かねやんの亜細亜探訪

さすらうサラリーマンが、亜細亜のこと、ロックのこと、その他いろいろ書いてみたいと思ってますが、どうなることやら。

正倉院宝物の輝き

2020年12月21日 | Books
今日は、大阪。
冷えている。



本書は、新聞の書評欄で見て即ゲット。
10月に出たばかり。

やや厚い本だが、小論文が32と、リスト・資料等で構成されており、小論文は、有名なお宝や、論点毎に書かれているので、読みやすい。

素晴らしい本だった。特に、正倉院展を何度も訪れている私だが、目からうろこの話が多数。
次回から、より深い観点で、正倉院展を楽しめるだろう。

例えば、今回の展示では、薬類がたくさん展示されていたが、そこには、鑑真がかかわっていた可能性が高いこと、何気なく見ていた仏画が、唐の時代の神様扱いされている画家の作風を唯一伝えている絵かもしれないこと、同じように見えるガラスでも、製法が全く異なること等々。

中には、様々な議論が二転三転することも多い。
正倉院展に行った時は、図録を買うようにしているが、そこへの記載についても、本書で、糾弾されているものもあり、研究は、日々進んでいることがわかる。
特に、材料分析により、使われた技術や、来歴や、作られた年代が、より明らかになってきているのが、大きい。当然、世界各地での発掘による新たな発見もある。

カラーは、口絵部分だけで、ちょっとまどろっこしいが、そこに載っているものの9割以上は、見たことがあり、まさにお宝中のお宝のみが厳選されている。本文中には、そこに漏れたものが、白黒写真で掲載されており、文とビジュアルから、正倉院御物のすばらしさを味わうことができる。

結構、出庫した後、戻されなかったものも多く、中には売却されたものもある。出庫後、大仏に直接奉納しなお直されたのは、光明皇后の意思によるもの。
一方、本当に失われたものの中には、藤原仲麻呂の乱の時に、出庫され、実際に使われた武具類や、実際に使われた薬類も含まれる。
生の奈良時代の出来事だ。
残念なのは、残っていたら、世界唯一となる王義之の真筆や、屏風類、今は伝えられていほない楽器類などだが、それでも、これだけのお宝が残されたのは、奇跡としかいいようがない。
正倉院文書類からも、様々な情報が得られている。

正倉院御物の調査は、古代歴史学者の冥利に尽きるというものだろう。

これからも、できるだけ、毎年正倉院展に行って、より深い観察眼を持って楽しむことにしたい。



関ヶ原を通過。
雪のせいか、徐行運転中。
コメント
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