付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「憑き物おとします」 佐々木禎子

2011-08-19 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「痩せた豚より太った豚のほうが資本主義としてはいい豚なんだ」
 解散したロックバンド「IL VACIO」のリーダー、元ギタリストのラボラ十三世こと錦織の言葉。

 ぎらぎらした女が雲越壱也の部屋にやって来た。呼んでもないのに、やって来た。
 霊障を取り扱う保険会社の犬飼女史は、面識もない壱也の部屋の扉を蹴破って入ってくると、幽霊になった少女が悪霊化するのから救えるのは彼だけだと引っ張り出した……。

 鷹野祐希の『S.P.A.T.!』と同じく「誰もが幽霊を見ることができるようになった時代の物語」だけれど、こちらは霊障保険会社に傭われることになった、落ちこぼれ退魔師の物語。
 最初は保険会社の女社長が強引で自己中心的で、このキャラがメインだとついていけないなあと思っていたけれど、すぐに物腰柔らかなサクラさんが前面に出てきて一安心。さらに世間知らずだけれど凄腕の死神やら押し入れに住み着く守護霊など脇が充実してきて、結局、最後まで一気に読了。

【憑き物おとします】【佐々木禎子】【村崎久都】【守護霊】【死神】【押し入れの居候】【ゴスロリ】【死神ノート】【男の娘】【母親】
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「のうりん」 白鳥士郎

2011-08-18 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「麦は踏まれれば踏まれるほど大きく育つよね? それと同じで、男という生き物もまた、踏まれたぶんだけ大きくなってしまうんだよ」
 ナマ足で顔を踏まれて喜ぶようになったらヘンタイだよね。

 岐阜の農業高校を舞台にした青春小説で、タイトルは県立田茂農林高校の“農林”であり、2人のヒロインの名前「農(みのり)」「林檎」を足した“のう・りん”なんだけれど、どう見ても“のうたりん”じゃないかというのが読後感。

 アイドルの草壁ゆかの熱狂的なファンである畑耕作は、農業高校の寮住まいしている高校生。
 幼馴染みの果敢なアタックすらスルーしている耕作の前に現れたのは、草壁ゆかにそっくりな転校生だった……。

 荒川弘の『銀の匙』や『百姓貴族』と並べて、書店は農業作品フェアをやるといいよ……と思ったけれど、出だしこそ『銀の匙』と似ているけれど、基本お下品にしてお下劣。そして、そんな作品にイラストがマッチしてるんだよね。
 ブルマの材質やスクール水着の構造にこだわり、女性もの下着は手洗いでという変態的な描写はまあいいとして、教師が生徒以上に発情して収拾がつかなくなっているのが欠点といえば欠点。専門のツッコミがいなくてボケばかりになり、ネタがぐだぐだになるまで落ちないんだもの。
 ちゃんと農業高校をやっているし、会話のテンポもいいので、あとはボケとツッコミの役割分担がきちんとしてくれば今以上に面白くなるかな。

【のうりん】【白鳥士郎】【切符】【方言幼馴染】【メガネ美少年】【ラブリー小動物】【巨乳少女】【妄想系女教師】【パンツ】【足フェチ】【アイドルくずれ】【ブルマ】【旧スク水】【ゴム】
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「寄生彼女サナ」 砂義出雲

2011-08-17 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 この前読んだ瑞嶋カツヒロの『僕が彼女に寄生中』は、実は憑依であって、寄生でもなんでもなかったのだけれど、こちらは完全に寄生してます。主人公から栄養をもらい、代償として宿主を護るというもの。寄生虫がヒロインというのは、あさりよしとお以来の感動。
 馬鹿な話を真面目にやるのが好きなのです。

「世界はね、過酷なところかもしれないけど、あなた1人の結論を許容できないほど狭いところでもないの」
 養護教諭の綺羅先生の言葉。

 目の前に美少女がいた。全裸で。しかも自分の「彼女」になってくれるという。
 平凡な高校生としては飛びつきたくなるシチュエーションだけれど、その彼女が自分の腹を突き破って飛び出した白いヒモ状の生き物が変化したと思えば、警戒もしたくなる。というか、逃げたい。
「今日からお前の腹に寄生することになった!  よろしくな!」

 ヒロインが寄生虫が進化して自我を持つようになった「パラシスタンス」の美少女という以外は、まっとうな学園ラブコメ。会話のやりとりもテンポいい。単純明快なドタバタアクションを読みたいという人にはおすすめ。
 でも、ヒロインがサナダムシということよりも、主人公を愛するあまり色情狂と化してしまう、ご近所に住む従妹とか、怪しげな親衛隊を引き連れる、巫女装束の生徒会長とかのおかしさの方がハードルが高いような気がします。

