「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

小児科かかりつけ医のひとつの役割 お子様が二重国籍をとる際の保証人

2013-04-18 09:59:49 | 小児医療
 親御さんのひとりが外国人の場合、かかりつけのお子さんが、日本だけではなく、二重国籍を申請するときがあります。

 その際の申請書に、身元を保証するひとのサインが必要になります。

 先日、そのサインのご協力をさせていただきました。

 ずっと前に、カナダ国籍の取得でサインしましたが、今回は二度目の経験で、オーストラリア国籍取得のお話でした。

 かかりつけ医としては、そのお子さんを小さな時から診ているため、保証するのにふさわしい立場にあると思います。

 かかりつけ医のひとつのたいへん光栄かつ重要な役割だと感じています。


 また、言うなれば、その子ども達が、成人して、自分の国籍を選ぶ段になって、すすんで日本国籍を選びたくなるような日本にすることは、
 私達大人の重要な責務だと思います。
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知っておくべき刑法:どんな時に正当防衛で許されるか。過剰防衛・誤想防衛・自招防衛・偶然防衛・緊急避難

2013-04-17 11:17:52 | シチズンシップ教育
 今晩の大学院での刑事法講義でのテーマ。

正当防衛について。

①正当防衛はそもそもなぜ違法性阻却事由となるのか,

②急迫不正の侵害とはどういうことか,

③積極的加害意思とはどういうことか,

④攻撃の意思と防衛の意思とが併存していても正当防衛は成立するのか


 自分の復習の意味もあり、以前、書いたもの振り返ってみます。

*****知っておくべき刑法:どんな時に正当防衛で許されるか。過剰防衛・誤想防衛・自招防衛・偶然防衛・緊急避難*****
ブログ:2012-06-08 10:09:39

http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/8d5c8423079ff5e8f18e0c6a9d51353e

Q: 子どもの頃、よく「正当防衛」とかいいながら、小突きあったものです。私も、最も早く口にした法律用語のひとつじゃないかなって思っています。
  正当防衛ってなにですか?


A:正当防衛の規定は、刑法36条にあります。

****刑法*****
(正当防衛)
第三十六条  急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2  防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

***********

 とくに、正当防衛が成立するかどうかの「要件」は,刑法36条1項にいうところです。



Q: 正当防衛の場合、罰することがないわけですね。

  なぜ、そのように考えられるのですか?

A: 正当防衛の根拠ですが、

 *自らを守ろうとするのは人間だれしも持っています。(自己保存の本能)

 *また、法を守るためには、戦うとするその意思を表し、その意思を後押しすることを法が認めたということです。(法確証の利益)

 *そして、後で詳しく述べますが、なんらかの侵害を加えてくるものの利益の保護よりも、そのような違法なことから、守られるべき身体生命の利益の保護のほうがずっと重要であることが明らかであります。(優越的利益)

 これらの理由から、正当防衛が正当化され、無罪とされるのです。


Q: どのような要件がそろうと、正当防衛といえるのでしょうか。


A: 主に、1「急迫」「不正」の侵害、2防衛の意思、3手段の相当性 の三つがそろうことが必要と考えられています。


Q: 急迫とは?


A:過去の侵害でも、将来の侵害でもなく、そのたった今の差し迫った侵害をいいます。

 最判昭和46年11月16日(刑集25巻8号996頁)では、「刑法36条にいう「急迫」とは,法益の侵害が現に存在しているか,または間近に押し迫っていることを意味し,その侵害があらかじめ予期されていたものであるとしても,そのことからただちに急迫性を失うものと解すべきではない。」と述べられています。


Q: 予期していた場合、急迫ではなくなり、正当防衛が成り立たなくなりますか?

 例えば、夜道を歩くとき、痴漢撃退スプレーを持っているようなとき。そして、痴漢が来て、実際それで、撃退したようなとき。

A:そんなことはありません。予期をしていても、その場合、急迫不正の侵害があったとして、当然に、正当防衛は成り立ちます。

 この裁判例は、予期しても正当防衛が成り立つ趣旨をのべています。(合わせて、積極的加害意思がある場合は、成り立たないとも述べています。)

 最決昭和52年7月21日(刑集31巻4号747頁)

「刑法36条が正当防衛について侵害の急迫性を要件としているのは,予期された侵害を避けるべき義務を課する趣旨ではないから,当然又はほとんど確実に侵害が予期されたとしても,そのことからただちに侵害の急迫性が失われるわけではないと解するのが相当であり,これと異なる原判断は,その限度において違法というほかはない。しかし,同条が侵害の急迫性を要件としている趣旨から考えて,単に予期された侵害を避けなかったというにとどまらず,その機会を利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときは,もはや侵害の急迫性の要件を充たさないものと解するのが相当である。そうして,原判決によると,被告人は,相手の攻撃を当然に予想しながら,単なる防衛の意図ではなく,積極的攻撃,闘争,加害の意図をもって臨んだというのであるから,これを前提とする限り,侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきであって,その旨の原判断は,結論において正当である。」


A:「不正」の侵害とは?


Q:「不正」=「違法」な侵害であることを言います。

 とくに、動物による侵害に対する正当防衛(対物防衛)で問題になることがあります。

 「犬にかまれた」ケースです。

 そのようなとき、もし、犬の所有者の故意又は過失がある場合、正当防衛が成立します。

 他人の飼犬が突然襲ってきて、所有者の故意又は過失がない場合が問題になります。

 犬は、法律上は物です。その犬に危害が加えられそうになって、その犬を殺すと、器物損壊罪の罪を、こちらが、着せられることになります。

 ただ、普通に考えてそれは、妥当ではないと誰もが感じます。

 よって、動物からの攻撃は「不正」の侵害であるとして正当防衛を肯定する考え方が有力になってきています。



Q:防衛の意思とは?


A:刑法理論上、二つの考え方があります。

 ただ、裁判例で理解することとして、防衛の意思は必要とされています。


 *違法性論 行為無価値論と結果無価値論が対立する場面
  行為無価値論 : 防衛の意思が必要(主観的正当化要素)
  結果無価値論 : 防衛の意思は不要(違法性は客観的要素)

 
 どのように裁判例がいっているかというと(最判昭和50年11月28日(刑集29巻10号983頁)【百選Ⅰ・24事件】

 「急迫不正の侵害に対し自己又は他人の権利を防衛するためにした行為と認められる限り,その行為は,同時に侵害者に対する攻撃的な意思に出たものであっても,正当防衛のためにした行為にあたると判断するのが,相当である。すなわち,防衛に名を借りて侵害者に対し積極的に攻撃を加える行為は,防衛の意思を欠く結果,正当防衛のための行為と認めることはできないが,防衛の意思と攻撃の意思とが併存している場合の行為は,防衛の意思を欠くものではないので,これを正当防衛のための行為と評価することができるからである。
 しかるに,原判決は,他人の生命を救うために被告人が銃を持ち出すなどの行為に出たものと認定しながら,侵害者に対する攻撃の意思があったことを理由として,これを正当防衛のための行為にあたらないと判断し,ひいては被告人の本件行為を正当防衛のためのものにあたらないと評価して,過剰防衛行為にあたるとした第1審判決を破棄したものであって,刑法36条の解釈を誤ったものというべきである。」


 何が言われているか整理すると、

 *正当防衛には防衛の意思が必要

 *防衛に名を借りた積極的な攻撃行為 → 防衛の意思は認められない

 *防衛の意思と攻撃の意思が併存 → 防衛の意思は認められる

 ということです。


 急迫のところでいいましたが、行為前の段階での意思ではなく、まさにその侵害のときに、防衛の意思が必要であります。


Q:防衛の意思とは、どんな内容を指すのですか?

 防衛の意図・目的まで、必要だとしますか?


A:裁判例では、防衛の意図・目的まで、必要とはしていません。

 正当防衛は、「急迫」の場面であり、そのようなときに、確固たる防衛の意図・目的までもつことを要求すると、正当防衛の意味が限定され、正当防衛自体が成立しなくなることが多々出るやもしれません。

 よって、防衛の“認識”で足りるとされています。
 防衛状況を認識しながら、それに対応する心理状態でたります。自衛本能に基づいてほぼ無意識的・反射的になされた反撃行為にも、防衛の意思を認めることになります。



Q:手段の相当性とは?



A:刑法36条1項の「やむを得ずにした行為」に関しての考え方になりますが、その行為が、相当であれば、正当防衛、行き過ぎると「過剰防衛」となる判断の分かれ目です。

 相当性があれば、「正当防衛」となり無罪、相当でなければ、「過剰防衛」とされ、刑法36条の2項で処罰されるということです。
   

Q:相当性の判断基準は?


A:2つの面(要素)から判断します。

 一つ目は、「守ろうとした利益と反撃行為によって生じた侵害結果」の相対的な(ある程度の)法益均衡が保たれていることです。
 このある程度は、超えていても構いません。

 次のテーマ「緊急避難」との違いがここに出ています。「緊急避難」では、厳格な均衡が求められます。正当防衛は、ある程度の均衡で構いません。


 もうひとつは、「防衛手段としての相当性」です。


Q:逆の見方をして、では、相当性を欠いた反撃行為は、正当防衛ではなく、過剰防衛(刑法36条2項)とのことですが、どのような場合をいいますか?


A:過剰というとき、2つの類型で延べられます。
 「質的過剰」と「量的過剰」です。

 質的過剰とは、素手に対して凶器を使うことです。

 量的過剰とは、侵害終了後又は弱まった後でも、さらに反撃行為を加えることをいいます。



Q:正当防衛の三つの要素はわかりました。

 では、勘違いして、防衛行為をすることは、ありえませんか?


