憲法10条で、日本国民の要件は定められていました。
外国人の人権は、どう考えれば良いのか。
考え方を整理しておきます。
芦部『憲法』 「第五章 基本的人権の原理 四 人権の享有主体」に関連しています。
(かつてブログ記載 http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/c6c8ab026320954741ae74e86071f473 )
****人権の享有主体 3 外国人*********
Q君
外国人は、どのように定義されますか?
A先生
以下に大別されます。
1)一般外国人~短期滞在者など(観光その他で日本に在住している。27種のビザあり)
難民と永住者を除く外国人のことである。
2)難民~難民条約1条の定義に当てはまる人
3)永住者(永住外国人)~一般永住者と特別永住者
特別永住者とは、在日外国人の方の中でも、終戦前から日本に居住している朝鮮半島、台湾出身の方でサンフランシスコ平和条約(1952年)の発効によって日本国籍を失った後も引き続き日本に在留している外国人の方とその子孫の方々のことをいう。特別永住者は、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」ではなく「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(入管特例法)」によって定義されている。
4)不法滞在者(パスポートなしで入国またはビザ切れで滞在している者)ももちろん外国人のカテゴリーの一つである。
Q君
憲法では、外国人には人権の保障は、どのように規定されていますか?
A先生
外国人の人権も保障されると肯定説が通説です。
否定説は、「第3章 国民の権利及び義務」という文言にこだわってなされます。
Q君
外国人の人権が保障されるその根拠は何ですか?
A先生
以下の根拠が考えられます。
1)人権の普遍性・前国家性・前憲法性からは、人である以上外国人にも当然認められることになる。
2)人権の国際化(人権思想の進展にともない、人権を国内法的に保障するだけではなく、国際法的にも保障しようという傾向が強まっていること)。
3)憲法98条が謳う国際主義。
第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
○2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
Q君
すべての人権が保障されるのですか。
A先生
そうではありません。保障されない人権もあります。
Q君
ある人権が外国人に保障されるかどうかを決定する基準は何ですか。
A先生
文言説、性質説があって、基準が決定されます。
文言説は、憲法の記載で、「何人」と規定されているときは、外国人にも保障され、「国民」と規定されているときは、国民のみに保障されるとします。
性質説(通説・判例)は、権利の性質にしたがって、外国人に保障されるかどうかが決定されるとします。
判例もマクリーン事件(�-1-2)で「憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である。」と判示しています。
Q君
文言説の問題点は、なにですか。
A先生
22条2項の国籍離脱の自由について、「何人」もとしている点の説明が困難になります。
外国人が日本国憲法の下で、日本国政府や裁判所に対して、国籍離脱の自由を主張する事は意味がありません。
23条のように、何人もとも、国民とも書いていない条文もあります。
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
○2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
第二十三条 学問の自由は、これを保障する。
Q君
国レベルの参政権は認められますか?
A先生
国民主権の原理から認められません。(通説・判例)
ヒッグス・アラン事件(判例集�-3-2)の「事実」における、主張�及び�に注目してください。
�国民は、国籍保持者だけではなく、社会の構成員として日本の政治社会における政治決定に従わざるを得ないものを指す。
�原告は永住許可を得ている者であり、納税義務も負担している以上、帰化している者と同様に扱わないのは差別である。
Q君
納税義務の負担は、外国人の人権を保障することの根拠となりうりますか。
A先生
なりうると考え方と、なりえないという考え方ができます。
なりうる(積極説)。近代憲法は、イギリスのマグナカルタからアメリカの独立宣言においても、「納税者」の権利の政治的権利を確保するという意味があったことから、ここの沿革を重視すると、外国人であって、かつ日本に生活の根拠を置いている以上は、納税義務を果たしていることは、外国人に人権(参政権)を保障することの根拠となりうる。
なりえない(消極説)。税金は、ある社会に生活していることで発生するコストに対して、応分の負担を支払うものであり、そのことが参政権を保障することの理由にはならない。さらに、納税負担を根拠とすると、生活保護を受けている者や貧困のために納税負担にたえられない者の参政権を否定することになり、これは、戦前の制限選挙と同じ根拠づけになってしまう。
Q君
では、地方レベルの参政権は認められますか?
判例は、外国人に対する地方レベルの参政権の付与について、どう判断しているのですか?
A先生
以下の論理に立っています。
1)15条1項は外国人に適用されない。
2)93条2項の「住民」は日本国民である。
3)外国人に対する地方レベルの参政権付与は憲法上禁止されていない。
(付与しなくても違憲ではないし、付与しなければならないものでもない)
もっぱら立法政策の問題である。
その理由は、次の通りです。
「住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」
Q君
判例上、外国人が就任できない公務は存在するのですか。存在するとすればその理由は何ですか?
A先生
地方公務員のうち,住民の権利義務を直接形成し,その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とする者である、「公権力行使等地方公務員」は、外国人が就任できない。と判例ではされています。(外国人管理職選考受験拒否事件上告審判決 判例集�-3-4)
その理由
1)公権力行使等地方公務員の職務の遂行は,住民の生活に直接間接に重大なかかわりを有するものであることから、国民主権の原理に基づき,国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものである(憲法1条,15条1項参照)。
2)このことから、原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきである。
3)また、我が国以外の国家に帰属し,その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは,本来我が国の法体系の想定するところではないものというべきである。
Q君
この判決の論理の問題点は何ですか?
A先生
公権力行使等公務員の範囲が無限定であることです。
外国人に能力の発揮の場を与え、幸福追求の可能性を保障するためには、公権力行使の等公務員の範囲を狭くすべきであり、実際、判例の言うところの「統治のあり方」に影響を与える業務は、警察・検察・国税・入管等の権力業務に限られるのではないかと考えられます。
Q君
外国人は生活保護を受けられますか?
A先生
実務上は、生活保護の認定をしています。
適法に日本に滞在し、活動に制限を受けない永住、定住等の在留資格を有する外国人については、国際道義上、人道上の観点から、予算措置として、生活保護法を準用しています。
すなわち、
1)出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)の在留資格を有する者(永住者、定住者、永住者の配偶者等、日本人の配偶者等)
2)日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の特別永住者(在日韓国人、在日朝鮮人、在日台湾人)
3)入管法上の認定難民
が生活保護法の準用の対象となります。
したがって、これら以外の者は対象とならない。
不法滞在者は生活保護の対象となりません。これは、ある種のジレンマであります。
Q君
外国人に入国の自由は認められない理由は何ですか。
A先生
国家が国際法上、自己の安全と福祉に危害を及ぼす恐れのある外国人の入国を拒否するのは、当該国家の主権に属し、自由に裁量することができるとされています。(国際協調主義・普遍性の例外。)
Q君
不法入国者には、日本人と同じ刑事手続が保障されないか。
A先生
保障されます。
Q君
外国人に在留の権利を認めていますか。
A先生
入国の自由がない以上、在留の権利も認められないとされています。(判例)
Q君
外国人の出国の自由を認めていますか?
A先生
認めています。(判例)
Q君
外国人の政治活動の自由は大きな制限を受けるとしているが、その根拠は何ですか?
