北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

鯨肉を輸入する理由

2010-12-23 23:53:28 | Weblog
 三日間の東京挨拶回りを終えて、午前の飛行機で札幌へ戻ってきました。

 羽田空港では、新千歳空港が雪のため戻るかも知れないという条件付きフライトを告げられてどきどきしながら飛行機に乗りましたが、大抵はちゃんと降りてくれるので立派なものです。

 さて、昨日は一昨日の水産庁に続いて、日本の調査捕鯨を請け負っている鯨類研究所ほか調査捕鯨に関する団体にも年末のご挨拶に伺いました。

 ちょうど昨日、水産庁の幹部の方から「調査捕鯨では、鯨肉の販売によって得られた収入を次の年の調査費用にあてていることもあって、なんとか鯨食文化の伝承と鯨肉の需要開拓を宜しくお願いします」と言われたばかりなので、そのあたりの意見交換で大いに場が盛り上がりました。

 昨日の話では、輸入されている鯨肉もあるとのことで、そのあたりの経緯を伺ってみたのです。

 すると答えは「最近はアイスランドからの鯨肉が入ってきているのですが、それが価格や品質に少し混乱をもたらしているのです」とのこと。アイスランドって…?

 実はアイスランドはかつて捕鯨国だったものの、1980年代半ばを最後に鯨を捕らなくなり捕鯨技術や捕鯨文化が衰退しつつあったのだそう。 

 それが、一度は脱退していたIWCに、商業捕鯨モラトリアムに留保を付して再加盟した上で再び獲り始めたのはつい2~3年前のこと。

 アイスランドでは鯨を食べる文化が以前からあったものの、人口も経済規模も小さい国内では鯨肉の需要にも限界があり、鯨肉の需要を見込んで日本市場への輸出を再開したようです。ちなみに日本とアイスランドは同じ捕鯨国であり、IWCにおいても協力的な関係にあります。

 鯨肉はそもそも貿易の禁止品目でもないので、売りたい・買いたいという需要と供給の思惑が一致すれば問題はないのですが、鯨肉というセンシティブな商品ということもあり、注目を集めているようです。。

 しかしながら、捕鯨の伝統や技術が衰退しつつあると言うことは捕鯨肉を衛生的に処理したり消費者の好みに合わせた加工をする技術衰えつつあるということです。「鯨が捕れた~」となると、専門の業者だけでなく、港周辺の学校の先生までアルバイトにかり出されて解体作業に当たっているんだそう。

 当然、細やかな配慮に欠けた製品が出回るようになり、匂いが強くなったり鮮度が落ちたりする。すると人気が下がって、それを補おうと価格を下げてくる。するととりあえず安い輸入鯨肉でもいいという人には輸入肉が供給され、品質は高くてもちょいと値段の高い国産鯨肉が売れにくい…、という図式なんだそう。

 しかも、最初はナガスクジラで年7頭くらいという量で輸入をしていたのが、今では捕鯨枠めいっぱいの年間150頭(=1500トン)の量が来るので、消費が追いつかないと言う現象も懸念されます。

 もっともアイスランドという国の中も大変で、鯨捕獲を推奨した前政権が政変によって倒れてしまい、現政権は捕鯨に関して積極的ではない上に、アイスランドはEU加盟を目論んでいて、EUに加盟すると捕鯨は禁止という約束事があるのだそう。

 捕鯨を貫くのは経済的にも政治的にも困難な道が続きます。


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 もっとも消費の面で言うと、生肉である赤肉の消費に関しては大きな減少はなくて、消費が減って困っているのは実は鯨の缶詰なんだそう。

 元々大手の水産会社が地方の缶詰工場で作る鯨肉の缶詰を自社ブランドとして売り出して一定の人気を博していたものが、最近になって大手水産会社が自社ブランドとして売らなくなってしまったとのこと。

 大手でも地方でも缶詰そのものは同じ工場が作っているので、缶詰の品質や味は全く変わらないのですが、やはり地方の水産工場が売るというのではブランド力が弱くて売れなくなってしまっているのだそうです。

 そういえば鯨の缶詰ってあったよなあ、と思い出しながらも最近はとんと食べていないことに気がつきました。

 釧路市でも年二回の鯨による給食を実施して鯨食文化の振興に努めていますが、私自身そもそも鯨についてあまり勉強をしたことはありませんでした。これを機会に勉強を深めておきたいと思います。

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 それにしてもやはり東京は情報の塊です。会う人ごとに新鮮な情報を聞かされます。地方がそれに負けないようにするためには、オリジナルな情報を発信出来るかどうかにかかっていると思いました。

 地方の強みはそこにしかない!
コメント
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