A: 「誤想防衛」の問題です。

 急迫不正の侵害が存在しないにもかかわらず,これがあると誤信して行った反撃行為です。

 「急迫不正」侵害が客観的に存在していれば、正当防衛ですが、客観的に存在していないため、正当防衛としては、扱われません。

 ただ、正当防衛を基礎付ける事情についての錯誤として考えられ、事実の錯誤ゆえ、「故意」なしとして無罪になります。(事実の錯誤とする説。一方、法律の錯誤とする説もあり。)


Q:「自招防衛」とは、なにですか?


A:まず、みずからがちょっかいを出して、相手の攻撃を誘発した場合です。


Q: 正当防衛となるのですか。

A: ケースバイケースです。

 刑法理論でも、いろいろな考え方、理論があります。
 (例、原因において違法な行為の理論、など)

 裁判例では、最決平成20年5月20日(刑集62巻6号1786頁)があります。

「被告人は,Aから攻撃されるに先立ち,Aに対して暴行を加えている
      のであって,Aの攻撃は,被告人の暴行に触発された,その直後におけ
      る近接した場所での一連,一体の事態ということができ,被告人は不正
      の行為により自ら侵害を招いたものといえるから,Aの攻撃が被告人の
      前記暴行の程度を大きく超えるものでないなどの本件の事実関係の下に
      おいては,被告人の本件傷害行為は,被告人において何らかの反撃行為
      に出ることが正当とされる状況における行為とはいえないというべきで
      ある。そうすると,正当防衛の成立を否定した原判断は,結論において
      正当である。」


 判決要旨から、わかることは、


     *故意による自招侵害について正当防衛を否定しています。

     *最高裁が正当防衛を否定するための要件として示した事情が示されています。


Q:偶然防衛とは?

A:おこなった行為が、たまたま自らの身を守っていた場合です。

 例えば、Aさんは、Bさんをピストルで撃って殺したが、実は、Bさんは、Cさんを打ち殺そうとしているところであって、結果的にCさんが守られた。しかし、このことをAさんは知らずに撃っている。

Q: 正当防衛になりますか? 防衛の意思がないように思いますが。

A:おっしゃるように防衛の意思がないです。よって、殺人罪既遂と考える考え方があります。(行為無価値論より。他に、客観的に結果無価値ではないため、未遂を同理論から導かれるとする考え方もあり。)

 その一方で、たまたまであったとしても、Cさんの命を守っていたのであるから、よいとする考え方、すなわち、この点で、防衛の意思は不要としつつ、無罪を導く考え方があります。(結果無価値論より。他に、違法な結果が生じた可能性を鑑み、行為自体の危険性が残っているため、殺人未遂を同理論から導かれるとする考え方もあり。)



Q:正当防衛の36条の次に、緊急避難の37条があります。

 緊急避難とは、なにですか。


A:まず、条文を見ます。

 条文では、36条と37条、たいへんよく似ています。


*****刑法*****
(緊急避難)
第三十七条  自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
2  前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。

(正当防衛)
第三十六条  急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2  防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。


Q:具体的にどんな場合が、緊急避難にあたりますか。

A:例えば、
 *自宅まで延焼してきたとき、逃げるため、隣の家のガラスを割って、侵入して逃げた。

 *殴りかかられるのをよけるため、避けようとしたら、隣の人に自分の体が当たって、突き飛ばしていた。



Q:正当防衛と緊急避難の、その違いとは?


A:最も異なる点は、正当防衛は、「不正」対「正」の関係ですが、緊急避難は、第三者に危難を転嫁するのであって、その第三者と避難者との関係は、「正」対「正」の関係にあるわけです。

 「正」の第三者への避難行為であるわけで、その行為が正当を認められる要件はとても厳しくなります。


Q:どんな要件が必要になりますか?

A:正当防衛と同様に、急迫性は必要である点は同じです。

 避難行為において、その行為以外に取るべき行為がなかったことが求められます。(このことを法律用語で、「補充性」といいます。)

 その上、厳格な法益の権衡が必要と言われています。

 正当防衛で言われた、ある程度の均衡とは、異なり、ここは、厳格に均衡が取れることが求められます。

 そのような場合、はじめて、刑が免除されます。

 以上、正当防衛に関連した論点を述べました。

 正当防衛の場面に遭遇しないことが一番良いのですが、万が一の場合に備え、念頭においてください。
 

以上
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人生の一大事就職 採用内々定⇒採用内定⇒試用 各期間での採用拒否 解雇権濫用を防ぐには

2013-04-16 16:36:38 | シチズンシップ教育

 学校を出て、就職することは、そのひとの一生を決めるとても大切な時です。

 企業にとっては、多くの候補者のひとりであっても、その個人にとっては、その採用は、人生の一大事。

 その採用過程で、企業側からの安易な採用拒否は、絶対にあってはならないことです。


 採用取消がなされたような場合に、大事なことは、内定(内々定もふくめ)や試用期間の法的性質を、労働契約とみなすことです。
 すなわち、判例多数説がそうであるのですが、それぞれにおいて、解約権留保付き始期付き労働契約成立説、契約権留保付き労働契約説をとり、採用取消は、解雇類似として争います。
 契約がないとなると、争っても、せいぜい慰謝料の損害賠償止まりです。
 労働契約成立なら、不合理な採用取消の場合、採用取消は無効であり、採用の地位は守られます。


 



1採用内々定

1)採用内々定の法的性質

 現在、採用内定は、就職協定により10月1日以前には正式に行われないが、以前より企業が学生に対し、口頭で採用内々定を表明し、その後、内定開始日に正式に採用内定通知がされるという慣行が形成されている。

 通常、採用内々定は、採用内定とは同じとは言えない。

 ①形式的には内定通知書が出されていない

 ②企業、学生の双方の意識としても採用内定とはおのずから異なる。

 ③ただ、事案によっては、採用内定と認めるべきこともあるだろうし、予約契約が成立したというべき場合もある。

2)内々定取消の法的意味

 内々定について、企業は採用内定日の前に取り消すことがありうる

 考え方1:内々定を採用内定とみることができる場合には、すでに成立した労働契約関係を使用者が一方的に解消することと評価することができ、解雇と同視できる。

     その取消しについて客観的合理的な理由と社会通念上相当であることが必要である。

 考え方2:内々定を採用内定と診ることができる場合であるとしても、直ちに解雇権濫用の問題で処理するのではなく、内定取り消しに関する判例理論の枠組みにより判断する


2採用内定

1)採用内定の法的性質

 採用の自由が原則

 具体的には、①雇い入れ人数の選択決定の自由、②募集方法の自由、③選択の自由、④契約締結の自由、⑤調査の自由

*解約権留保付き始期付き労働契約成立説(判例・多数説)

*締結過程説(特別の事情がなければ内定から本採用までの一連の手続全体が労働契約の締結過程である。よって、採用内定は企業と内定者いずれも拘束しない。)

*予約説(労働契約締結の予約)


2)採用内定取消の法的意味

 解約権留保付き始期付き労働契約成立説であるすると、採用内定取消は、留保解約権の行使であり、これは解雇にほかならないとみることができる。
 留保解約権の行使の合理性を判断することとなる。

*締結過程説、予約説をとってしまうと、両者労働契約締結ではないため、内定取消を解雇と評価できず、請求できるものがせいぜい慰謝料としての損害賠償止まり!


3試用

1)試用の法的性質

 本採用前の正規従業員としての適格性判断のための試みの採用期間

*契約権留保付き労働契約(通説、三菱樹脂事件)
 通常の場合、試用は当初から期間の定めのない労働契約であり、試用期間中は使用者に労働者の不適格性を理由とする解約権が留保されている。留保解約権の行使がない限り、試用から正社員になる。

*予備契約説
 試用は正社員の労働契約と異なり、労働者の適正・能力を判断するための期間のある予備的な契約(無名契約)。本採用は別途契約の締結ということになるので、本採用拒否は使用者の自由である。

*試用契約と本契約の併存説
 試用は能力・適格性判断の特殊な労働契約と不適格性が判明しない場合の試用期間満了後に締結する本契約の予約とが併存している。


2)本採用拒否の法的意味

*契約権留保付き労働契約(通説、三菱樹脂事件)⇒本採用拒否は留保解約権の行使であるため、この解約権行使がいかなる場合にできるかが問題となる。
 留保解約権行使に基づく解雇は、通常の解雇より広い範囲で解雇の自由が認められるが、解約権留保の趣旨、目的に照らし客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認される場合にのみ許されるとされる。
 試用期間はなお実験観察期間の性格があるので、職務上の能力や適格性判断に基づく広い留保解約権の行使が認められるべきだからである。

*予備契約説⇒本採用拒否は使用者の自由であるから、原則として本採用拒否の適法性は問題にならない。

*試用契約と本契約の併存説⇒本採用拒否が不適切であったとしても、本契約締結義務の不履行にすぎないので損害賠償をなしうるにとどまる。

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重要!改正労働契約法本年4/1施行19条1号2号。有期契約雇止めが一定の場合禁止が明文化

2013-04-16 15:31:45 | シチズンシップ教育

 有期労働契約は、使用者が更新を拒否した時は、契約期間の満了により雇用が終了します。(雇止め)