【寄生彼女サナ】【砂義出雲】【瑠奈璃亜】【四十八手】【四天王】【汚物は消毒だ】【地下室の手記】【日本海裂頭条虫】【回虫】
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「玉ねぎフライパン作戦」 椎名誠

2011-08-16 | 食・料理
 椎名誠のエッセーなので、そんなに深く考えてはいけない。素直に食べて呑んで、呑みつつ何か考えているようで実は何も考えていないような日々の記録を楽しむだけなので、同じような話が出てきても気にしてはいけない。

 ホヤ食べてビール飲んで、味噌煮込みうどん食べてビール飲んで、冷や奴食べてビール飲んで……みたいなエッセイ集。

 とにかく、これを読んでいると、メシを食べるときはビールか何かを呑んでなくちゃいけないという気になっちゃいますね。

【玉ねぎフライパン作戦】【椎名誠】
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「九十九の空傘」 ツカサ

2011-08-15 | 破滅SF・侵略・新世界
「良い人はね、何が悪いかをわかっていないから、良い人なんだよ」
 だから悪い人の方が信用できるとカサ。

 少女が意識を取り戻したとき、自分の部屋は廃墟と化していた。家の中にも外にも人の姿は見えず、ただ荒廃した街並みだけが広がっている。
 無人の街をさまよい、途方に暮れた少女がやっと出会った青年は、もう人間は生き残っていない。おまえは人間ではないと告げるのだが……。

 文明が滅び人類が消え去った後の街に生まれた、人の姿そのままの付喪神たちが、人間たちの暮らしを再現しながら、九十九神としての自分たちの存在意義に思い惑うさまを描いた叙情詩的な作品。
 ちょっと良い話的にまとまっているけれど、いつの間にか終末でした……というのも寂しいねえ。

【九十九の空傘】【ツカサ】【えいひ】【九十九神】【アパート】【依代】【シグ】
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「A君(17)の戦争8~うしなうべきすべて」  豪屋大介

2011-08-14 | 異世界転移・召喚
「夏の日の美少女の大イビキ、なんだかムチャクチャ萌えるんスけど」
 MNNのテスト放送波。

 魔王軍はネットワークによる指揮統制システムで少ない部隊を効率的に動かし圧倒的な敵に対応してきたが、ついに魔都ワルキュラが戦場となる。
 ランバルト軍は戦闘兵力25万、兵站支援の軍属25万という、この世界のシステムとしては限界とも言うべき最大規模を達成している。一方の魔王軍とて剛士のカリスマによって20万の志願兵が集結している。
 けれども、徴兵制を導入して国家総動員にしてしまえば、個体の能力としては人間以上の魔族による1000万の軍勢が用意できたはずのだが、あえてその道を選ばなかったのは……。

 国家とは何か……というところから始まる8巻です。
 政治指導者がこまごましたことに口出ししても百害あって一利なし。国民が自分の気持ちを政治に反映させたければ、選挙で投票するとか自分で立候補するとかクーデターを起こせばいいのだという、著者の割り切りには納得。国の指導者は国家を動かすことに専念すればいいのであって、100円200円のカップ麺レベルの問題は眼中になくて良いのだ。

「ギャグは技術です。だからこそパターンに慣れるだけで笑えますし、古くもなります。しかしユーモアは精神的な姿勢です。本質を掴んでいる限り、決して古びません」
 ランバルト軍軍師ナサニア・ゴローズの言葉。人材に恵まれているのは、敵も味方も同じ。『人事ほど理想論から遠いものはない』というけれど、少なくとも魔王領もランバルトもその点はクリアしている。それゆえにその先が悲劇となるのだけれど。

 7巻のあとがきで「本巻より開幕のA君後半戦」といってましたが、すでに8巻で予定より延びているようで……。

【A君(17)の戦争8】【うしなうべきすべて】【豪屋大介】【玲衣(北野玲)】【塹壕】【警戒と捜索】【徴兵制と志願制】【ベルレーヌ】【防空戦闘】【奴隷制】【馬車】【魔女の王妃の呪い】【等身大人体彫刻】【警察義勇大隊】【危機管理】【外交交渉】
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「週刊とりあたまニュース」 西原理恵子&佐藤優

