシーンでした。その選択には文句はないよね。

 地球へ帰還した人工衛星を回収に向かった軍のチームと連絡が途絶。前後して周辺の街で奇妙な事件が発生する。そして調査に発進した偵察機のカメラは、すべての人間が死に絶えたように見える街の光景を映し出した。
 なんらかの汚染が発生したと判断されるや、ワイルドファイア警報が発令された。事前に定められていた手続きに従って秘密裏に招集されたメンバーは、人里離れた砂漠の地下に建設された研究施設にて原因の究明と解決に取り組むことになった……。

……ということで、科学者たちが科学的な危機に立ち向かった5日間の記録という形で、細菌汚染の顛末について語られます。50人以上の人々が突然気が狂ったようになって死んでしまった中で、なぜ酔いどれの老人と赤ん坊だけが生き残ったのか。未知の病原体と研究チームの戦いが繰り広げられ、オッドマン理論や細菌戦による被害予想シミュレータのデータとか、虚実も定かでない理論やデータがぶち込まれ、妙なリアリティを醸し出しています。
 あと、この作品の大きな魅力の1つは、農業試験場地下に設置されたワイルドファイア研究所にあります。ほとんど研究施設の中だけで話が進むので、この舞台に魅力がないと面白くないわけですが、期待に十分応えてくれます。(同時期の「謎の円盤UFO」でも見られた)カムフラージュされた部屋ごと降下するエレベータとか、瞬間的に全身の皮膚を焼き払う消毒システムとか、マニピュレータとか隔離エリアの作業システムとか、秘密基地としての外連味もたっぷり。

 書庫整理をしていて他のバージョンも出てきたので、表紙イラストを掲載。
 右が映画化に合わせて文庫化されたときの表紙、真ん中がペーパーバック版、左が復刻された文庫版。(2017/11/21)

【アンドロメダ病原体】【マイクル・クライトン】【ハヤカワ文庫SF】【バイオハザード】【自爆装置】【地下秘密基地】【細菌戦】【核兵器】【プリンター】
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イヴ・ポール・ガストン・ル=プリウール

2007-09-26 | 雑談・覚え書き
 潜水具の歴史をひもとけば、真っ先に、かつもっとも大きく記述されているのは、1943年のクストーとガニアンによるアクアラングの開発です。
 フランス海軍の軍人として、潜水用の呼吸装置(アクアラング)を開発し、水中考古学という分野を生み出したジャック=イヴ・クストーらの功績の偉大さは誰も否定できないでしょう。
 けれど、それ以前に個人用潜水具を開発する試みがまったくおこなわれていなかったわけではありません。1番に着目するのは大事だけれど、2番以下を無視してもいけません。

 日本でも1913年には大串式、1933年には浅利式と呼ばれる水中活動用マスクが開発されていましたし、1926年にはフランスのル=プリウールが高圧ボンベとレギュレーターを使うスキューバを開発していました。
 ここで、もう少し詳しいことを知りたくなり、このプリウールという人について調べてみましたが、なかなか見つかりません。しかしそこはそれ、半可通の付け焼き刃ですが、インターネットというのは便利なものです。

「日本語サイトがないなら、英語でもフランス語でも探せばいいじゃありませんの!?」

 ということで、日本語サイトで名前の綴りを調べ、さらに検索を続けてみると、イヴ・ポール・ガストン・ル=プリウール (1885-1963)という名前がちゃんと出てきます。フランス海軍士官。クストーの先輩ですね。
 1925年から1937年にかけて潜水具の開発をおこない、1926年に、フルフェイス式のマスクを利用し、ボンベに入れた圧縮空気を利用したFernez/プリウール・システムで特許を取る……。
 しかし意外なことに、彼の功績について言及したサイトで真っ先に言及されているのが「日本で最初に飛行機を飛ばした」ということだったのです。あ、意外……。

 では本当に彼が日本で最初に飛行機を飛ばしたのでしょうか?

