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私立探偵ビリー・龍の言葉。
巨大な黒い呪力増幅杖を携えた、ブラックロッドと呼ばれる公安局・魔導特捜官は、荒野の中にたたずむ積層都市<ケイオス・ヘキサ>で絶対の法を司る番人だ。死人のような顔で任務を遂行していく彼らは、精神拘束により全ての感情を封印し、個性を持たず個体を区別することはできない。
そのブラックロッドの1人とコンビを組むことになったのはヴァージニア9。黄色いレインコートに大きなゴーグルをした、降魔局に所属する妖術技官の少女。
2人が追うのはゼン・ランドー。3つの都市を奈落堕ちさせた隻眼の男だった……。
どんなジャンルの小説にも、程度の差こそあれジャーゴン(門外漢には理解できない専門語や隠語)は出てくるものです。たとえば野球が題材なら「インフィールドフライ」、時代劇なら「八丁堀」、学園物で「1キュン」とか言われても頭を抱えるだけですが、知っている人なら常識で、知らない人が存在することすら認識されていなかったりします。
そのジャーゴンの塊がSFで、耳慣れない言葉の連続に耐えられるかどうかが、その作品を受け入れられるかどうか、面白いと思うかどうかの第一関門だったりしますが、この『ブラックロッド』もそのジャーゴンの塊。それがミソなんですが、拒絶しちゃう人も少なくなかったようです。でも、傑作。
第二次大戦あたりでオカルトが急激に発達して変容してしまった未来社会。大日本帝国は霊的兵器の開発に邁進したあげく首都が奈落落ちしてしまい、いまや日本群島となっていて……という世界で、吸血鬼もサイボーグも魔女もオールOKという話。あまり世界設定について説明のないまま「奈落落ち」だの「機甲祈伏隊(ガンボーズ)」とか出されてもついていくのは大変というのも当たり前かもしれませんが、そこが醍醐味なんですよね。冒頭の悪魔と僧侶の降伏戦闘だけでも一読して欲しいです。
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