2011-08-13 | エッセー・人文・科学
 職業柄、「税金なんて真面目に申告してられるか!」「脱税してナンボ」という西原理恵子の言動はまったく支持できないし、糾弾して崖っぷちから追い落としたくもなるけれど、描くものは面白いよね。そこは内容に共感できるかどうかは別として、支持します。
 この西原理恵子が鈴木宗男事件に絡む背任容疑で逮捕・失職した元外交官の佐藤優と組み、週刊新潮で連載している連載記事をまとめたのがこれ。

「裁判中と脱税者が世相を語っております。ここが間違いの素」

 かなりきついことを描いて/書いているし、顰蹙ものの少なくないけれど、さまざまな政治・経済・外交問題について、言いたい放題に語っているのは読んでいて面白いし、ためになる。もちろん、主張を支持するしない、提示されるデータを鵜呑みにするしないは別の話。
 特に、佐藤優が担当だったロシア方面のエピソードは興味深いし、その文章を全く無視したような西原理恵子のマンガもあいかわらず。毒に毒をかけたら不思議と中和されたみたいだけど、まだ舌がちょっとピリピリする……ような1冊。

【週刊とりあたまニュース】【最強コンビ結成!編】【西原理恵子】【佐藤優】【ツイッター】【裁判員制度】【天安門事件】【世襲議員】【民主党政権】【ベルリンの壁】【竹島】【花粉症】【休日分散化】【ギリシャ危機】【美人すぎるスパイ】【ゲゲゲの女房】【山ガール】【カジノ禁止令】【夫婦別姓】【事業仕分け】【幼児虐待】
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「黄泉坂案内人」 仁木英之

2011-08-12 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「子供の小さな願いより優先される仕事の都合、大人の付き合いは確かにある。だが大人には小さくとも、子供には胸一杯の願いなのだ」

 事業が失敗し妻子に逃げられたタクシー運転手が不思議な村に迷い込み、妖怪たちに協力してもらいながら、成仏できない幽霊をあの世に誘うタクシー運転手になる話。

 面白いけれど読後感がすっきりしないのは、結局主人公が事業に失敗して死人とも生者ともつかない存在となって、愛する妻子と別れ別れになったままという前提条件に変化がないままだから。
 これでもう残された家族のことは忘れて新しい人生をとか、離ればなれになっても親子の絆はつながっている……みたいな感じならば救いはあるのだけれど、そうでないからハッピーエンドでも「めでたしめでたし」にならないのですよね。

【黄泉坂案内人】【仁木英之】【トミイマサコ】【名前】【十津川】
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「暴風ガールズファイト」 佐々原史緒

2011-08-11 | スポーツ・武道
「誰かに叶えてもらおうなんて思う時点で、その願い事はもう間違っているのよ」
 生まれながらの“委員長”、麻生広海の言葉。

 広海は生まれながらの頼られ気質。初等部の頃から中等部を卒業するまで、常に学級委員長だったし、高等部に進学してもやはり委員長。
 そんな彼女の前に現れたのはアメリカ帰りの編入生、五十嵐千果。小さな身体にあふれるパワー。彼女の目的は聖ヴェリタス女学院のラクロス部を日本一にすることだというのだが、誰もラクロス部どころかラクロスという競技そのものを知らない。
 でも、入学案内のパンフレットには、ちゃんと「ラクロス部」の名前が掲載されていたのだ……。

 廃部寸前だったマイナー競技のサークルを、元気娘たちが集まって「日本一」を目標に建て直していく話。『里見八犬伝』でも『七人の侍』でも、こういう話は最初のメンバーが集まるまでが最初の山場なんで、ここが面白く書けていたら傑作は保証されたようなもの。そして、確かに面白かったのです。
 部活小説を総チェックしていて見つけた掘り出し物。掘り出し物というのが哀しいくらい面白い話で、素直にヒットしたのを「こんな話が!」といって見つけたかった。一般レーベルの小説でも、学生スポーツをテーマにした作品は多くはないけれどちょこちょこあって、メディア・ミックスでヒットしてたりするけれど、それらと比較しても遜色なし。

 マリア様が見守るカソリックの女子高(スール制度なし)を舞台にした、美少女スポーツ根性もの。
 いやいや参加しつつも陥れられてぷっつん切れ、ダークサイドに本領を発揮しはじめる委員長とか、コンクールの優勝常連の合唱部の元部長で「優勝するとわかっていることをやってもつまらない」と参加してくるお嬢様の負けず嫌いぶりとか(妖精さん付き)とか、良いキャラがそろってます。
 無理ムチャ無鉄砲でノーテンキ元気娘の千果は普通にスポ根もののヒロインなんで、彼女ではなく委員長を主人公に持ってきて正解。