A先生
外国人の表現の自由は原則として保障されています。
ただし、国政レベルの参政権が否定されているので、日本国民よりも大きな制約を受けるとされています。
大きな制約としては日本の政治に直接介入する政治結社の組織、政府打倒運動は禁止されます。
また、マクリーン事件判決は、ある種の政治活動が、在留資格更新のための消極的要因となることを認めています。
上記には、以下の反論がなされるところです。
反論
1)表現の自由の自己統治・思想の自由市場という側面からすると、政府転覆等の反政府活動以外は、外国人に自由な言論を許し、言論を活発にして、真理に到達するための道を確保すべきではないか。
2)実際に、外国人しかできない批判もあるはずであり、デモクラシーの運営にとって、マイナスになる。
3)この論理からすると、地方レベルの参政権は否定されていないのであるから、地方レベルの批判はできることになるが、地方レベルの政治批判と国レベルの政治批判の境界があいまいなものもある。
4)以上のとおり、マクリーン判決は、表現活動を萎縮させ、政治活動が実質的に全面否認になる可能性を秘めている。
Q君
マクリーン事件(判例集�-1-2)を読んで、要旨を三点にまとめるとすると。
A先生
1)外国人には、入国の自由もない以上、在留する権利もない。
2)法務大臣の在留許可の更新は、自由裁量行為であり、その判断が事実の基礎を欠くか、事実の評価がまったく合理性を欠く場合以外は、違法とはならない。
3)外国人にも権利の性質上許される限り、人権が保障され、表現の自由も政治的意思決定に影響を与えるもの以外は認められるが、当該表現活動が合憲・合法のものであっても、当不当の面から、法務大臣は、それを理由として在留許可を与えないことができる。
判決は、「消極的な事情としてしんしゃくされないことまでの保障が与えられているものと解することはできない」としています。
以上
******小坂メモ****
積み残し課題
○18テキストP97L1~2「在留期間の更新を入国の場合とほぼ同視し、広い裁量権を認めている点に問題がある」とはどういう意味か。☆
P94~95にあるように、正規の手続で入国した外国人には、在留資格をみだりに奪われないことを保障されていることから、入国の自由のように、広い裁量にすることは不当(場合によっては違法)である、ということ。
○19テキストP97L2~3「法人の政治的行為の自由と比べ権衡を失する」とはどう意味か。☆
八幡製鉄事件では、大企業の政治献金が容易に是認されているが、社会への影響力という点では、大企業の方が極めて大きいという意味。ただし、私見では、影響力の大きい外国人もいることから、この点は、もう少し議論が必要ではないかと思われる。
8月10日は、10条の解説をします。
10条から、第三章の人権規定「国民の権利及び義務」に入ります。
日本国憲法の解説に合わせ、自民党の改憲草案の問題点も見ています。
いろいろな人権が、自民党改憲案により、侵害されているため、注意が必要な章です。
おかしな9条以上に、おかしな条文が続いているため、この第三章も、大いに議論すべきです。
10条は、幸いにして同じ内容です。
文章の品格として、自民党案が劣っているぐらいです。
*************************
〇日本国憲法
第三章 国民の権利及び義務
第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
〇自民党改憲案
第三章 国民の権利及び義務
(日本国民)
第十条 日本国民の要件は、法律で定める。
************************
「日本国民たる要件」とは、日本国民の構成員たる資格(日本国籍)を有する要件を意味します。
日本国籍の取得と喪失に関する事項は、法律で定めることを規定しています。
その法律は、「国籍法」です。
最後に全文を掲載します。
「国籍法」の2条1号、3条1項はそれぞれ問題がありましたが、両者改正(2条1号:昭和59年改正、3条1項:平成20年改正)されました。
なお、間違ってはならないのは、日本国民にだけ、日本国憲法の人権を保障するのではなく、「権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ」(マクリーン事件)とされています。
判例で「権利の性質上」外国人に及ばないとされた権利:
○入国の自由、在留権(最大判昭和53・10・4マクリーン事件)
○再入国の自由(最一小判H4・11・16森川キャサリーン事件)
○国会議員の選挙権(最二小判H5・2・26ヒッグス・アラン事件)
○地方議会議員の選挙権(最三小判H7・2・28)
○公権力行使等地方公務員(管理職)への就任権(最大判H17・1・26)
など
*****国籍法 全文*****
国籍法
昭和二十五年五月四日 法律第百四十七号
施行 昭和二十五年七月一日
改正 昭和二十七年七月三十一日 法律第二百六十八号
昭和五十九年五月二十五日 法律第四十五号
平成五年十一月十二日 法律第八十九号
平成十六年十二月一日 法律第百四十七号
平成二十年十二月十二日 法律第八十八号
(この法律の目的)
第一条 日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる。
(出生による国籍の取得)
第二条 子は、次の場合には、日本国民とする。
一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
二 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を
有しないとき。
(認知された子の国籍の取得)
第三条 父又は母が認知した子で二十歳未満のもの(日本国民であつた者を除
く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であつた場合において、
その父又は母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であつ
たときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。
2 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。
(帰化)
第四条 日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によつて、日
本の国籍を取得することができる。
2 帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない。
第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可す
ることができない。
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
二 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
三 素行が善良であること。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生
計を営むことができること。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政
府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若
しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したこ
とがないこと。
2 法務大臣は、外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができな
い場合において、日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると
認めるときは、その者が前項第五号に掲げる条件を備えないときでも、帰化
を許可することができる。
第六条 次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについ
ては、法務大臣は、その者が前条第一項第一号に掲げる条件を備えないとき
でも、帰化を許可することができる。
一 日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住
所又は居所を有するもの
二 日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、
又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの
三 引き続き十年以上日本に居所を有する者
第七条 日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所
を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その
者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも、帰化を許可
することができる。日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過
し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するものについても、同様とす
る。
第八条 次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第
五条第一項第一号、第二号及び第四号の条件を備えないときでも、帰化を許
可することができる。
一 日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの
二 日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時
本国法により未成年であつたもの
三 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除
く。)で日本に住所を有するもの
四 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き
続き三年以上日本に住所を有するもの
第九条 日本に特別の功労のある外国人については、法務大臣は、第五条第一
項の規定にかかわらず、国会の承認を得て、その帰化を許可することができ
る。
第十条 法務大臣は、帰化を許可したときは、官報にその旨を告示しなければ
ならない。
2 帰化は、前項の告示の日から効力を生ずる。
(国籍の喪失)
第十一条 日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日
本の国籍を失う。
2 外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選
択したときは、日本の国籍を失う。
第十二条 出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたもの
は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより日本
の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本
の国籍を失う。
第十三条 外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、
日本の国籍を離脱することができる。
2 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を失う。
(国籍の選択)
第十四条 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有すること
となつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、そ
の時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国
籍を選択しなければならない。
2 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の
定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨
の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。
第十五条 法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第一項に定める期
限内に日本の国籍の選択をしないものに対して、書面により、国籍の選択を
すべきことを催告することができる。
2 前項に規定する催告は、これを受けるべき者の所在を知ることができない
ときその他書面によつてすることができないやむを得ない事情があるとき
は、催告すべき事項を官報に掲載してすることができる。この場合における
催告は、官報に掲載された日の翌日に到達したものとみなす。
3 前二項の規定による催告を受けた者は、催告を受けた日から一月以内に日
本の国籍の選択をしなければ、その期間が経過した時に日本の国籍を失う。
ただし、その者が天災その他その責めに帰することができない事由によつて
その期間内に日本の国籍の選択をすることができない場合において、その選
択をすることができるに至つた時から二週間以内にこれをしたときは、この
限りでない。
第十六条 選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければな
らない。
2 法務大臣は、選択の宣言をした日本国民で外国の国籍を失つていないもの
が自己の志望によりその外国の公務員の職(その国の国籍を有しない者であ
つても就任することができる職を除く。)に就任した場合において、その就
任が日本の国籍を選択した趣旨に著しく反すると認めるときは、その者に対
し日本の国籍の喪失の宣告をすることができる。
3 前項の宣告に係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければな
らない。
4 第二項の宣告は、官報に告示してしなければならない。
5 第二項の宣告を受けた者は、前項の告示の日に日本の国籍を失う。
(国籍の再取得)
第十七条 第十二条の規定により日本の国籍を失つた者で二十歳未満のもの
は、日本に住所を有するときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の
国籍を取得することができる。
2 第十五条第二項の規定による催告を受けて同条第三項の規定により日本の
国籍を失つた者は、第五条第一項第五号に掲げる条件を備えるときは、日本
の国籍を失つたことを知つた時から一年以内に法務大臣に届け出ることによ
つて、日本の国籍を取得することができる。ただし、天災その他その者の責
めに帰することができない事由によつてその期間内に届け出ることができな
いときは、その期間は、これをすることができるに至つた時から一月とする。
3 前二項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得す
る。
(法定代理人がする届出等)
第十八条 第三条第一項若しくは前条第一項の規定による国籍取得の届出、帰
化の許可の申請、選択の宣言又は国籍離脱の届出は、国籍の取得、選択又は
離脱をしようとする者が十五歳未満であるときは、法定代理人が代わつてす
る。
(省令への委任)
第十九条 この法律に定めるもののほか、国籍の取得及び離脱に関する手続そ
の他この法律の施行に関し必要な事項は、法務省令で定める。
(罰則)
第二十条 第三条第一項の規定による届出をする場合において、虚偽の届出を
した者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二条の例に従う。
8月10日(日)=中央区主催第26回東京湾大華火祭当日の午前中、中央区月島3丁目 こども元気クリニック03-5547-1191急病対応致します。
なお、当院は、特にお盆休み/夏休みなく、開院致しております。
①高熱の風邪、②お腹の風邪、③咳の風邪の3つのお風邪がそれぞれ、今、流行っています。
とはいえ、少し、落ち着いてきている感を受けはします。
体調崩されておられませんか?