 無人グライダーを可とするなら、凧作り名人と言われた二宮忠八。1891年4月29日のことです。二宮はさらに有人飛行機の開発を志しますが、資金援助をどこからも受けられず、1903年12月17日、ライト兄弟に先を越され、以後の開発を断念してしまいます。
 そして1909年。大使館付武官として東京に赴任していた海軍士官イヴ・ポール・ガストン・ル・プリウールは、海軍中尉相原四郎や物理学者田中舘愛橘らの協力を得て有人グライダーを開発。同年12月5日には不忍池にて子供を乗せての初飛行に成功。その5日後にはル・プリウール中尉自身が自動車に引かせて100mの滑空に成功(アジア初の有人飛行)。同日、相原中尉が同じく飛行を試み、失速、墜落しています(アジア初の墜落事故)。
 プリウールはその後も海軍士官として航空機にかかわったようです。
 世界大戦が勃発して1916年4月。フランス軍は世界初の空対空ミサイルを戦闘に導入。ドイツ軍の偵察気球に攻撃を仕掛けました。このミサイルはル・プリウール・ミサイルと呼ばれ、ツェッペリン飛行船の迎撃にも用いられていたそうです。
 しかし、このミサイルには射程が短いという致命的な欠点がありました。目標を射程範囲にいれるためには、搭載した飛行機が目標と接触しかねないほど近くまで接近しなければならなかったのです。そんなものは体当たりと一緒です……。
 そして世界大戦が終わるとル・プリウールは再び海に戻り、今度は潜水具の開発に着手したのですから、基本的にメカ好き発明好きな人間だったのでしょう。しかし飛行機もミサイルも潜水具も、いずれも国を守るための道具でもあり、軍人としての職務とも矛盾しなかったのです。

【グライダー】【潜水具】【ミサイル】
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「がんばっていきまっしょい」 敷村良子

2007-09-26 | スポーツ・武道
 第4回坊っちゃん文学賞受賞という敷村良子の『がんばっていきまっしょい』を読了。

 文武両道の進学校に入学した主人公は、新学期早々に落第生のレッテルを張られるが、彼女はふと見たボート練習の光景に惹かれる。けれども男子ボート部はあっても女子ボート部はなく、少女は何としても女子ボート部を作ろうと決意する。だが試合に出るには漕手4人に舵手1人の5人が最低でも必要なのだが……。
 四国を舞台にした、1人の少女の3年間の物語。


 ……ということで、映画化され、またテレビドラマ化もされた作品だそうですが……普通に面白くはありましたが、特別にむちゃくちゃ面白いというほどでもなく……そう、すべてが淡々と進みます。シンプルなストーリーで、キャラクターの掘り下げもさほど深くないので、そういう意味では映像向きかもしれません(膨らますも端折るも自由自在ですから)し、逆に映画のノベライズといった方がしっくり来るかな。
 長けりゃ良いってもんじゃない、人間の心の中をあれこれ書き込みゃ上等ってわけじゃない、というのが持論ではありますが、なんか、もう少し人物を掘り下げてみても良いかと思います。

【がんばっていきまっしょい】【敷村良子】【茂本ヒデキチ】【幻冬舎文庫】【ボート】【伝統】
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「肝盗村鬼譚」 朝松健

2007-09-26 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 父親危篤の知らせに忌み嫌っていた故郷へ妻と共に足を踏み入れることになった宗教学者・牧上文弥は、不可解な現象に悩まされながら、いつしか奇妙な儀式へと巻き込まれていく。だがそれは周到に用意された儀式の始まりに過ぎなかった……。

 朝松健が大病後の復帰第1作に選んだのは、北海道の海辺に位置する僻村で繰り広げられる事件の顛末でした。排他的な海辺の街、記録に残っているだけでも官憲の大規模な摘発が何度もあり、付近の海域では海軍が不可解な演習をしていた……となれば、もちろんクトゥルフものの王道パターン。話が進んで行くにつれ、あいまいだった伝承唄や風習や姻戚関係が明らかになり、その背後に隠された邪神復活の試みの胎動が激しくなっていきます。
 なんというか、H.P.ラブクラフトと横溝正史を足して割ったような怪奇と混沌の物語です。

「肝盗村鬼譚」★★★★

【クトゥルフ】【井戸】
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「戦艦大和欧州激闘録~鋼鉄の破壊神」 内田弘樹

2007-09-26 | 架空戦記・仮想戦史
 内田弘樹の『戦艦大和欧州激闘録~鋼鉄の破壊神』を読了。
 面白かった。
 ろくな活躍をすることなく消えていった戦艦大和を、いかに最強の兵器として甦らせるかの一点に絞った架空戦記。航空機による劇的な戦術の変化も無視することなく、その上で極限にまで戦艦大和を強化するにはどう改造したら良いか、その改造を実現するためには状況をどう変化させれば良いか、改造した大和に見せ場を与えるためには……そういう方向に思考実験を繰り返した作品。

