街道を歩く

今まで歩いた街道、町並み、これから歩く街道、町並みを散文的に紹介

寝台特急富士 を待つ

2009-03-14 12:42:43 | 寝台特急富士


90分遅れということで出直してきた。ところがである。また30分遅れているのである。ようは120分遅れたわけだ。と、あと40分も待たねばならん。
寒風の中をじっと堪えて待った。線路脇の菜の花が強い風で大きく揺れていた。
ふと跨線橋を見上げるとあのご夫婦も来ている。「120分遅れてますよ。11時20分小倉を発車しているからもうすぐ来ます」と声をかけた。「払い戻しやな」「はは、そうですね」



駅のアナウンスが流れた。私とそのご夫婦のために流してくれているのである。すると駅横のマンションの上からも声がする。「お父さん来たよ。お父さん来たよ」 やはりじっと待っている人がいたのだ。
愈々その時が来た。本当の最後の瞬間が来たのである。我々がどんな思いで待っていたかも知る由も無く、そしてそれはやって来た。

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寝台特急富士 を待つ

2009-03-14 10:03:23 | 寝台特急富士


3月も半ば、桜も開花したというのに寒波が襲ってきた。そんな寒風が吹き荒れる中、昨日の一組の夫婦が跨線橋の上でいまや遅しと待ちわびている。
その夫婦だけではない。私も寒さを堪えて待っていたのである。
ところが、どうもおかしい。予定通過時刻を過ぎてもやって来ない。そこに普通列車が入ってきた。目の前に運転士が見えたので尋ねてみると、きまり悪そうに「あー富士ですか。90分遅れています。山口県内で人身事故のため90分遅れていますよ」
「えー、また事故か。昨日も事故で40分遅れたからな」「そうですね、あとのことは駅員に尋ねて下さい」と言いつつ発車した。
私は駅員にまたあとで来たいので一度使った入場券で入っていいかとお願いをした。すると駅員は一も二も無く快諾してくれた。そして、すぐさま夫婦が待っている場所に行きその旨を伝えたのである。その夫婦も私がホームにいるのを知っていた。気になっていたようだ。「しょうがないですね。本当の最後を見たかったのですが。わざわざ有難うございます」と言って帰って行かれたのである。

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再見 ブルトレ 富士

2009-03-14 08:24:54 | 寝台特急富士


上手く写真を撮ることが出来なかった。九州発 特急富士 の最後だ。万感の思いを込めてその後姿を見送った。
奇しくも特急富士の最後がこの三組の夫婦に一期一会の機会を与えてくれたのだ。それぞれ近くに住んでいるのだ。住んでいても話す機会も会うと言う機会もない。それは普段では当たり前のことだ。それが「最後の富士」という言葉だけでここに集うことになった。その偶然か必然かはともかくとして心から嬉しく思ったのである。 
もう一列車。これも上り最後の「寝台特急はやぶさ」もやはり人身事故のためにそうとうダイヤが乱れたと言う。
あるご婦人がしみじみと言った「また復活すればいいのにね」心に残るのである。 
それで「さよなら」ではなく中国語の「再見」にしている。

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再見 ブルトレ 富士

2009-03-14 07:45:03 | 寝台特急富士


ヘッドライトを輝かして列車が来るたびにどきどきするのだが、「あっ、このヘッドライトは腰の位置にあるから違う。」「あっ、このヘッドライトは四つあるから特急ソニックだ。違う違う」それこそ悲鳴に近い声を上げている。
おっ。ヘッドライトが見えた。三組の夫婦は目を凝らしている。シンクロしているのだ。皆ホームから身体を乗り出して見入るのだ。
「あっ、ヘッドライトの位置が違う。頭の所にある。」両手の指を輪っかにして額に押し付け皆にジェスチャーで見せる。皆一斉に「来た来た来た」
それぞれの思いを胸にカメラを構える。轟音とともに目の前を走り去って行った。

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再見 ブルトレ 富士

2009-03-14 07:22:30 | 寝台特急富士


待ち遠しい。既に通過予定時刻を過ぎている。早く来ぬかと気が堰いている。 
と、駅のアナウンスが入る。なんと事故で40分遅れているのだ。
「富士をお待ちのお客様、ただいま富士は人身事故のため行橋駅に停車中です。もう暫くお待ち下さい」
「富士をお待ちのお客様、ただいま富士は行橋駅を発車しました。もう暫くお待ち下さい」19時10分である。
本来ならば門司駅19時15分発なのだがこればかりはしようがない。
来ることに間違いは無い。三組の夫婦はお喋りしながらその姿を今か今かと待っているのである。
それにしても駅長さんのアナウンスは有難かった。たった三組の夫婦のためにアナウンスしてくれたのだから。

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再見 ブルトレ 富士

2009-03-14 07:10:39 | 寝台特急富士


最後の雄姿を目に焼き付けようとして駅に来たのは我々夫婦だけではなかった。
我々を含めて3組のご夫婦である。最後という言葉に感傷が潜んでいるのであろう。雨の中にも関わらずその気持ちに押されてやって来ているのである。
彼らは熱心な鉄道ファンではないが、親戚、肉親が鉄道関係者だったりして、最後の姿を退職した親戚や肉親にオーバーラップしているようであった。

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再見 ブルトレ 富士

2009-03-14 07:01:03 | 寝台特急富士


3月13日18時40分 「とある駅日豊本線上りホーム」 冷雨降りしきる中
最後の雄姿を目に焼き付けるために立っている。
露払いのようにして普通列車がなにごともないように滑り込んでくる。
そう、皆さん既にご存知であろう。寝台特急「富士」最後の上りである。

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