おとなも、こどもの風邪をもらいます。
こどもから夏風邪がうつること、多々、あります。
そのような場合、お子さんとご一緒に、親御さんも診察いたしますので、お気軽にお声掛けください。
なおったお子さんには、日曜日に、登園許可証も記載します。
月曜日朝一番から登園できますように、ご利用ください。
合わせて、平日なかなか時間が作れない場合でも、休日も、予防接種も実施いたしますので、ご利用ください。
小学生の皆さんには、接種漏れの予防接種がないか、再確認ください。日本脳炎、二種混合、おたふく、水ぼうそう、B型肝炎など。
夏の旅行の持参薬についても、ご相談下さい。
台風の影響が懸念されますが、東京湾大華火祭では、本部テントで、医療班出動致します。自分にとっては、開院以来、毎年恒例の行事になっています。
毎年、アルコールが影響しての患者さんが多く来られます。飲み過ぎには、どうかご注意ください。
子ども、高齢者にとっては、暑い中、知らぬ間に熱中症になります。水分補給をこまめにお願いします。
こども元気クリニック・病児保育室
中央区月島3-30-3
電話 03-5547-1191
小坂和輝
8月9日は、9条。(その前提に、憲法前文も必要なので、ブログhttp://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/971da48ecc09ee6fb477d8c30d41a436で記載をしました。)
まずは、日本国憲法9条を、憲法学的に解釈します。
****日本国憲法 9条*****
第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
*****************
日本国憲法9条の通説的な解釈は、
1条において
「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」する戦争の放棄の動機の下に、
「国際紛争を解決する手段として」、すなわち、国家の政策の手段として
1、国権の発動たる戦争
2、武力による威嚇
3、武力の行使
この3つを放棄する。
ここで、侵略戦争は放棄することをまず掲げています。
自衛戦争は、1条では放棄されていません。
2条において
「前項の目的を達成するため」、すなわち、戦争を放棄するに至った動機である 「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」する目的のため、
「陸海空軍その他の戦力」の一切の戦力の保持を禁止、交戦権も否認します。
このことより、自衛戦争も行うことは禁止されることになります。
日本国は、平和主義を国の基本理念に掲げ、侵略戦争も自衛戦争も、一切の戦争を放棄しています。
ただし、「自衛権」は独立国家であれば当然有する権利であり、「個別的自衛権」として厳格な自衛権の発動要件のもとに認められています。
「集団的自衛権」は、他国に対する武力攻撃を、自国の実体的権利が侵されなくても、平和と安全に関する一般的利益に基づいて援助するために防衛行動をとる権利であり、日本国憲法の下では認められません。日米安保上条約の定める相互防衛の体制も、日本の個別的自衛権の範囲内のものとされています。
<自衛権を発動するための3要件>
1、防衛行動以外に手段がなく、そのような防衛行動をとることがやむをえないという必要性の要件
2、外国から加えられた侵害が急迫不正であるという違法性の要件
3、自衛権の発動としてとられた措置が加えられた侵害を排除するのに必要な限度のもので、つり合いがとれていなければならないという均衡性の要件
「日本国憲法でも、このような自衛権まで放棄したわけではない。しかし、自衛権が認められているとしても、それにともなう自衛のための防衛力・自衛力の保持が認められるかどうかは、…重大な争いのあるところである。」(『憲法 第5版』岩波書店 芦部信喜 60ページ)
そこで、政府は、自衛権を行使するための実力を保持することは憲法上許されるとしています。
「自衛のための必要最小限度の実力」(=「他国に侵略的な脅威を与えるような攻撃的武器は保持できない」)は、憲法で保持することを禁じられる「戦力」にあたらないと政府は説明をしています。
自衛力・自衛権の限界については、学説上も、裁判所でも争われているところです。
〇自衛力の限界は具体的にはどこにあるか
〇自衛権がどこまで及ぶか
〇自衛隊の海外出動
⇒「自衛隊の海外出動が合憲か否かは、武力行使の有無と深くかかわるが、それは自衛隊の憲法適合性という本質的な問題を措(お)いて論じることはできないであろう。いかに国際貢献という目的であっても、憲法9条の改正なくして、現状のまま自衛隊が部隊として(とくにPKFに)参加する出動を認めることは、法的にはきわめて難しい。」(『憲法 第5版』岩波書店 芦部信喜 65ページ)
戦争を放棄する私たちの国は、自衛権の行使は、厳格な要件のもと許されています。
このことを原点に、国際協調主義のもと、世界への人的、物的な支援等による「人間の安全保障」を積極的に生み出していくことこそが、今の日本には大切であると考えます。
以下は、頭が痛くなる自民党改憲案です。
自民党案の9条、皆さんご存知の通り大問題。
自民党案は、時代に逆行した、「国防軍」を創設します。
ついでに、第2章「戦争の放棄」だった章の題名を、こっそりと、「安全保障」という題名に置き換えています。自民党にとって、「戦争の放棄」はどうも都合が悪いようです。
9条において、おわかりにように自民党は、日本を戦争をする国にしたいと言っています。
もし、第二章を、「安全保障」というなら、国防軍をもつことだけが、安全保障であるわけではなのであるから、そのほかの安全保障に役立つ規定も盛り込むべきでしょう。
それができないのであれば、「安全保障」のような聞こえのよさそうな章の題名をつけて、国民を欺くのではなく、真正面から、「第二章 国防軍」という題名にすべきと考えます。
章の名づけかたから、問題であり、一貫性に欠けます。
現行憲法が掲げる三つの基本原理のひとつ「平和主義」と、それゆえに、戦争は放棄し続けるのか、そして、平和外交を実践し、世界の紛争の調整役の地位を築いていくのか、
はたまた、自民党に賛成して、戦争を許容するのか、
判断は、私達国民ひとりひとりに委ねられています。
******自民党案******
第二章 安全保障
(平和主義)
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。
2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。
(国防軍)
第九条の二 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。〔新設〕
2 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
3 国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保す
るために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
4 前二項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。
5 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。
(領土等の保全等)
第九条の三 国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。〔新設〕
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自民党案を解釈するなら
9条1項で、国際紛争を解決する手段としては戦争を放棄するが、それ以外は戦争を放棄していません。
9条2項で、自衛権の発動を認めています。自衛権の発動を認めると明文規定するなら、厳格な発動要件も明記すべきでしょう。この要件なき明文規定は、危険です。
9条の2
第2項「国会の承認その他の統制」このような、「その他の統制」のようなあいまいな文言はさけるべきです。巧みに、国会をすりぬけることができる手法まで、厳格な運用が求められる条文に盛り込まないでいただきたい。
第5項「国防軍に審判所」というが、当事者だけで裁判されると「懲役300年」のようなおかしな判決が出される可能性があるから、裁判所に審判所を置くなど、正当な裁判が担保できる規定をおいていただきたい。
9条の3 「その資源を確保」が前面に出てくる危険性はないだろうか。厳格な発動要件を満たすことなく、資源確保を旗印に、戦争が正当化されるおそれがあるから、この文言は問題である。いつも戦争は、「資源の確保」のために実質起こってきたのではないでしょうか。
一日一条づつ日本国憲法の条文を解説します。併せて、自民党改憲案の問題点を見ていきます。
8月8日の今日は、8条。
日本国憲法第一章天皇は、この8条で終わり、9条からは第2章に入ります。
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日本国憲法
(財産授受の制限)
第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。
自民党改憲草案
(皇室への財産の譲渡等の制限)
第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、若しくは賜与するには、法律で定める場合を除き、国会の承認を経なければならない。
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憲法8条は、88条とともに、皇室経費に関する規定です。
(うまく皇室経費に関する条文は、「8」でそろえたのかな?それは、さておき)
****日本国憲法88条*****
第八十八条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。
自民党改憲草案
(皇室財産及び皇室の費用)
第八十八条 全て皇室財産は、国に属する。全て皇室の費用は、予算案に計上して国会の議決を経なければならない。
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さて、新憲法の施行とともに、天皇の財産(御料)および皇族の財産(これを合わせて皇室財産と言う)は、「国に属する」ことになりました。
そして、天皇および皇族の活動に要する費用は、「すべて…予算に計上して国会の議決を経なければならない」と規定されました。内閣により「日本国憲法第8条の規定による議決案」として国会に付議されます。
予算に計上される皇室経費には、皇室経済法(最後に全文を掲載します。)で、三つの区分がされています。
〇内廷費 皇室経済法4条
〇宮廷費 皇室経済法5条
〇皇族費 皇室経済法6条
一定の種類の行為については、その度ごとに国会の議決を経ることを要しないとされています(皇室経済法2条)。
8条と88条により、明治憲法下の皇室自立主義を国会中心主義に、皇室財政制度においても変更することとなりました。
「皇室に再び大きな財産が集中したり、皇室が特定の個人ないし団体と特別の関係を結び不当な支配力をもつことを防止することを目的」としています(『憲法第5版』岩波新書 芦部信喜 53ページ)。
自民党改憲草案では、「国会の議決」の文言が、「国会の承認」とされています。
わざわざ、文言を変えなくてもよいのではないでしょうか。
*****皇室経済法 全文****
皇室経済法
(昭和二十二年一月十六日法律第四号)
最終改正:平成一一年一二月二二日法律第一六〇号
第一条 削除
第二条 左の各号の一に該当する場合においては、その度ごとに国会の議決を経なくても、皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、若しくは賜与することができる。
一 相当の対価による売買等通常の私的経済行為に係る場合
二 外国交際のための儀礼上の贈答に係る場合
三 公共のためになす遺贈又は遺産の賜与に係る場合
四 前各号に掲げる場合を除く外、毎年四月一日から翌年三月三十一日までの期間内に、皇室がなす賜与又は譲受に係る財産の価額が、別に法律で定める一定価額に達するに至るまでの場合
第三条 予算に計上する皇室の費用は、これを内廷費、宮廷費及び皇族費とする。