【暴風ガールズファイト】【佐々原史緒】【倉藤倖】【ラクロス】【マリア様がみている】【ふたりはプリキュア】【妖精さん】【フィールドの格闘技】
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「角川映画主題歌集」 EMI

2011-08-11 | その他フィクション
 角川映画の35周年記念版として発売された、映画主題歌集。
 といっても、角川春樹時代の前半、1980年代なかばまでの代表作しか収録されていないのだけれど、だからこそ自分たちの世代にはドンピシャ。ただ、できれば『蒲田行進曲』とか『天と地と』あたりまでは入れて欲しかったかな。『少年ケニヤ』とか『時の旅人』などのアニメ作品と同様に他でCD化されているから、どうしても聞けないものではないですが。

 角川映画といえば小説とのメディアミックスでヒットを飛ばし、「鵺の鳴く夜は恐ろしい」「母さん、ぼくのあの帽子、どこへ行ったんでしょうね」といったワンフレーズが印象的なキャッチコピーが流行したものですが、仲間内での評価は「予告編は最高っ!」でした。
 豪華な予算をかけ、良い役者や音楽を用意するのだけれど、完成品を観るとどこか冗長。もうちょいテンポ良く編集すればいいのにと素人がバラエティ誌を読みながら勝手な床屋談義をして、あとであらためて予告編を観るとむちゃくちゃカッコイイ。そんな気がしたものです。
 とりあえずローズマリー・バトラーの「光の天使」が安価に聞けるようになったのはありがたいなーと思ったのでした。

【角川映画主題歌集】【犬神家の一族】【人間の証明】【野性の証明】【蘇える金狼】【戦国自衛隊】【復活の日】【スローなブギにしてくれ】【ねらわれた学園】【セーラー服と機関銃】【汚れた英雄】【幻魔大戦】【探偵物語】【時をかける少女】【里見八犬伝】【愛情物語】【メイン・テーマ】【晴れ、ときどき殺人】【Wの悲劇】【ローズマリー・バトラー】【薬師丸ひろ子】【原田知世】【渡辺典子】
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「メモリークエスト」 高野秀行

2011-08-10 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 このロフティングのドリトル先生シリーズをモチーフにした表紙はなんだ!?というのが手に取った第一の理由。で、高野秀行の著作はけっこう買っているので、そのままレジへ。
 中身を確認したのは家に帰って布団の上で。

 他人はもちろん、自分にとってもたいして大きな意味のない小さな記憶。旅先で出会った人を思い出して「あいつ、どうしてるかな?」と思ってみたり、「あれは何だったんだろう?」とあらためて考えてみたり。
 普通だったらそのまま忘れ去られてしまう、そんな記憶の断片を募集して、本人の代わりに確認して来ましょう!……というのが本書。

 もともと行き当たりばったりの傾向がある上に、依頼の内容が「名前もわからないタイの奥地の村で出会った天才少年はどうしているのか」とか「セーシェル諸島のリゾートでエロ本コレクションを披露したじいさんは何者か」くらいはともかく、「コンゴ虐殺の生き証人となって追われていた運転手の安否」とか「ユーゴ内戦で音信不通になったセルビアからの留学生は元気か」なんて、そりゃあかなりの無理難題。
 それをクリアしたりできなかったりしつつ、タイやミャンマーからサラエボまで訊ねて回った著者の探索記録。
 探偵ナイトスクープのワールドワイド版みたいな気がします。いつだって波瀾万丈。

「政治より経済より重要なのは,かみさんの意向だよな」

【メモリークエスト】【高野秀行】【福住修】【ドラえもんの国】【セクハラ警官】
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「ごくペン!」 三原みつき

2011-08-09 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「仁義というのは、暴力を認めない誇りのことだ!」
 五十嵐真太郎の言葉。

 五十嵐真太郎は東大をめざそうという偏差値70オーバーの少年。けれど、一緒に東大に入ろうと約束した幼馴染みの権田原凜子が通っていると知り、あえて入学したのは最底辺のヤンキー高校「毒マムシ学園」。
 ところがやっと彼女を見つけてみれば極道のアネゴになっていて、文芸部室で賭場を開いている始末……。

 普通に頭の良い少年がバカの殿堂に紛れ込み、それで虐められるとか無視されるとかではなく、逆にセンセイと尊敬されるというあたりがバカ設定というか、理屈に合っているというか。つまり、ヤンキーはああ見えても寂しがり屋なので、主人公がツッコミどころ満載のヤンキーやヤクザの言動に思わずツッコミを入れまくるのを怒るのではなく、「さすがは作家の先生!」と尊敬してしまうのです。勘違い設定とも違うけれど、このお馬鹿な力関係がポイント。
 2年前の本だけれど、抑制されつつも次第にエスカレートしていく話の展開が心地良い。80年代アニメ的というか火山高というかクロマティー学園みたいな感覚かな。