「みんな、強い戦艦が大好きなのさ」

「みんなが『戦艦は役に立つ』、なんて勘違いしちゃ困るだろ?」

 この2つのセリフで、作品すべてを言い表しているんじゃなかろうか。戦艦の限界もわきまえてはいるけれど、それでも最強最悪にしてやるぜ!!という作品。
 だいぶ文章もこなれてきて面白く読めました。もう少し構成をシンプルにした方がいいかな。キャラ的にはロシア軍人たちが良い味出してました。願わくば、「燃え」だけでなく「萌え」を……というか、これでもか! そうきたか! これならどうだ! 漢の生き様を見せてやる! ただの戦艦と思うなよ!と畳みかけるような構成なので、肩の力を抜いて、にやりと笑える箇所も欲しい気がします。無くても面白いけど、あれば最高。

「戦艦大和欧州激闘録~鋼鉄の破壊神」★★★★

【大和】【魔改造】
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「旅で出会ったローカルごはん」 上村一真

2007-09-25 | 食・料理
 高い方では1万円の松阪牛のステーキ定食から、安い方では讃岐の連絡船の立ち食いうどんまで、なんでもかんでも食って回ろうという姿勢で全国各地それぞれの土地の名物というか、その土地ならではのご飯を食べて回った記録を、たっぷりの写真と文章で綴った1冊。
 単に「こういう食べ物があります。美味しかった」だけではなく、路地裏のお店で、市場でといろいろな街の人たちと出会った情景が伝わる文章なので、単なる食べ物の本というより旅行記に区分されるべき本かも。

 こんな本を真夜中に、しかも人間ドック前日に読んでしまうなど、ああ、なんという失態! 讃岐うどんが、冷麺が、ハンバーガーが、牛タンが、美味そうだったりゃありゃしない。

【旅で出会ったローカルごはん】【上村一真】【食い倒れ】【紀行】
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「海の底」 有川浩

2007-09-25 | 怪獣小説・怪獣映画
 桜祭りに一般市民でにぎわう米軍横須賀基地。そこに突如として海底から這い上がり襲いかかってくる巨大甲殻類の群れ。拳銃弾すら弾く甲羅を持ち、巨大なハサミを振りかざす海底生物レガリスに、人々はむさぼり食われていく。

「武器使えないんだよ、災害出動じゃ。法律でそうなっている」

 停泊中の海上自衛隊の潜水艦きりしおに逃れた十数名の子供たちと自衛官2名は果たして脱出できるのか。そして市街地に侵出したレガリスを警官隊は食い止められるのか……?


 電撃でデビューし、いきなり2作目『空の中』をハードカバーで刊行した有川浩の3作目『海の底』です。カバーデザインだけなら、一般文芸に混じっていても見分けがつきませんし、区別する必要もありません。結局、『十二国記』に限らず、「ライトノベル」で大雑把にひとくくりにされてしまう若年層をターゲットにしたレーベル作品の中にも、パッケージ次第でもっと広い層に自然に受け入れられる作品が幾つもあるというだけです(ライトノベルが実は大人向けとか高尚とかくだらないレッテル貼りはムダだけれど、パッケージで食わず嫌いはもったいないというだけの話)。
 内容的には『空の中』と同じ怪獣物。昔なら香山滋とか福島正実あたりが書きそうなテーマを、人間描写にも力を入れつつ現代のテクノロジーと構成で書き込んだもの。深海生物学者の芹澤斉という人物を出しているのも確信犯(ただし眼帯にあらず)。

 解決の鍵はただ1つ。怪物の生態でもなんでもありません。法律の壁。そして自分たちの行為は単なる伏線に過ぎないと知りつつ、それでも何万と群がり来る怪物に通常装備だけで立ち向かう機動隊員たちの姿。その漢っぷりに泣け!

【海の底】【有川浩】【潜水艦】【怪獣】【機動隊】【捨て駒】
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「ロケットガール 魔法使いとランデブー」 野尻抱介

2007-09-25 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
 元・女子高生のゆかりら、3人の少女が日本政府出資の宇宙開発機関「ソロモン宇宙協会」のパイロットとして活躍するロケットガールのシリーズ第4作目は短編集。地球へ帰還できなくなった小惑星探査機の回収ミッションからクリスマスの慰問まであれこれ詰まった1冊。
 ちょっと聞いただけでは荒唐無稽な設定や物語も、実は宇宙服用スキンタイト素材の開発という、たった1つウソさえクリアしてしまえば、すべて計算上は可能な話というところがミソであり面白さですね。マギウスというTRPGシステムで作られたゲーム版もありますが、これもジュニア向け宇宙ミッション・マニュアルみたいなもの。いかにもロケットガールらしいシロモノでした。

「魔法使いとランデブー」★★★★★

【聖戦士】【神】【ISS】【精霊】
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「大魔王作戦」 ポール・アンダースン

