北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

オスとメスが寄り添うししゃも

2010-12-01 23:05:04 | Weblog
 ししゃもの捕獲作業を見てきました。

 ししゃもは北海道の太平洋側の川筋に生息する日本固有の魚で全道でわずかに千トンほどしか取れません。そしてその生態として11月下旬ころにいくつかの川に遡上してそこで繁殖し卵を産みます。

 そうした生態を利用して、繁殖率を上げて翌年の生息量を増やそうというふ化事業が行われるのですが、つい先日それが始まったという知らせを受けて今日の夜に見に行ったのです。

 ふ化事業は、大量のオスと大量のメスをほぼ同数捕獲してふ化施設に運んで自然産卵をさせます。

 サケのようにメスの腹を割いて卵を取り出してオスの白子をかけるような乱暴なふ化事業ではありません。できるだけ自然産卵に近い優しいふ化を目指すことで自然に近い魚の生態を守ろうというのです。

 ししゃもの捕獲作業は新釧路川で夜に行われます。船で網を張るとそれを川岸で引いて網を手繰ります。冷たい川にはドライスーツを着た漁業者が入って、網を縮めてゆくとししゃもの群れがキラキラと跳ねています。


                 【岸で網を引き始めます】


                 【厳寒の川の中でさらに網を手繰ります】


 一人が素早くバケツに一杯のシシャモをすくうと、仮設の小屋へ持ち込んでオスかメスか、登りか下りかを調べます。

 オスとメスの数は同じでなくてはなりませんが、まずはオスがたくさん遡上して、ある時から一斉にメスばかりが遡上するのだと言います。


                 【網の中でししゃもが跳ねています】



 私が見た作業ではバケツの調査結果を「登りのオス94%!」と叫んで知らせていました。獲れたししゃもは一応金網でできた船にいれて川につなぎとめておきます。

 この日もオスはすでに目標の数がそろっているのでメスを待ち構えていたのだそうで、メスが遡上するチャンスを逃すと目標の数がそろわないので、作業は厳寒の中を深夜まで何度も繰り返し行われます。

 バケツの中身を調べる台でお話を聞いてみましたが、素人はぱっと見ても初めはオスメスの区別がつきません。

「大きいのがオスですか?」
「そうです、この時期はもう真っ黒に色が変わります」

「随分大きさが違いますね」
「オスの尻びれが大きいでしょう。オスの胴体の真ん中も膨らんでいて、ちょうど胴体の横にくぼみができてそこにメスを抱きかかえるようにして尻びれで巻きつけて密着するんです。そうすると効率的に受精するのでしょうが、こういう形での生殖なのでオスメスが同数必要なんです」


                 【体の大きい方がオスで尻びれが大きいのです】


                 【こうやってぴったりと寄り添って繁殖します】


「ししゃもはサケみたいに遡上して皆死ぬのですか?」
「いえ、なかには一度遡上してまた海に下るものがいます。オスもメスも翌年また繁殖に参加するようですが、その下りの群れは今捕まえても繁殖には使えません」

 
 繁殖のときにオスの体が、横にぴったりとメスが寄り添うようになるというのは初めて知りました。

 オスとメスでは大きさが違いますが、子持ちシシャモとして市場ではメスが人気のようですが、通は「やっぱり食べるとオスが美味しいんですがね」という人が多いようです。

 カペリン(ノルウェーししゃも)で満足せずに、本当の本物のシシャモを食べていただきたいものです。

 釧路産のししゃもをよろしくお願いします。


【ししゃも大辞典】by 釧路市漁業協同組合
  http://www.gyokyou.or.jp/03/81.html  ↑シシャモを知るならこのサイト

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