【ごくペン!】【三原みつき】【相音うしお】【殺人ヨーヨー】【着付け】【委員長】【レディース】【変形巨大ロボ】【公開処刑】【俺の愛馬は凶暴だぜ】【北斗の拳】【愛媛みかん】
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「ブラックロッド」 古橋秀之

2011-08-08 | 破滅SF・侵略・新世界
「男はタフでなければ生きていけない。タフすぎると死んでもいられない」
 私立探偵ビリー・龍の言葉。
 
 巨大な黒い呪力増幅杖を携えた、ブラックロッドと呼ばれる公安局・魔導特捜官は、荒野の中にたたずむ積層都市<ケイオス・ヘキサ>で絶対の法を司る番人だ。死人のような顔で任務を遂行していく彼らは、精神拘束により全ての感情を封印し、個性を持たず個体を区別することはできない。
 そのブラックロッドの1人とコンビを組むことになったのはヴァージニア9。黄色いレインコートに大きなゴーグルをした、降魔局に所属する妖術技官の少女。
 2人が追うのはゼン・ランドー。3つの都市を奈落堕ちさせた隻眼の男だった……。

 どんなジャンルの小説にも、程度の差こそあれジャーゴン(門外漢には理解できない専門語や隠語)は出てくるものです。たとえば野球が題材なら「インフィールドフライ」、時代劇なら「八丁堀」、学園物で「1キュン」とか言われても頭を抱えるだけですが、知っている人なら常識で、知らない人が存在することすら認識されていなかったりします。
 そのジャーゴンの塊がSFで、耳慣れない言葉の連続に耐えられるかどうかが、その作品を受け入れられるかどうか、面白いと思うかどうかの第一関門だったりしますが、この『ブラックロッド』もそのジャーゴンの塊。それがミソなんですが、拒絶しちゃう人も少なくなかったようです。でも、傑作。
 第二次大戦あたりでオカルトが急激に発達して変容してしまった未来社会。大日本帝国は霊的兵器の開発に邁進したあげく首都が奈落落ちしてしまい、いまや日本群島となっていて……という世界で、吸血鬼もサイボーグも魔女もオールOKという話。あまり世界設定について説明のないまま「奈落落ち」だの「機甲祈伏隊(ガンボーズ)」とか出されてもついていくのは大変というのも当たり前かもしれませんが、そこが醍醐味なんですよね。冒頭の悪魔と僧侶の降伏戦闘だけでも一読して欲しいです。

【ブラックロッド】【古橋秀之】【雨宮慶太】【奇門遁甲】【縮地法】【ヘルシング計画】【天使】【呪的逃走】【人狼】【式鬼】【吸血鬼】
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「前略 嫁当たりました。」 川波無人

2011-08-07 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 商店街の福引きで当たったのは“嫁”だった。
 下半身節操無しの巨乳好き高校生の元に嫁ぐことになったのは、宇宙人の家出娘プラムで……。

 異能持ちの宇宙の美少女たちが女好きの主人公の元に集まってトラブルを巻き起こすタイプの話で、勢いの10代向け作品。電撃ではなく念動力系で、角は無し。
 主人公の言動に女性の人格に対する尊敬とか愛情が感じられず、浮気性とか惚れっぽいというのとも違うんですよね。そういうキャラが嫌いな人にはお奨めできません。

【前略 嫁当たりました。】【川波無人】【桑島黎音】【福引き】【嫁】【愛人】【ふたなり】【セフレ】【妹】【ストリップ合戦】【地底人】
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「まおゆう魔王勇者4」 橙乃ままれ

2011-08-06 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「お金なんて生きていなければ使えませんよ?」
 傭兵隊を指揮して極大陸を目指すメイド姉の言葉。

 それは人間の遠征軍と魔族との戦いではなかった。聖王家や教会を核とした中央諸国と南部連合との戦いでもなかった。
 すべては古き世界システムと新しい世界システムとの戦いであり、その軋轢で世界システムの冗長は限界になりつつあった……。

 飽和戦術で開門都市を攻略せんと押し寄せる遠征軍との戦いがメインとなりますが、メイド姉と火竜公女が大活躍して、魔王と勇者と女騎士はやや裏方仕事に。サブタイトルにもあるように、王弟元帥とも青年商人も、みんなできることをしているだけなのですが、あと1冊でどこまでいけるか楽しみです。

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