2007-09-25 | 時間SF・次元・平行宇宙
 昔話やファンタジーではない魔法ものというのは、設定が中途半端だと白けますが、徹底的にやってくれれば(ある意味一発ネタではありますが)面白いものです。
 ポール・アンダースンの『大魔王作戦』はキリスト教圏の連合軍とサラセン教主軍の間に起こった第二次大戦を描いたスパイもの短編集。連合軍の空飛ぶ箒VSサラセン軍の魔法の絨毯の空中戦ってのは実写映像で見たいな。
 ネタ的には面白いけど、ストーリーの盛り上がりが今ひとつ物足りなく、でも伊達誠のイラストが良いので80点。

 伊達誠というイラストレイターは特に好きな人ではありません。マレイ・ラインスターの『メド・シップ』シリーズとかJ.H.シュミッツの『テルジーの冒険』とかのイラストを担当していましたが、メカは一昔前のごつくて重たそうなデザインになりますし、人物を描けば児童文学でよくみる、どちらかといえば地味なキャラクターになります。でも、『大魔王作戦』だけは、ナウシカのような青い飛行服を着た金髪の魔女が箒に乗って飛ぶイラストが、白い背景ときれいにマッチしていたのです。

「大魔王作戦」★★★★

【箒】【魔神】【人狼】【戦争】【航空機】
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「ミッキー・マウス~ディズニーとドイツ」 カルステン・ラクヴァ

2007-09-24 | 伝記・ノンフィクション
 カルステン・ラクヴァの『ミッキー・マウス~ディズニーとドイツ』を読了。
 第二次大戦前から末にかけて、ディズニーがナチスドイツや戦争にどう関わっていたかという研究書のようなもの。ドイツでディズニーが人気だったということは、アドルフ・ガーランドが部隊章にミッキー・マウスを使っていたことでも有名だけれど、ドイツへの映画輸入やその支払をめぐるトラブルであるとか、ディズニーがプロパガンダ映画の製作から部隊章のデザインまでどれだけ協力し、そこで利益を得たのか得ないのかという事柄にまで言及されています。
 「アメリカの文化侵略を許すな」とばかりフランスのユーロ・ディズニーは不調だったという話もありましたが、ドイツも1930年代から文化侵略されていたのですね。

1940.2.12
 ゲッペルス、オンドラ夫人と『白雪姫』鑑賞。「芸術的に大きな満足感」
1940冬または1941初旬
 ゲッペルス、『ファンタジア』上映会。
1944.10.21
 リッベントロップ、ドナルド・ダックの『Home Defense』(1943年11月制作)を外務省に注文。
1945.1.15
 帝国宣伝省よりの『白雪姫』上映依頼にゲッペルスが許可。

 いやあ、ゲッペルスやヒトラーのディズニー好きも有名だけれど、1945年1月って……ドイツ降伏は1945年5月。末期戦の真っ最中です。許可する方もする方だけれど、申請する方もどうよ!? 前線の兵隊さんに謝れ!(って前線の慰問に使われていたら笑うけれど)。

【ミッキー・マウス】【ディズニーとドイツ】【カルステン・ラクヴァ】【ナチス】【ディズニー】
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「杜の都のボールパーク」 大泉浩一

2007-09-23 | スポーツ・武道
 塩釜の綾瀬さんからエキスパック500が到着。はて? 何か届く予定はないけれど……と開封してさらに困惑。仙台の漬け物と本が1冊。

 本の方は、ローカル出版物で『杜の都のボールパーク』。四半世紀前、仙台に数年だけ拠点を置いていたプロ野球チーム、ロッテオリオンズをモデルにした架空のプロ野球チーム「仙台ツインズ」をめぐる……というより、仙台を舞台にした野球短編集。
 野球小説というと、『フィールド・オブ・ドリームス』や『消えた巨人軍』を勘定に入れなければ、『プレーボール!2002年』くらいしか読んでなかったのだけれど(ああ、もう2002年を過ぎている!)、けっこう面白かったです。『あぶさん』も好きだしね。考えてないようで考えていて、でも結局考えないで行動する監督の金田某とかまさかりみたいに剛球を放つ投手の村田某とか、かろうじて覚えているからかな。『アストロ球団』はこの作品の前になるのか後になるのか……。
 そして、やっぱりここでも「名古屋ドラゴンズ」はパ球団に勝てませんでしたとさ。

 読み終わっても謎は解けず、悩みつつ連絡してみたら「いやあ、この前、お茶をもらった御礼に、ローカルなもので見繕ってみましたぁ」とのこと。いや、ありがとうございます。

【杜の都のボールパーク】【大泉浩一】【野球小説】【プライド】
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