 過去の最高裁判例で、一定の場合には、労働者保護の観点から、雇止めを無効にするルール(雇止め法理)が確立していますが、今回の労働契約法改正に伴い、条文化しました。

 たいへん重要な条文と思われます。


 以下改正労働契約法19条1号2号の場合に、雇止めができません。



<改正19条1号>
 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

言い換えると⇒過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの


1)もとになった最高裁判例:東芝柳町工場事件(最高裁第一小法廷昭和49年7月22日判決)

事案:雇用期間2ヶ月の雇用契約を5回~23回にわたり更新していた臨時工につき雇止めをした事案。

   〇労働内容は、臨時工と本工(正社員)とでなんら差異はない

   〇過去に臨時工が雇止めされた例はない

   〇会社担当者の長期雇用や本工への登用を期待させる言動があった

   〇臨時工も継続雇用を信じ、本工への登用を希望していた

   〇契約更新に際し、必ずしもその都度、契約更新の手続きをとっていなかった


判旨抜粋:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121959053082.pdf
実質において、当事者双方とも、期間は一応二
か月と定められてはいるが、いずれかから格別の意思表示がなければ当然更新され
るべき労働契約を締結する意思であつたものと解するのが相当であり、したがつて、
本件各労働契約は、期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契
約と実質的に異ならない状態で存在していたものといわなければならず、本件各傭
止めの意思表示は右のような契約を終了させる趣旨のもとにされたのであるから、
実質において解雇の意思表示にあたる、とするのであり、また、そうである以上、
本件各傭止めの効力の判断にあたつては、その実質にかんがみ、解雇に関する法理
を類推すべき
であるとするものであることが明らかであつて、上記の事実関係のも
とにおけるその認定判断は、正当として首肯することができ、その過程に所論の違
法はない。

 

<改正19条2号>
 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであること。

言い換えると⇒労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの


1)もとになった最高裁判例:日立メディコ事件(最高裁第一小法廷昭和61年12月4日判決)

事案:期間2ヶ月の臨時工として採用され、契約を5回更新した労働者について雇止めをした事案。

   〇この臨時工は季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のための雇用ではなく、その雇用期間はある程度継続が期待されていた

   〇契約の更新手続きは厳格(契約更新に際しては本人に更新の意思確認をしたうえで、本人が会社に預けてある印を押印していた)に行われていた


判旨抜粋:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319130838219690.pdf
 (1) P工場の臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のため
に雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたもの
であり、上告人との間においても五回にわたり契約が更新されているのであるから、
このような労働者を契約期間満了によつて雇止めにするに当たつては、解雇に関す
る法理が類推され、解雇であれば解雇権の濫用、信義則違反又は不当労働行為など
に該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかつ
たとするならば、期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契
約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる。(2) しかし、右臨
時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とする
ものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下
に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおの
ずから合理的な差異があるべきである。(3) したがつて、後記のとおり独立採算
制がとられている被上告人のP工場において、事業上やむを得ない理由により人員
削減をする必要があり、その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、
臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、これに先立ち、期間の定
めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らな
かつたとしても、それをもつて不当・不合理であるということはできず、右希望退
職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである。


<厚労省の通知>










 

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要件事実論:買った鉢植えのつつじに害虫、代金返還請求権主張前の売買契約成立根拠事実の主張方法

2013-04-15 23:00:00 | シチズンシップ教育
 Aが生花店でBから鉢植えのつつじを買ったら、そのつつじに害虫がついていた。
 代金返還請求権の発生要件が充足されるように、主張せねばならない。
 まず、前提としての売買契約が成立していることの主張をすることになります。

 以下、説明をしていきますが、代金返還をAが主張することに、売主Bが反論してきます。
 その反論によって、売買契約の成立の事実の主張も、有効なものにすることが求められます。


<売買契約が成立したことを根拠づける具体的な事実の主張の仕方>

① Aは、平成24年4月22日、Bから代金3,000円で鉢植えのつつじ1鉢を買った。
② 平成24年4月22日、AとBの間に、AがBに対し代金3,000円を支払い、BがAに対し鉢植えのつつじ1鉢の所有権を移転する旨の契約が成立した。
③ 平成24年4月22日、AがBに対し代価3,000円の鉢植えのつつじ1鉢を買い受けたい旨の意思表示をし、BがAに対しこれを承諾する旨の意思表示をした。
④ 平成24年4月22日、AがBに対し「これをください」と言って代価3,000円の鉢植えのつつじ1鉢を買い受けたい旨の申込みをし、Bが「有り難うございます」と言ってAの申込みを承諾した。
⑤ 平成24年4月22日、Aが生花店の店先に陳列されている代価3,000円の値札が付いた鉢植えのつつじ1鉢を指差しながら店主のBに対し「これをください」と言い、Bが「有り難うございます」と言った。


同じようなことをいっているが、それぞれ違う。

******************

① Aは、平成24年4月22日、Bから代金3,000円で鉢植えのつつじ1鉢を買った。

② 平成24年4月22日、AとBの間に、AがBに対し代金3,000円を支払い、BがAに対し鉢植えのつつじ1鉢の所有権を移転する旨の契約が成立した。

 A,Bの各意思表示の内容を具体的に表現することなく、ABの意思表示の合致により成立した契約の内容の記述。

 ①と②の違いは、成立した契約の表現の仕方の違い。

 ①は、通常人の日常用いる言葉で表現。

 ②は、民法の売買の規定(民法555条)に忠実に表現。

 ①、②は、契約が成立したという結果のみの記述であり、ABいずれが申込みの意思表示をしたのかはわからない。特に②では全く不明。

⇒いずれの当事者が契約締結の申込みをしたのか、いずれの当事者のいかなる言動によって契約が成立したのかが争点である場合は、適切でない。

*******************

③ 平成24年4月22日、AがBに対し代価3,000円の鉢植えのつつじ1鉢を買い受けたい旨の意思表示をし、BがAに対しこれを承諾する旨の意思表示をした。

④ 平成24年4月22日、AがBに対し「これをください」と言って代価3,000円の鉢植えのつつじ1鉢を買い受けたい旨の申込みをし、Bが「有り難うございます」と言ってAの申込みを承諾した。

⑤ 平成24年4月22日、Aが生花店の店先に陳列されている代価3,000円の値札が付いた鉢植えのつつじ1鉢を指差しながら店主のBに対し「これをください」と言い、Bが「有り難うございます」と言った。


 ③~⑤は、いずれもAが売買契約の締結の申込みをし、Bがこれに承諾することによって売買契約が成立した旨を表現している。

 ③は、生の事実(Aが「これください」と言い、Bが「有り難うございます。」と言った事実)を記述するのではなく、その事実がもつ法律的な意味を解釈し、その結果認識された一定の意思表示の内容を抽象的に表現している。

 ④は、生の事実を記述するとともに、その事実がもつ法律上の意味を説明している。

 ⑤は、生の事実をそのまま記述するだけで、その事実が法律上どのような意味をもつか説明をしていない。
 (ある事実が法律上どのような意味を持つかは法律の適用の問題であって、当事者の主張をまつことなく、また、当事者の主張に拘束されることなく、裁判官が行うことに属するから、⑤のようにそれを説明しなくても差支えがないが、④のように説明することがゆるされないものではない。)


*******************

<相手方Bの争い方>

ア AB間の契約の締結を否認し、「Aはその日には店に来ていない」とか、「当日Aは店に来たが、自分と話していない」と主張

イ 代金額を否認し、「Aが指差したつつじの鉢についていたのは「¥2000」という値札であり、BがAから受け取った代金も2000円であった」と主張する場合

ウ「Aは他人の代理人であり、その他人のためにすることを示して売買契約の締結の申込みをし、Bはその他人のためにすることを示して承諾の意思表示をした」と主張する場合

エ Aが買ったつつじが害虫にやられて病気にかかっているとの事実を否認して争う場合

オ Aの代金返還請求に対し、売り渡したつつじの鉢の返還との引換給付の抗弁を提出する場合


*******************

<相手方Bの争い方に対し、買主Aは、売買契約の成立を根拠づける具体的な事実の主張は、上記①~⑤のいずれが適切か>

エオの場合

売買契約の締結の事実は、AB間に争いがなく、それを前提に、エつつじが害虫にやられていたこと(売買の目的物の隠れた瑕疵)、オつつじの鉢の返還を受けるまで代金の返還債務の履行を拒絶すること(同時履行の抗弁)が争われる場合には、Aは、自己が行使する請求権の発生根拠がわかる程度に主張すれば足りる。

⇒①や②で足りる。(③~⑤のような必要性も、実益もない)

ア 「AとBが当日会ったか、話をしたか」が争点、
イ 生花店の店先に展示されていた商品の値札がどのようにつけられていたかが争点

⇒④、⑤のように、より具体的な記載がいる。


ウの場合

AB間に売買契約の締結の合意があった事実には争いがなく、ただ、Aの意思表示が自己に法律効果を帰属させる趣旨のものであったのか、それとも他人に法律効果を帰属させる趣旨のものであったのかが問題となる。

ABの売買契約締結の合意を形成する意思表示そのものについては争いがあるわけではないから、その意思表示の内容を具体的に詳細に主張する必要はない。

以上
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裁判官の分限処分 中立・公正の判断基準

2013-04-14 23:00:00 | シチズンシップ教育
 憲法学のゼミにて、裁判官の分限処分がテーマにあがりました。

 テーマ設定として、
 たまたま検察官から自分の妻が逮捕される情報を入手した高等裁判所判事が、弁護士に入手情報をもとに弁護の仕方を意見した事案です。
 その行動が、裁判所法49条「品位を辱める」行動に該当し、分限裁判にかけられました。

