年度の変わり目ということで年上の先輩が挨拶に来てくれました。
「最近何か変わったことはありますか?」と訊くと、ちょっと恥ずかしそうに、「実は転んで足を折って入院していました」と言います。
聞けば、道路とガソリンスタンドの間で氷が斜めに張っていて、そこにうっすらと雪が降った状態だったところで駆け出したところ変に転んでしまったのだとか。
「痛かったでしょう」と言うと、「それが、力が入らないな、とは思ったんですが不思議に痛くはなくて、予定の打ち合わせに行ったんです。ところがそこでどうにも動けなくなってタクシーで市内の病院に行ったところ、『あ、即入院!』となりました。なんだかんだで3カ所が折れたりひびが入っていたみたいで、手術をして今でも足に金属板とボルトが入っているんです」とのこと。
「いやいや、気を付けてくださいよ。高齢になって骨折をすると、医者も『これはもうくっつかないからお帰り下さい。手術をしても無駄ですし』と言うそうですから」
「そこはね、『まだ若いから手術ができますね』と言われましたよ(笑)」
呼ばれるまでの待合室は、同年代と高齢者で埋め尽くされていたそうで、「学生の時に北海道へ来て、もう40年以上も雪国に住んでいるんだから慣れているだろうと思っていましたがお恥ずかしい。これからは自重してゆっくり歩くようにしますよ」と苦笑いをしていました。
いやはや、お大事に。
◆ ◆ ◆
病院に入院なんてしたら、今の高齢者医療などの現場が見られたのではないですか、と訊いてみると、「いや、本当に高齢者医療は大変だな、と思いました」と言います。
「入院していたときのお隣には、高齢ながら元自衛隊だった方らしくて、背筋がしゃんとしていた方が入られていたんです。ただ、部屋を出ると帰って来られないというやや痴呆が入っているようでした。カーテンをしていましたが、隣に回診に来るときは『じゃあ、八百屋さんで売っているものを五つ答えてください』『人参…、大根…』なんて答えが聞こえてきます」
「ふむふむ」
「少し会話をしてから、『ではさっき八百屋さんで売っていると答えたものは何でしたか』という質問がされて、こちらも心の中でやってみながら(おお、な、何だったかな)なんて気になってしまう。体が動かなくなっても、俳句だとかのように頭を使えば楽しめるような趣味があればボケないのかな、と思いました」
「なるほど、悲しいけれど切実ですね」
「僕はもう旅も今しなくちゃもうどんどん行けなくなると思って、昨年は何度か海外へも行ってきました。小松さんも、暇になったらなんて言わずに、思い立った時に旅はしておいた方が良いですよ」
やはり入院となると高齢者が多かったようで、これからの日本の縮図のようだった、とその先輩は言っていました。
健康であることのありがたみと、とにかく何はなくても健康でいるための努力が大切だと改めて思いました。
少し前は、年寄りがなんだか怪しげな健康食品を買い求めるのを「何がいいんだか」と思っていたのが、最近は、(ちょっとくらいのお金で何か効果があるならダメ元でも試してみたい)という気持ちが分かるようになりました。
まあ健康食品にはまだ頼らずとも、社会と家族に迷惑をかけないくらいに健康ではいたいですね。
日ごろの行いを再チェックです。