90分遅れということで出直してきた。ところがである。また30分遅れているのである。ようは120分遅れたわけだ。と、あと40分も待たねばならん。
寒風の中をじっと堪えて待った。線路脇の菜の花が強い風で大きく揺れていた。
ふと跨線橋を見上げるとあのご夫婦も来ている。「120分遅れてますよ。11時20分小倉を発車しているからもうすぐ来ます」と声をかけた。「払い戻しやな」「はは、そうですね」
駅のアナウンスが流れた。私とそのご夫婦のために流してくれているのである。すると駅横のマンションの上からも声がする。「お父さん来たよ。お父さん来たよ」 やはりじっと待っている人がいたのだ。
愈々その時が来た。本当の最後の瞬間が来たのである。我々がどんな思いで待っていたかも知る由も無く、そしてそれはやって来た。