 憲法学的に、権利保護ができるかどうか。

 自分の妻を守ることが、人としては当然ではあるが、その行為は、裁判官としてとるべきか、身内だからもっと厳しく対応すべきであったか。




<考慮要素>

中立・公正の判断基準

1、関わった事件の性質

2、裁判官として見解の提供のレベル

3、事件への介入の程度

4、当事者との関係

5、利用した資料の性質

6、当時の職務状況

7、被疑者/一般人からみた公正・中立の程度

 これらを考慮して、判断すべきとゼミでは、なりました。

 いろいろな事案で、このような考慮要素をあげるられるかどうかが、憲法学の問題を解く鍵です。

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供述調書の重要性

2013-04-13 23:00:00 | シチズンシップ教育

 下記供述調書関連のブログにコメントをいただきました。

 実際に被害者として供述調書を書かれた体験を綴られていらっしゃいます。

 供述調書の重要性を理解する上で重要と思い、そのコメントをこちらにも掲載させていただきます。

 cherry♪様、ありがとうございました。


*****いただいたコメント*****
知識として (cherry♪)
2013-04-12 21:38:38

最近は、子どもが風邪等ひかなくなり、予防接種くらいでしかお目にかかれず・・・今度、たっぷりお話したいと思っている今日この頃の双子母です。

自分がどういう法のもとに生きているかという事は、こういう事を踏まえ、子どもの頃から知識があるとないとでは、大人になってからも変わってくるとも思います。私は、個人的にふとしたことから体験したこの調書はかなりの曲者でした。

この供述調書が何故重要なのかも、私達は知って置かねばと思いましたので一言。
刑事裁判の時のに、この最初の調書が良くも悪くも、一番信用度が高いとされてしまうからです。何か事件や犯罪に巻き込まれて動揺したり訳も分からない状況に置いて、刑事さん達が都合の良い表現で要約作文された文章をどんどん進めていくので・・・そうは言ってません、それは違うというのは、中々言えないものだとも思いました。
私は被疑者では無く、被害者側の立場からの証言を調書にされましたが、言葉尻が微妙に違い、そういう意味じゃ無くってと何度違うを言った事か。常套句として、まぁ大体でいいからとか、こんな感じでしょ?と言う刑事さん多数。検察調書よりも、この段階の調書が大事だなんて・・・後からそうじゃないと言っても、裁判の証拠としての重要性はいかんともしがたいのかと、裁判を傍聴して思いました。

日頃から言葉の定義付けや、微妙な表現に拘るタイプであればまだしも、大多数は曖昧にまぁそんな感じで済ませてしまう日本人には、とても難しい物と感じました。

文章にされてから、それは違うから書き直してくださいは、中々通りませんでした。
ワープロで一緒に文章化しながら進めても、タイプする前に口頭確認、直ぐにタイプ。でも変わってしまうので、もう一度それ違うと言っても・・・中々変わりませんでした。
これが、被疑者側だったら、心が折れてしまったと思います。

滅多いに無い体験をしましたが、決して妥協しないのは本当に大変だと思いました。まさに言うは易しく、行うは難し。
送検後、検察調書でもまた同じことの繰り返し。
逮捕されたらどうなるのかという事を、もっと普通に知らなければいけないと、その時感じました。テレビなどで、逮捕される場面は目にしたりしますが、その後の扱いは当事者になるか裁判を傍聴するか限られてしまいます。
でも、その事を知っているかいないかで、強い心と信念を持ち続けていけるかどうか違ってくると思いす。

******以上*******

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犯罪とみなされた現場で注意すべきこととは。絶対に冤罪を生まないために。

2013-04-12 09:38:49 | シチズンシップ教育

 刑事訴訟を学びはじめたところですが、その現場の状況を知ってしまうと、もっと私達も心の準備が必要なのではないかと思ってしまいます。

 その思いで、念のために、以下を書きます。

 冤罪を生まないという思いから書きます。


 もし、お知り合い、お友達が、冤罪でお困りの場合、ご参考にしてください。



****取調べを受ける心構えについて***

 あらぬことで、取り調べをうけるという不幸がいつふりかかってくるやもしれません。

 その時の注意すべき点を書きます。


 注意すべきは、3点(プラス1点)。


「黙秘権」⇒ずっと黙っていることができます

 黙秘権は、権力が、無実の人からも無理にウソの自白をさせてきたことの反省から生まれました。
 世界中の国々で一般的に認められている権利です。

 黙秘権を行使することは、けっして、間違ったことではありません



2取り調べで作成される「供述調書」⇒間違った調書をつくられない権利があります。間違った調書、おかしいと思う内容の調書は、絶対に作成しない。

 (1)供述調書は、取調官の作文になりがちです。
 まるで、自分自身が書いたかのように、「わたしは、○○しました」という文章になっています。
 その内容は、取り調べで話した内容をそのまま書いたものではなく、取調官がまとめて文書にしたものです。
 自分の言い分と、取調官の作文が混ざってしまっい、どこまでは本当の自分の言い分で、どこからが取調官の作文か、区別がつかなくなってしまいます。

 
 そこで、

 (2)書かれた調書は、手に取って自分でよく読んで確認してください
 取調官は、読み聞かせる形で確認してもよいことになっていますが、それでは、聞き逃したり、勘違いするおそれがあります。
 もし、読ませてくれないのであれば、後の述べるように、自分のもつ「署名押印拒否権」を使って、「もし自分で読ませてもらえないのであれば、調書へのサイン(署名押印)を拒否する」と言いなんとしても自分で読ませてもらってください

 

 そして、

 (3)間違っている内容は、訂正をしてもらってください。「増減変更申立権」
 訂正するときは、よく考えて、少しでも疑問がのこれば、供述調書のサイン(署名押印)を拒否して、弁護人と相談してください。
 


 
 (4)けっして妥協しないでください。「署名押印拒否権」
 「自分はそんなこと言っていないのに」とおかしいと思ったら調書には、絶対にサイン(署名押印)をしないでください。

 取調官が、

 〇否認したり、黙秘をしたり、調書の内容の訂正を求めたり、サイン(署名押印)を拒否したりすれば、認めないと不利になるとか
 〇調書を作らねば不利になるとか
 いう話をしてくるかもしれません。(調書を作らないからと言って、すぐに不利になることはありません。弁護人と話してからでも、遅くありません。)

 怒鳴られたり、ときには暴行をふるわれた、あるいは、家族や関係者に不利になると言われた元被疑者の人もいます。

 一部はあなたの言い分をそのまま書く代わりに、別のところで、取調官の言い分を認めるという取引を持ち出してくるかもしれません。

 ⇒調書の内容がおかしいと感じたら、けっして妥協したりせず、間違った調書にサイン(署名押印)しないでください。
  調書が、100%自分の言い分通りに正しく書かれていたとしても、サイン(署名押印)する義務はないのであるから、間違った内容の供述調書にサイン(署名押印)する義務がないのは、なおさらあたりまえのことです。

 
 


 もし、そのような機会があればですが、

3録画の取り調べ⇒録画のときこそ、自分の言い分を主張する。

 取り調べの一部録画が開始されています。
 もしなされた場合は、

 それまでの取り調べで、もし、
 〇取調官に脅されて署名させられたとか
 〇自分の言い分とちがう調書をつくらされたとか
 〇訂正に応じてくれなかった
 といった取調官の違法・不当な行為があった場合には、
 必ずそのことを主張して録画してもらう。

  
  

    +

 以上1~3と、
 できれば、最後にプラス1点

4取り調べの記録「被疑者ノート」作成⇒公証人役場で届け出ることで、裁判の資料になります。

 ボールペン(鉛筆はなるべく使わない)など筆記用具は、購入したり、借りることができます。

 実際に受けた取り調べの内容をありのままに記録をして残してください。

 日本弁護士連合会作成の「被疑者ノート」が役立ちます。
 接見にこられた弁護士にお尋ねください。



目次


大切なこと


違法・不当な取調べを受けたときについての記載。



以上

コメント (1)
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刑事訴訟法:任意捜査において有形力の行使は、どこまで許されるか?

2013-04-11 09:44:53 | シチズンシップ教育

 なやましい判例に出会いました。

 任意捜査の段階で、取り調べの警察官が、被疑者の左手をつかんだことが、違法な有形力の行使にあたるかどうか?