第四条 内廷費は、天皇並びに皇后、太皇太后、皇太后、皇太子、皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃及び内廷にあるその他の皇族の日常の費用その他内廷諸費に充てるものとし、別に法律で定める定額を、毎年支出するものとする。
○2 内廷費として支出されたものは、御手元金となるものとし、宮内庁の経理に属する公金としない。
○3 皇室経済会議は、第一項の定額について、変更の必要があると認めるときは、これに関する意見を内閣に提出しなければならない。
○4 前項の意見の提出があつたときは、内閣は、その内容をなるべく速かに国会に報告しなければならない。
第五条 宮廷費は、内廷諸費以外の宮廷諸費に充てるものとし、宮内庁で、これを経理する。
第六条 皇族費は、皇族としての品位保持の資に充てるために、年額により毎年支出するもの及び皇族が初めて独立の生計を営む際に一時金額により支出するもの並びに皇族であつた者としての品位保持の資に充てるために、皇族が皇室典範 の定めるところによりその身分を離れる際に一時金額により支出するものとする。その年額又は一時金額は、別に法律で定める定額に基いて、これを算出する。
○2 前項の場合において、皇族が初めて独立の生計を営むことの認定は、皇室経済会議の議を経ることを要する。
○3 年額による皇族費は、左の各号並びに第四項及び第五項の規定により算出する額とし、第四条第一項に規定する皇族以外の各皇族に対し、毎年これを支出するものとする。
一 独立の生計を営む親王に対しては、定額相当額の金額とする。
二 前号の親王の妃に対しては、定額の二分の一に相当する額の金額とする。但し、その夫を失つて独立の生計を営む親王妃に対しては、定額相当額の金額とする。この場合において、独立の生計を営むことの認定は、皇室経済会議の議を経ることを要する。
三 独立の生計を営む内親王に対しては、定額の二分の一に相当する額の金額とする。
四 独立の生計を営まない親王、その妃及び内親王に対しては、定額の十分の一に相当する額の金額とする。ただし、成年に達した者に対しては、定額の十分の三に相当する額の金額とする。
五 王、王妃及び女王に対しては、それぞれ前各号の親王、親王妃及び内親王に準じて算出した額の十分の七に相当する額の金額とする。
○4 摂政たる皇族に対しては、その在任中は、定額の三倍に相当する額の金額とする。
○5 同一人が二以上の身分を有するときは、その年額中の多額のものによる。
○6 皇族が初めて独立の生計を営む際に支出する一時金額による皇族費は、独立の生計を営む皇族について算出する年額の二倍に相当する額の金額とする。
○7 皇族がその身分を離れる際に支出する一時金額による皇族費は、左の各号に掲げる額を超えない範囲内において、皇室経済会議の議を経て定める金額とする。
一 皇室典範第十一条 、第十二条及び第十四条の規定により皇族の身分を離れる者については、独立の生計を営む皇族について算出する年額の十倍に相当する額
二 皇室典範第十三条 の規定により皇族の身分を離れる者については、第三項及び第五項の規定により算出する年額の十倍に相当する額。この場合において、成年に達した皇族は、独立の生計を営む皇族とみなす。
○8 第四条第二項の規定は、皇族費として支出されたものに、これを準用する。
○9 第四条第三項及び第四項の規定は、第一項の定額に、これを準用する。
第七条 皇位とともに伝わるべき由緒ある物は、皇位とともに、皇嗣が、これを受ける。
第八条 皇室経済会議は、議員八人でこれを組織する。
○2 議員は、衆議院及び参議院の議長及び副議長、内閣総理大臣、財務大臣、宮内庁の長並びに会計検査院の長をもつて、これに充てる。
第九条 皇室経済会議に、予備議員八人を置く。
第十条 皇室経済会議は、五人以上の議員の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
○2 皇室経済会議の議事は、過半数でこれを決する。可否同数のときは、議長の決するところによる。
第十一条 皇室典範第二十九条 、第三十条第三項から第七項まで、第三十一条、第三十三条第一項、第三十六条及び第三十七条の規定は、皇室経済会議に、これを準用する。
○2 財務大臣たる議員の予備議員は、財務事務次官をもつて、これに充て、会計検査院の長たる議員の予備議員は、内閣総理大臣の指定する会計検査院の官吏をもつて、これに充てる。
附 則 抄
○1 この法律は、日本国憲法施行の日から、これを施行する。
○2 この法律施行の際、現に皇室の用に供せられている従前の皇室財産で、国有財産法の国有財産となつたものは、第一条第二項の規定にかかわらず、皇室経済会議の議を経ることなく、これを皇室用財産とする。
○3 この法律施行の際、従前の皇室会計に所属する権利義務で国に引き継がるべきものの経過的処理に関し、必要な事項は、政令でこれを定める。
附 則 (昭和二四年五月三一日法律第一三四号)抄
1 この法律は、昭和二十四年六月一日から施行する。
附 則 (昭和二七年二月二九日法律第二号)
1 この法律は、昭和二十七年四月一日から施行する。
2 この法律施行の際既婚者たる親王は、改正後の皇室経済法第六条第三項の適用については、独立の生計を営む親王とみなす。
3 この法律施行の際未婚者たる親王又は内親王は、改正後の皇室経済法第六条第三項の適用については、独立の生計を営まない親王又は内親王とみなす。
附 則 (昭和二八年六月三〇日法律第四七号)
この法律は、昭和二十八年七月一日から施行する。
附 則 (昭和四〇年五月二二日法律第七六号)
この法律は、公布の日から施行し、昭和四十年四月一日から適用する。
附 則 (平成一一年一二月二二日法律第一六〇号) 抄
(施行期日)
第一条 この法律(第二条及び第三条を除く。)は、平成十三年一月六日から施行する。
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医療裁判例をみるにつけ、医療過誤・医療事故等が未然に防がれること、万が一起きた場合の適切な対応がなされることで、医療と患者の間に起こる不幸な争いが減ることを心から願っています。
医師と患者の信頼関係構築に向け、最低限、医師と患者双方が知っておくべき法的な事柄を以下に記載します。
第1、医療関連の重要判例
以下は、医療事故関連の重要判例です。
判決文全文は、最高裁ホームページから閲覧可能です。
〇最高裁平成14.11.8 投薬に際しての注意義務
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=62465&hanreiKbn=02
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319130607692639.pdf
医薬品添付文書に過敏症状と皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)の副作用がある旨記載された薬剤等を継続的に投与されている患者に副作用と疑われる発しん等の過敏症状の発生が認められたことなど判示の事実関係の下においては,当時の医療上の知見において過敏症状が同症候群へ移行することを予測し得たものとすれば,医師は,同症候群の発症を予見し回避の措置を講ずべき義務を負っていたものであり,同症候群の症状自体が出現していなかったことなどから直ちに医師の過失を否定した原判決には,上記薬剤の投与についての医師の過失に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。
〇最高裁昭和60.3.26 転医の要件および時期の判断の過失
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52673&hanreiKbn=02
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121055938198.pdf
昭和五一年二月に在胎三四週体重一二〇〇グラムで出生した極小未熟児が急激に進行する未熟児網膜症により失明した場合において、当該病院には当時未熟児網膜症の治療方法として一般的に認められるに至つていた光凝固等の手術のための医療機械がなく、また、同児の眼底検査を担当した眼科医が、未熟児網膜症についての診断治療の経験に乏しく、生後三二日目にした一回目の検査とその一週間後にした二回目の検査により、眼底の状態に著しく高度の症状の進行を認めて異常を感じたにもかかわらず、直ちに同児に対し適切な他の専門医による診断治療を受けさせる措置をとらなかつたため、同児が適期に光凝固等の手術を受ける機会を逸し失明するに至つた等の判示の事実関係のあるときは、眼科医には右失明につき過失があるものというべきである。
〇最高裁平成7.5.30 未熟児である新生児の黄疸の説明
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=76105&hanreiKbn=02
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319133921174305.pdf
医師が未熟児である新生児を黄だんの認められる状態で退院させ、右新生児が退院後黄だんにり患して脳性麻ひの後遺症が生じた場合につき、医師が、右新生児の血液型の判定を誤り、父母に対して、血液型不適合はなく黄だんが遷延しているのは未熟児だからであり心配はない旨の説明をし、退院時には、何か変わったことがあれば医師の診察を受けるようにとの一般的な注意を与えたのみで、残存していた黄だんについては特段の言及もしなかったなど判示の事実関係があるときは、医師の退院時における説明及び指導に過失がないとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法がある。
〇最高裁平成21.12.7 川崎協同病院事件上告審決定
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=38241&hanreiKbn=02
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091209113834.pdf
気管支ぜん息の重積発作により入院しこん睡状態にあった患者から,気道確保のため挿入されていた気管内チューブを抜管した医師の行為は,患者の余命等を判断するために必要とされる脳波等の検査が実施されておらず,発症から2週間の時点でもあり,回復可能性や余命について的確な判断を下せる状況にはなく,また,回復をあきらめた家族からの要請に基づき行われたものの,その要請は上記のとおり病状等について適切な情報を伝えられた上でされたものではなかったなどの本件事情の下では,法律上許容される治療中止には当たらない。
〇最高裁平成12.2.29 信仰に基づく輸血拒否 東大医科研事件
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52218&hanreiKbn=02
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120604218580.pdf
医師が、患者が宗教上の信念からいかなる場合にも輸血を受けることは拒否するとの固い意思を有し、輸血を伴わないで肝臓のしゅようを摘出する手術を受けることができるものと期待して入院したことを知っており、右手術の際に輸血を必要とする事態が生ずる可能性があることを認識したにもかかわらず、ほかに救命手段がない事態に至った場合には輸血するとの方針を採っていることを説明しないで右手術を施行し、患者に輸血をしたなど判示の事実関係の下においては、右医師は、患者が右手術を受けるか否かについて意思決定をする権利を奪われたことによって被った精神的苦痛を慰謝すべく不法行為に基づく損害賠償責任を負う。
〇最高裁平成17.12.8 拘置所脳梗塞事件
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=62624&hanreiKbn=02
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319130721445192.pdf
