堀井憲一郎 2003年講談社文庫版
私の好きなホリイ氏の本。
『巨人の星』の研究。
私も『巨人の星』は好きなんで、「飛雄馬が住んだマンションは東京のどこか」とか「エピソードで触れられている故事の出典は何か」っていう話はめちゃめちゃ興味あります。
まあ、全体には、たとえばライバル花形満が特訓のときに「ねんざのあとは逆に関節が強くなる」とか言うのがあるんですが、それに対して著者が >子どもは、こういう細かいネタを仕込んで、どうだ知ってるか、おれは物知りだぞ、と友人に話しかけるのが大好きなのだ なんて書いてますが、そういうことの集まりの本です。
ほかの著書でもそうなんだけど、ホリイ氏のデータ集めの徹底ぶりが私は好きなんだが、特にこの本はそれ以外に、あの独自の文体による軽やかな“くすぐり”がこれでもかってくらい出てくるんで気に入ってます。
たとえば、
>さてと、これは『巨人の星』について語った本である。板橋の石垣富士男について語った本ではない。誰だそれは。
>ブルジョア学校に入学だ。ヤクルトジョアと勘違いしてんじゃないのか。ヤクルトジョアだったら80円で買えるけど、ブルジョア星雲高校は80円では買えないもの。売ってないって。
っていうぐあいのボケとツッコミみたいなやつ。このリズムが好きなんである。決して字数稼ぎぢゃないことを祈りたい。
>六つの時代に分けれらる。まず平安時代、次いで江戸時代、飛鳥時代に、鎌倉時代、奈良に、弥生に、縄文、室町、あ~、こりゃこりゃ。踊ってどうする。
ほんとはこの六つだ。(1)少年時代(2)高校時代(3)速球投手時代(4)大リーグボール1号時代(5)大リーグボール2号時代(6)大リーグボール3号時代(7)安土桃山時代。 なんで七つなんだ。
(1)『少年時代』 小学生の飛雄馬がライバル花形満と出会って対決し、野球のすばらしさに目覚めるまで。
(中略)
(7)『安土桃山時代』 織田信長が将軍足利義昭を奉じて京都に入った永禄十一年より、関ヶ原の戦いで伴宙太が政権を握った慶長五年まで。 なんだそりゃ。
って、長くなったけど、こういうところが大好きなんである。
※なんか近刊の『落語論』で >「大相撲」の始祖は、谷風梶之助である。天明寛政年間の力士だ。それ以前の最初の三人の横綱、明石志賀之助、綾波レイ、丸山権太左衛門、は架空の横綱である。 って記述のなかの“綾波レイ”が一部でウケてるらしいが(ほんとは綾川五郎次だけど)、そんな書きっぷりは今に始まったことぢゃなく、ずっと前からやってんだ、この人は。
いつもこんな調子なんだが、本書では文章の読みやすさについて、後段で一瞬だけマジに書いたみたいな箇所があって、
>昔、群馬県のある村の村史を読んだことがあるんだけど、いやあ、あれは読めなかったね。
書いてる人が、読んだ人に賢い人だと思われたい、とばかり考えていたようなのだ。村の歴史なんかどうでもよくて、自分がどう思われるかを気にして書かれた村史なんて、ああた、読めるものじゃないぜ。
って、ことで、遊びで、どうでもいいこととわかってるから、こういう書き方をしてるってのが真相なんでしょう。かっこいい姿勢だと思います。
私の好きなホリイ氏の本。
『巨人の星』の研究。
私も『巨人の星』は好きなんで、「飛雄馬が住んだマンションは東京のどこか」とか「エピソードで触れられている故事の出典は何か」っていう話はめちゃめちゃ興味あります。
まあ、全体には、たとえばライバル花形満が特訓のときに「ねんざのあとは逆に関節が強くなる」とか言うのがあるんですが、それに対して著者が >子どもは、こういう細かいネタを仕込んで、どうだ知ってるか、おれは物知りだぞ、と友人に話しかけるのが大好きなのだ なんて書いてますが、そういうことの集まりの本です。
ほかの著書でもそうなんだけど、ホリイ氏のデータ集めの徹底ぶりが私は好きなんだが、特にこの本はそれ以外に、あの独自の文体による軽やかな“くすぐり”がこれでもかってくらい出てくるんで気に入ってます。
たとえば、
>さてと、これは『巨人の星』について語った本である。板橋の石垣富士男について語った本ではない。誰だそれは。
>ブルジョア学校に入学だ。ヤクルトジョアと勘違いしてんじゃないのか。ヤクルトジョアだったら80円で買えるけど、ブルジョア星雲高校は80円では買えないもの。売ってないって。
っていうぐあいのボケとツッコミみたいなやつ。このリズムが好きなんである。決して字数稼ぎぢゃないことを祈りたい。
>六つの時代に分けれらる。まず平安時代、次いで江戸時代、飛鳥時代に、鎌倉時代、奈良に、弥生に、縄文、室町、あ~、こりゃこりゃ。踊ってどうする。
ほんとはこの六つだ。(1)少年時代(2)高校時代(3)速球投手時代(4)大リーグボール1号時代(5)大リーグボール2号時代(6)大リーグボール3号時代(7)安土桃山時代。 なんで七つなんだ。
(1)『少年時代』 小学生の飛雄馬がライバル花形満と出会って対決し、野球のすばらしさに目覚めるまで。
(中略)
(7)『安土桃山時代』 織田信長が将軍足利義昭を奉じて京都に入った永禄十一年より、関ヶ原の戦いで伴宙太が政権を握った慶長五年まで。 なんだそりゃ。
って、長くなったけど、こういうところが大好きなんである。
※なんか近刊の『落語論』で >「大相撲」の始祖は、谷風梶之助である。天明寛政年間の力士だ。それ以前の最初の三人の横綱、明石志賀之助、綾波レイ、丸山権太左衛門、は架空の横綱である。 って記述のなかの“綾波レイ”が一部でウケてるらしいが(ほんとは綾川五郎次だけど)、そんな書きっぷりは今に始まったことぢゃなく、ずっと前からやってんだ、この人は。
いつもこんな調子なんだが、本書では文章の読みやすさについて、後段で一瞬だけマジに書いたみたいな箇所があって、
>昔、群馬県のある村の村史を読んだことがあるんだけど、いやあ、あれは読めなかったね。
書いてる人が、読んだ人に賢い人だと思われたい、とばかり考えていたようなのだ。村の歴史なんかどうでもよくて、自分がどう思われるかを気にして書かれた村史なんて、ああた、読めるものじゃないぜ。
って、ことで、遊びで、どうでもいいこととわかってるから、こういう書き方をしてるってのが真相なんでしょう。かっこいい姿勢だと思います。