 飲酒運転の疑いが濃厚なひとが、取り調べ中に、「マッチをかしてほしい」と警官に頼んだが、拒否されたので、自分でとりに行こうとしたところ、左手を警察官が両手でつかんで、被疑者の意思の制圧=個人の自由の制約をした事案。


資料は、最高裁ホームページより:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120320284185.pdf

<高裁が認定した事実関係>

被告人は、

昭和四八年八月三一日午前四時一〇分ころ、岐阜市d町b丁目e番地先路上で、酒酔い運転のうえ、道路端
に置かれたコンクリート製のごみ箱などに自車を衝突させる物損事故を起し、間も
なくパトロールカーで事故現場に到着したA、Bの両巡査から、運転免許証の提示
とアルコール保有量検査のための風船への呼気の吹き込みを求められたが、いずれ
も拒否したので、両巡査は、道路交通法違反の被疑者として取調べるために被告人
をパトロールカーで岐阜中警察署へ任意同行し、午前四時三〇分ころ同署に到着し
た。

被告人は、当日午前一時ころから午前四時ころまでの間にビール大びん一本、日本酒五合ないし六合位を飲酒した後、
軽四輪自動車を運転して帰宅の途中に事故を起したもので、その際顔は赤くて酒のにおいが強く、身体がふらつき、言
葉も乱暴で、外見上酒に酔つていることがうかがわれた。


被告人は、両巡査から警察署内の通信指令室で取調べを受け、運転免許証の提示要求にはすぐに応じ
たが、呼気検査については、道路交通法の規定に基づくものであることを告げられ
たうえ再三説得されてもこれに応じず、午前五時三〇分ころ被告人の父が両巡査の
要請で来署して説得したものの聞き入れず、かえつて反抗的態度に出たため、父は、
説得をあきらめ、母が来れば警察の要求に従う旨の被告人の返答を得て、自宅に呼
びにもどつた。


両巡査は、なおも説得をしながら、被告人の母の到着を待つ
ていたが、午前六時ころになり、被告人からマツチを貸してほしいといわれて断わ
つたとき、被告人が「マツチを取つてくる。」といいながら急に椅子から立ち上が
つて出入口の方へ小走りに行きかけたので、A巡査は、被告人が逃げ去るのではな
いかと思い、被告人の左斜め前に近寄り、「風船をやつてからでいいではないか。」
といつて両手で被告人の左手首を掴んだところ、被告人は、すぐさま同巡査の両手
を振り払い、その左肩や制服の襟首を右手で掴んで引つ張り、左肩章を引きちぎつ
たうえ、右手拳で顔面を一回殴打し、同巡査は、その間、両手を前に出して止めよ
うとしていたが、被告人がなおも暴れるので、これを制止しながら、B巡査と二人
でこれを元の椅子に腰かけさせ、その直後公務執行妨害罪の現行犯人として逮捕し
た。


*被告人がA巡査の両手を振り払つた後に加えた一連の暴行は、同巡査か
ら手首を掴まれたことに対する反撃というよりは、新たな攻撃というべきものであ
つた。

*被告人が頑強に呼気検査を拒否したのは、過去二回にわたり同種事犯
で取調べを受けた際の経験などから、時間を引き延して体内に残留するアルコール
量の減少を図るためであつた、というのである。


************************

 警察官の行動の意図は、確かにわかります。
 飲酒運転の疑い濃厚な被疑者が、アルコール血中濃度が下がることを時間稼ぎをして待っている最中に、逃亡をするかのような行動にでたため、左手首をつかみ制止しようとした。

 しかし、被疑者の側に立ってみれば、母親が来れば呼気検査をするという約束をし、マッチをもらおうと警察官に頼んだが無理だったので、自分でマッチをとりに行こうとしたら、呼気検査の約束しているにも関わらず逃亡すると疑われて、いきなり左手首を両手でむんずとつかまれるという有形力の行使をうけた。

 自分がひっかかるのは、警察官が手を出したのは、この段階ではわずかに早かったのではないかということです。
 マッチを取りに行くのか、逃げ出すのか、それを見極めてからでも遅くなかったのではないかというところです。

 マッチに取りに行くということを警察官は信じてあげて、しかし、万が一の逃亡の際には、それを制止するという意図をもって、被疑者にぴったりとくっついて行動することで、有形力を行使しなくとも、被疑者にこれは絶対に逃げ切れないと思わしめる手段はとれたのではないかと思います。それでもマッチをとりにいくことは嘘で、逃げるのであれば、その時に初めて、やむを得なく手を掴むことが許されるのではないかと思います。
 そうすることで、被疑者が、飲酒運転の罪ではなく、公務執行妨害罪という犯罪を犯すことを未然に防ぐことができたのではないだろうかと。
 (第一審は、正当防衛を認めて無罪。警察側の言い分もいれて、そこまでは言えないとしても、過剰防衛は成立しなのかな?)

 刑事訴訟法を学び始めたところであり、また、刑事事件の現場は実感がもてない場であり、考慮すべき要因が足りずに書いているかもしれません。
 今受けた素直な感じを書き置きました。

 このような入口で引っかかっていると(最高裁の判断からのズレがあると)、刑事訴訟法の学びが前に進まないかも・・・


*****第一審の判断****

第一審判決は、A巡査による右の制止行為は、任意捜査の限界を超え、実質上
被告人を逮捕するのと同様の効果を得ようとする強制力の行使であつて、違法
であ
るから、公務執行妨害罪にいう公務にあたらないうえ、被告人にとつては急迫不正
の侵害であるから、これに対し被告人が右の暴行を加えたことは、行動の自由を実
現するためにしたやむをえないものというべきであり、正当防衛として暴行罪も成
立しない
、と判示した。


*****高裁の判断*****

原判決は、これを誤りとし、A巡査が被告人の左斜め前に
立ち、両手でその左手首を掴んだ行為は、その程度もさほど強いものではなかつた
から、本件による捜査の必要性、緊急性に照らすときは、呼気検査の拒否に対し翻
意を促すための説得手段として客観的に相当と認められる実力行使
というべきであ
り、また、その直後にA巡査がとつた行動は、被告人の粗暴な振舞を制止するため
のものと認められるので、同巡査のこれらの行動は、被告人を逮捕するのと同様の
効果を得ようとする強制力の行使にあたるということはできず、かつ、被告人が同
巡査の両手を振り払つた後に加えた暴行は、反撃ではなくて新たな攻撃と認めるべ
きであるから、被告人の暴行はすべてこれを正当防衛と評価することができない
と判示した。

***************

<最高裁のとった論理の分析>

1.強制捜査と任意捜査の違い

強制捜査では、強制手段をもちいることができる。

任意捜査では、強制手段をもちいることができない。

⇒捜査において強制手段を用いることは、法律の根拠規定がある場合に限り許容されるものである。


2.強制捜査とは、有形力の行使のこともあれば、有形力の行使でないこともある。

 =有形力の行使がすべて強制捜査となるのではない。

⇒強制手段とは、有形力の行使を伴う手段を意味するものではなく、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段を意味するものであつて、右の程度に至らない有形力の行使は、任意捜査においても許容される場合があるといわなければならない。


3.任意捜査でも、有形力の行使が特定の場合に限り許される場合がある。

⇒強制手段にあたらない有形力の行使であつても、何らかの法益を侵害し又は侵害するおそれがあるのであるから、状況のいかんを問わず常に許容されるものと解するのは相当でない。


4.任意捜査で許される有形力の行使の判断基準。

必要性緊急性などをも考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容されるものと解すべきである。




*****最高裁の判断******

原判決の事実認定のもとにおいて法律上問題となるのは、出入口の方へ向つた
被告人の左斜め前に立ち、両手でその左手首を掴んだA巡査の行為が、任意捜査に
おいて許容されるものかどうか
、である。

 捜査において強制手段を用いることは、法律の根拠規定がある場合に限り許容さ
れるものである
。しかしながら、ここにいう強制手段とは、有形力の行使を伴う手
段を意味するものではなく、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加
えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容するこ
とが相当でない手段を意味するもの
であつて、右の程度に至らない有形力の行使は、
任意捜査においても許容される場合があるといわなければならない
。ただ、強制手
段にあたらない有形力の行使であつても、何らかの法益を侵害し又は侵害するおそ
- 3 -
れがあるのであるから、状況のいかんを問わず常に許容されるものと解するのは相
当でなく、必要性、緊急性などをも考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認め
られる限度において許容されるものと解すべきである


 これを本件についてみると、A巡査の前記行為は、呼気検査に応じるよう被告人
を説得するために行われたものであり、その程度もさほど強いものではないという
のであるから、これをもつて性質上当然に逮捕その他の強制手段にあたるものと判
断することはできない
。また、右の行為は、酒酔い運転の罪の疑いが濃厚な被告人
をその同意を得て警察署に任意同行して、被告人の父を呼び呼気検査に応じるよう
説得をつづけるうちに、被告人の母が警察署に来ればこれに応じる旨を述べたので
その連絡を被告人の父に依頼して母の来署を待つていたところ、被告人が急に退室
しようとしたため、さらに説得のためにとられた抑制の措置であつて、その程度も
さほど強いものではないというのである
から、これをもつて捜査活動として許容さ
れる範囲を超えた不相当な行為ということはできず、公務の適法性を否定すること
ができない
。したがつて、原判決が、右の行為を含めてA巡査の公務の適法性を肯
定し、被告人につき公務執行妨害罪の成立を認めたのは、正当というべきである。
 よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、
主文のとおり決定する。
 

 昭和五一年三月一六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    天   野   武   一
            裁判官    坂   本   吉   勝
            裁判官    江 里 口   清   雄
            裁判官    高   辻   正   己
            裁判官    服   部   高   顯


