北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

出すのが先、入れるのはその後

2010-12-14 23:44:45 | Weblog
 最近はとんとご無沙汰なのですが、かつてスキューバダイビングにはまっていたときがありました。

 転勤で長野県松本市に住んでいたころ、水辺の自然を研究する会に誘われ、やがて水辺にとどまらず水の中に入って生き物を見るという楽しみにつながっていったのでした。

 スキューバダイビングには公的な免許や資格というものはなくて、いろいろな団体が独自に認定することで道具の使い方から呼吸の仕方や潜水時の健康状態、緊急時の対処法などを教えることで独自に潜水可能な免許資格、いわゆる「Cカード」を与えています。

 私もCMASという団体の認定を受けるため、佐渡島までわたって二泊三日での免許取得コースに挑みました。

 しかし実際は超落第生。波酔いでふらふらになって学科の最中寝込んでいたり、実技がうまくいかなかったりして普通なら簡単に取れる二泊三日のコースでは認定ができなくて一か月後に再試を行うという体たらくだったのです。 

 なかでも一番恐怖を感じたのは、初めてレギュレーターをくわえて水深3メートルのところを数十メートル先まで泳いで進むときのこと。吸えばタンクから空気が出てくるはずなのですが、いくら空気を吸っても呼吸がどんどん苦しくなりました。

 苦しいので余計にハアハアと吸っては吐きを繰り返すのですが苦しさはいよいよ増すばかり。とうとう十メートルも進まないうちにパニックになって水面に顔を出してしまいました。

 ついてくれていたインストラクターが「どうしました?」というので、「空気をいくら吸っても苦しくて呼吸ができなくなりました」と答えたところ、「それは呼吸が浅くなったんですね。深く吐けるだけ吐いてから吸うのがコツですよ」とアドバイスをくれました。

 つまり、苦しくなってハアハアと浅く吸って浅く吐くことを繰り返していると、肺の中の深いところの空気が入れ替わらずに二酸化炭素の濃度が上がって苦しくなるのだとか。

 だからそうなったら、まずは深く深呼吸をすると良い、ということなのですが、深呼吸というのは「深く吸って深く吐く」のではありません。深呼吸とは「深く吐いてから深く吸う」ことなのだというのです。悪い空気を出し切ることで初めて良い空気を吸う体勢が整うのであって、出す前に入れるのは順序が逆だというのです。

 これは目からうろこでしたが、様々な世界の達人たちが実践する呼吸法も実はこれと同じようなことを教えてくれるのでした。


    ※     ※     ※     ※     ※


 実際、人間が最期を迎えるときには「息を引き取る」と言い、もうだめだと思ったのが生き返ったときは「息を吹き返す」と言います。これなどは実に的を射た表現ではありませんか。

 吸った息を吐けなくなったときが「息を引き取った」瞬間であり、吸った息が再びフーッと吐き出されたときが「息を吹き返し」た瞬間なのです。昔の人は実によく真理を見ていますね。

 実は食べ物も同じで、食べることよりは便を出すことの方が生きる上では重要なのだそうです。

 私は知識も同じようなものだと思っていて、本を読んだり話を聞いたりして詰め込むだけ詰め込むの結構だけれども、どこかでそれを自分なりにまとめて人に伝えたり形に残すことで、入れたものを出す作業をするのが良いと思うのです。

 それも出せば出すだけ、自分の中のものが足りなくなってしまい新しいものを求めるようになるからです。

 それは学術的な高度な論文に限らず、日記やブログ、さらには酒でも飲みながらの友人との語らいでも良くて、とにかく自分の考えを形にして外に出す作業を繰り返すことで新しい発見に繋がったり、もっとたくさんの情報や知識が欲しくなるのです。

 上手だとか下手だとかにこだわらず、まずはいろいろな形で自分の中のもやもやを外に出してみてはいかがでしょうか。できれば深く出した方が次に深く求めるようになるような気がします。

 まずはちょっとした呼吸法の実践からでもよいのですが、こんなちょっとしたことが長い人生を生き抜くコツになるかもしれませんよ。 
 
  
コメント
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