拘置所に勾留中の者が脳こうそくを発症し重大な後遺症が残った場合について,第1回のCT撮影が行われて脳こうそくと判断された時点では血栓溶解療法の適応がなかったこと,それより前の時点では適応があった可能性があるが,その適応があった間に,同人を外部の医療機関に転送して,血栓溶解療法を開始することが可能であったとは認め難いこと,拘置所において,同人の症状に対応した治療が行われており,そのほかに,同人を速やかに外部の医療機関に転送したとしても,その後遺症の程度が軽減されたというべき事情は認められないことなど判示の事情の下においては,同人が,速やかに外部の医療機関へ転送され,転送先の医療機関において医療行為を受けていたならば,重大な後遺症が残らなかった相当程度の可能性の存在が証明されたとはいえず,拘置所の職員である医師の転送義務違反を理由とする国家賠償責任は認められない。
(補足意見及び反対意見がある。)
〇最高裁判所平成11.2.25 肝細胞がん事件
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52587&hanreiKbn=02
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120954008273.pdf
一 医師が注意義務に従って行うべき診療行為を行わなかった不作為と患者の死亡との間の因果関係は、医師が右診療行為を行っていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度のがい然性が証明されれば肯定され、患者が右診療行為を受けていたならば生存し得たであろう期間を認定するのが困難であることをもって、直ちには否定されない。
二 肝硬変の患者が後に発生した肝細胞がんにより死亡した場合において、医師が、右患者につき当時の医療水準に応じた注意義務に従って肝細胞がんを早期に発見すべく適切な検査を行っていたならば、遅くとも死亡の約六箇月前の時点で外科的切除術の実施も可能な程度の大きさの肝細胞がんを発見し得たと見られ、右治療法が実施されていたならば長期にわたる延命につながる可能性が高く、他の治療法が実施されていたとしてもやはり延命は可能であったと見られるとしながら、仮に適切な診療行為が行われていたとしてもどの程度の延命が期待できたかは確認できないとして、医師の検査に関する注意義務違反と患者の死亡との間の因果関係を否定した原審の判断には、違法がある。
*****************************************
第2、医事法関連で最も重要な手続き=証拠保全
医事法の講義を受講し、最も重要な手続きと思ったことは、証拠保全手続きです。
もし、医療関連トラブルが生じた場合、迅速に証拠保全手続きをする必要があります。
診療記録と照らし合わせ、適切な診療がなされたかを調査することから始まるからです。
迅速なとは、一刻を争うことをいいます。
なぜならば、不十分な記載箇所に書き足しやカルテ改ざんがなされたり、保存期間があり、長くて5年で処分される場合があるためです。
(相談して、問題点ありとされた場合、即、証拠保全に動いてくださる弁護士さんは、信頼できるひとつの指標になるのではないでしょうか。)
<証拠保全の手続きの流れ>
1)検証目録を作成します。
ここで、絶対落としてはならないものは、手術などの場合の動画類です。
事務局にないといわれても、医局に置かれていることもあります。
検証目録の最後に、包括的な文言を付記し、落ちがないようにします。
*参考 医師法
第二十四条 医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。
2 前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、五年間これを保存しなければならない。
2)証拠保全の申立書
3)提示命令
民事訴訟法234条、223条、224条、
もし、提示命令に従わない場合、病院側に不利な方向で、話が進められます。
→当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。(民事訴訟法224条)
(証拠保全)
第二百三十四条 裁判所は、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは、申立てにより、この章の規定に従い、証拠調べをすることができる。
(文書提出命令等)
第二百二十三条 裁判所は、文書提出命令の申立てを理由があると認めるときは、決定で、文書の所持者に対し、その提出を命ずる。この場合において、文書に取り調べる必要がないと認める部分又は提出の義務があると認めることができない部分があるときは、その部分を除いて、提出を命ずることができる。
2 裁判所は、第三者に対して文書の提出を命じようとする場合には、その第三者を審尋しなければならない。
3 裁判所は、公務員の職務上の秘密に関する文書について第二百二十条第四号に掲げる場合であることを文書の提出義務の原因とする文書提出命令の申立てがあった場合には、その申立てに理由がないことが明らかなときを除き、当該文書が同号ロに掲げる文書に該当するかどうかについて、当該監督官庁(衆議院又は参議院の議員の職務上の秘密に関する文書についてはその院、内閣総理大臣その他の国務大臣の職務上の秘密に関する文書については内閣。以下この条において同じ。)の意見を聴かなければならない。この場合において、当該監督官庁は、当該文書が同号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べるときは、その理由を示さなければならない。
4 前項の場合において、当該監督官庁が当該文書の提出により次に掲げるおそれがあることを理由として当該文書が第二百二十条第四号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べたときは、裁判所は、その意見について相当の理由があると認めるに足りない場合に限り、文書の所持者に対し、その提出を命ずることができる。
一 国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ
二 犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ
5 第三項前段の場合において、当該監督官庁は、当該文書の所持者以外の第三者の技術又は職業の秘密に関する事項に係る記載がされている文書について意見を述べようとするときは、第二百二十条第四号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べようとするときを除き、あらかじめ、当該第三者の意見を聴くものとする。
6 裁判所は、文書提出命令の申立てに係る文書が第二百二十条第四号イからニまでに掲げる文書のいずれかに該当するかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、文書の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された文書の開示を求めることができない。
7 文書提出命令の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(当事者が文書提出命令に従わない場合等の効果)
第二百二十四条 当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
2 当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも、前項と同様とする。
3 前二項に規定する場合において、相手方が、当該文書の記載に関して具体的な主張をすること及び当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは、裁判所は、その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
(第三者が文書提出命令に従わない場合の過料)
第二百二十五条 第三者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、決定で、二十万円以下の過料に処する。
2 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
4)検証不能と言われた場合、ないと言われた場合、ないはずがないわけであり、なぜ、ないのか確認します。
5)複数の医療機関にまたがる場合は、同時に証拠保全をします。
6)診療記録以外の証拠収集も忘れずに行います。
看護記録、検査記録、レセプト、介護サービス記録など
電子カルテの場合、その運用規約と、更新履歴。
以上
***********************************************
第3、医師と患者の診療契約は、準委任契約(科によっては、委任契約)
医師と患者の診療契約は、判例・通説は、準委任契約と言われています。
民法656条に規定。この節というのは、「委任」契約の規定をさします。
(準委任)
第六百五十六条 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
1)診療契約の本質 原則
その契約の本質は、結果債務(=事務処理の完成、医療の場合、診断・治療の結果の治癒)ではなく、手段債務(その疾患の診断・治療のために必要な最善の医療を実施することを目的とすること)です。
2)診療契約の本質の例外
美容整形、健康診断などは、請負契約性も認められる場合があります。
3)診療契約の成立について
患者の「申し込み」と医療側の「承諾」で成立します。
他の職業と最も異なるのは、医療側の「応召義務」です。
原則、医師は、患者を拒めません。
医師法19条1項。
第十九条 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。
4)医療契約が成立するとその効果として、医療側、患者側にそれぞれ負担すべき義務が生じます。
〇医療側の負担すべき債務(最善の医療を提供する義務、手段債務)
①最善の医療を実施する義務
②問診義務
③転院、転送義務
④説明義務
⑤安全管理義務、院内感染対策義務
⑥死因説明・解明義務
⑦診療録記載・保管・開示義務
⑧情報管理義務
⑨証明文書交付義務
〇患者側が負担すべき義務
①診療報酬支払義務
②「診療協力義務」 原則として、もし協力なき場合、医師は診療契約の解除のほうにもっていくことができる。
5)医療契約の終了
〇終了原因が民法上規定されています。
(委任の終了事由)
第六百五十三条 委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡
二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
〇当事者からの解除
①患者側からの解除 基本、自由。
②医師側からの解除 基本、できない。応召義務がある。ただし、患者の妨害、他の患者への妨害は信頼関係を破壊することで、応召義務をなさなくとも許される正当理由となる。
以上
******************************************
第4、医療慣行は、医療水準を意味しない。医療慣行に従ったとしても過失あり。
医療慣行は、医療水準を意味しません。
小児科医療でいえば、医療慣行として「熱の時に抗生剤を投与する」ということが安易になされているとしても、「抗生剤は適正使用する」ということが現在の小児科学の医療水準であるため、抗生剤を安易に投与され副作用が出た場合、医療慣行を言い訳にすることは、投与した医院はできません。
1)医療水準とは、医療過誤事件において、過失における注意義務違反の基準となるものです。
過失における注意義務違反=当該行為者が注意をすれば、結果の発生を予見でき、
結果の発生を回避することができたのに、
注意を尽くさなかったために、結果の発生を予見せず、
結果の発生を回避するための措置を取らなかったこと。
2)判例によって形成・確立された医療水準の判断枠組み
①医師の注意義務の基準となるのは、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準である。
⇒医学研究の水準ではない。新規の治療法の場合に要検討。
②医療水準を判断するにあたっては、当該医療機関の性格(病院か開業医か、大学病院か)やその所在する地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮する。