*****判決文全文******

         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人大野悦男の上告趣意のうち、憲法三三条違反をいう点は、実質は単なる法
令違反の主張に過ぎず、その余の点は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、
すべて刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
 なお、所論にかんがみ職権により判断すると、原判決が公務執行妨害罪の成立を
認めたのは、次の理由により、これを正当として支持することができる。
一 原判決が認定した公務執行妨害の事実は、公訴事実と同一であつて、「被告人
は、昭和四八年八月三一日午前六時ころ、岐阜市a町b丁目c番地岐阜中警察署通
信指令室において、岐阜県警察本部広域機動警察隊中濃方面隊勤務巡査A(当時三
一年)、同B(当時三一年)の両名から、道路交通法違反の被疑者として取調べを
受けていたところ、酒酔い運転についての呼気検査を求められた際、職務遂行中の
右A巡査の左肩や制服の襟首を右手で掴んで引つ張り、左肩章を引きちぎつたうえ、
右手拳で同巡査の顔面を一回殴打するなどの暴行を加え、もつて同巡査の職務の執
行を妨害したものである。」というにある。
二 原判決が認定した事件の経過は、(一) 被告人は、昭和四八年八月三一日午
前四時一〇分ころ、岐阜市d町b丁目e番地先路上で、酒酔い運転のうえ、道路端
に置かれたコンクリート製のごみ箱などに自車を衝突させる物損事故を起し、間も
なくパトロールカーで事故現場に到着したA、Bの両巡査から、運転免許証の提示
とアルコール保有量検査のための風船への呼気の吹き込みを求められたが、いずれ
も拒否したので、両巡査は、道路交通法違反の被疑者として取調べるために被告人
をパトロールカーで岐阜中警察署へ任意同行し、午前四時三〇分ころ同署に到着し
た、(二)被告人は、当日午前一時ころから午前四時ころまでの間にビール大びん
- 1 -
一本、日本酒五合ないし六合位を飲酒した後、軽四輪自動車を運転して帰宅の途中
に事故を起したもので、その際顔は赤くて酒のにおいが強く、身体がふらつき、言
葉も乱暴で、外見上酒に酔つていることがうかがわれた、(三)被告人は、両巡査
から警察署内の通信指令室で取調べを受け、運転免許証の提示要求にはすぐに応じ
たが、呼気検査については、道路交通法の規定に基づくものであることを告げられ
たうえ再三説得されてもこれに応じず、午前五時三〇分ころ被告人の父が両巡査の
要請で来署して説得したものの聞き入れず、かえつて反抗的態度に出たため、父は、
説得をあきらめ、母が来れば警察の要求に従う旨の被告人の返答を得て、自宅に呼
びにもどつた、(四)両巡査は、なおも説得をしながら、被告人の母の到着を待つ
ていたが、午前六時ころになり、被告人からマツチを貸してほしいといわれて断わ
つたとき、被告人が「マツチを取つてくる。」といいながら急に椅子から立ち上が
つて出入口の方へ小走りに行きかけたので、A巡査は、被告人が逃げ去るのではな
いかと思い、被告人の左斜め前に近寄り、「風船をやつてからでいいではないか。」
といつて両手で被告人の左手首を掴んだところ、被告人は、すぐさま同巡査の両手
を振り払い、その左肩や制服の襟首を右手で掴んで引つ張り、左肩章を引きちぎつ
たうえ、右手拳で顔面を一回殴打し、同巡査は、その間、両手を前に出して止めよ
うとしていたが、被告人がなおも暴れるので、これを制止しながら、B巡査と二人
でこれを元の椅子に腰かけさせ、その直後公務執行妨害罪の現行犯人として逮捕し
た、(五)被告人がA巡査の両手を振り払つた後に加えた一連の暴行は、同巡査か
ら手首を掴まれたことに対する反撃というよりは、新たな攻撃というべきものであ
つた、(六)被告人が頑強に呼気検査を拒否したのは、過去二回にわたり同種事犯
で取調べを受けた際の経験などから、時間を引き延して体内に残留するアルコール
量の減少を図るためであつた、というのである。
三 第一審判決は、A巡査による右の制止行為は、任意捜査の限界を超え、実質上
- 2 -
被告人を逮捕するのと同様の効果を得ようとする強制力の行使であつて、違法であ
るから、公務執行妨害罪にいう公務にあたらないうえ、被告人にとつては急迫不正
の侵害であるから、これに対し被告人が右の暴行を加えたことは、行動の自由を実
現するためにしたやむをえないものというべきであり、正当防衛として暴行罪も成
立しない、と判示した。原判決は、これを誤りとし、A巡査が被告人の左斜め前に
立ち、両手でその左手首を掴んだ行為は、その程度もさほど強いものではなかつた
から、本件による捜査の必要性、緊急性に照らすときは、呼気検査の拒否に対し翻
意を促すための説得手段として客観的に相当と認められる実力行使というべきであ
り、また、その直後にA巡査がとつた行動は、被告人の粗暴な振舞を制止するため
のものと認められるので、同巡査のこれらの行動は、被告人を逮捕するのと同様の
効果を得ようとする強制力の行使にあたるということはできず、かつ、被告人が同
巡査の両手を振り払つた後に加えた暴行は、反撃ではなくて新たな攻撃と認めるべ
きであるから、被告人の暴行はすべてこれを正当防衛と評価することができない、
と判示した。
四 原判決の事実認定のもとにおいて法律上問題となるのは、出入口の方へ向つた
被告人の左斜め前に立ち、両手でその左手首を掴んだA巡査の行為が、任意捜査に
おいて許容されるものかどうか、である。
 捜査において強制手段を用いることは、法律の根拠規定がある場合に限り許容さ
れるものである。しかしながら、ここにいう強制手段とは、有形力の行使を伴う手
段を意味するものではなく、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加
えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容するこ
とが相当でない手段を意味するものであつて、右の程度に至らない有形力の行使は、
任意捜査においても許容される場合があるといわなければならない。ただ、強制手
段にあたらない有形力の行使であつても、何らかの法益を侵害し又は侵害するおそ
- 3 -
れがあるのであるから、状況のいかんを問わず常に許容されるものと解するのは相
当でなく、必要性、緊急性などをも考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認め
られる限度において許容されるものと解すべきである。

 これを本件についてみると、A巡査の前記行為は、呼気検査に応じるよう被告人
を説得するために行われたものであり、その程度もさほど強いものではないという
のであるから、これをもつて性質上当然に逮捕その他の強制手段にあたるものと判
断することはできない。また、右の行為は、酒酔い運転の罪の疑いが濃厚な被告人
をその同意を得て警察署に任意同行して、被告人の父を呼び呼気検査に応じるよう
説得をつづけるうちに、被告人の母が警察署に来ればこれに応じる旨を述べたので
その連絡を被告人の父に依頼して母の来署を待つていたところ、被告人が急に退室
しようとしたため、さらに説得のためにとられた抑制の措置であつて、その程度も
さほど強いものではないというのであるから、これをもつて捜査活動として許容さ
れる範囲を超えた不相当な行為ということはできず、公務の適法性を否定すること
ができない。したがつて、原判決が、右の行為を含めてA巡査の公務の適法性を肯
定し、被告人につき公務執行妨害罪の成立を認めたのは、正当というべきである。
 よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、
主文のとおり決定する。
  昭和五一年三月一六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    天   野   武   一
            裁判官    坂   本   吉   勝
            裁判官    江 里 口   清   雄
            裁判官    高   辻   正   己
            裁判官    服   部   高   顯

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憲法96条改正「絶対ダメだよ。邪道。憲法の何たるかをまるで分かっちゃいない」小林節慶応大教授

2013-04-10 17:45:45 | シチズンシップ教育
 憲法96条改正を唱える政治家は、憲法のなんたるかをご理解していないと思います。

 以下、改憲派といわれる慶応大小林節教授も、96条改正に異論を唱えられていらっしゃいます。


*****毎日新聞(2013/04/09)*****
http://mainichi.jp/feature/news/20130409dde012010003000c.html

特集ワイド:憲法96条改正に異論あり 9条を変えるための前段、改憲派からも「正道じゃない」

毎日新聞 2013年04月09日 東京夕刊


 もしかしたら憲法9条改正よりも、こちらの方が「国家の大転換」ではないのか。憲法改正のルールを定めた96条の改正問題。改憲派が目の敵にし、安倍晋三首相が実現に意欲を燃やすが、どこかうさんくささが漂う。実は「改憲派」の大物からも異論が出ているのだ。【吉井理記】

 「憲法議論は低調だ。なぜなら結局、(改憲発議に要する)国会議員数が3分の2だから。2分の1ならすぐに国民投票に直面する。そこで初めて、憲法問題を議論する状況をつくり出すことができるのではないか」。先月11日の衆院予算委員会。民主党の議員から改憲への考えをただされた安倍首相は96条を改正するメリットをそう強調し、改正への意欲をにじませた。

 96条は改憲に(1)衆参両院のそれぞれ3分の2以上の議員の賛成で国会が改正を発議し、国民に提案する(2)国民投票で過半数が賛成する−−の2段階が必要と規定している。(2)の手続きを定めた国民投票法は第1次安倍内閣の07年に成立、10年に施行された。

 焦点は(1)だ。安倍首相は「3分の2以上」から「過半数」への緩和を目指す。今年に入り民主党、日本維新の会、みんなの党の有志が96条改正に向けた超党派の勉強会を発足させた。既に改憲派は衆院で圧倒的多数を占めており、今夏の参院選で定数242の3分の2、162議席以上になれば条件は整う。昨年8〜9月の毎日新聞の世論調査では96条改正賛成は51%、反対は43%だった。

    ■

 「絶対ダメだよ。邪道。憲法の何たるかをまるで分かっちゃいない」

 安倍首相らの動きを一刀両断にするのは憲法学が専門の慶応大教授、小林節さん(64)だ。護憲派ではない。今も昔も改憲派。戦争放棄と戦力不保持を定めた9条は「空想的だ」と切り捨て、自衛戦争や軍隊の存在を認めるべきだと訴える。改憲派の理論的支柱として古くから自民党の勉強会の指南役を務め、テレビの討論番組でも保守派の論客として紹介されている。その人がなぜ?

