CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【小説】完全版 夫婦善哉

2013-10-12 20:15:44 | 読書感想文とか読み物レビウー
完全版 夫婦善哉  作:織田作之助

先日のNHKドラマに感化されて読みました
ドラマ見るまでまったく知らなかったのでありますが、
有名な小説だったようで、しかも、
あのとき映像化されていた、別府編というのは
いわゆる続編「続・夫婦善哉」という幻の小説だったそうで
そんな歴史とともに堪能したのであります

内容は、ドラマと比べてしまう具合になってしまいますが
ドラマの再現度が高かったおかげで、かなりスムースに読めました
ドラマがなかったら、読めなかったというか
もうひとつわからなかったんじゃないかな
そう思うような、不思議な文体であります
一人語りでもないんだが、文章が、ずっと
とめどなく流れていくような、
テンポをかえるために、するすると台詞がさしこまれて
それを受けて、流しての地の文の流れがとっかかりがないほどで
するすると読み進めていけて
さらに、情景がありありと浮かぶのでありました
もっとも、情景については、やはりドラマ見たおかげがあるのですけども

しかし、当時の風俗というのか、
そういう感じだったんだろうなと
民族資料的な見方をしてしまうのでありますが、
ドラマよりも、まぁ、柳吉がひどい、遊びまくる
そして、その遊びを甲斐性というわけでもなく、
怒るんだけど、許すし、また怒られるという
滑稽にも見えるやりとりが、すごく自然にあるようでして
これが、大正や昭和も先のころの雰囲気なんだろうかと
不思議な気分でありました
余談ですが、これを今の時代にどうしてドラマにしたんだろうか
本質というか、伝わらない部分が大きいと思う

そんなわけで、すごくがんばる蝶子と、
そのがんばりをともかく踏みにじるかのようにして
柳吉が、あれこれ身を持ち崩してというところ
まぁ、これはひょっとすると、
その当時にあった、正妻をおいて、女を作った男の末路としては
まっとうなそれであった、
さりとて、それは男が悪いのであって、女がそれではなかった
そんなことを描いたんだろうかなとか
あれこれ考えてみるのであります
無論わかるわけがないのでありますけども

そんなわけで、なんだかしんみりしながら読んでみて
しかも、この完全版本は、続編の生原稿写真が掲載されているという
これをもって完全版と呼ぶのかと驚きのできばえでして
好きな人にはたまらない
もしかすると、古書というか、古本のそれに似た
楽しさがあるのかもしれないとも
思ったりなのであります