⇒具体的に検討を。
③医療水準の基準となる知見は、当該医療機関に期待することが相当と認められる知見。
⇒知見(情報)の普及と、医療従事者の研鑽。
④知見を有しながらも治療法実施の技術・設備等を有しない場合には、他の医療機関へ転医させる等の義務がある。
⑤平均的医師が現に行っている医療慣行に従ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたことにはならない。
3)医療水準論の課題
①医療水準の確定の困難性、証明の困難性
②医師の免責のために機能する可能性
③一般的な医療水準と個別具体的な検討の橋渡し
以上
******************************************
第5、適正タイミングでの転医・転送義務は重要。患者病状が許すことを前提に。
1)転送義務の概念、その法的根拠
〇医療法1条の4第3項
3 医療提供施設において診療に従事する医師及び歯科医師は、医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携に資するため、必要に応じ、医療を受ける者を他の医療提供施設に紹介し、その診療に必要な限度において医療を受ける者の診療又は調剤に関する情報を他の医療提供施設において診療又は調剤に従事する医師若しくは歯科医師又は薬剤師に提供し、及びその他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
〇保険医療機関及び保険医療療養担当規則16条
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S32/S32F03601000015.html
(転医及び対診)
第十六条 保険医は、患者の疾病又は負傷が自己の専門外にわたるものであるとき、又はその診療について疑義があるときは、他の保険医療機関へ転医させ、又は他の保険医の対診を求める等診療について適切な措置を講じなければならない。
2)転医義務の要件
①患者の疾患が自己の専門外が、自己の臨床経験ないし医療設備によって当該患者の疾病改善に困難であること
②患者の一般状態が転医のための搬送に耐えうること、すなわち、危険状態を脱していること、あるいは、既に手遅れとなっていないこと
③地理的環境的要因として、患者の病状との関連で、搬送可能な(転医可能な)地域内に適切な設備・専門医を配置した医療機関があること
④転医することによって、患者に重大な結果回避の見込みがあること、ないしその疾病改善の見込みがあること
3)転医義務の内容
①求諾義務:受け入れ先が受け入れてくれるかの承諾を得る
②転移先に対する説明義務
③適正搬送義務
以上
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第6、医師の説明義務は、患者の自己決定に繋がり最重要
1)医師の説明義務
医師が患者に対し、
病名、
症状とその原因、
治療行為の内容、
治療行為に伴う危険、
治療を行った場合の改善の見込み、
当該治療を行わなかった場合の予後、
代わりの治療行為、
その場合の危険性、
改善の見込み
及び
当該治療行為を選択した理由
を説明すべき義務を言う(現代裁判法体系131ページ)
2)医師に説明義務が発生する法的根拠
ア契約上の注意義務として
〇診療契約という準委任契約から、
受任者の顛末報告義務(民法656条、645条)
善管注意義務の付随義務(民法656条、644条)
が生じる。
(準委任)
第六百五十六条 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
(受任者による報告)
第六百四十五条 受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
(受任者の注意義務)
第六百四十四条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
〇診療契約締結前の場合
信義則上の義務
〇医療法1条の4第2項
医療法1条の4
2項 医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない。
イ不法行為上の注意義務として
〇不法行為法上の違法阻却要件としての説明義務
医療行為は、患者の生命・健康に重大な影響を及ぼすので、具体的な医的侵襲行為毎に違法性阻却要件として患者の同意を得る必要があり、その同意を得る前提として説明義務を負っている。
〇注意義務の一内容としても説明義務を負う
3)医師に説明義務が発生する理論的根拠
以下、密接不可分の両者から理論的根拠は説明される。
〇違法性阻却事由としての承諾の前提要件(医師側)
〇患者の自己決定権(患者側の知る権利)
4)説明義務の内容、時期、説明すべき「事実」の範囲
〇説明義務の内容
その場面に応じ、患者が自己の医師に基づき説明の内容について承諾し、また自己決定するのに必要な程度に事実を説明すべき
〇説明の時期
できるだけ、早く⇒考えるゆとり、判断(自己決定)までの合理的期間を患者に与える、
〇説明すべき「事実」の範囲
①具体的患者説
当該患者の置かれた状況を前提として、合理的な患者であれば重要視する情報で、かつ、当該患者が重要視する情報
②二重基準説
具体的な患者が重要視し、かつ、そのことを合理的医師ならば認識できたであろう情報が説明されるべき
5)説明義務が発生する具体的場面
①病状あるいはこれに基づく検査の必要性等について説明する義務
②治療不可能な場面等に転院等を勧める説明義務
③診断・検査等を行うための承諾を得る前提としての説明義務
④病名についての説明義務
アがんの告知 確定診断前・確定診断後
⑤治療方法に関わる説明義務
ア治療の種類
イ治療の危険性
ウ治療による合併症
エ治療による副作用
オ治療の目的・必要性
カ治療の結果
⑥身体の侵襲を伴う治療を行うための承諾を得る前提としての説明義務
⑦診療契約終了時における説明義務
ア退院後等の日常生活上の注意事項
イ緊急診療後一旦帰宅させる場合の説明
ウ通院外来患者に対する説明
エ診療契約終了時における医療経過・死因などの説明
⑧医療相談における説明義務
⑨チーム医療と説明義務
6)説明義務の限界
①医療行為の特性に伴う限界
ア緊急医療
イ確定診断がついていない場合及び経過観察中の場合
ウ医療行為の侵襲が軽微な場合
エ医療行為が不可欠な場合
オ医療行為が医療水準に達していない場合
②疾病の特性による限界
ア予見できない疾病の場合
イ軽微な疾病の場合
ウ危険性が極めてまれな場合
③患者の特性に伴う限界
ア患者が医師の説明を受ける能力を書く場合
イ患者への悪影響がある場合
ウ患者が説明を受けることを拒否している場合
エ患者がすでに知っている場合
7)説明の相手方
①原則 患者本人
②例外 本人以外の者に対する説明
ア患者が判断能力を欠く場合
未成年者
精神障害者
被成年後見人
イ患者本人に対する説明が不相当である場合
ウ患者本人の判断を求める時間的余裕がない場合(緊急の場合)
8)説明義務違反についての主張・立証責任
原則として、患者側で、
〇医師に説明義務が発生すること
及び
〇医師がその説明義務を尽くしていないこと
更には、
〇説明義務が尽くされれば当該結果が生じなかった高度の蓋然性(因果関係)があること
について、主張立証責任を負う。
9)説明義務違反の効果
①説明義務違反と結果との間の因果関係が肯定される場合
②説明義務違反と結果との間の因果関係が否定される場合
*意思決定の可変性
説明を受けることで意思決定が変わることがどの程度あるのか
以上
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第7、患者の自己決定権(憲法13条)を最大限に尊重すること
1)患者の自己決定権とは
自己決定権とは、プライバシー領域に関する事項に対し、自ら決定することができる権利
2)自己決定権の根拠
〇憲法13条、個人の尊重、幸福追求に関する国民の権利
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
〇医療法
第1条の2第1項 医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づき、及び医療を受ける者の心身の状況に応じて行われるとともに、その内容は、単に治療のみならず、疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含む良質かつ適切なものでなければならない。
第1条の4第2項 医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない。
3)生命に関する自己決定権と医の倫理
①個人の自己決定を最大限尊重する立場
第三者の権利を侵害することにならない限り人は自己の生命にかんしても自由に意思決定する権利を有する
②生命の絶対不可侵性を強調する立場
生命には至高の価値があり、その主体を含む誰によっても侵害することは許されない
③一定の条件の下で生命の短縮や喪失につながるような自己決定を容認する
*自殺関与罪(刑法202条)
(自殺関与及び同意殺人)
第二百二条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。
4)安楽死・尊厳死の分類・定義
①尊厳死
人工呼吸や経管栄養などによって生命を維持されている回復不能な植物状態患者や末期患者に対して延命医療を行わないことによって人間としての尊厳のある自然な死を迎えさせること
②安楽死
苦痛を除去・緩和して安らかな死を迎えさせること
ア純粋型安楽死:苦痛除去・緩和のための治療を行い、それが死期に影響を与えないこと
イ間接的安楽死:苦痛除去・緩和のための医療措置の副作用により生命の短縮を伴うこと
ウ消極的安楽死(≒尊厳死、自然な死と言うことで安楽死と明確に区別する立場もあり):延命のための医療が患者に苦痛・不快感を与える場合に、すでに開始した延命医療を中止したり、そもそも延命医療を開始せずに差し控えることによって死期が早まること
エ積極的安楽死:耐え難い苦痛の除去を目的として致死性の薬物の投与などによって患者の死期を積極的に早めること
自発的安楽死/反自発的安楽死/非自発的安楽死
③積極的安楽死を肯定する法的根拠
ア違法性阻却説 緊急避難説/自己決定権説/正当行為説
イ責任阻却説 期待可能性説/違法性の錯誤
④積極的安楽死・自殺ほう助を肯定する場合の要件
4つ
1耐え難い苦痛、
2不治の病、死期が近い、
3苦痛の緩和で他に代替手段なし、
4本人の意思
以上
**********************************
第8、医療過誤の論点
不幸にして、医療過誤訴訟に至った場合の論点。
医療過誤訴訟で最も大事な点は、医師と患者の信頼関係構築1で述べた「証拠保全」であることを忘れないこと。
1)過失論
当時の当該医師が、いったい何をどうすべきであったか
↓
過失における注意義務違反=
当該行為者が注意をすれば、結果の発生を予見でき、
結果の発生を回避することができたのに、
注意を尽くさなかったために、結果の発生を予見せず、
結果の発生を回避するための措置を取らなかったこと。
2)因果関係論
訴訟上の因果関係の立証は、
一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、
経験則に照らして全証拠を総合検討し、
特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、
その判定は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、
かつ、それで足りるものである。
(東大ルンバール事件 最判昭和50.10.24)
3)損害論
①従来の損害論 → 交通賠償を基礎とした損害論
交通事故:その人は、健康、 医療:その人は、病気
交通事故:契約なし 医療:契約あり
②医療の不確実性、多様性、特殊性
以上
あわせて、自民党改憲草案の問題点も分析します。
8月7日は、7条です。
憲法7条に相当する条文は、自民党改憲草案では6条であり、その6条と比較して見ます。
*************
(日本国憲法)
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。
(自民党改憲草案)
(天皇の国事行為等)