 「権力者も人間、神様じゃない。堕落し、時のムードに乗っかって勝手なことをやり始める恐れは常にある。その歯止めになるのが憲法。つまり国民が権力者を縛るための道具なんだよ。それが立憲主義、近代国家の原則。だからこそモノの弾みのような多数決で変えられないよう、96条であえてがっちり固めているんだ。それなのに……」。静かな大学研究室で、小林さんの頭から今にも湯気が噴き出る音が聞こえそうだ。
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国際私法とは。国際的な視点から国境を超える視点も併せ持つ時代にとても重要。

2013-04-10 15:37:22 | シチズンシップ教育
 国際私法が登場する場面、それは渉外的法律関係がある場面です。

 例えば、事案1:日本人と韓国人夫婦が離婚する場合。

 離婚に際し、日本の民法を適用するか、韓国の民法を適用するか(準拠法の選定)。

 その判断の道筋が国際民事手続きであり、国際私法の規律するところです。

 この場合、

 例えば、

 0)事案1は、離婚する夫婦の一方の国籍が韓国であり、渉外事件である。(形式的に判断)

 1)日本に裁判管轄権(裁判をすることができるか、裁判をすべきか)があるかどうかを判定⇒国際裁判管轄権

 2)あると判定されると、その法廷地の(この場合日本の)国内法である「国際私法」を適用して、準拠法を選択

 3)選択された準拠法を日本で適用することが日本の公序良俗に反しないかなど判断して、その準拠法を適用するべき法として指定する。

 という流れになります。(選択して指定する=略して、「選定」)


********************************



0.国際私法学の体系

広義の国際私法⇒国際裁判所管轄、準拠法、外国判決の承認・執行など

狭義の国際私法⇒準拠法(の選定)




1.国際民事手続きの流れ
1)流れ

 国際私法が当事者による任意の処理を許すものではないから、渉外的法律関係にかかる事案は、常に国際私法的処理を必要とする。

 裁判所は、

 まず、国際裁判管轄権を有する旨の判断を示すと、

 つぎに、必ず法廷地(日本)の国際私法を適用して、

 準拠法を選定(選択して指定)することととなる。

*準拠法:ある法律関係に適用され得る法のうちで国際私法にしたがって選定された結果としてその法律関係を規律する法。準拠法は、実質法(具体的に権利義務関係を規律する法)である。


2)渉外的法律関係

 法定地からみて、法律関係を構成する要素に外国的要素を含む法律関係。

*法廷地:観念的に常に想定される地であって、現実に裁判を行われる地に限らず、具体的事案を処理する地。


3)事案における渉外性の判定

 事案における渉外性の判断のために、外国的(渉外的)要素にかかる事実は、理論的に国際私法の規定の適用についての前提となる。

 原則:渉外的要素にかかる事実は、裁判所による職権調査事項に属し、職権探知主義に服する。

 例外:しかしながら、渉外性の判断のための要素それ自体の有する性質に応じて、その資料の証拠法における取り扱いを決定するのが妥当であろう。


4)実際の渉外性の判定の仕方

形式的に判定する⇒渉外的法律関係とは、原則として、法律関係の発生の当時において法律関係を構成する要素の少なくとも1つであって、当事者の国籍・常居所、目的地の所在地、事故発生地など国際私法において連結点(連結素)となりうる要素に外国的要素を含む法律関係を見出す考え方。



2.国際民事事件に対する国際私法的処理

 国際私法を広義に解すると、3つの問題


1)国際裁判管轄権の有無の判断の問題

2)準拠法の選定の問題

3)外国裁判所の判決の承認および執行の問題
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ひとは自分の言ったことにのみ縛られ、例え錯誤で言っことさえ縛られないほどに自由。

2013-04-10 09:46:31 | 民法総則

 自分が好きな条文。
 「好きな」であって、その条文の社会に与える意義や重要性で判断しているわけではないので、ご了承ください。

 憲法では、23条。
 憲法第二十三条  学問の自由は、これを保障する。


 では、民法はの好きな条文を全条文1044条の中から一つ選ぶとすれば。
 法律学を法科大学院で1年間学んだ現段階で、今思う最も好きな民法の条文は、95条。

****民法****
(錯誤)
第九十五条  意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
**********

1、この条文は、「意思あるところに義務も生じる。意思ないところに義務は生じない。」を具現化したものと私は、思っています。

 すなわち、「自由」を規定したものであると思っています。

 他人からああしろ、こうしろと言われても、そのことでなんら義務は生じない。
 自分が縛られるのは、自分が言ったことのみ。
 自分が言ったことが、錯誤で誤っていたら、そのことにも縛られない。
 真に自分が言ったことにのみ縛られる。

 昔は、他人の意思に縛られた時代があったのでしょう。
 自分が言っていないにもかかわらず、支配者の意思が示されたそのことが、自分の義務になっていた、その反省から、勝ち取った条文ではないかと推察します。

 
2、実際のところ、1で記載したような広い解釈が95条ではなされていません。制約がかけられた条文解釈がなされています。
 1で記載の精神だけは、それでもなお生きていると信じて、好きな条文としています。

 日本の民法学における民法95条「錯誤」の議論では、現状で制約がかけられた95条の解釈に至る過程は、以下のように説明されていると、私は理解しています。



1)フランス革命を受けてフランス民法典(ナポレオン法典)ができ、そこでは、「意思のあるところに義務が生じる。意思のない錯誤は無効とする」規定であった。
 日本は、そのフランス民法典を参考に、当初、ボワソナードを中心に条文をつくろうとしていた。

2)しかし、それでは、あまりにも取引の安全が害されるため、制約をかける必要があった。
 そこで、ドイツ民法を取り入れた。

 すなわち、
 ⇒民法制定当初の立法者の考えでは、95条は「表示上の錯誤」と「表示上の意味の錯誤」のみ適用される。「動機に錯誤」がある場合は該当せず、意思表示は無効とならない(動機の錯誤排除論)。
  「表示上の錯誤」例えば、1000円で買うつもりが、口がすべって1000万円で買うと言ってしまった。
  「表示上の意味の錯誤」例えば、1円=1ドルとレートを勘違いしていて、1000ドル表示の品物を、1000円で買えると思って、この品物を1000ドルで買うと言ってしまった。


   
1)2)記載の根拠として、日本の民法制定の歴史
『民法総論』四宮和夫・能美善久著





3) それでは、あまりにも錯誤が適用できる場面が限られることとなった。
  よって、特定の場面では、動機の錯誤を認める理論が、判例理論として構成されるに至った。

 すなわち、
 ⇒「動機の錯誤」があったとしても、それが表示されていれば、民法95条の適用または類推適用の対象となりうる。(二元説、裁判所)

  学説では、「思い違いの対象が重要なものであること」+「相手方が表示者が思い違いをしていることを知りまたは知りうべき状況にあったこと(予見可能性)」の場合に適用するという考え方もある。(一元説、船橋ら)


4)来るべき民法債権法改正議論では、錯誤無効ではなく、錯誤も「取り消しうるべき意思表示」とする考え方が出されている。

 個人的には、フランス革命以来の歴史的過程で「意思表示」が大切なもの考えられてきたことを尊重し、錯誤は、やっぱり「無効」であってほしいと思います

****法務省ホームページより*****

http://www.moj.go.jp/content/000108853.pdf

2 錯誤(民法第95条関係)
民法第95条の規律を次のように改めるものとする。

(1) 意思表示に錯誤があった場合において,表意者がその真意と異なることを
知っていたとすれば表意者はその意思表示をせず,かつ,通常人であっても
その意思表示をしなかったであろうと認められるときは,表意者は,その意
思表示を取り消すことができるものとする。

(2) 目的物の性質,状態その他の意思表示の前提となる事項に錯誤があり,か
つ,次のいずれかに該当する場合において,当該錯誤がなければ表意者はそ
の意思表示をせず,かつ,通常人であってもその意思表示をしなかったであ
ろうと認められるときは,表意者は,その意思表示を取り消すことができる
もの
とする。
ア 意思表示の前提となる当該事項に関する表意者の認識が法律行為の内容
になっているとき。
イ 表意者の錯誤が,相手方が事実と異なることを表示したために生じたも
のであるとき。

(3) 上記(1)又は(2)の意思表示をしたことについて表意者に重大な過失があっ
た場合には,次のいずれかに該当するときを除き,上記(1)又は(2)による意
思表示の取消しをすることができないものとする。
ア 相手方が,表意者が上記(1)又は(2)の意思表示をしたことを知り,又は
知らなかったことについて重大な過失があるとき。
イ 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

(4) 上記(1)又は(2)による意思表示の取消しは,善意でかつ過失がない第三者
に対抗することができないものとする。

(注) 上記(2)イ(不実表示)については,規定を設けないという考え方がある。
*****************************



 


 

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労働法:就業規則を理解することの大切さ ぜひ、ご自身の就業規則のご確認を!

