CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】ムーンシャイン

2024-12-09 21:05:21 | 読書感想文とか読み物レビウー
ムーンシャイン  作:円城塔

久しぶりに著者の本を読んだのだが
過去作の短編集だった
個人的に、受賞作の道化師の蝶と文字渦が好きすぎるので、
その頃の雰囲気が残っているような、どうなのかと
そういう感じの短編で、なかなか楽しかったのでありました
と、まぁ、読んだ後に、そういうそれぞれの小説のなりたちというか
生い立ちをあとがきとして追記しているので
大変助かったというか、そういうことかと合点したのであった

そのあいの子というでもないが、個人的には「遍歴」が一番面白く、
宗教というものを一種のオープンソースに見立てるという内容で
このあたりのハチャメチャなところが大変楽しいと
まさにソースコードが書き換えられていった遍歴が
それこそ、宗教のなりたち、その哲学の変遷を見せるというのが楽しい
というか、改めて再定義されてというか、
ソースコードの管理というか、ああいうものって、
つまりは、こういうことだったみたいな感じで
知ってた人からすれば当たり前なんだろうけど、なんというか、
無知蒙昧からすると、大変楽しい体験であったと思うばかりである

もっとも、内容として、人の生の円環なるものがというあたりは
本当に哲学の領域というか、やはり、著者が好む言葉遊びのそれじゃないかと思って
それよりは、事実というか、もう少しベース部分の、
記載記述、そういった方法の楽しさというものが、
つらつら、書き連ねられるだけの文章で楽しく読めてしまうのが
著者の真骨頂よなと、しみじみ思ったのである

表題作については、それこそ言葉遊びの極致めいた
素数をはじめとした数学っぽいものを下地にして、
なんかとても楽しそうというのが、わずかにロマンスめいたというには遠い、
どことなくSFにある、人間の物語が織り込まれているという感じが
これまた楽しいのだが、私の事前知識というか、下地の知能が足らないので
もうちょっと楽しめなかったのであった

あとは、SF夢十夜的なパリンプセストやらも面白いけど
ここに見られる着想とかは、最近のSF作家みんなが思ってそうなもので
これをどう展開するかというのが、作家の腕なんだろうなと思いつつ
なんぞかんぞと読んだのでありました

それにしても、はじめに書いた、あとがき部分に戻ってしまうが
作家になろうと思ったあたりの動機と動向が
頭いいのに変わってる人だなという感じがせんでもないが
作家としてというあたりに、ひとつあたりがあった、
そしてそれをどう落としていくかという絵の描き方が
普通の作家が書かない感じの来歴だなと思えて、
実際はそう動いている作家が多いとしても、あけすけと書いてしまうところが
いいなと思えたのであった