第六条 天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長である裁判官を任命する。
2 天皇は、国民のために、次に掲げる国事に関する行為を行う。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の国の公務員の任免を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 全権委任状並びに大使及び公使の信任状並びに批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行うこと。
3 天皇は、法律の定めるところにより、前二項の行為を委任することができる。
4 天皇の国事に関する全ての行為には、内閣の進言を必要とし、内閣がその責任を負う。ただし、衆議院の解散については、内閣総理大臣の進言による。
5 第一項及び第二項に掲げるもののほか、天皇は、国又は地方自治体その他の公共団体が主催する式典への出席その他の公的な行為を行う。
**************************
1)自民党側の説明
以下、6条関連の自民党側の説明を見ます。
*****自民党Q&A*****
Q6 その他、天皇に関して、どのような規定をおいたのですか?
6条に天皇の行為に関する規定を置きましたが、現行憲法を一部変更してい
る所があります。
(国事行為には内閣の「進言」が必要)
現行憲法では、天皇の国事行為には内閣の「助言と承認」が必要とされていますが、
天皇の行為に対して「承認」とは礼を失することから、「進言」という言葉に統一しま
した(6 条4 項)。従来の学説でも、「助言と承認」は一体的に行われるものであり、区
別されるものではないという説が有力であり、「進言」に一本化したものです。
(天皇の公的行為を明記)
さらに、6 条5 項に、現行憲法には規定がなかった「天皇の公的行為」を明記しました。
現に、国会の開会式で「おことば」を述べること、国や地方自治体が主催する式典に出
席することなど、天皇の行為には公的な性格を持つものがあります。しかし、こうした
公的な性格を持つ行為は、現行憲法上何ら位置付けがなされていません。そこで、こう
した公的行為について、憲法上明確な規定を設けるべきであると考えました。
一部の政党は、国事行為以外の天皇の行為は違憲であると主張し、天皇の御臨席を仰
いで行われる国会の開会式にいまだに出席していません。天皇の公的行為を憲法上明確
に規定することにより、こうした議論を結着させることになります。
(国事行為の基本に変更なし)
なお、6 条2 項では、天皇の国事行為について列記されていますが、規定を分かりや
すく若干整理したものの、基本は変えていません。
********************
2)さて、以下、問題と感じることを書きます。
問題点1 整理して書いたというが、自民党改憲草案は、実は、整理されていなく、逆にわかりずらい。
問題点2 現行憲法3条の大事な条文「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。」が、条文から項に格下げされ、自民党案のこの6条4項に追いやられている。
問題点3 「進言」という言葉を持ち出しているが、現行憲法の「助言と承認」のままでよいのではないか。
問題点3 1項は、内閣と司法のことを、日本国憲法では2項に分けて書いていたものを一緒くたに書いている。これは、よろしくない。2項に別々に分けて書くべき。
問題点4 衆議院の解散は、「内閣」ではなく、「内閣総理大臣」の「助言と承認」(自民党の言葉では、進言)でよいか。
問題点5 5項で、「天皇は、国又は地方自治体その他の公共団体が主催する式典への出席その他の公的な行為を行う。」と「公的な行為」の規定がなされている。
議論が必要で、必要最小限の「公的行為」となるようにすべき。そのための手立てはあるのか。
現行憲法では、国事行為を限定して書くことを目指していたのが、自民党案5条で、大事な「のみ」(現行憲法4条には入っていた)をとったことと相まって、天皇の「国事行為」や「公的行為」が安易に拡大される素地がつくられている。
cf.
自民党案5条
(天皇の権能)
第五条 天皇は、この憲法に定める国事に関する行為を行い、国政に関する権能を有しない。
現行憲法
第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
3)自民党改憲案は、天皇の国事行為を整理して書いたということだが、逆にわかりにくくされてしまったため、改めて整理します。
日本国憲法では、天皇の国事行為を13明文規定(日本国憲法4条2項、6条1、2項、7条1号~10号)しています。これらは、すべて、内閣の助言と承認を必要とする行為です(現行憲法3条「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。」)
それら規定の文言が、どのように自民党改憲案でなっているのか。
○4条2項
現行憲法:天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
自民党案:天皇は、法律の定めるところにより、前二項の行為を委任することができる。(自民党改憲案では、6条3項)
○6条1項
現行憲法:天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
自民党案:天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長である裁判官を任命する。(自民党改憲案では、6条1項)
⇒自民党案では、内閣は内閣、司法は司法で条文をわけるべきであると考えます。
○6条2項
現行憲法:天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
自民党案:天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長である裁判官を任命する。(自民党改憲案では、6条1項)
⇒自民党案では、内閣は内閣、司法は司法で条文をわけるべきであると考えます。
○7条1号~10号
現行憲法:天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
自民党案:天皇は、国民のために、次に掲げる国事に関する行為を行う。
⇒自民党案では、「内閣の助言と承認により」が削られています。後の条項で補足するのではなく、柱書きに入れるべきだと思います。自民党案6条4項だけでは、わかりにくいです。
現行憲法:
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。
自民党案:
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の国の公務員の任免を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 全権委任状並びに大使及び公使の信任状並びに批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行うこと。
以上
売主が、保管義務を尽くしたが、売主の責めに帰すべき理由なく、売買契約の目的物が滅失した場合、その負担は、買主が負う。すなわち、それでもやはり、商品を受け取れなかったとしても、買主は、売主に、期限に代金を支払う義務がある(危険負担、リスク負担は、買主にあり。危険負担の債権者主義)。
その代わりに、ローマ法では、バランスを取る意味で、果実収取権は、買主にある。
このことで、代金支払い義務はあっても、果実分を控除できるようにしている。
日本では、民法575条で、果実収取権は、売主にある。
おそらく、計算が面倒になることを避けたのであろう。
危険負担を、買主に負わせるのであれば、果実もまた、買主に帰属させることが、論理的帰結であったように、感じる。
現行解釈では、商品を管理できることができたかどうかで、危険負担を分けており、それはそれで、実際は、問題ないことではるが。
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民法
(債権者の危険負担)
第五百三十四条 特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
2 不特定物に関する契約については、第四百一条第二項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。
(果実の帰属及び代金の利息の支払)
第五百七十五条 まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する。
2 買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う。ただし、代金の支払について期限があるときは、その期限が到来するまでは、利息を支払うことを要しない。
侵害行為の態様が悪質な場合、たとえ、被侵害利益の種類が、不法行為を問うには軽微なものでも、違法性があるとする。
例、大学湯事件
(2014.8.6法史学)
中央区小学生4泊5日のキャンプわんぱくkids二日目、
宇佐美での海水浴、快晴!で、おもっきし海を楽しむことができたと思います。
毎年恒例で、海の怪我に備え、医療班協力を終えたところです。
問題なく、順調に日程が進んでいますこと、ご報告いたします。
毎年、いろいろなエピソードは付きものです。
波は、穏やかでしたが、風がものすごく吹いた日でした。
子ども達の日よけのテントは、突風で飛ばされる可能性が高く、立てることができませんでした。
しかし、無事日よけは作ることができました。
ボランティアの力です。
テントのシートの片方は、防波堤にくくりつけ、反対側は、ボランティア大学生や元JCスタッフの応援隊が持って日よけをつくりました。
考えれば、なんとかなるものです(喜多さん発案)。
今年は、けがは少なかったのですが、内科的な症状が多くありました。
吐いた、腹痛、咳、口の中の痛み、ぜいぜい、ぜんそく症状。
一名、体調の具合が悪くなり、私と一緒に東京に帰りました。
キャンプこれからというときに、残念でしたが、ぜひ、来年、ご参加ください。
<朝9時過ぎ、まずは、大学生ボランティアリーダーから小学生への注意事項の説明。>
<朝の宇佐美の海。>
<朝、泳ぎ始め。>
<昼食は、日よけシートの下で。ボランティアの力で、強風の中でも、日よけができました。>
<昼食のあとも、ぞんぶんに海水浴。
ボランティアが、ロープを持って、安全な泳ぐ範囲を設定しています。>
<宇佐美海水浴場は、ドクターヘリポート付きです。>
今日は、日本国憲法6条。6条には、1項と2項があります。
自民党改憲草案では、5つの項で構成される6条の第1項に、日本国憲法6条2項分の内容をまとめて一緒くたに規定されました。
****************
日本国憲法
(天皇の任命権)
第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
二項 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
自民党改憲案
(天皇の国事行為等)
第六条 天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長である裁判官を任命する。
****************
現行日本国憲法6条は、天皇の二つの国事行為が規定されています。
1項では、天皇が、内閣総理大臣を任命するが、その実質的決定権は、国会にあることを、
2項では、天皇が、最高裁判所の長たる裁判官を任命するが、その実質的決定権は、内閣にあることを、
それぞれ明らかにしています。
内閣総理大臣任命、最高裁裁判所裁判長を任命するというそれぞれ大事な条文は、その重要性に鑑み、少なくとも別の項に分けて規定しておくべきと考えます。
なぜ、内閣と裁判所という別のものを一緒くたにしたのか、理解に苦しみます。
また、自民党改憲草案で、現行日本国憲法ではなかった「国民のために」という文章が入れられました。
任命は、あくまで、形式的・儀礼的になされるものであり、主観的な目的や意図は入りようがない話です。
主観的な意図ともとれる文章を、なぜ入れたのか疑問です。
あたかも、天皇が、実質的決定権をもって、任命しているかのように誤解するひとがでないでしょうか?