2013-04-09 05:46:20 | シチズンシップ教育

 働く人全員にとって、最も大事なことの一つは、就業規則に関する理解だと思います。

 労働法で就業規則について学び、その重要性について、目からうろこが落ちる思いをしました。

 大切なものですから、皆さん、ぜひとも、ご自身の就業規則をご確認ください。



 以下、就業規則について、労働法の講義を参考に書きます。


就業規則 菅野 126 頁~、下井 81 頁~

(1)意義
多数の労働者が協働する事業においては、労働条件を公平・統一的に設定し、かつ職場規律を規則として設定することが、効率的な事業経営のために必要となる。事業経営の必要上、職場規律や労働条件に関する規則類を制定したものが「就業規則」

(2)労働基準法上の規制等


*****労働基準法 関連する9章89条~93条及び106条 全文 抜粋*****
第九章 就業規則

(作成及び届出の義務)
第八十九条  常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
三の二  退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
(作成の手続)
第九十条  使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
○2  使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
(制裁規定の制限)
第九十一条  就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
(法令及び労働協約との関係)
第九十二条  就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。
○2  行政官庁は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる。
(労働契約との関係)
第九十三条  労働契約と就業規則との関係については、労働契約法 (平成十九年法律第百二十八号)第十二条 の定めるところによる。


(法令等の周知義務)
第百六条  使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第十八条第二項、第二十四条第一項ただし書、第三十二条の二第一項、第三十二条の三、第三十二条の四第一項、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条第一項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、第三十八条の三第一項並びに第三十九条第四項、第六項及び第七項ただし書に規定する協定並びに第三十八条の四第一項及び第五項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。
○2  使用者は、この法律及びこの法律に基いて発する命令のうち、寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によつて、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなければならない。



(3)就業規則の効力   菅野 134 頁
ア 労働基準法  92 条
 法令・労働協約の優越性

****労働基準法92条*****

(法令及び労働協約との関係)
第九十二条  就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。
○2  行政官庁は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる。
****************


イ 労働基準法  93 条
 最低基準効→労働契約法12条へ

****労働基準法93条*****
 (労働契約との関係)
第九十三条  労働契約と就業規則との関係については、労働契約法 (平成十九年法律第百二十八号)第十二条 の定めるところによる。
****************


****労働契約法 12条*****
(就業規則違反の労働契約)
第十二条  就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。
*****************

⇒個別の同意(労働契約)は無効であり、従来からの就業規則の定めによることが定められています。


ウ 労働契約法 7条

****労働契約法 7条*****
第七条  労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
****************

1労働契約規律効

就業規則が合理的な労働条件を定めるものである限り、労働条件はその就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、法規範性が認められてきたが(判例法理:秋北バス事件最大判43.12.25)、この判例法理の内容を、「事実たる慣習」といった媒介法理を用いずして立法化したもの。


2要件
・就業規則を周知させていたこと
⇒実質的にみて、事業場の労働者集団に対して当該就業規則の内容を知りうる状態においていたことであって、労働者が実際に知っていたかどうかは問わない。

・合理的な労働条件を定めていること
⇒就業規則が定める労働条件それ自体の合理性。




エ 就業規則の変更における労働契約規律効(労働契約法 8条 9 条、10 条)

*****労働契約法 9条 10条*****
(労働契約の内容の変更)
第八条  労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。


(就業規則による労働契約の内容の変更)
第九条  使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない
第十条  使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度労働条件の変更の必要性変更後の就業規則の内容の相当性労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
********************

1合意による変更の原則

 労働契約法8条⇒合意による労働契約の変更ができる。

 労働契約法9条⇒原則:労働契約の変更については、合意による

2合理的変更

 労働契約法10条⇒合意による労働契約の変更の原則の例外:合意によらなくても就業規則の変更が合理的なものである限り、就業規則の適用がある。


3合理性の判断要素

 労働契約法10条

 1)労働者の受ける不利益の程度(第四銀行事件:ア就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度)

 2)労働条件の変更の必要性(第四銀行事件:イ使用者側の変更の必要性の内容・程度)

 3)変更後の就業規則の内容の相当性(第四銀行事件:ウ変更後の就業規則の内容自体の相当性、エ代償措置、その他関連する労働条件の改善状況)

 4)労働組合等との交渉の状況(第四銀行事件:オ労働組合等との交渉の経緯、カ他の労働組合又は他の従業員の対応)

 5)その他の就業規則の変更に係る事情(第四銀行事件:キ同種事項に関する我が国社会における一般状況等)


『労働法』 菅野和夫著 144ページ



【判例】
秋北バス事件 最大判昭和 43.12.25 民集 22 巻 13 号 3459 頁 百選 21

大曲市農協事件 最3小判昭和63.2.16民集42巻2号60頁

第四銀行事件 最2小判平成9.2.28民集51巻2号705頁 百選23

みちのく銀行事件 最1小判平成12.9.7民集54巻7号2075頁 百選7版28

以上
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労働法:個別的労働契約における「労働者」と「使用者」

2013-04-09 05:23:49 | シチズンシップ教育

個別的労働契約における「労働者」と「使用者」 菅野 109 頁~、下井 15 頁

(1)「労働者」概念

⇒労働基準法9条

****労働基準法9条*****
(定義)
第九条  この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
****************

 2つの指標

1)使用される者⇒「使用従属関係」

2)賃金を支払われる者⇒「賃金」

  賃金とは⇒労働基準法11条

****労働基準法11条*****
第十一条  この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
*****************



【判例】
横浜南労基署長事件:最1小判平成 8.11.28 労判 714 号 14 頁、百選1
               ⇒「労働者の判断基準」の検討有り

藤沢労基署長事件:最 1 小判平成 19.6.28 労判 940 号 11 頁



(2)「使用者」概念 菅野 117 頁~
・使用者概念も労働者概念同様に多義的である。
・具体的検討(労契法上の使用者の問題)

 使用者とは⇒労働契約法2条2項

*****労働契約法2条*****
(定義)
第二条  この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。
2  この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。
*******************


ア 社外労働者と受入企業の関係

※黙示の労働契約の成否による処理

【裁判例】
サガテレビ事件:福岡高判昭 58.6、労判 410 号 29 頁 百選 2

イ 親子会社における関係

※法人格の否認法理による処理

以上

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著作権法を考える手順の1つ目、著作物とは?

2013-04-09 04:30:18 | シチズンシップ教育

 著作権法は、次の4つの手順にしたがって分析して行きます。
 条文も、その順で並んでいます。

1著作物であるかどうか?

2著作者は?

3権利内容は?

4救済はどうやって?


 まず、1著作物であるかどうかの検討について書きます。

 2条1項1号に規定されています。


***著作権法 2条抜粋****
(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一  著作物 思想又は感情創作的表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
****************

 著作権法で保護される著作物であるための4つの要件が記載されています。


 <4つの要件>
1思想又は感情性、2表現性、3創作性、4文芸、学術、美術又は音楽の範囲



『知的財産紛争処理手続きの概要と検討課題』 小林幸夫著


 それぞれを見て行きます。

1思想又は感情性:対象物に著作者の「思想又は感情」が含まれている必要がある。

1)程度の高い低いは読み込まなくてよい。

2)否定される例

 ア自然物、コンピューター自動生成物
  人間の主体的な創作活動の成果といえない場合

 イ事実 株価等のデータ、自然科学上の事実、歴史上の事実
  人間の思想、感情といった主観的要素を含まない客観的な存在として社会的に取り扱われるため。

  事実を素材として扱ったものでも、事実の表現過程に執筆者の創意工夫が凝られたものは著作物である。

 ウ書式 船荷証券、契約書面などの書式
  作成者の個人の思想、感情を表現したものとはいえない

3)著作権法10条2項で念のための規定を置いています。

*****著作権法10条2項のみ抜粋******
2  事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。
************************


2表現性:著作者の思想、感情が、外部から認識可能なように表現されなければならない。

1)外部的な認識可能性
  著作者の思想、感情が外部に認識可能な形で表現されていることが必要。

  「物への固定」は不要。
  例えば、その場限りで行われる即興漫才や即興演奏のようなものも、創作性があれば著作物として保護される。

2)思想、感情を個別具体的に表現したものであること
  著作者が自らの思想、感情を混入して個別具体的に表現したものをいい、そのような表現を生み出すもととなった思想、感情それ自体は著作物として保護されない。
 ⇒「表現・アイデア二分論」
   例えば、プログラムの著作物を作成するために用いられる言語、規約、解法にはプログラムの著作物の保護が及ばないとされるが、言語、規約、解法がプログラムを表現するもととなる「アイデア」に過ぎないため、それ自体は著物として保護されない。
   このことは、10条3項で改めて規定を置いて明らかにしています。

****著作権法10条3項のみ抜粋*****
    3  第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
一  プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。
二  規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。
三  解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。
**********************

3創作性:創作的に表現されたものであること

1) 例えば、児童の作文やお絵描き、日記や書簡のように、目新しさもなく、また独創性に乏しいものでも著作物として保護される。

 cf.特許法では、 新規性・進歩性のような高度なレベルを要求
  特許法2条1項
****特許法 2条の一部*****
(定義)
第二条  この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
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2)創作性が否定される例

 ア既存の著作物の模倣

  既存の著作物をそのまま忠実に模倣した場合、その模倣物には模倣者の独自の創作性が表現されていないから、当該模倣物は既存の単なる複製物であって、模倣者の著作物としては保護されない。

  もっとも、既存の著作物を模倣する場合でも、元の著作物を忠実に再現するのではなく、模倣者自身の独自の創作的表現を付加したものは、模倣者の著作物として保護を受けることができる。

 イ不可避的表現・ごくありふれた表現(merger理論)
 
  誰がやってもほほ同じような表現になるであろうという場合には、その表現に著作者の個性が表れていないとして創作性が否定される。


 
4文芸、学術、美術又は音楽の範囲:表現が文化的所産であること


 以上、4つの要件にあてはまるかどうかで、著作物かどうかを判断します。


5なお、著作権法10条1項に著作物の例示が書かれています。

 おせっかいな条文であって、無視してもよいと思います。
 この例示に書かれているから、即、著作物とは、決して思わないで下さい。
 前述の1~4を検討し、著作物かどうかを判断して下さい。

*****著作権法10条1項のみ抜粋*****
(著作物の例示)
第十条  この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一  小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二  音楽の著作物
三  舞踊又は無言劇の著作物
四  絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五  建築の著作物
六  地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七  映画の著作物
八  写真の著作物
九  プログラムの著作物
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コメント (1)
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