今の区政を区民に知っていただき、また区民の皆様のご意見・ご要望を幅広くお聞きしていくべく、広報・公聴の充実、市民参加の場の拡充を図っていく必要があります。
一つの取り組みは、「市民討議」「熟議」など、無作為抽出の市民に対し、情報提供し、議論の場をもち、意見を吸い上げていく仕組みです。世論調査や、タウンミーティングなどの欠点を補うものとして(図参照)、日本では新たな手法です。
まさに、昨年から実施されている「裁判員制度」も、司法の現場に、市民の声を反映する仕組みで同じ考え方から来ていると思います。私は、「裁判員制度」が、日本の民主主義をも底上げしていく効果をあわせて出てくるものと期待いたしております。
1/11の東京新聞が、「市民討議」「熟議・デリバレイティブ・ポール(DP)」の仕組みを分かりやすく、解説していおりましたので、掲載します。
都政や区政でも、重要な政策決定や、計画作成には、これら仕組みを導入していくことも検討すべきではないかと考えています。
下線、赤字、太字は、小坂による。
*****東京新聞(2010/01/11)*****
市民討議で意見熟成 『本当の世論』探る新手法 考案者らに聞く
2010年1月11日 朝刊
新年連載「常識革命」の最終回は、じっくり議論する熟議を取り上げ、それが日本の民主主義を成熟させるきっかけになるのではないかと提案した。デリバレイティブ・ポール(DP)という熟議の方法を考案したスタンフォード大のジェームズ・S・フィッシュキン教授と、日本の第一人者・慶応大の曽根泰教教授に聞いた。 (敬称略)
-横浜市で行われた討議型意識調査は、日本で初の本格的なDPと位置付けられています。視察してどんな感想を持ちましたか。
フィッシュキン 参加者の皆さんが積極的に情報を得ようとしていた。他の国の人よりも熱心で「すごいな」と思った。
曽根 よく「日本人は意見を言わない」とか「シャイだ」といわれるが、そんなことはない。皆、問題をまじめに考え、討論している。
-諸外国でのDPはどれぐらい行われているのですか。
フィッシュキン 二十七カ国、二十二の言語で実施されている。カトリックとプロテスタントの宗教対立のある地域や、オーストラリアのように先住民と他の人との対立がある国でも行われている。
-日本ではなぜ行われてこなかったのですか。
曽根 米国のように大規模なものをやろうとしてもコストがかかるため実現できなかった経緯がある。しかし、サンプルを絞って小規模にすることで行うことが可能になった。
-民主主義として全く新しい手法なのですか。
フィッシュキン 実は古代アテネからヒントを得ている。アテネの民主政では、無作為で五百人を選び、その討議でものごとを決めていた。ギリシャでは昨年の総選挙で政権交代が起きたが、勝った陣営はDPの手法を取り入れている。英国の新聞は「二千四百年ぶりにギリシャにアテネ式の民主主義が導入された」と報じた。
-DPの調査結果は、政策決定にどう生かされていくのですか。
フィッシュキン 得られた意見を政策責任者がよく聞くということです。一般市民が現代社会を代表して議論する。そこから出る結論は、一般の世論調査とはまったく違う。複雑な政策課題を考える場合は、この方法を使えば、民主主義がもっと深いものになる。
-具体的な成功例はありますか。
フィッシュキン 米国のテキサス州は最初、風力発電の導入が最も遅れた州だった。それがDPを行い、その結果を行政に反映させた結果、今では全米でトップになっている。
-米国も日本も世論調査が盛んですが。
フィッシュキン 世論調査は十分な情報を得ていない人たちの意見だから限界がある。面白い話があります。一九七五年、「パブリック・アフェアーズ・アクト」という法律についての意見が問われた世論調査があった。実はこんな法律は実在しないのですが、その法律について、いろいろな意見が出た。「知らない」と答えるわけにいかず、皆、知っているようにでたらめに答えたということです。
-その点、十分な知識を得てから答えるDPは価値があるのですね。知識がある人だけを集めて議論するのではダメなのですか。
曽根 タウンミーティングのような参加民主主義は、関心の強い能動的な参加者が集まる。ただそこから出る意見は、かなりバイアスがかかっているかもしれない。だから本当の市民を選ぶためには、無作為抽出が必要なんです。裁判員を選ぶときに無作為にするのと同じ理屈です。
-民主党を中心とする政権が誕生し、事業仕分けなど、政策決定の「見える化」が注目されています。その意味で熟議も時流に乗っているともいえます。
曽根 事業仕分けは、情報公開という点では喝采(かっさい)を浴びた。でも、一時間で結論を出す手法は、あまりにも時間が短かった。仕分けをされた人たちは、予算が削られたことだけでなく、自分が言いたいことを言えなかったということにも不満がある。だから年金とか郵政とか大きな政策課題は二泊三日ぐらいでじっくりやれば、かなり論点が出てくる。
-熟議の動きは日本でも広がっていきそうですね。
曽根 そう思う。DP以外にも、いろいろな社会実験とか調査があって市民が参加をしている。ただきちんとサンプリングしていなかったり、誘導的なものもある。それでは何の意味もない。
-不特定多数の人を集めて長時間議論すればいいというわけではないのですね。
フィッシュキン きちんとした方式で実施される必要がある。そうすれば、必ず成功につながる。われわれが使っている基準でやっていくと、良いサンプルを集めることができる。
****以上*****