当たり前の語句、しかし、誤解を生み出す可能性のある語句は、入れるべきでないと考えます。
以上
毎年恒例、わんぱくkids。
静岡県伊東市にある中央区立の小学校 宇佐美学園をお借りして行われる行事。
4泊5日。
本日8月5日朝、中央区の小学生達が元気に出発!
当院も開院以来、毎年医療班協力させていただいております。
今朝も、まずは、出発前の全員の健康・既往歴チェックをさせていただきました。
参加者の健康は、概ね良好! 車酔いに弱い子、食べ物アレルギーの子、皮膚の弱い子、のどの痛い子、眠れなかった子などなど。
某小学校5年生6年生参加者6名が、小学校の臨海学校から昨日帰ってきて、インターバルなしで本日参加、やや疲れ気味とありましたので、気をつけてフォローさせていただきます。
帰ってくると、一回り大きくなった子どもの成長に出会えると思います。
最近は参加は抽選とのこと。参加は小学3年生から。行かれなかった子も、是非いつか、参加されることをお勧め致します。
明日は宇佐美海水浴場でのおもっきりの海水浴。
万が一の怪我の子に備え、現場にて医療班出動致します。
(よって、午前は休診いたしますが、午後診療には間に合うように戻って参ります。)
現行憲法5条にあたると思われる自民党改憲草案の条文は、7条です。
*********************
日本国憲法
第五条 皇室典範 の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。
参照:
1)前条第一項
⇒第四条一項 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
*実質的に準用していると解される条文で、準用の明記がない条文
2)三条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
3)四条二項 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
自民党改憲案
(摂政)
第七条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名で、その国事に関する行為を行う。
2 第五条及び前条第四項の規定は、摂政について準用する。
参照:
1)第五条
⇒第五条 天皇は、この憲法に定める国事に関する行為を行い、国政に関する権能を有しない。
2)前条第四項
⇒第六条四項
天皇の国事に関する全ての行為には、内閣の進言を必要とし、内閣がその責任を負う。ただし、衆議院の解散については、内閣総理大臣の進言による。
*準用規定をすべて明記するのであれば、明記すべきと私は考える条文
3)六条三項 天皇は、法律の定めるところにより、前二項の行為を委任することができる。
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憲法5条が、自民党改憲案でどのように変えられるのか。
自民党改憲案では、3条の日の丸、君が代規定と4条の元号の規定の挿入に伴い、条ずれを起こし、なおかつ、この摂政に関する規定は、現行5条から7条へとうしろの方に行きました。
また、また、準用する規定は、現行5条では、4条のみのところ、自民党改憲案では、現行憲法4条にあたる5条と、現行憲法3条にあたる6条4項(条文であったものが項のひとつに格下げされた大事な条文)が準用されています。
現行憲法5条は、天皇が自ら国事行為を行い得ないような状態のときに、法廷代行機関として摂政を置くことを規定しています。
どのような場合に置くかは、皇室典範16条に規定されています。
******皇室典範16条******
第十六条 天皇が成年に達しないときは、摂政を置く。
○2 天皇が、精神若しくは身体の重患又は重大な事故により、国事に関する行為をみずからすることができないときは、皇室会議の議により、摂政を置く。
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摂政の順位は、皇室典範17条に規定されています。
******皇室典範17条******
第十七条 摂政は、左の順序により、成年に達した皇族が、これに就任する。
一 皇太子又は皇太孫
二 親王及び王
三 皇后
四 皇太后
五 太皇太后
六 内親王及び女王
○2 前項第二号の場合においては、皇位継承の順序に従い、同項第六号の場合においては、皇位継承の順序に準ずる。
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現行憲法5条は、4条1項のみを準用していますが、4条2項及び3条も実質的に準用されていると解されます。
そのことを自民党改憲草案では、明文で規定したため、準用条文が多くなっているのだと思います。
しかし、だとするなら、現行憲法4条2項にあたる自民党改憲草案の6条3項も、準用することを明文規定すべきであろうと思います。
現行憲法で、書かれていないけど、実質的に準用してきた内容を、明文規定におこうとした努力は認めますが、不十分です。実質的なものも明文におくなら、すべて明文におくべきです。
ただ、6条3項が現行憲法と大きく内容を異なるものにされているため、あえて準用から外したのかもしれません。
明日とりあげる現行憲法6条に関わりますが、
現行憲法:四条二項 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
自民党改憲草案:六条三項 天皇は、法律の定めるところにより、前二項の行為を委任することができる。
自民党改憲草案では、委任できる国事行為が狭められています。
なお、摂政を置くまでに至らない場合(例えば海外旅行や長期にわたる病気の場合)は、「国事行為の臨時代行に関する法律」により、臨時の代行が国事行為を行います(憲法4条2項⇒昨日8/4記載。)
(参考文献:『判例憲法 1』第一法規)
*****皇室典範 第三章摂政 第三章の全文抜粋**************
第三章 摂政
第十六条 天皇が成年に達しないときは、摂政を置く。
○2 天皇が、精神若しくは身体の重患又は重大な事故により、国事に関する行為をみずからすることができないときは、皇室会議の議により、摂政を置く。
第十七条 摂政は、左の順序により、成年に達した皇族が、これに就任する。
一 皇太子又は皇太孫
二 親王及び王
三 皇后
四 皇太后
五 太皇太后
六 内親王及び女王
○2 前項第二号の場合においては、皇位継承の順序に従い、同項第六号の場合においては、皇位継承の順序に準ずる。
第十八条 摂政又は摂政となる順位にあたる者に、精神若しくは身体の重患があり、又は重大な事故があるときは、皇室会議の議により、前条に定める順序に従つて、摂政又は摂政となる順序を変えることができる。
第十九条 摂政となる順位にあたる者が、成年に達しないため、又は前条の故障があるために、他の皇族が、摂政となつたときは、先順位にあたつていた皇族が、成年に達し、又は故障がなくなつたときでも、皇太子又は皇太孫に対する場合を除いては、摂政の任を譲ることがない。
第二十条 第十六条第二項の故障がなくなつたときは、皇室会議の議により、摂政を廃する。
第二十一条 摂政は、その在任中、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。
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どれだけのインパクトがあるのかわかりませんが、土壌汚染対策法施行規則「別表」特定有害物質1・1-ジクロロエチレンの土壌汚染基準値が、石原伸晃環境大臣のもと、H26.8.1に緩和されています。
「環境基準」が、知らぬ間に狙われている!と問題提起をさせていただきます。